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June 03, 2009

Super-Elmar-M 18mm F3.8 ASPH. の本気っぷりと盲点

昨年のフォトキナにて、ライカは広角レンズのラインナップを拡充した。そのなかで気になっていたのがSuper-Elmar 18mm F3.8 ASPH.だ。「え、それってマイクロフォーサーズ用?」なんてネガティブな意見もありそうですが(笑)、M8で広角24mmは大きな魅力。幸い新製品としてはコストパフォーマンス重視の価格設定なので、思い切ってみた。

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【この造形美、ホンモノの匂いがする】
ぼくの師匠の言葉に「かっこいいカメラは写りもよい」という格言がある。性能にこだわったプロダクツだからこそ、メーカーは外観にもこだわる。昨今のカメラだと、GR DIGITALが好例だろう。一方、知り合いのクリエイターの格言には「製品の魂は初期型に宿る」というものがあった。初期型製品は、設計者の思想がストレートに反映される。しかし、世代を重ねるごとコスト意識があらわれ、性能も外観も平均化されていく。極端な例だが、ガンダムとジムの関係だ。スーパーエルマー18mmを手にしたとき、こうした先輩諸氏の言葉を思い出した。

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まずツラがまえがいい。上の写真は専用フードと専用UV/IRカットフィルターを付けた姿。鏡胴との一体感が美しい。フードは金属製で、エッジのきいたデザインだ。ここ最近の現行レンズは樹脂製フードが多かっただけに、この造形美に満ちたフードはそそる。テーパー状のルックスはエルマリート28mm第1世代を彷彿させ、色気を感じさせるデザインだ。もし仮にマイクロフォーサーズ向けの18mmだとしたら、ここまで造型にこだわる必要はないだろう。「初モノに魂宿る」が伝わってくる造型だ。

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このスタイルの要となるが、特殊なスクリュー方式だ。フードとUV/IRカットフィルターはともにねじ込み式なのだが、エンド部分に切り欠きがあり、フードが水平位置で止まるようになっている。ライカレンズに多いフック式フードよりも着脱に手間がかかるものの、フードから鏡胴にかけてのシームレスなつらなりは、この特殊スクリュー方式ならではのアドバンテージだ。

【過剰補正でマゼンタドリフトが……】
さて、お待ちかねのサンプルショットに参りましょう。今回は現行レンズなので、6ビットコード検知を「UV/IR」(最下段のみ「入」)にして撮影。RAW撮影したものをLightroomでストレート現像している。絞りはおおむね開放F3.8からF5.6あたり。開け気味でも見事にパンフォーカスのオンパレードだ。

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Leica M8 + Super-Elmar-M 18mm F3.8 ASPH.

超広角だと横位置が多くなりますね(笑)。それはさておき、広角らしい力強いコントラストにハッとする。シャドウがストンと落ちて、ライカRのElmarit-R 35mm F2.8 Type Iに似た印象深い画作りだ。Capture Oneで現像するともう少し大人しいが、それでもメリハリ感はしっかりしている。現行レンズだからということもあるが、広角レンズならではの味付けといえるだろう。反面、シャープネスはやや甘い。ズミルックスのような繊細さはなく、やはり価格相応の線の太さだ。F8まで絞ってもさほど鮮鋭感は変わらず、名称どおりエルマー級のレンズである。ただ線が太いといっても、あくまでも「ライカレンズとしては」という前置きがつく。けっして不満を感じるような太さではない。周辺部の描写はよく整っている。開放でも周辺光量落ちはあまり気にならないし、隅々までていねいな描写だ。18mmという思い切った画角だが、けっして数値だけを誇るレンズではない。洗練された外観に相応しく、まさに“かっこいいレンズはよく写る”である。

このレンズは超広角ということもあり、ひとつ避けて通れない問題がある。M8ユーザーならおなじみのシアンドリフトの問題だ。スーパーエルマー18mmは、トリエルマーをのぞけば最大画角のライカ製単焦点レンズだ。UV/IRカットフィルターを付けると、当然ながらシアンドリフトが発生する。これを解消するために6ビットコードをONにするわけだが、それはそれで別の問題が発生するのだ。

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まず左の画像から。これはUV/IRカットフィルターを付け、レンズ検知で「UV/IR」を選んだ状態だ。シアンドリフトは補正されているが、過剰補正によってマゼンタドリフトしている。決して夕刻の写真ではない。日中、午後2時ごろの写真である。ためしにCapture Oneで「UV/IRジェネリック」を適用してみたが、マゼンタドリフトは緩和されなかった。そこでレンズ検知を「入」で撮影したのが右の画像だ。色温度の問題もあるが、見事にシアンドリフトが残っている。つまり、6ビットコード検知で補正を有効しても、何らかの色かぶりが発生してしまうのだ。

むろん、すべての写真でこのような状態になるわけではない。被写体やシーンによっては、色かぶりが目立たないこともある。実は以前、GR Lens 21mm F3.5にフェイク6ビットコードを描き、レンズ検知「UV/IR」で使っていた。このときも過剰補正でマゼンタドリフトしてしまい、結局はレンズ検知をOFFに……。こうした問題が現行最新レンズで発生してしまうのは惜しまれる。個人的にはレタッチ可能なレベルと判断しているが、高齢のライカユーザーにレタッチを強要するのは酷だろう。

なお、ライカは外付け18mmファインダーを同時発売したが、これは是非ともそろえたいアイテムだ。M8内蔵ファインダーだと撮影画像と画角に開きがあり、撮るたびにプレビューを確認する必要に迫られる。さらにぼくは眼鏡使用なので、四隅をいちいちのぞき込むのが面倒だった。現在は21mmファインダーで代用しているが、これも微妙に異なるわけで……。18mmファインダーはM8用24mm相当のフレームがあるとか。入荷が待ち遠しいです。

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Comments

メタルフードの切り欠きまでトータルでデザインした所有欲をそそるレンズですね。
このフード・・将来はカスタムに使いますよね♪

Posted by: いわっ | June 03, 2009 11:23 AM

あはは、見透かされちゃいましたか(笑)。
でもこのフード、ねじ切りが内側にあるためそのままでは流用できません。何か工夫が必要になりそうです。よいアイディアが浮かべば、カスタムで使ってみたいフードですね。DP1かD-LUX4に似合いそうな気がします。

Posted by: metalmickey | June 03, 2009 11:42 AM

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