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May 19, 2017

20年前に読みたかった本を書く

「作品づくりが上達するRAW現像読本」の見本誌が届いた。発売から1年以上たった今、なぜ見本誌が届くのか。それは増刷がかかったからだ。増刷がかかると、その都度見本誌が届く。この2度目の見本誌が著者にとってどれほどうれしいか、説明するまでもない。

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奥付を見ると、4版と記してある。これは4回刷ったという意味だ。約1年で3回増刷したことになる。本が売れるのは著者としてうれしい話だが、RAW現像本に関しては、それとは別のうれしさがある。ぼくにとってこの本は、20年越しの因縁の書なのだ。

話は1990年代後半、世がパソコンブームで沸いていた頃に遡る。当時パソコン誌で記事を書いていたぼくは、あるアプリケーションが気に入っていた。「Paint Shop Pro」という画像編集ソフトだ。有り体に言うとナンチャッテフォトショップなのだが、画像編集はちょっとしたカルチャーショックだった。スキャナや30万画素のデジタルカメラで撮った画像を読み込み、明るさや色調をいじる。目の前のディスプレイ上で、自分で撮った写真を鮮やかにしたり明るくしたり、自在にコントロールできることに興奮した。この時代、パソコンは文字通り、魔法の箱だった。

ただし、画像編集の壁にすぐさま突き当たった。明るさとコントラストのちがいがわからない。彩度と色相のちがいもわからない。ディスプレイ上で効果の相違は確認できるのだが、どのような場面でどの機能を使えばよいのか、まったく見当がつかなかった。

画像編集ソフトのマニュアル本を読んでみたものの、搭載機能の使い方が書いてあるだけで、写真仕上げの落とし所については説明していない。プロカメラマンに話をふってみても、当時はまだフィルムが全盛だったこともあり、画像編集ソフトについてのノウハウは大して聞き出せなかった。レタッチャーという職種がクローズアップされたのはこの時期だと記憶しているが、彼らのフィールドはあくまでも商業印刷であり、そのノウハウは一般のパソコンユーザーには縁遠い。そうした中、こう思ったことをよくおぼえている。

誰か、画像編集の極意書を書いてくれ。

当時から画像編集のわかりやすい解説書は存在した。ただし、「この画像に○○機能を適用すると、このように仕上がります」という特定画像に限定された解説が多かった。そこで解説されたノウハウは、別の画像の場合、どう適用すればよいのか。初心者にはそれがわからない。一問一答形式で、「こういう画像はこうしろ!」みたいな画像編集の本が読みたい。頼む、誰か書いてくれ。そう思ったのが20年前の話だ。

「作品づくりが上達するRAW現像読本」を書くとき、20年前の画像編集の極意書が脳裏を過ぎった。元々パソコン誌で仕事をしていたので、アプリケーションの操作解説は慣れた仕事だ。そしてこの10年は写真漬けだったので、画像編集についてそれなりにノウハウの蓄積ができている。20年前に読みたかった本を、自分で書いてみるか。

詰まるところ画像編集は、アプリケーションの操作だけでなく、画像コンディションを分析する力が大切だ。目の前の画像はどのような状態で、それをどういう方向に持っていくのか。そしてそのためにどのような機能を使えばいいのか。アプリの操作と写真の分析、この両面についての掘り下げが重要だ。本書はそんなことを考えながら書き進めた。

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さてこの本は、みなさんにとって画像編集の極意書になれただろうか。4刷りまでいったということは、それなりに評価されたのだと思いたいのだが。

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