ひなびた海の違和感
週末、千葉の富浦に行ってきた。ずいぶん前から撮りに行きたかった海なのだが、夏場は人が多いだろうとずっとタイミングを見計らっていた。夏が終わって「さあ行くぞ」と意気込むと、秋雨前線に祟られ撮りに行けない。結局、十月中旬まで引っ張ってしまった。
富浦は地名の通り、海沿いの小さな町だ。東京から高速バスで一時間半。砂浜が広がり、木造の桟橋が一本、青い海へと伸びる。オフシーズンとは言え、釣り人やカップルが桟橋を占拠する。彼らがいなくなるのを待ち、シャッターを切る。
富浦の町並みはほどよくひなびている。しかしながら、歩くほどに違和感が募る。これまで歩いた海沿いの町は、もっと生活臭が濃厚だった。ひなびた海沿いの町と言えば、真鶴、銚子。どちらも富浦の町とは空気が異なる。
ここの海は漁港じゃない。海水浴場だ。漁村はどれだけ寂れても、生活の場としての密度がある。海水浴場の海は、主役である海水浴客がいないとどこまでも空疎だ。ハイシーズンの空騒ぎ、オフシーズンの空疎感。富浦の街道を覆う空が、やけに広く感じられた。
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