【開平ロケハン記01】 高速バスは飲食禁止です
今年の6月、中国広東省の開平を訪れた。Turtlebackオールドレンズ・ワークショップのロケハンだ。開平は世界遺産に指定されていて、望楼を中心に旧市街や村落が広がる。その望楼の建築様式が独特で、西洋とアジアが混在した言わば華洋折衷だ。田んぼの真ん中や密林の中に、そうした望楼がいくつも建っている。開平がフォトジェニックであることは、誰もがうなずくだろう。
錦江里の望楼に登り、隣の望楼と村落を俯瞰する。撮影目線で言うと、当たり前のように望楼から俯瞰撮影できるのは、かなり美味しい。こんなことならティルトシフトアダプターを持ってくればよかった。
自力村の眺望は、絵はがきやパンフレットでたびたび見かける光景だ。田んぼにニョキニョキと生える望楼が、違和感いっぱいでおもしろい。ここでしか撮れないシーンのひとつだ。
錦江里は村落の端が土手になっていて、そこに上ると村落を見渡せる。ちなみに、この村落は人が住んでいて、農耕や養鶏で生計を立てている。このワークショップでは、生活臭たっぷりの村を撮って回る。
香港でTurtlebackの面々と落ち合い、高速バスで開平を目指す。開平は世界遺産に指定されたメジャーな場所だが、アクセスはかなり悪い。香港から高速バスで4~5時間。途中、深圳で出入国の手続きも必要だ。開平の村落は離れて点在しているため、シャトルバスかタクシーで見て回ることになる。撮影目的の場合、最低でも1~2泊は必要だ。中国というお国柄、個人旅行でこれだけの手配をこなすのは大変だろう。正直に言うと、このワークショップの話がなかったら、開平なんて一生訪れなかったと思う。地図を見てもらうとわかるのだが、いい感じに陸の孤島だ。一部の村落はその昔、華僑が世界へ旅立つ交通の要だったようだが、現代の交通網は高速道路が少し離れたところを通っているのみ。旅行者にはきわめて遠い場所だ。
香港から開平直通の高速バスが出ている。今回はこれを利用した。大型バスだが、シート間隔はけっこう狭い。一応、座席指定なのだが、ぶっちゃけ早い者勝ちというローカルルールがたまらない。
深圳で一旦バスを降り、イミグレを通過する。日本人観光客の場合、香港を出国し、中国に入国することなる。中国側で別のバスに乗り換え、開平を目指す。
開平直通便とは言え、4~5時間のバス移動はけっこうこたえる。まず、大きい荷物はトランクに預けられるが、座席に持ち込む荷物はできるだけ小さい方がいい。座席上の棚が狭いので、大型カメラバッグはまず入らない。ライカ2台が入るショルダーバッグがどうにか入る程度だ。ちなみにぼくは中型のバックパックを座席に持ち込み、膝の前に置いて道中をすごした。座席間隔が狭く、あまり快適とは言えない。これはもう、移動と割り切って我慢する。ひとつ断言できるが、我慢した甲斐のある風景がこの後待っている。
この高速バス、実は意外なルールがある。それは飲食禁止なのだ。どうせ建前だけだろうと思いきや、中国人は全員このルールを守っていた。我々日本人は途中で音を上げ、クッキーを皆で分けて食べたり、水分補給したいと、ちょっとはしたなかった。日本では中国人観光客のマナーを云々するニュースが多いが、おそらくマナーを守る勘所が我々と異なるのだろう。マナーは文化であり尺度なので、一方的な見方は禁物だと思った。
移動はノンストップというわけではない。香港を出発して1時間ほどで深圳のイミグレで停車、さらに1時間半ぐらいしてパーキングエリアでトイレ休憩がある。4時間ぶっ通しで座っているわけではない。ただし、トイレ休憩は本当にトイレだけで、10分少々ですぐに出発してしまう。このあたり、観光バスではなく、あくまでも高速バスというわけだ。
高速のパーキングエリアはフードコートやお土産屋があるのだが、共産圏的な閑散とした空気が漂っている。中国に来たなあと実感する。
開平のバスターミナルで高速バスを降りる。実は、うっかりしてひとつ前のバスターミナルで降りてしまった。まちがえた理由はいくつかあるのだが、中国に入るとGoogle Mapsの表示にズレが生じる。正しい地点を示してくれない。これが厄介だ。中国に行くならスマホに百度地图をインストールしておいた方がいい。
ロケハンはぼくも含めて5名。ワゴンタイプのタクシーを手配し、まずはホテルへ移動する。ロケハン中、このクルマで開平の村落を見て回った。
これだけしんどい思いして来たんだ。それなりのものを見せてくれるんだろうな? ホテルにチェックインして荷物を下ろし、そう愚痴る。大丈夫、余裕でお釣りが出た。開平の凄まじさを、このときのぼくはまだ知らない。
●Turtlebackオールドレンズ・ワークショップ第2弾
澤村徹と行く開平ワークショップ
2017年11月23日~26日
お申し込みと詳細はこちらをご覧ください。
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