2008年からデジタル赤外線写真に取り組んで十数年、ついに書籍化です。これまで培ったデジタル赤外線写真のノウハウを、この一冊に凝縮しました。澤村の知るかぎり、商業ベースでは初となるデジタル赤外線写真の解説書だと思います。個性的な写真を目指している方、ぜひご高覧ください。
デジタル赤外線写真マスターブック[ホビージャパン][Amazon]
発売:2023年3月31日
版元:ホビージャパン
価格:3,300円
まず本書はフォトギャラリーを充実させました。3部構成で様々なタイプのデジタル赤外線写真をご覧いただけます。おなじみの青空と真っ白な葉の組み合わせはもちろん、ピンクとグリーンの組み合わせ、モノクロテイストなものなど、多彩なデジタル赤外線写真をたっぷり載せました。このフォトギャラリーでデジタル赤外線写真の世界観を体感してもらえると思います。
本書はデジタル赤外線写真の入門書です。これからデジタル赤外線写真をはじめたい人、およびはじめたけどうまくいかない人のために、機材選びから撮影方法、そして画像編集にいたるまで、やさしくていねいに解説しています。まったくのビギナーという方は1章に目を通してください。この章を読むだけで、最短ステップでデジタル赤外線写真が撮れるようになります。
2章以降はより実践的な内容を、赤外線写真の制作上のポイントごとに掘り下げていきます。カメラとレンズの選び方、赤外線フィルターの役割と描写傾向、具体的な撮影方法などを、細部にわたってじっくり解説しました。昨今人気の赤外線改造ボディ、フルスペクトラム機についても取り上げています。ノーマルボディと改造ボディでどう写りが変わるのか、赤外線フィルターの種類でそれぞれどんな写りになるのか。実写結果を一覧にしてその違いを比較しました。機材選びの参考になると思います。
デジタル赤外線写真のクライマックスといえばカラースワップ。この赤外線写真独自の画像編集に、本書はたっぷりページを割きました。カラースワップの手順はもちろん、きれいに赤外線写真を仕上げるためのテクニックを多数掲載しています。といっても小難しい話はなし。シンプルな操作で最大限の効果が得られるように工夫してあります。“赤外線写真らしさ”を常に意識し、実践的なテクニックを解説しました。
本書は入門書の体をとっていますが、中上級者向けのお楽しみコンテンツも用意しています。それが特殊な赤外線フィルターのコーナー。たとえば、カラースワップ不要で葉っぱが白く写るフィルター、エアロクローム風の赤い葉が撮れるフィルター、さらには赤外線とは真逆の紫外線撮影できるフィルターも紹介しています。
さらにもうひとつ。オールドレンズによる赤外線撮影の章も必読です。ミラーレス機ならマウントアダプターでオールドレンズが付け放題。その利点を赤外線撮影にも活かしてみました。オールドレンズ特有の柔らかい写りが赤外線写真にどういう影響を与えるのか。実はオールドレンズ×赤外線撮影には描写傾向のみならず、ちゃんと実用的なメリットもあります。そのあたりは本編にてご覧ください。
ストはライカM8をクローズアップしました。周知の通り、ライカM8は無改造で赤外線撮影できる稀有なカメラです。僕もいまでも愛用してます。でも、でもね、お世辞にも使いやすいとはいえないんですよ。むしろ不便。そんな使いづらいライカM8なのに、どうしても手放せない。便利はフルスペクトラム機があるのに、ついついライカM8を持ち出してしまう。そんな愛憎半ばするエッセイで本書を締めくくりました。
海外ではデジタル赤外線撮影による作品づくりが盛んです。日本で赤外線改造というと、天体撮影のほうがポピュラーでしょうか。作品表現としてのデジタル赤外線写真は、日本ではまだまだマニアックなジャンルです。本書が微力ながらも、日本でInfrared Photographyが広まるきっかけになれたら幸いです。「デジタル赤外線写真マスターブック」、ぜひご一読ください。