今度の新刊「オールドレンズマジック」には、“Cameraholics Beginners”というシリーズ名が付いている。読んで字の如く、入門シリーズというわけだ。いまさらオールドレンズの入門書なんて……と思うかもしれない。中上級者は無論、初級者とてネットで簡単にオールドレンズの情報が得られる時代だ。入門書なんていらないよ、という意見はもっともだろう。
日常が非日常に写るオールドレンズマジック[ホビージャパン][Amazon]
出版社:ホビージャパン
発売し:2022年4月25日
もちろん、端っから普通の入門書を書く気はない。オールドレンズ本ばかり十数年も書いてきたわけだから、どうせなら究極の入門書を目指したい。そこで、導きの書に決めた。初級者からベテランまで全員まとめて、オールドレンズの一番深いところへ一気に導く。そんな禁断の一冊。入門書なのに禁断の書。意味がわからない……。
巷にあふれるオールドレンズ本は様々なレンズが載っている。よく写るもの、写らないもの、変な写りのもの、珠玉混在だ。こうした雑多な感じがオールドレンズのおもしろさでもあるのだが、その一方で、強烈な個性派レンズばかりを集めたら……というイケナイ気持ちが沸き起こる。これまで愛用してきたクセ玉だけを一冊にまとめたら、オールドレンズの一番濃ゆいところを楽しんでもらえるのではないか。最近はいろいろな著者がオールドレンズ本を出しているので、澤村ひとりくらい大いに偏向したオールドレンズ本を出しても怒られないのではないか。ええいままよ、出してしまえ!
そんなこんなで完成したのが「日常が非日常に写るオールドレンズマジック」だ。普段見慣れた光景が、このレンズを通すと異界のように変貌する。そんな個性派オールドレンズだけを集めた。掲載した作例はすべてその異界的なものばかり。フツーの写真は一枚もない。「オールドレンズたまんねえな!」という興奮を味わってほしい。
そしてもうひとつ、本書は解説文にも仕掛けがある。個性派オールドレンズを淡々と解説するのも興醒めなので、今回はすべてエッセイ仕立てにした。もちろん、レンズの最低限のアウトラインは解説しているが、僕がそのレンズをどのように入手したのか、もしくは入手し損ねたのか、普段そのレンズとどう向き合っているのか、などなど個性派レンズと澤村のリアルを書いてみた。カメラ屋さんがよく「レンズは出会いですから」というが、そのわりに実際の出会いについて語られている本はけっして多くない。本書に載っているレンズはほぼすべて、澤村が「これほしい!」と自腹を切り、「これやべえ!」とその写りに興奮したものばかり。読者諸氏をオールドレンズの最深部にお連れする以上、しっかり責任のとれるレンズに厳選した。入門にして最深、異端のスターターブック「オールドレンズマジック」をどうぞよろしくお願いいたします。