北の達人がやってくる!
二十代の頃、毎年のように北海道に渡った。バイクにシュラフとテントをくくりつけ、目的もなく延々と走る。果てしない空、大地、海、そしてアスファルト。目的地があるわけでも、見たい場所があるわけでもなく、ただ走り続けるだけのツーリングだ。飯塚達央さんの写真を見ると、あの当時を思い出す。
●飯塚達央写真展「白い夜」
2010年4月23日~5月9日
東京水道橋アップフィールドギャラリー
作家ご本人の告知ブログ
といっても、「広大な北海道」という紋切り型の思い出ではない。むしろその対極で、やるせない気持ちがこみ上げてくる。無力感と言い換えてもいい。北海道の自然はあまりに圧倒的で、人間など芥子粒のような存在だ。緑が産業遺跡を食いつぶし、廃線を消し、林道のアスファルトを飲み込む。北海道の自然は外面がいいから、観光客には雄大な姿を見せる。そのくせ迂闊に足を踏み入れると、あきれるほど容赦がない。「厳しい自然」という言葉では言い尽くせない、どこか悪意にも似た顔を見せるのだ。
飯塚達央さんの北海道の写真は、そんな化けの皮を剥いだ北海道が見え隠れする。流氷、ダイヤモンドダスト、壮大な夕陽、どこまでも続く丘陵。どんなにすばらしい景色の写真であっても、「俺はおまえの本当の姿を知っているぞ」という、飯塚達央さんの眼が見える。だからぼくは彼の写真が大好きなのだ。
圧倒的な自然の前で、人は悲しいほどに無力だ。それでも飯塚達央さんは、自然と真摯に対峙する。無力さを背負って闘うとでも言えばよいのか。きっと彼は、とても強い人なのだと思う。
今週末、そんな彼の写真展が東京でスタートする。5月下旬には福岡にも遠征するという。写真展会場では、同名タイトルのフォトブックレットも販売するようだ。初日に見に行けるように、いま突貫工事で原稿書いてます(笑)。北の達人と会えるといいなあ。週末が楽しみです。
Comments
こんばんは。
いつも、楽しくブログを拝見しています。
写真展の会場で澤村さんの姿をお見かけしたのですが
こちらの事は分からないだろうと思い声はかけませんでした。
(トークショーや写真展には、お邪魔した事があるので
お顔は、良く知っているのですが)
飯塚さんのトークショーは、大変楽しかったです。
このブログのおかげで、北の達人を知ることができました。
ありがとうございます。今後も楽しく拝見させてもらいます。
Posted by: hanabusa | May 06, 2010 10:17 PM
hanabusaさん、次こそは気軽にお声がけください! そのひと声がライター魂を奮い立たせます(笑)。ぼくは仕事が詰まっていたのでトークショーを聞き逃してしまったのですが、そうですかあ、楽しかったのかあ。惜しいことをしました。飯塚さんの写真展は作品はもちろん、見せ方、楽しませ方も含め、とてもよい刺激を受けました。ぼくもよい写真展ができるようにがんばらなくては!
Posted by: metalmickey | May 06, 2010 10:31 PM