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January 2018

January 28, 2018

7年分の写真をまとめるだけの簡単なお仕事です、って言ったの誰だよ(誰も言ってないです)

ライターは読み捨てられる記事を書く。けっして卑下しているわけではない。作家が作品を積み上げて行くのに対し、ライターの記事は旬の話題を提供し、その後、短い時間で忘れ去られていく。作家の著作はストック、ライターの記事はフロー。そんな解釈がわかりやすいだろう。これは優劣の問題ではなく、仕事の質のちがいだ。

そうした中、ライター歴二十余年の自分に、めずらしく過去の記事をまとめる仕事が舞い込んだ。2011年からつづく玄光社「オールドレンズ・ライフ」をベースに、オールドレンズのアーカイブ本を作ろうというのだ。7年7冊分の写真を、1冊にまとめる。企画段階で相当なボリュームになることが想像できた。同時に、後に遺るタイプの仕事であることも予想できる。読み捨てられる記事ばかり書いてきただけに、ちょっと緊張感のある本作りだ。

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●オールドレンズ・ベストセレクション[Amazon][玄光社
出版社:玄光社
発売日:2018年2月19日
紙版価格:2,750円+税
電子版価格:2,650円+税

とは言え、写真と原稿はすでにある。イチから撮りはじめるわけではないため、それほど手間ではないだろう。そんな思いは早々に打ち砕かれた。レンズの整理からして途方に暮れる作業だからだ。1冊目のオールドレンズ・ライフから1ページずつめくり、レンズ名と掲載作例数、そして原稿の文字量を書き上げていく。オールドレンズ・ライフ7冊分、ひたすらエクセルと向き合う作業だ。このレンズリストを元に、作例の過不足を調べる。今回、すべてのレンズを見開き2ページで解説することにしたのだが、レンズよっては作例が1点しかないものが多数見受けられた。この足りない作例の補填作業にけっこうな時間を食う。作例1点追加するために、ハードディスクの中を何時間も徘徊するハメになった。

写真素材がそろったところで、今度は掲載順を決めなくてはならない。マウント、レンズ名、メーカー名、どのキーでソートするのが読みやすいか。また検索しやすいか。この掲載順を決める最中、レンズラインアップが気になってきた。オールドレンズ・ライフには未掲載だが、せっかくオールドレンズアーカイブ本を作るなら、ぜひとも載せておきたいレンズが出てきたのだ。ただし、本のページ数には上限がある。レンズを追加するなら、何かを削らなくてはならない。このあたりですっかりカオスな気分だ。

最終的に368ページ、172本掲載に確定した。オールドレンズ・ライフ2.5冊分のボリュームだ。けっこうな分量だが、ここまでくればあとは書くだけ。しかも今回は掲載原稿があるのだから手直しだけでOK、という考えは甘かった。オールドレンズ・ライフは常に何かしらの切り口を用意してオールドレンズを紹介している。たとえば「フルサイズ機で使いたいオールドレンズ」とか、「一度は試したいクセ玉の王様」という具合だ。当然ながら原稿も、特集テーマにそった書き方だ。いわゆるレンズレビューの形態が少ない。こうなると、原稿を流用するより書き下ろした方が早い。ただ、そもそもページ数が多い本なので、書いても書いても書いても書いても終わりが見えない。結局、年末年始返上で原稿を書くことになった。Facebookでぼやいていたのはこのことだ。

作り手が苦労すれば、その分読者メリットが大きくなる。これを信条にこれまで本作りをしてきた。今回の「オールドレンズ・ベストセレクション」はいつになく難産だった。きっとその分読者諸氏には楽しんでもらえると思う。索引やオススメアイコンで検索性を高め、アーカイブ本としての使いやすさを重視した。お目当てのレンズを探しやすいはずだ。

写真の本という側面では、7年という時間の積層に注目するとおもしろいと思う。ひとりのフォトグラファーが、オールドレンズで撮りつづけた7年の積層だ。オールドレンズというフィルターを通じて、様変わりした街、すでに失われたディテール、時間を隔てた同一の被写体、ベースボディによる描写のちがいなど、様々な要素が刻まれている。作例集なので写真表現的な価値があるわけではないが、そうは言ってもあるひと時代を切り取ることはできた気がする。個人的には、オールドレンズを通じたデジタルカメラの変遷という見方が気に入っている。PEN E-P1の焦点距離2倍に振り回された日々、NEX-5にGビオゴンを装着する緊張感、ライカM8のUV/IRフィルターによるシアンかぶりなど、デジタルでオールドレンズを使う道程はけっして平坦なものではなかった。撮影機材を拾い読みすると、ちょっと懐かしい気持ちになるはずだ。

オールドレンズの森は広い。本書に収録した172本で全体像を網羅できるとは思っていない。しかしながら、オールドレンズを楽しむキッカケには十分な数だと自負している。単に昔のレンズというだけではなく、現在のレンズと異なる描写傾向があり、なおかつそれが心地良く感じられるものを選んだ。書籍名の「ベストセレクション」は、そうした意味を込めている。

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January 25, 2018

正月返上の仕事の正体

編集部で色校をチェックしてきた。年末年始返上で書いた新刊、「オールドレンズ・ベストセレクション」の色校だ。十年ほどオールドレンズの本をあれこれ書いてきたが、澤村史上最厚のオールドレンズ本に仕上がった。約370ページ、オールドレンズ収録数172本。既刊のオールドレンズ・ライフをベースに、作例とレンズの追加、解説文の刷新、オススメアイコンや索引の整備など、手間暇かけてじっくりと作り込んだ。詳細はまた発売が近づいたときに改めて。

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●オールドレンズ・ベストセレクション[Amazon][玄光社
出版社:玄光社
発売日:2018年2月19日
紙版価格:2,750円+税
電子版価格:2,650円+税

さて、オールドレンズ・ベストセレクションについては、もうひとつサプライズがある。3月のアレで、まさかな展開が待っている。今日、そのまさかの展開について打ち合わせをしてきたのだが、話を聞いたとき、言葉を失うほどだった。マジかあ、大丈夫なのか3月のアレ(汗)。告知まで少々お待ちを。

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January 22, 2018

レンズかぶりまくりのモデル撮影実習

昨日はオールドレンズパラダイスのモデル撮影実習でした。モデルは梨乃さんにお願いしました。今回のスタジオは西日がうまく入り、オールドレンズ十八番のフレアカットが撮りやすかったです。OLPメンバーの面々もかなり楽しめたのではないでしょうか。フレア大王ジュピター9を持参してよかった(笑)。

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α7II + Jupiter-9 85mmF2

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α7II + Jupiter-9 85mmF2

ジュピター9ってフレア量産機ぐらいに思っていたのですが(笑)、中心部のシャープネスはけっこうイケてますね。順光だとシャープさが際立ちます。ちなみに、この日はジュピター9仲間が3名もいました。ぼくはゼニットマウントのジュピター9、他の2名はM42マウントのMCジュピター9です。さらにはプラナーT* 85mmF1.4が2名、ズミルックス50ミリF1.4が3名と、レンズかぶりまくり。個体差テストとか、できそうですね(笑)。

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旅と中望遠(Kistar the other side)

「Ksitar the other side」を更新しました。暮れから引き続き、Kistar 85mm F1.4のレポートです。今回は旅と中望遠レンズというテーマにしました。中国広東省の世界遺産、開平でのスナップになります。

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●Kistar the other side
第13回 旅と中望遠レンズ

このところ、撮影旅行に中望遠をよく持ち出すのですが、これがなかなか楽しいです。被写体をピンポイントで切り取り、かつ大きくボカせるのがいいですね。描写は本編にてご覧ください。

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January 19, 2018

目下ヘビーローテのストラップは!?

明日発売の日本カメラ2月号にて、ストラップ特集を少しお手伝いしました。ミッションは愛用ストラップを公開せよ、とのこと。このところ気に入っているアレとコレを紹介しています。他の写真家さんの愛用ストラップも載っていて、それぞれ選ぶ視点がちがっておもしろい特集になっています。

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●日本カメラ2018年2月号[日本カメラ社
今が旬のカメラストラップ選び

バイクカスタムの第一歩はバックミラーと言われています。さながらストラップは、カメラカスタムの第一歩ですね。

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January 18, 2018

なぜか香港はズマリット率が高い

カメラガジェット放浪記を更新しました。今回はα7II向けのアクセサリーをいろいろと紹介しています。メインアイテムはSHOTENブランドのL39マウントアダプターなんですが、個人的にはcam-inのα7IIケースの出来に惹かれてます。記事には載せていないのですが、このケースのワインレッドがかなりキテますよ。

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●澤村徹のカメラガジェット放浪記 第8回
デザインリッチなL39アダプター

作例は香港で撮ったズマリットのカットを掲載しています。いまさらなんですが、どうも香港にズマリットを持ち込む率が高いようです。過去4回香港に行ったのですが、3回は持ち込んでますね(笑)。我が家のズマリットはいい感じに曇っていて、いかにもオールドレンズで撮りました、というカットが量産できます。貴重な個体だと思ってます。

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削り出し真鍮フードを買ってみたよ!

metalmickey's cameraに真鍮製スリットフードの記事をアップした。削り出し加工に加え、ノンコートなので地金剥き出し。時間とともに酸化して黒ずんでいく様子が楽しめるというマニアックアイテムだ。

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●metalmickey's camera
The Von Overgaard Gallery E39 Brass 真鍮スリットフードに精度は必要か

届いたものを手にすると、お値段のわりに仕上げが微妙。趣味性の高いカメラアクセサリーは、価格と品質と期待値の関係が難しいなと改めて実感した。詳細はmetalmickey's cameraにてどうぞ。ちなみに、フード自体は気に入っているので、エイジングに期待大だね。

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January 08, 2018

オールドレンズ取っ替え引っ替えの年末年始

長かった年末年始の休みも最終日だ。今年の正月は急ぎの原稿書きがあり、日中は近場をスナップ、夕方から執筆というルーティンだった。普段はこの時期に作例を撮り貯めることが多いのだが、今年は作例撮りはなし。スナップはお気に入りのオールドレンズを連日取っ替え引っ替えして楽しんだ。近場の撮影なので大した写真は撮れていないけど、オールドレンズは正直なところ、どんな被写体、ロケーションでも描写だけで満足できてしまう。お得だよね(笑)。

2017年12月25日 Leica M Typ 240 + Ektar 47mmF2
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2017年12月26日 Leica M Typ 240 + Ektar 47mmF2
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2017年12月27日 Leica M Typ 240 + Summilux 50mmF1.4
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2017年12月29日 α7II + 7artisans 35mmF2
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2017年12月30日 α7II + 7artisans 35mmF2
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2018年1月2日 Leica M8 + Summilux-M 35mmF1.4
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2018年1月3日 Leica M Typ 240 + Summilux-M 35mmF1.4
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2018年1月4日 Leica M Typ 240 + Summicron 35mmF2 RF
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2018年1月5日 α7II + Kistar 85mm F1.4
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2018年1月7日 α7II + Sonnar 50mmF2 Robot Royal
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一部、現行レンズも混じっているけど、オールドレンズみたいなものだから、ね(笑)。

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January 04, 2018

ルミエールの新色ストラップがいい感じですよ

metalmickey's camera、2018年一発目の記事はルミエールのストラップです。年末にカスタムしてもらったライカM240をピックアップした際、試作ストラップを見せてもらいました。これをアルティザン&アーティストのLMB-MCと組み合わせたところ、たまらなくかっこいい。ここ最近、M240を持ち出すときはいつもこの組み合わせです。ストラップの詳細はぜひ記事をご覧ください。こだわりの詰まったアイテムですよ。

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●metalmickey's camera
Lumière Camera 06 COPPER あえてカッパーと名乗る理由

metalmickey's cameraでは今年もカメラアクセサリーを本気モードでレビューしてまいります。ご期待ください。

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January 01, 2018

ライターには明けない夜がある

明けましておめでとうございます。今年はめずらしく、年末年始返上で原稿を書いています。けっこうページ数の多い仕事で、書いても書いても終わりが見えません。「明けない夜はない」などと人は気休めを言いますが、ライターは「明けない夜がある」ことを知っています。

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まだ詳細は公表できないのですが、いつになく分厚い本です。今月の下旬頃には詳しいお話ができると思います。しばしお待ちを。

最近、ワークショップやトークショーなど、講師の依頼をたくさんいただきます。どうやら今年もこの方面でがんばる一年になりそうです。海外でオールドレンズ撮影するTurtlebackオールドレンズワークショップは、第3弾をベトナムのホイアンで開催予定です。その他、オールドレンズファンが楽しめる各種イベントを進めています。ご期待ください。

今年もオールドレンズやカメラドレスアップの話題を色々と提供してまいります。よろしくお付き合いください。

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