PC and Digital item

January 24, 2017

写真のバックアップ環境、全公開です!

めずらしくPC Watchからお仕事いただきました。タイトルが凄いです。「実録!俺のバックアップ術」。そうそう、パソコン媒体はこのノリだよね(笑)。昔、パソコン誌で仕事をしていた頃の感覚を思い出しました。そんなわけで、澤村のバックアップ環境をドドーンと紹介しています。

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●PC Watch 実録!俺のバックアップ術
写真データを極力シンプルにバックアップ

カメラ写真関係の仕事をやるようになってから、パソコン環境はできるだけシンプルなスタイルを心がけています。OSは素のまま使う、仕事関係以外のアプリはインストールしない、自作なんて論外で、周辺機器も最小限に抑える。バックアップもその流れをくみ、シンプルなスタイルにしています。まあ、パソコン誌で原稿を書いていた頃は、PCはすべて自作、OSカスタマイズは当然、CPUクロックアップやBIOSバリチューンも茶メシ事な人だったんですが(笑)。パソコンを仕事の道具ととらえると、どうしても安定性とシンプルさを求めてしまいますね。今回の記事は写真のバックアップに的を絞って話をしています。ご興味あればご一読ください。

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November 21, 2015

Lightroom向けPC後編、公開です!(PC Watch)

PC Watchにて、Lightroom向けPC企画の後編が公開になりました。例によって長い記事ですが(笑)、パソコン工房による根気強い検証、澤村によるインプレッションというふたつの視点で、きわめて具体的なスペックを提案できました。これからがっつりRAW現像、という人にはかなり示唆的な内容だと思います。

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●PC Watch メーカーさん、こんなPC作ってください!
5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る【後編】

なんと、完成したマシンは3モデル。ユーザーニーズに合わせて選択できます。Lightroomが快適に動き、なおかつ買いやすい価格帯のマシン。そんなおいしいところをうまく突いた構成です。このブログを読んでいる方なら本気モードで写真と向き合っているでしょうから、スタンダードモデル以上で検討してもらうのが良いと思います。ボーナスでパソコンを狙っているなら、ポチる前にぜひご一読を。

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October 16, 2015

Lightroomがサクサク動くパソコンがほしい!(PC Watch)

PC Watchの「メーカーさん、こんなPC作ってください!」からお声がかかり、Lightroom向けPCの製作をお手伝いしました。その前編が本日公開になっています。パソコンのエキスパートであるユニットコムの面々、アドビ社からはおなじみ栃谷さん、そしてLightroom使いの写真家という位置づけでぼくが参加し、写真編集向けの最適なパソコンを作ろうというのが今回の企画です。

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●PC Watch メーカーさん、こんなPC作ってください!
5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る

元々RAW現像は、ムービーと比べるとライトな作業でした。数百枚の一括現像はそれなりに時間を要しますが、エンコードやレンダリングと比べればどうってことありません。ただ、最近はRAWデータの容量が大きくなり、現像処理はもちろん、プレビューなどでもモタつきを感じる場面が少なくありません。その一方で、カメラユーザーはぶっちゃけ「パソコン買い換えるお金があるならレンズ買う!」というのが本音でしょう。そのため、闇雲にスペックアップするわけにもいきません。実用性があり、なおかつコストパフォーマンスがよいのはどのあたりのスペックなのか。その道のプロといろいろ意見交換した経緯をまとめたのが前編になります。ぜひご覧ください。

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July 09, 2009

Mitaka & Mitaka Plus入門 を出版しました!

みなさん、日食撮影用のNDフィルターはもう購入しましたか? 来る7月22日、奄美大島などで皆既日食が見られます。にわかにプチ宇宙ブームが巻き起こっているわけですが、そんななか、ぼくも一冊の宇宙関連書を出版することになりました。今回はそのご紹介です。

Cover_mitaka_2 ●宇宙を体験!Mitaka & Mitaka Plus入門

●著者 永田一八 澤村徹
●出版元 翔泳社
●価格 1,995円(本体1,900円+税)
●発売日 2009年7月8日

●協力
Mitaka/国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクト 大阪大学 加藤恒彦氏
MItaka Plus/株式会社オリハルコンテクノロジーズ 高幣俊之氏

「Mitaka」ならびに「Mitaka Plus」は、フリーで使える4次元宇宙シミュレーターです。実際の観測データに基づく宇宙を、高精度な3Dグラフィックスで壮大に描き出します。さらに時間軸を操作して現在過去未来、さまざまな天体ショーがシミュレーションできます。パソコンの向こうに宇宙が広がる、そういっても過言ではないスケールの大きなソフトです。

本書は「Mitaka」「Mitaka Plus」の基本操作を皮切りに、7月22日の皆既日食はもちろん、かぐやで一躍有名になった地球の出、惑星整列など、様々な天体ショーのシミュレーション方法を解説しています。また、宇宙の基礎知識、魅惑的なエピソード、星座物語なども多数収録しました。Googleの宇宙関連ツール(Google EarthのSkyモード、Marsモード他)についてもていねいに解説しています。

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宇宙関連ソフトはいろいろとありますが、情報の正確性、完成度と安定動作を考慮すると、やはり「Mitaka」「Mitaka Plus」が群を抜いています。「Mitaka」をより楽しむためのガイドブックとして「宇宙を体験!Mitaka & Mitaka Plus入門」を選んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

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February 22, 2009

MOO でMiniCardsを買ってみた

いまさらだけど、最近ちょくちょくとFlickrに写真をアップしている。で、ひとつ気になっていたのがMOOというプリントサービスだ。Flickrをはじめ、各種写真共有サイトのデータをダイレクトにプリントしてくれるのだが、MiniCardsが100枚1セットで19.99ドル。これはかなりお得なのでは!? というわけで、為替レートを睨みつつ、試してみた。

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【ジャンクに遊べるフォトミニカード】
このMiniCardsというのは、名刺を半分にしたような細長いカードだ。表面が写真、裏面にはテキストがプリントできる。写真共有サイトやSNSなど、オンライン上の写真を流し込んで印刷。ローカルの写真もアップロードすればプリントできる。この手のオンラインプリントサービスは国内でも増えているが、カードサイズで、すべて異なる写真が選べ、しかも両面プリントで100枚19.99ドル。約2000円というのはずいぶんと安いのではないか。

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今回はFlickr上の横最大825ドット×縦最大768ドットの写真を使用。カードサイズなので、低解像度でも問題ないでしょうという判断だ。で、届いたブツが左の写真。紙は厚めでコシがある。いかにも「カードぉ!」という存在感。写真面はマットと半光沢の中間くらい。まあ、かぎりなくマットだ。解像感は粗め。緻密な写真はツライけど、大ぶりの構図ならまずまずのクオリティ。ブログなんで正直に書くと、印刷の質はわるい。解像感に限っていえば、中級フォトプリンタの方が格上だ。でも、安いから許せる。名刺として使うには微妙なところだが、プライベートならもらった人も十分に楽しんでもらえそう。なにより100枚100葉だから、目の前にドバーッと広げるとけっこうな迫力。それだけで盛り上がりそうだ。今回は完全にプライベート用として作ったので、調子ぶっこいて「Photographer and Writer」と刷ってみた。こういうお遊びもミニカードならではか。

右の写真はオプションのカードホルダー。4.99ドルで最大15枚のミニカードが収納できる。写真だとよさげに見えるけど、プラスチック製ですぐに傷がつく。価格相応のホルダーだ。これ以外に革製とフェルト製があるので、そっちの方が質感がよいかも。そもそもジャンクなノリのカードだから、あまり質感を云々するのは野暮ってもんか。


【大丈夫、ちゃんとトリミングできます!】
写真好きともなれば、タカがカードとはいえトリミングやレイアウトが気になるはず。このサービス、けっこうしっかりしていて、トリミングや拡大縮小が自在に行える。画像のセレクト、編集、テキスト入力といった、注文までの流れをざっと追いかけてみよう。

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写真の読み込みは、パソコンからのアップロードをはじめ、Flickr、fotolog、Facebook、VOXなどに対応。基本的に英語サイトなので、ちとハードルが高い。

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前画面でFlickrを選ぶと、上段にFlickrの写真がサムネイルでズラリと並ぶ。これを下段のトレイにドラッグ&ドロップ。MiniCardsは100枚1セットなので、最大100枚ドラッグ&ドロップすることになる。ぼくは50枚セレクトして、50枚各2葉という注文した。セレクトした写真が100枚未満の場合、不足分は写真1枚に複数カードを割り当ててくれる。つまり、写真を1枚だけ選び、100枚すべて同じ写真で注文することも可能だ。

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次にあらわれるのが編集画面。ここでトリミングを行う。カードの枠を動かしつつ、ズームのスライドバーで拡大縮小を調整。Rotateで縦横の切り替えが行える。高解像度写真をアップしてあれば、一部分を拡大して切り出すことも可能だ。

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一通り写真編集が終わると、今度は裏面の編集だ。MiniCardsの場合、最大6行のテキスト入力が可能。申し訳程度だが、カラー、太字、センタリングなどの編集が行える。アイコンイメージも追加できるが、表示されているもの以外をアップロードして貼り付けることはできない。ただまあ、プライベートカードと割り切れば、十分な情報が書き込めるだろう。

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今回出費は、100枚1セットのMiniCardsが19.99ドル、ブラックのカードホルダーが4.99ドル、送料込みで総額32.69ドルだった。支払いはPaypalが選択できる。注文したのが日本の暦で2月6日。発送連絡のメールが届いたのは2月9日で、2月16日の午前中に手元に届いた。注文から10日程度でイギリスから届くのだから、まあレスポンスは順当な感じ。ていうか、MOOってUKの会社なのね。アメリカかと思ってた……。

写真というと、つい大きなプリントに目が行きがちだけど、こういう小さなプリントも楽しい。100枚100葉はやはり圧巻で、ヒトに配るのが惜しくなってくる。前もって画像を緻密にトリミングして、ジグソーパズルなんてのもおもしろいかも。サイズこそ小さいが、2000円少々で100枚刷れるとなると、いろいろな遊びが試せそうだ。

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January 19, 2009

Poladroid で手軽にアナログ写真

ポラロイド、トイカメラ、針穴写真にクロスプロセス。相変わらずこの手のアナログ写真は人気がある。ぼくもひと頃、SX-70やホルガをよく持ち出していたが、いかんせん、最近はめっきり出番が少なくなった。なにしろSX-70は代替フィルムの600 filmすら生産中止。中判フィルムは現像に時間がかかるし、ついデジタルカメラの利便性に身をゆだねてしまう。でもアナログ写真の味わいは捨てがたいし……という優柔不断なぼくにウッテツケのソフトがあった。ポラ風写真をドラッグ&ドロップで作ってくれるPoladroidというソフトだ。

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【ドラッグ&ドロップでポラ風写真】
Poladroidは「http://www.poladroid.net/」からダウンロードできるドネーションウェア(いわゆるカンパウェア)だ。そもそもはFlickr Groupに端を発するようだが、単独のソフトウェアとして利用できる。画像をポラロイドのアイコンにドラッグ&ドロップするだけという簡単操作。解説はさておき、まずは作例からどうぞ。

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どうでしょう。いい味出てると思いませんか。ぼくはオリジナルのSX-70 filmは使ったことがないのだけれど、もしエイジングフォトというカテゴリがあるとするならば、十分合格点の仕上がりではないか、と。なにしろドラッグ&ドロップするだけでこの風合いですから、俄然お得な気分です。

【ツッコミどころ満載のディティール】
さてこのソフト、シンプルな操作方法に反して、ディティールにえらくこだわっている。その不毛ともいえるこだわりぶりをいくつか紹介しょう。まずは画像変換処理からだ。

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画像をポラロイドのアイコンにドラッグ&ドロップすると、「ガシャコーッ」という音とともにポラが排出される。排出直後のポラは茶色。ジワジワと画像が浮かび上がり、紙の部分にチェックマークが付くと現像完了だ。変換後の写真は、事前に指定したフォルダへ自動保存される。オフィシャルサイトには「待って待って、さらに待って、写真を振ると画像が見えてくるよ」と書いてあるが、まあ写真をシェイクする必要はない。待っていれば自ずと浮き上がる。この間、3分半程度。デジタルなんだから、そこまで待たすことないだろ! というのが第1のツッコミどころだ。念のため、現像中にマウスハンドしてシェイクしてみたのだが、やはり現像時間に変化はなかった。って何をマジモードで検証してんだか(汗)。

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ちなみに、現像中のサムネイルをダブルクリックすると、「現像中の状態でファイル保存する?」とたずねてくる。「Save」ボタンをクリックすればサムネイルの表示状態で画像保存が可能。これは何度でも途中保存でき、もちろん現像完了後の状態も別画像として自動保存される。つまり、1枚の写真から複数の版が作成できるのだ。恐るべしポラドロイド!

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11枚目の画像をドラッグ&ドロップすると、こんなメッセージがあらわれる。「フィルムカートリッジが空になったから、ソフトを再起動してチョーダイ」と。そりゃたしかに600 filmは1カートリッジ10枚だけど、ソフトなんだからカンケーねえだろ!? というのが第2のツッコミどころ。そしてさらに、第3のツッコミどころまである。

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写真に指紋やホコリが付着しているのがおわかりだろうか。これがまた、「アァ、指紋ついちゃったよお」と残念な気持ちになるくらいにリアル。ポラ撮影経験者ならことのほか感慨深いのでは!? ちなみに、この指紋やホコリはStripesという機能で再現できる。使い方は以下の通り。

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ポラロイドアイコンの青いマークをクリック。プルダウンメニューがあらわれるので、「Settings」をクリックしよう。

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「Post-Processing」タブを開き、「stripes」のチェックボックスをオンにする。「Photo」にチェックすれば写真面に、「paper」にチェックすれば外周の紙の部分に指紋やホコリが付く。ちなみに、その下の「Vignetting」とは周辺光量落ちのこと。初期設定でMax設定の「strong」になっている。これはこのまま使った方が「らしく」仕上がる。

Poladroidは簡単にポラ風エフェクトが楽しめるわけだが、どんな写真でも……というわけではない。ドラッグ&ドロップしたものの、フツーな写りで肩すかしを食らうことも。以下はそんなショットを並べてみた。

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元画像の絵柄や色彩、トーンによっては、いわゆるポラ風にならないこともある。色調調整機能は搭載していないので、ある種の出たとこ勝負だ。そもそもSX-70の仕上がりも画が出てくるまで運任せだし、あまりシビアにならず、いろいろな写真で偶然を楽しむのがPoladroid流か。昨今、この手の味だし写真加工ソフトが増えているが、Poladroidはアナログ写真のスローテイストまで上手に再現している。だからといって「オリジナルの再現性」なんて無粋なことは言わず、雰囲気重視で楽しみたい。

●追記
ちと気になったので、色調をテストしてみました。同じ画像をポラドロイドに20回ほどドラッグ&ドロップ。案の定、現像のたびにちがうトーンで出力されました。ただ、色調はプリセット化されているようで、ざっくり7パターンほど確認できました。

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この写真に関しては、紫、黄、緑の3色相、そしてコントラストの強弱を組み合わせている印象。元画像によって見え方は変わってくると思いますが、このソフト、シンプルなわりに奥深いです。プリセットの割り当てはランダム? それとも画像解析を行っているのか……。いずれにせよ、思ったような効果が得られなくても、トライ&エラーで好結果が得られる可能性大です。

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November 17, 2008

ピクトラン局紙とColorMunki

写真展「Echo of Light」の作品を印刷するにあたり、コスモスインターナショナルのピクトラン局紙を使うことにした。モノクロ印刷では黒の締まり、中間調の表現がすばらしいと評判の高級インクジェット用紙だ。ただ、ウチのプリンタはエプソンのPX-5600。残念ながらICCプロファイルがない(まあPX-5600に限らず、ピクトランはプロファイルが皆無に等しい状態のようだけど)。なかなか歯ごたえのあるインクジェット紙だったので、軽くレポートしてみます。

【ピクトランで写真が絵画風に】
当初、今回の写真展はクリスピアでさらっと出すつもりだった。ウチのパソコン環境はモニターキャリブレーション済みなので、エプソン純正のICCプロファイルでおおむね狙い通りのプリントが得られる。ただ、出展作品は例の赤外線写真。いっしょに写真展をやる和田高広さんから「マットか半光沢の方が雰囲気が合うのでは」とアドバイスをいただき、急遽ピクトラン局紙で挑むことにした。

ピクトラン局紙はキヤノンの染料プリンタを念頭においているようだが、エプソンの顔料プリンタでもちゃんと印刷できる。PX-5600でカラー写真を印刷した場合、フォトブラックを使うと水彩画風の仕上がりだ。黒の締まりが弱く、発色も抑えめになる。大判印刷だと明らかにパンチ不足だが、ポストカードサイズならこれはこれでアリ、という印象だった。片やマットブラックに切り替えると、油彩画風の濃厚なタッチになる。なお、印刷設定についてはコスモスインターナショナルの解説PDFを参照してほしい。

【日和りましたプリンタキャリブレーション】
今回はA3ノビに大きく印刷するため、マットブラックを使った濃厚プリントでいくことにした。マットブラック使用時のプリントコンディションは、まず彩度がどぎつくなる。そしてコントラストも上がる。さらにシャドウがドバッとつぶれる。こうした傾向を踏まえると、データを中間域に集め、彩度はいじらずプリントしてちょうどいい感じだ。

はじめからピクトランでいくつもりならこれで問題ないが、実はクリスピア向けに補正してしまったので、これをピクトランで出力するとあまりにビビッドで子供っぽい表現になってしまう。補正済み画像のテイストを残しつつ、油彩画風の濃厚タッチをいかすのはけっこう難しい。だいぶがんばったんです。試し刷りのピクトランが山積みです。紙代だけで3万使いました。もう限界です……。

というわけで、ColorMunki Photoを買いました。

かつてプリンタキャリブレーションといえば、eye-oneシリーズの20数万円もするセットが必要だった。その点ColorMunkiは7万円ちょい。位置づけとしては簡易プリンタキャリブレーションになるようだが、個人ユーザーならこれで十分ではないかと。電塾さんのレビューを参考にしながら作業を進め、完成したICCプロファイルでピクトランに出力。いやあ、お見事。元画の雰囲気を忠実にトレースしつつ、ピクトランらしい濃厚なプリントに仕上がった。プリンタキャリブレーションの目的は正確な色再現だけど、キャリブレーション後もちゃんとピクトランの風合いが感じられる。

ピクトランとColorMunkiを組み合わせると、紙質のおもしろさがより引き立つ。プリントの存在感とでもいうべきだろうか。ただ、なんだろう、この後ろめたさ。RAW現像で粘らず機械に日和った罪悪感……。ちょっと複雑な気分だったりしますが、濃厚赤外線写真は写真展会場でご覧ください。

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October 13, 2008

BiND2 という試金石

先日、ホームページ「metalmickey.jp」をリニューアルしたばかりだというのに、またまたリニューアルすることになった。ホームページ制作はデジタルステージの「BiND for WebLiFE*」を使っているのだが、これがバージョン2になったのだ。肯定派と否定派のまっぷたつに分かれるBiND2、その問題点を整理してみたい。

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まずぼくのスタンスを明確にしておくと、ぼくはBiND2の擁護派だ。PhotoCinemaとIDもプライベートで使っているので、digitalstageシンパと考えてもらっていい。BiND2はデザインリッチなテンプレートを多数搭載。HTMLやCSS、Ajaxの知識がなくても、最新ウェブ技術を取り入れたホームページが簡単に作成できる。にも関わらず、「BiND2はとてもよいソフトだけど、人には薦めづらい」と感じている。PhotoCinemaとIDは無条件で人に薦められる。でもBiND2はダメだ。これは薦められない。その理由を述べていこう。

【見た目通りに作れない違和感】
薦められない理由その1、方言があまりにキツイ。総じてアプリケーションというものは、お約束のインターフェイスというものがある。マニュアルを読まなくても、画面を見ただけである程度使いこなせ、ちょっとこだわったことをするときだけヘルプファイルや取説で操作方法を確認するものだ。しかし、BiND2は独自のインターフェイスを採用しているため、取っかかりがつかめないのだ。

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これがBiND2のメイン画面だ。ウェブページをブロックと呼ばれるエリアで区切り、このブロック単位で編集を行う。ブロックのレイアウトは、「ページレイアウト」からテンプレートを選択。その上でブロックの追加削除を行う。こう書くとどうということはないが、WYSIWYG(懐かしい!)非対応という点に留意してほしい。ドラッグ&ドロップでブロックを追加したり、マウス操作で移動やサイズ調整ができるのではない。あくまでも定められたサイズのブロックを並べることしかできないのだ。

デジタルステージのソフトはテンプレートの質にことのほかこだわりがある。おそらくブロックのサイズや配置を限定しているのも、「この見せ方がベスト!」という思いが強いのだろう。ただ、ワープロで当たり前のようにできることが、BiND2ではできない。ここに違和感をおぼえる。

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ブロック内のコンテンツはテンプレートを選んで入力していく。このブロックテンプレートは実に豊富で、しかも実用性の高いレイアウトが多い。この点は「さすがはデジタルステージ」と感心する部分だ。しかしこのあと、我々は大きな壁にぶち当たる。

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これはブロックエディタと呼ばれるブロックの内容を編集する画面だ。実際のウェブページとは似ても似つかぬ画面。この編集画面から、仕上がりを想像するのは難しい。

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バージョン2になり、見出し関係はマーキングが付くようになった。それでもやはりWYSIWYGとかけ離れた画面であることには変わりない。ホームページ作成ソフトはワープロと異なるから、WYSIWYGの実現は意外とハードルが高いのだろう。しかし、このブロックエディタがメイン画面の右パネルとして組み込まれていたらどうか。パネル上で変更を加え、適用ボタンを押すとプレビューエリアで確認できるという流れ。これならずいぶんとスマートに作業できそうだ。BiND2のみならず、他社ホームページ作成ソフトやブログツールも含め、編集画面とプレビュー画面の関係性、これをいかにシームレスにするかが重要な問題だ。

【マイナートラブル続出の不安定さ】
お薦めできない理由その2、それは動作の安定性という問題だ。マック版は安定しているそうなのだが、なぜかウィンドウズ版は大小さまざまなトラブルが多い。BiND2の初期バージョンでは、「適用」ボタンを押すとデータ反映までに10秒以上待たされるというノンキな仕様だった。これはバージョン2.11のアップデートで劇的に改善されたが、いうまでもなく、改善後のパフォーマンスこそが市販アプリケーション本来の姿である。

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BiND2には「SiGN」というロゴ作成ツールが付属する。写真にテキストを載せて画像化するミニソフトだ。手軽にロゴが作れる便利なツールなのだが、どうしたわけかぼくの環境では、SiGNを起動すると下のようなエラーが発生する。

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「続行」を数回クリックすると無事SiGNが起動するのだが、精神衛生上よろしくない。また、このエラーも出たり出なかったりで、さてはて何が原因なのか……。そういえば、ウチの環境では当初、BiND2をインストールすることすらできなかった。インストールを進めると、インストーラーが途中で落ちてしまうのだ。この問題はすでにデジタルステージのFAQに対処策が掲載されているが、楽しみにしていたソフトがインストールすらできず、当時はずいぶんがっかりした。

そういえば、ブロックの編集がいっさいできなくなるというトラブルも。このときは結局、ページをイチから作り直した。順次アップデートで改善されてはいるものの、BiND2は市販アプリケーションのクオリティを満たしていない。デザインリッチなテンプレートという着想はすばらしい。そしてテンプレートそのものもたしかにすぐれている。しかし、アプリケーションとして最低限の動作が確保できていない。ぼくは十数年にわたってソフトウェアレビューを書いてきたが、「ベータ版がそのまま売られている」という印象は拭えない。当然ながら、ベータ版クオリティのソフトを人に薦めることはできない。

【パッケージ版の意義とは!?】
ダメ押しでお薦めできない理由その3、それはパッケージ販売の意味が実感できない点だ。前述のとおり、このソフトはデザインリッチなテンプレートを多数搭載している。しかし、搭載こそしているが、収録されていないのだ。

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これサイトシアターというサイト管理兼テンプレート選択画面だ。ここでは新規サイトを作るためにテンプレートを選択している。左上の「未インストール」という赤字が読み取れるだろうか。このように表示されたテンプレートは、デジタルステージのホームページからダウンロードして追加インストールすることになる。サイトテンプレートの多くは、こうしてダウンロード&インストールが必要だ。ちなみに、BiND2はパッケージ版のみの販売で、ダウンロード販売は行っていない。収録データ容量が多くなるから……というのがメーカーの言い分だろうが、パッケージ版に必要なデータが含まれていないというのは問題だ。

【それでも使う理由は成果物のパフォーマンス】
我ながら驚くほど不満点を並べてしまった……。これだけ文句を書き連ねておいてナンだが、それでもぼくはこのソフトを使う。理由はひとつ、「投入する労力に対し、成果物の完成度が極めて高い」からだ。ぼくはウェブプログラミングの知識を持ち合わせていない。デザインやレイアウトについても特別な勉強をしたことがない。それでもBiND2を使えば、あたかもウェブデザイナーが作ったようなホームページに仕上げられる。「できないことができる」というのはすばらしい。

BiND2のテンプレートは、現在のウェブトレンドをしっかり踏襲している。最上部にメニューバーを展開し、ワイド画角の大きな写真、ブログライクなサイドバー付きのコンテンツエリアへとつづく。階層が深くなるときは、中段にもう一本メニューバーを加え、閲覧者を迷わせないように配慮。自分がサイト内のどこにいるのか、把握しやすいホームページが作成できる。こうしたウェブデザインは、多くのオフィシャルなサイトで採用されているものだ。専門知識のないパーソナルユーザーが、プロと同じステージで勝負できる。

いまBiND2に必要なのは、強固なプラットフォームに成長することだ。マイナートラブルを一掃し、器として完成度を高めること。その上でトレンドを踏まえたテンプレートを随時発売していけば、多くのユーザーに支持され、息の長いソフトになるのではないか。そうなれば、ぼくも胸を張って人に薦められると思う。

●参考URL
BiND2で作り直したmetalmickey.jp

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September 03, 2008

Google Chrome は空気のようなブラウザ

出ましたね、Google Chrome。インターネットの覇者Googleが、満を持して投入したウェブブラウザだ。IE7、Firefox、Safari、そしてGoogle Chromeと、この秋はブラウザ業界が俄然おもしろくなってきた。そんなわけで、早速Google Chromeで遊んでみた。

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【シンプルへのこだわり】
INTERNET Watchによれば、Google ChromeはAppleのWebKit、Firefoxのコンポーネントなどを使用し、その上で独自開発の高速Java Scriptエンジン「V8」を搭載しているという。動作が軽く、高速表示できるのが売り。技術的に最先端をいくのはいうまでもなく、そのシンプルに徹したインターフェイスが斬新だ。

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これがデフォルトの画面だ。メニューバーはなく、ツールボタンも最小限。ここではホームボタンを表示しているが、デフォルトではそれすら非表示になっている。

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ウィンドウズ下部にステータスバーがない。つまり、ウィンドウいっぱいにウェブページを表示できる。デスクトップ解像度の低いノートパソコンで役立ちそう。

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リンクをマウスでポイントした際は、下段左端にURLをオーバーレイ表示する。ステータスバーがなくても快適かつ安全にブラウジングできるわけだ。

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ちなみに、メニューは画面右上のページメニューボタンから呼び出せる。ただし、実際のブラウジングでこのメニューを使う場面はそう多くないだろう。

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ブックマークに関してもひと工夫ある。一応、ブックマークバーの表示/非表示が可能だが、非表示のままでも実用面で困らない。上の画面は新しいタブを追加したところだが、これまでのタブ式ブラウザは、新規タブを追加すると真っ白なブランク画面を表示していた。ところがGoogle Chromeは、ブックマークバー、アクセス頻度の高いページのサムネイル、最近追加したブックマークリストなどを一画面表示してくれる。つまり、新規タブを作成したタイミングこそが、ブックマークを使う瞬間と位置づけているわけだ。むろん、既存タブを開いた状態でブックマークを使うこともあるだろう。そうはいっても、新規タブ→ブックマークという操作の関連づけは理にかなっている。

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ブックマークを追加する際は、アドレスバーのスターマークをクリックすればよい。このインターフェイスはすでにGoogleツールバーで採用されているものだ。このあたりも直感的操作といえる。ひとつ残念だったのは、Google Chrome向けのGoogleツールバーがまだ提供されていない点だ。ぼくはGoogleツールバーのブックマーク機能をメインのブックマークとして使っている。同じ企業のツールなのだから、ローカルブックマークとオンラインブックマークをスイッチングできると便利なのだが……。今後の改善を期待したい部分だ。

【おもしろ新機能の数々】
シンプルに徹したブラウザだが、それはあくまでも見た目のこと。性能的にはかなり多機能だ。なかでも興味深い機能をピックアップして紹介しよう。

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左上に怪しい男がいる。これはシークレットウィンドウのマークだ。シークレットウィンドウとは、閲覧や検索の履歴、Cookieが記録されないモードのこと。ページメニューの「シークレットウィンドウを開く」をクリックすると別ウィンドウで起動する。この機能を使えば、家族の共用PCでエッチいサイトを閲覧しても、お母さんにバレずにすむ。お父さん、お兄ちゃん、もう安心ですよ(笑)。

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ページメニューの「アプリケーションのショートカットを作成」は、Googleがイメージする将来のPCスタイルを象徴している。いわゆるショートカット作成機能なのだが、デスクトップ、クイック起動、そして〈スタート〉メニューにまとめてショートカットアイコンを作成(任意のものだけを選択可能)。ただしこれは、ウェブページのショートカットとしてよりも、GmailやGoogle Mapsなど、ウェブアプリケーションの登録を目的としている。

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この画面はGoogle Mapsのショートカットを作成し、その後起動した状態だ。Chromeで起動しているが、アドレスバーは見当たらない。ウィンドウのすみずみまでGoogle Mapsが表示され、まるで単体のアプリケーションのように見える。ウェブサービスやオンラインツールを、単独のアプリケーションとして扱っていこうという、Googleの意思表示である。

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タスクマネージャはGoogle Chromeならではの機能だ。この機能では、タブごとのリソース消費量が確認できる。Google Chromeはタブがそれぞれ独立して稼働しており、ひとつのタブがクラッシュしても他のタブに影響を与えない。タブを個別管理しているから、個々のリソース消費量が確認できるというわけだ。なお、タスクマネージャはタイトルバーの右クリックメニューから起動できる。

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さらにタスクマネージャの「統計情報」をクリックすると、メモリの使用状況が確認できる。アドレスバーに直接「about:memory」と入力してもよい。この画面のおもしろいところは、主要ブラウザのメモリ消費量も調べられる点だ。そこで4大ブラウザで同じページを表示し、メモリ消費量を比べてみた。

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(メモリ使用量:軽量順)

  1. Firefox 3.0
  2. Chrome 0.2
  3. IE7
  4. Safari 3.1

一番軽いのはFirefox、ついでChromeという順番だ。ヘビーな印象のIE7だが、メモリ消費量自体は他のブラウザと大きく変わらない。ただし、これはメモリ消費という数値的な側面だ。表示速度や動作といった体感的なパフォーマンスとは異なる。ぼく個人の体感パフォーマンスはこんな順位だ。

(体感パフォーマンス:ライター澤村の場合)

  1. Chrome 0.2
  2. Firefox 3.0
  3. Safari 3.1
  4. IE7

やはりChromeの表示スピードはダントツ。普段からFirefox 3.0を使っているが、表示に関してはChromeの方が格上だ。ベータ版なので正式版でこのパフォーマンスをキープしているか未知数だが、現状では「軽くて速いブラウザ」といって支障ない。これまで公開してきた数々のウェブサービスが、ノンストレスで快適に動作するブラウザ。これがChromeの目指すところであり、いわば水や空気のように、存在を意識しないブラウザといえそうだ。パソコンのメインステージが、デスクトップからブラウザに本格シフトしそうな予感に満ちている。

しかし、ひとつ心配なことがある。ことウェブブラウザに関しては、常にセキュリティの問題がついてまわる。 かつてマイクロソフトは、IEのセキュリティホール対策にさんざんふりまわされた。Googleは本気でChromeのセキュリティ対 策に取り組んでくれるだろうか。それとも他の無料ソフトや無料サービスのように、「タダなんだから大目に見てよ。ていうか永遠のベータ版だし」というスタンスだろうか。むろん、バージョン 0.2のベータ版にここまで言うのは先走りすぎだと思うが、速さと同等以上に安全性に考慮してくれたら、「やるなあGoogle」と一気に好感度アップ だ。

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最後にひとつTipsを。FirefoxのタブをChromeにドラッグ&ドロップすると、そのまま表示できます。実用性、低いですね(笑)。

●追記
INTERNET WatchのChrome開発責任者インタビューによると、「オープンソースで公開されているので、多くの開発者がセキュリティの問題に協力してくれることも期待している」だそうです。

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March 28, 2008

i1 Display 2 でカラーマッチング

一線を越えることにした。これまでhueyを使ったナンチャッテカラーマッチングでごまかしてきたけど、もうムリ! 1枚の色見本を出力するのに十数枚もプリントして、挙げ句の果てには何が正しい色なのかわからなくなり、こりゃもうカオス以外のナニモノでもない。そんなわけで、カラーキャリブレーションセンサーの国内業界標準、i1 Display 2を導入することにした。

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【カラマネスペシャリストがやってきた!】
そうはいっても、ぼくはカラーマッチングの専門知識がない。それどころか過去の記事を見てもわかるとおり、相性のあまりよくないジャンル。困っていると、知り合いの写真家さんがカラーマッチングのスペシャリストを紹介してくれた。アドバイスをもらえるだけでもありがたいのに、自宅まで足を運んでセッティングしてくれるというじゃないか。こりゃもう業界人特権(笑)、ありがたくお言葉に甘えて、セッティングしてもらった。

その際、彼がこんなことを言った。「モニターとプリンタの環境が整うと、RAW現像が3倍楽しいですよ」と。このひと言は衝撃的だ。これまでぼくは、カラーマッチングにネガティブな印象しか持ていなかった。表示と出力の色を合わせるだけ。たったこれだけのために数万円も払うなんてありえない。i1 Display 2を買うのだって渋々だ。しかし彼は、とてもポジティブにカラーマッチングをとらえている。そう、写真をより楽しむためのカラーマッチング。そんなカラーマッチングスペシャリストの名言を交えつつ、なぜカラーマッチングやモニターキャリブレーションが必要なのか、最終的な落とし所はどこにあるのか、なんてことを探ってみたい。

【キャリブレーションの目標値を読み解く】
はじめにカラーマッチングスペシャリストはこう切り出した。「そもそも100点満点のカラーマッチングは原理のちがいから難しいのですが、85点レベルでかなり満足のいく写真の画像処理が楽しめます」と。ディスプレイはRGBの世界であり、印刷はCMYKの世界。液晶ディスプレイは自ら“発光”して発色するが、印刷物は外光を“反射”して発色する。ひと口にカラーマッチングといっても色の原理が異なるのだから、パーフェクトなマッチングは困難を極めるという。残り15点というのは、発色原理そのものの差異を吸収する必要があり、きわめて専門的な世界だ。写真に造詣の深い人であっても、85点のカラーマッチングでおおむね満足が得られるという。そこから先は必要に応じて詰めていくということになるだろう。まずはぼくの作業環境を列挙しておく。使用機材は以下の通りだ。

モニター:RDT261WH
プリンタ:PX-G930
キャリブレーションセンサー:i1 Display 2

i1 Display 2を用いたRDT261WHのキャリブレーション方法は、実は三菱電機のホームページに掲載されている。単純にキャリブレーション手順だけを知りたい人は、この上記URLのホームページで問題解決するはずだ。RDT261WHに特化した手順解説だけあって、同ディスプレイを確実に、しかも適切にキャリブレーションできる。ちなみに、上記ホームページの手順は、「モニターの写真とプリントした写真をほぼイコールにするためのキャリブレーション手順」だ。あくまでもプリント向けのキャリブレーションであり、ウェブ素材向けではない。再度強調しておこう。これはモニターとプリントをマッチングするための手順だ。こうしたことを踏まえた上で、この記事ではキャリブレーション手順の肝となる部分を掘り下げてみたい。

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キャリブレーションの序盤、上のような画面が出てくる。これはキャリブレーションの目標値を設定する画面だ。ここの値を目標にモニター表示を調整していくことになる。基本的に前述の三菱電機ホームページの手順通りに設定すれば問題ないのだが、各値の意味を知りたいと思いませんか? がんばって解説してみます、ってできるんだろうか(汗)。

白色点
要は色温度を設定するのだが、問題となるのは何の色温度を設定すればよいのか、ということ。世間ではよく、ウェブは6500K、商用印刷は5000Kなどという。しかし、ここで設定する色温度とは、あくまでも屋内の色温度だ。屋内の色温度をキャリブレーションの目標値にすると、屋内照明下(自然光も含む)で画面の白とプリント用紙の白がほぼイコールになる。これが大切。もう一度くり返しておこう。画面の白と用紙の白をマッチングするのだ。より具体的にいうと、Photoshopで白い新規画像を作成し、その横に普段使っているプリント用紙を並べる。両者の白が近いものであれば、自ずと画面と印刷の調子が近づいてくるというわけだ。

ちなみに、この画面の後にアンビエントライト(環境光すなわち屋内照明)を測定する。白色点の目標値はそれに合わせて再設定可能だ。ぼくの環境を紹介しておくと、日中(窓からの自然光と屋内蛍光灯)で5200K、夜間(屋内蛍光灯のみ)は5500Kだった。よって目標値は5500Kに設定している。少々アバウトな設定だが、実はこの程度でいいらしい。先のカラーマッチングスペシャリスト曰く、プリントを前提とした場合、遮光カーテンと評価用蛍光灯で光の無菌室状態を作っても、必ずしもベストとはいえないそうだ。なぜか? 結局プリントした紙は様々なアンビエントライト下で観賞することになるので、光の無菌室状態で見た雰囲気と変わってしまうというのだ。プリントしたものをいろいろなアンビエントライト下で見て、おおむねOKが出せればそれでよし。この程度のとらえ方が現実的なのだろう。

ガンマ
写真を目的とした場合、Windows、Macともにガンマ値2.2が推奨値だ。AdobeRGB、sRGBともに、策定前提でガンマ値2.2になっており、実際にキャリブレーション後の画面とプリントを見比べた際、ほぼ同テイストに見える。Windowsはデフォルトが2.2なのでなんら問題ないが、Macのデフォルトはたしか1.8。Macユーザーがキャリブレーション後の画面を見ると、少なからず違和感をおぼえるかもしれない。しかし、画面とプリントのマッチングという観点からすると、これがベターな目標値となる。

輝度
これはディスプレイの明るさで、数字が大きいほどディスプレイの画面が明るくなる。写真プリントを前提とした場合は80~120cd/m2あたりが順当だという。写真プリントの明るさと画面の明るさが、80~120cd/m2を目標値にすると大体同じになるわけだ。ぼくの環境を例にとると、はじめ120cd/m2でキャリブレーションしたところ、プリントした写真が心持ち沈んで見えた。つまり、画面の方が明るかったわけだ。そこでカラーマッチングスペシャリストのアドバイスに従って80cd/m2に目標値を設定。これでキャリブレーションを行うとプリントと画面の印象がほぼイコールになった。こうしたオペレーションから見えてくるのは、画面コンディションをプリントに合わせていくというアプローチ。もちろんこの際のプリントとは、ICCプロファイルを読み込んでドライバ補正を無効化して行う。このあたりの手順も三菱電機のホームページに詳しく載っている。なお、ディスプレイ側のDVモードはテキストモードを選択しておこう。これで10ビットガンマ機能が有効になり、好結果が得られるようになる。

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一通りキャリブレーションした結果が上の画面だ。色温度とガンマは目標値とジャスト。輝度はごくわずかに誤差が出ている程度で、RDT261WHの優秀さが際立つ結果となった。階調を示すグラフは、各色ともきれいな直線を描いているのが理想的。昨今の液晶パネルはおおむねきれいな直線を描くが、もし何度測定し直してもグラフが乖離したり極端に歪むような場合は、グラフィックボードの性能を疑った方がよいそうだ。ちなみにぼくの環境はNVIDIA GeForce 7600 GTを搭載。すでに旧式のグラフィックボードだが、これだけのグラフが描けていれば問題ないとカラーマッチングスペシャリストはいっていた。

このあとPX-G930のプリンタキャリブレーションも行った。ちなみに、エプソンの純正ICCプロファイルは素性がよく、カスタムプロファイルを作らなくてもおおむねOKだという。純正プロファイルとカスタムプロファイルでプリント結果を見比べてみると、シャドウ部の階調に若干のちがいが見てとれた。カスタムプロファイルは画面とほぼイコールであるのに対し、純正プロファイルはやや持ち上げている印象。おそらく暗部が見やすいように調整してあるのだろう。そうはいっても純正プロファイルで十分に画面の印象に近い。この状態になってはじめて、冒頭のスペシャリストの言葉――RAW現像が3倍楽しい――が理解できた。たとえば、RAW現像ソフトでこだわり抜いたトーンカーブを描くと、それがそのままプリントされる。シャドウがつぶれたりハイライトが飛んだりしない。そのまま出てくる。色味だってしかり。グレースケール化した画像にのせたわずかなブルー、その微細なトーンがしっかり出る。ちゃんとプリントしてくれるから、トコトン補正にこだわれる。そりゃRAW現像が3倍楽しいのも当然だ。

なお、スペシャリストはプリンタキャリブレーションについてこんなことを言っていた。「紙で遊べるようになるんですよ」と。一般に、“いい紙”を使わないとちゃんとした色が出ない、専用紙じゃないと正しく色が出ない、と言われている。しかし、プリンタキャリブレーションで各用紙に合わせてカスタムプロファイルを作っておけば、用紙の発色特性に煩わされることなく、おおむねOKなプリント結果が得られるわけだ。発色が一定ならば、光沢感、マット感、テクスチャなど、用紙の味を積極的に選べるようになる。純正用紙以外はグレーが確実に出力できるという保障がなく、人によって邪道に思えるかもしれない。そうはいっても、紙で遊ぶ――そっちの世界もずいぶんと楽しそうだ。

【色に覚醒したとき必要性が生まれる】
これまでぼくは、キャリブレーションとは守りの世界だと思っていた。色がちがうから合わせる。合わせて、終わり……。しかし、カラーマッチングスペシャリストからのアドバイスは、色が合うことで開かれる世界――RAW現像が楽しく、紙で遊べる――を教えてくれた。ぼくの自宅環境で彼が作業をはじめる前、こんなことを言っていた。「カラーマネージメントは一手段です。カラーマッチングが目的なんです」と。モニターとプリンタの色を合わせるために(カラーマッチング)、キャリブレーションセンサーで各機器の色空間のバラつきを調整する(カラーマネージメント)。この“手段”と“目的”の関係をしっかり理解しておけば、何をすべきかが自ずと見えてくるだろう。

たとえば、プリンタドライバの調整画面でディスプレイ表示にプリントを近づける――これだって立派なカラーマッチングだ。画面とプリントの色のちがいを見越して、RAW現像の段階で色味に手を加えておく。これも実践的なカラーマッチングといえる。しかし、こうした手探りのカラーマッチングは、画像ごとに調整が異なるし、それなりにノウハウの蓄積も必要だ。効率性を考えたとき、カラーマネージメントという手法がもっともスマートであり、なおかつ汎用性がある。キャリブレーションは必ずしも、色合わせの必須作業ではない。効率を求めたとき、忽然とその必要性に気付くものだ。

かつてhueyを導入したとき、その見やすい画面に感動した。プリンタとのマッチングもそれなりにとれているように感じた。しかしいま思うと、hueyはキャリブレーションツールではない。モニター自動最適化ツールだ。正しい表示ではない。あくまでも“見やすい”表示にすぎない。するとあの感動は、単なる錯覚だったのか……。

いや、そうとは思わない。あの当時ぼくは、色に対してhueyで事足りる程度の認識だったのだろう。プリントはプライベートに限られていたし、RAW現像もさほどシビアな調整ではなかった。ただその後、雑誌に写真を載せる機会が増え、モニター上の写真とプリント(この場合は雑誌の誌面だけど)のちがいが気になりだし、作例の色見本を付けるにあたってhueyでは完全に役不足になってしまった。結局、仕事で写真を扱うようになり、ぼく自身の色のとらえ方が変わってきたということなのだろう。

キャリブレーションされたモニターとプリンタは、たしかに理想的な環境だ。しかし、必須ではない。色は数値化できるが、それを感受する人間自身があいまいだ。青信号は青なのか緑なのか。キャリブレーションは、色への興味が必要性を喚起する。

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