ここ数日、アナモルフィックレンズと格闘している、というか、もてあそばれている(笑)。スチル派の人はあまり縁が無いと思うが、アナモルフィックレンズとは、すごく端折っていうと、フツーのカメラでワイドスクリーン用の映像を撮る装置だ。とりあえず作例を見てもらうのが手っ取り早いかな。
α7II + Ai Nikkor 50mF1.4S + Prominar Anamorphic-16
トリミングしたわけではなく、素でこのように撮れる。正確に言うと、横方向を圧縮した状態でイメージセンサーに像を投影し、それを画像編集ソフトで横方向に引き延ばす。像の伸縮でワイドスクリーン映像を撮るというのが特長だ。
これが撮って出しの画像だ。これをPhotoshopなどで横方向に伸張すると、ワイド画面になる。ただ、実際に伸張すると補間解像度になってしまうので、ここでは縦方向をつぶしてワイド画面にしている。
アナモルフィックレンズというのは、像を縦長にするコンバージョンレンズだ。ただ、厄介なことに、ピントリングがある。マスターレンズの先にアナモルフィックレンズを装着するので、マスターレンズのピントリング、アナモルフィックレンズのピントリング、ふたつのピントリングを制御しなくてはならない。どちらかを固定して片方のみでピント合わせできたら楽なのだが、残念ながら、双方の調整が必要だ。
双方を調整すると書いたが、具体的には被写体までの距離を、双方のピントリングにセットする。遠景にピント合わせするのであれば、アナモルフィックレンズとマスターレンズ、ともに∞マークにピントリングをセットする。被写体までの距離が3メートルなら、ともに3メートルにセットすればよい。とりあえず、ぼくが入手したプロミナーアナモルフィック16ではそのような結果になった。ちなみに、双方のピントリングを無限遠位置にセットし、ヘリコイドアダプターでピント合わせするという方法も試したが、うまくピント合わせできなかった。アナモルフィックレンズとマスターレンズ、双方のピントリングを同一距離にセットする、というのが原則のようだ。
理屈の上では上記のようになるが、ピントリングの操作はなかなか骨が折れる。要は被写体までの正確な距離がわかれば良いのだが、通常の撮影だと早々測定できるものではない。結局はライブビュー画面を見ながらピントを詰めていく。いろいろ操作を試した結果、ぼくは以下のやり方に落ち着いた。
(1)被写体よりもやや遠目にアナモルフィックレンズのピントリングをセット。
(2)マスターレンズのピントリングを被写体までの距離にざっくりと合わせる。
(3)アナモルフィックレンズのピントリングを近接方向にゆっくりと回す。
(4)マスターレンズのピントリングを左右に動かし、合焦位置を探す。
要はアナモルフィックレンズのピントリングを一定方向にゆっくりと動かし、マスターレンズのピントリングはその前後を探るように動かす。こうすると、どこかしらで合焦位置をつかめる。むろん、ライブビューは拡大表示で使用する。ふたつのピントリングを同時に操作するため、三脚は必須だ。以下、今回の撮影の諸条件を記しておく。
・16mmムービー用のKowa Prominar Anamorphic-16を使用
・マスターレンズは50mmレンズ
・Vid AtlanticのBasic Clamp Kitで装着
・アナモとマスターレンズの間隔はテキトーでOK
・α7IIはAPS-Cモードで撮影
・F4以降で四隅のケラレが目立つ
たかがパノラマのために何故そこまで苦労するのか、と問われると返す言葉もないのだが、アナモルフィックレンズならでの描写がある。そのあたりをスチルで見せていきたいなあというのが狙いだ。結果はまた追々と。