黄色いテント屋根のレコード店
駅から徒歩5分ぐらいのところに、黄色いテント屋根のレコード店があった。就職したての頃、給料が出るとこのレコード店でCDを買うのがささやかな楽しみだった。あの当時はThe Smithにハマっていて、月1枚ペースでアルバムを買い足した。The Smithをコンプリートした後はMorrisseyのソロアルバムをそろえた。いま思うと、住宅地のレコード店でMorrisseyのCDが買えるなんて、ちょっとどうかしている。老夫婦が経営する小さなレコード店だったのに、どうしてThe SmithやMorrisseyが買えたのだろう。店内はさすがにCDが主体になっていたとはいえ、アナログレコードやカセットテープもそれなりに店頭に並び、昭和の佇まいを色濃く残したレコード店だった。
このレコード店が店を閉めてどれだけの年数がたったのか、記憶は定かではない。色褪せた黄色いテント屋根と錆びたシャッターは、すでに風景の一部と化していた。隣の薬局も店を閉め、すぐ脇の飲み屋横町もいつしかネオンの灯らない夜が当たり前になった。ゴーストタウンならぬゴーストストリートのできあがりだ。
このゴーストストリートではたくさんの写真を撮らせてもらった。オールドレンズ撮影はどうしても古い被写体を選びがちだ。テスト撮影はもちろん、作例として掲載したことも一度や二度ではない。そんなお世話になりっぱなしだったゴーストストリートも、ついに工事の柵で囲われ、取り壊し作業がはじまった。ここ数年、こうした街の新陳代謝が勢いを増している。ぼくは足立区に住んでいるのだが、最寄り駅の界隈はもちろん、北千住、小菅、西新井、このあたりの建て替えは急加速度的だ。気になった街並みはそのときに撮っておかないと、数ヶ月先にはもう姿を変えている。
今日は久しぶりに「The Queen Is Dead」でも聴こうと思う。
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