Kern Switar 25mm F1.4 は高画質トイカメラみたいだ
DMC-GH1が出て、オリンパスのマイクロフォーサーズ機の足音が聞こえ、いろいろと気もそぞろな今日この頃、以前から気になっていたシネレンズを手に入れた。ケルン社のSwitar 25mm F1.4。16mmフィルムムービーカメラBOLEXの標準レンズだ。スウィターといえば、ALPA用のMacro Switar 50mm F1.9が有名。ただ、元を正せばシネレンズが元祖で、それを35mmフィルムカメラ向けにリファインしたとか。さてこのレンズ、どんな描写を見せてくれるだろう。
【こんなに小さくても憧れスウィター】
Switar 25mm F1.4はeBayで200ドル程度。シネレンズが全般に高騰気味とはいえ、手頃な価格で遊べるレンズだ。BOLEXの標準レンズだったため玉数が多く、事実、BOLEXボディにこのレンズが付いて300~400ドル前後で買える。コストパフォーマンスを考えると、ボディごと買った方がお得かも。10万円オーバーのMacro Switar 26mm F1.1と異なり、値段も見た目もかわいらしい。ただし、日本国内では流通量が少なく、やはりeBayでの購入がメインルートになりそう。この点、ちとハードルが高いレンズだ。
このレンズはとにかく小さい。G1に付けた状態だとピンとこないかもしれないが、比較のためMC FLEKTOGON 35mm F2.4と並べてみた。楽勝でお猪口より小さい。そのくせ、前後レンズキャップはメタル製で、ビンテージガジェットの匂いがプンプンだ。G1使用で難点を挙げると、レンズ指標が下を向いてしまう。これは組み合わせているマウントアダプタにもよるが、スクリュー式マウントなのでやむなしか。
【さながらリッチなトイレンズ!?】
さて、肝心の描写傾向を見ていこう。アルパのマクロスウィターは、ボケ味が美しいと評判のレンズだった。Switar 25mm F1.4は「Macro」の文字こそ付かないが、れっきとしたKern社の標準レンズ。自ずと期待が高まる。最短撮影距離は1フィート強で、近接時のボケ味も楽しめそうだ。ボディはLUMIX DMC-G1を使用。RAW撮影してLightroomでストレート現像している。例によってFlickrにオリジナルサイズをアップしたので、ディティールチェックしたい方はそちらをどうぞ。
完全にふいを突かれた……。スイス製美ボケレンズの源流? いやいや、G1との組み合わせだと凄まじくアグレッシブだ。周縁は流れ、周辺光量がスコンと落ち、そのくせ中央部はしっとりと繊細。G1はRAWでも発色がやや持ち上がるため、オールドレンズといえどもほどよい鮮やかさだ。正直、ケラレはある。だいたいF5.6を超えたあたりから顕著になり、F8まで絞るとレンズの外枠が見えてくる。そうした部分もコミコミで、高性能レンズベビー、デジタルHOLGA !? とにかくエラく楽しい画作りだ。
以前、シネ用アンジェニューの記事で触れたように、16mmフィルムはG1のイメージセンサーよりも小さい。つまりこの画像は、本来BOLEXでの撮影なら写らないエリアまで写っている。要は周縁部の描写はオマケだ。厳密には、外周部をトリミングした画像がスウィター本来の写りになる。ただこのレンズに関しては、周縁込みで楽しんだ方が幸せになれそうな気がする。ローファイとハイファイの同居を、かなり高次元で楽しめるからだ。反面気になったのは、DMC-G1の画質。よいレンズを使うと、ダイナミックレンジの狭さが目立つ。特にハイライトはもう少し粘りがほしい。オリンパスのマイクロフォーサーズ機、画質はどうでしょうね。気になります。