和田高広さんの個展「Nippori Portraits」を見てきた。和田高広さんはぼくのオールドレンズの師匠で、オールドレンズライフの表紙撮影を長らくお願いしている。オールドレンズの上でも仕事の上でもお世話になりっぱなしの写真家だ。
初日の日中、作家ご本人から作品についてたくさんの話を伺うことができた。
湿板は像を固着したガラスそのものを鑑賞する。
ガラスのサイズは作品によって様々。この作品は小さいガラスを使っていた。
彼は谷中で湿板寫眞館を開いていて、今回の個展は湿板によるポートレートだ。彼の湿板写真は、明治時代の肖像撮影をモチーフにしている。現代の我々から見ると、明らかに前時代的な写真だ。しかし、写っているのが現代の人であるがゆえに、モダンな空気も伝わってくる。純然たるレトロなのに、レトロフォーチャー的な側面が見え隠れするのだ。さらにややこしいことに、着物や甲冑姿の肖像もあり、一体いつの写真なのか、混乱を来し始める。いまの写真なのか、昔の写真なのか。昔の写真を装うフェイクなのか、昔風の写真で現在を上書きするつもりなのか。和田高広さんの湿板は、まるで写真のオーパーツだ。
鶏卵紙を使ったプリント。湿板から直接焼き付けると言う。
特別に青いステンドガラスの湿板を見せてもらった。ヤバイ、これはほしい。
湿板の出張撮影キットを展示していた。ガラス上の薬品が乾くまでに現像しなくてはならない。

ギャラリーeitoeikoは、東京メトロ東西線神楽坂駅から徒歩5分ほどだ。
会場はアートギャラリーなので、展示作品はすべて購入できる。海外のお客さんが相当注目しているらしく、近代日本の再構築が功を奏しているのだろう。和田高広さんの写真を見ていると、自身の内側にある時間軸が揺らいでいく。オーパーツを見た時のわくわく感にそっくりだ。ご興味あれば、ぜひ!
●和田高広「Nippori Portraits」
会期:2018年7月20日~8月10日
Comments