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April 2009

April 28, 2009

シネレンズを LUMIX G1 で試してみた

マイクロフォーサーズは2倍だからねえ……と二の足を踏んでいる人もいるにちがいない。G1にかぎらず一連のフォーサーズシリーズは、画角がレンズの焦点距離2倍相当になってしまう。広角レンズが標準レンズ、標準レンズは中望遠。たしかにこれはツライ。レンズのイメージサークルと撮像素子の大きさ、この点が気になっているなら、シネレンズという選択肢がある。いま流行りのCマウントレンズを、LUMIX DMC-G1で試してみた。

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【大口径が安い……はすでに過去の話】
まず、シネレンズのお勉強からはじめましょうか。なにぶんムービーは付け焼き刃なんで、まちがいを見つけたらすみやかに届け出てくださいね(汗)。シネレンズとは、フィルムムービーカメラ用のレンズを指す。今回俎上にあげるのは、16mmシネカメラ用のレンズだ。スイスのBolex、アメリカのBell and Howellといった16mmシネカメラは、レンズ装着にCマウントを採用していた。これはある種の汎用スクリューマウントで、現在でも防犯カメラ用マウントとして生き残っているようだ。で、何故シネレンズなんぞをG1で遊ぶのかというと、スチルカメラと異なるカルチャーを楽しめるからだ。

これまでCマウントレンズは再利用の術がなく、G1登場以前は二束三文で売られていた。16mmシネカメラ自体が廃れ、かといってデジタルビデオカメラに装着できるわけでもなく、そりゃ二束三文で当然だ。ところがシネレンズは、F0.95とかF1.1とか、大口径レンズが各社から登場している。シネカメラは秒間24コマとか30コマで撮影する。これを暗所撮影でもキープしなくてはならない。大口径レンズのニーズはスチルの比ではなかったはずだ。この手の大口径シネレンズを安く手に入れようと思ったのだが、まあみな考えることは一緒のようだ。G1登場以降、大口径レンズは十万円クラスに高騰。すっかり乗り遅れてしまった(泣)。

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とはいえ、F1.4クラスはまだ手頃な価格なので、とりあえずP. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41を購入してみた。eBayにて送料込みで3万円。アンジェニューのF1.3が3万円というのはお買い得な感じだ。35mmフィルム用で有名なP. Angenieux Paris 35mm F2.5 R1は、エキザクタマウントの並品を4万円半ばで購入した。これがM42マウントだと6~7万、いや10万近い値段になってしまう。こう考えるとシネレンズ、ずいぶんとバリューだ。

【なさそうでなかったオフセットアダプタ】
G1が登場し、死蔵レンズだったCマウントレンズに光明が射した。そもそもCマウントレンズは、なぜ死蔵レンズだったのか? それは極短フランジバックのせいだ。Cマウントのフランジバックは約17.5mm。ライカMマウントの27.8mmよりも1センチも短い。これじゃあ再利用なんて無理だ。そこでマイクロフォーサーズの登場である。マイクロフォーサーズのフランジバックは約20mm。ん、待てよ、まだCマウントの方が短いじゃないか!?

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そう、G1登場でCマウントレンズに光明などといったが、実はマイクロフォーサーズよりもCマウントの方がまだ短いのだ。しかし、マイクロフォーサーズ機はミラーレス。ボディ内側にオフセットすればナンとかなるんじゃねえの? そんな力業でマウントアダプタが誕生した。マウントアダプタをよく見ると、ねじ切りの面がずいぶん奥まっているのがわかるだろう。フランジバックが短く、しかもミラーレス。このマイクロフォーサーズ機の特徴を存分にいかしたマウントアダプタだ。これまで色々なマウントアダプタを使ってきたが、オフセット型ははじめて。そのうち一眼レフ向けアダプタも、ミラーアップ専用なんてモンが出てきたりして。

現在購入可能なCマウント-M4/3マウントアダプタは、日本製、ドイツ製、中国製、台湾製などがある。最近は日本国内でも、海外製Cマウントアダプタを扱うウェブショップが出てきたようだ。ぼくが手に入れたのは台湾製。eBay即決で購入した。P. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41を付けると、レンズ指標が横にきてしまうのがちと悲しい。このレンズとの組み合わせでは無限遠が出ているものの、別のレンズ(また今度紹介しますね)では無限遠が出なかった。まだ立ち上がったばかりのカテゴリなので、正直、発展途上な印象だ。

【イメージサークルを超えて撮る】
さて、普段ならここで作例をご覧いただくのだが、Cマウントレンズはひと筋縄にいかない。イメージサークルの問題が立ちはだかる。冒頭でレンズのイメージサークルと撮像素子の大きさが……と記したが、その問題に触れておこう。

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左写真が撮って出しの状態だ。P. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41は準標準レンズという位置づけで、G1との組み合わせだとがっつりケラレる。標準や望遠ならケラレないようだが、広角寄りのCマウントレンズはイメージサークルが小さく、どうしてもケラレが発生する。マイクロフォーサーズおよびフォーサーズのイメージセンサーは18×13.5mm。16mmフィルムは横幅こそ16mmだが、撮影エリアはさらにひとまわり小さく、およそ10.2×7.4mmだという。拡張規格だともう少し大きく、Super 16mmで12.5×7.4mm、Ultra 16mmだと11.6×7.4mm程度になる。ただ、いずれにしてもマイクロフォーサーズの撮像素子よりも小さいことに変わりはない。

そこでケラレのないエリアをトリミングしたのが、中央と右の写真だ。ケラレの対角を目安にトリミングしているので、16mmシネカメラで撮影する領域はこれよりもさらにひとまわり小さい。こうやってトリミングしてみて、ひとつ気になったことがある。Cマウントレンズ本来の画角はどの程度だろう。16mmシネカメラのレンズ構成は、おおむね以下のようになっている。

10mmレンズ:広角
16mmレンズ:準標準
25mmレンズ:標準
50mmレンズ:中望遠
75mmレンズ:望遠

レンズの焦点距離ごとの位置づけはこれでわかったが、肝心の画角はどの程度なのか。上記の位置づけはあくまでも16mmフィルム撮影時のもの。スチルカメラファンにはいまひとつピンとこない。ネットを徘徊してみたところ、35mmフィルム換算する場合はレンズの焦点距離を3倍すればよいようだ。

10mmレンズ:35mmフィルム換算30mm相当
16mmレンズ:35mmフィルム換算48mm相当
25mmレンズ:35mmフィルム換算75mm相当
50mmレンズ:35mmフィルム換算150mm相当
75mmレンズ:35mmフィルム換算225mm相当

P. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41の場合は、35mmフィルム換算で45mm相当になる。つまり、シネレンズとしては準標準クラスだが、35mm用レンズとしては標準レンズ相当の画角だ。よって本来の撮影エリアは、上のトリミング例よりもずいぶん狭くなるわけだ、レンズ設計者にしてみれば、写るはずのない周縁エリアまで白日の下にさらされ、「こりゃたまらん」という気分かもしれない。

ちなみに、G1で実際に写る画角は、おおむね焦点距離の2倍程度という感じだ。P. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41の場合は30mmレンズと同程度の画角だろう。実際に撮影していても、広角レンズで撮っているような気分だった。「ああ、寄りが足りねえ。一歩前へ!」という感じ。いろいろとややこしいことを書いてきたが、「G1にシネレンズを付けるとどれくらいの画角になるの?」と聞かれたら、「だいたい2倍すればいいんじゃない」と答えたい。厳密に調べたわけではないので、あくまでも目安だけど。

広角系のシネレンズは、G1に付けるとケラレてしまう。とはいえ、シネカメラとマイクロフォーサーズ機は、撮像素子の大きさが比較的近い。35mm用レンズはフルサイズ(35mmフィルムサイズ)で撮るのが理想であるように、シネレンズとG1はバランスのよい組み合わせだ。同様に、ハーフサイズカメラのペンF用レンズとの組み合わせも理にかなっているといえる。むろん、35mm用レンズや中判用レンズより解像感は劣るだろう。ただ、カメラの思想として美しい組み合わせではないだろうか。

【シネレンズメーカーの真の実力を知る】
そんなこんなでやっと作例です。例によってRAW撮影してLightroomで整えたものを掲載している。ケラレの対角を1:1でトリミング。周縁部は劣化しているが、まあそれも味ということで。ちなみに、Filckrにオリジナルサイズでアップしてあります。ピクセル等倍で見たい方はそちらをどうぞ。

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LUMIX DMC-G1 + P. Angenieux Paris 15mm F1.3 R41

浅いボケ味、低コントラスト、淡くて黄色っぽい発色。見事にアンジェニューですね。合焦部の繊細な切れ味も秀逸。アンジェニューはピントの山がつかみづらいレンズだけど、G1ならファインダー上でMFアシストが使える。ええ、アンジェニューなのにジャスピンがバシバシ狙えます。かなり楽しいかも。ひとつ特筆すべきは、開放時のぐるぐるボケがない。35mm用アンジェニューといえばあのぐるぐるボケが名物だけど、シネ用アンジェニューはほとんど気にならない。そもそもアンジェニューはシネレンズメーカーとして有名なので、この写りが本来のクオリティということか。何事も試してみないとわからんもんです。

デジタル一眼レフを使っていると、レンズのイメージサークルを超えて撮ることはない。APS-C機のイメージセンサーは35mmフィルムより小さいし、中判レンズを付けようものならレンズ中央部分しか使わない。シネレンズの場合は、メーカーが品質保証できるイメージサークルどころか、周縁部の本来なら撮影に使わないエリアまで撮ることができる。むろんそれは、劣化領域が付加されるだけなのだが……。しかし最近は、ローファイな描写も味わいとして楽しむ風潮がある。ここがシネレンズのポイントだ。なにしろシネレンズは、アンジェニュー、ケルン、コダック、ツァイスなど、名レンズメーカーが名を連ねる。どれも時代を席巻したメーカーであり、中央部の描写は折り紙つき。つまり、G1にシネレンズを付けて撮ると、1枚の写真にハイファイとローファイが同居するわけだ。トリミングしておいしいところだけ切り出すのもよいが、丸ごと画として楽しんでみてもおもしろいだろう。

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April 17, 2009

パナソニック DMC-G1とオールドレンズの相性

昨年暮れからのLUMIX G1ブーム、すごかったですね。オールドレンズファンが一斉に飛びついて、あんなレンズやこんなレンズや……。「アダプタ入門書を書くくらいだから、当然澤村も買ったんだろ?」という予想に反して、思うところあって静観しておりました。が、最近になってようやく自分なりの遊び方がイメージできるようになり、遅ればせながらG1デビューです。ええ、もうすぐGH1が発売なのに、G1。レンズキットで5万前後。ひと世帯分の定額給付金で買えますよぉ。

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【後ピン、前ピン、カンケーないね】
マイクロフォーサーズのフランジバックは、フォーサーズ規格の約1/2、一般に約20mmと言われている。レンズ交換式カメラのなかできわめて短く、死蔵レンズのレッテルを貼られていたキヤノンFDマウント、一眼レフには装着できなかったライカL/Mマウントのレンズが付く。焦点距離が2倍になってしまうものの、これまで付かなかったレンズが付く……。こりゃたまらんですよ。世のオールドレンズファンが飛びつくのも道理です。でも個人的には、ライカレンズは手持ちのM8で遊べばいいし、キヤノンFDはイチからそろえないといけないし、その他のマウントはEOSに付ければいいし……、とまあG1を買う口実がみつからない。そんなこんなで春になってしまいました。

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で、やっとたどりついた遊び方が上の写真。以前「Opton Sonnar 50mm/f1.5はストーンウォッシュデニムみたいだ」で取り上げた旧Contaxマウントのレンズたちだ。3万円も出して買ったContax-Leica Mマウントアダプタが、目も当てられない後ピンぶり。Jupiter-8M 50mm F2でも試したが、やはり後ピン。広角レンズならアバウトな手動補正でもどうにかなるが、50mmレンズはボケが大きいからけっこうつらい。レンジファインダーカメラのアダプタ遊びは、距離計連動がやはりボトルネックだ。そんなわけで大枚はたいた割に死蔵状態だった。

【MFアシストで開放ジャスピンを狙う】
そこでG1の出番、というわけだ。G1は一眼カメラだから、レンズから入ってきた光(像)をそのまま見ることができる。よって、アダプタが後ピンだろうが前ピンだろうが関係ない。ピントの合ったところでシャッターを切ればよい。これは一眼方式ならではの利点だ。Contax-Leica MとLM-M4/3のアダプタ2枚重ねになるが、とりあえず無限遠は問題なし。しかもG1はファインダー(EVF)をのぞいた状態でMFアシスト(ファインダー像の一部拡大)ができるから、開放ジャスピンがバシバシきまる。もちろん背面液晶のライブビューでも同じことは可能だけど、やはりファインダーをのぞいたままというスタイルがいい。ホールドが安定するし、写真を撮ってるという高揚感がある。三脚使用時はライブビューの方が便利だけど、手持ちメインならEVFのMFアシストは威力絶大だ。開放撮影だけでなく、広角レンズの中近距離撮影でも便利だ。

ただし、EVFは生理的なまどろっこしさがともなう。G1のEVFは明るいし、追従性にもすぐれている。にもかかわらず、「素で被写体を見たい」という欲求を抑えられない。中判カメラのファインダーをのぞくと、吸い込まれそうな気持ちになる。ファインダー像の美しさは、カメラにとって大きな価値だ。しかしEVFは、詰まるところコンソール画面。ぶっちゃけ、ナマで見たくなる。これは機能性とかクオリティとかの問題を超え、おそらく「見る」という行為の原初的な感覚なのだろう。

とまあ、そんなわけで、Opton Sonnarの作例を載せておきます。例によってRAW撮影してLightroomで現像。今回はほぼ無補正です。ピクセル等倍で見たい人は、Flickrにアップした写真をどうぞ。

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LUMIX DMC-G1 + Opton Sonnar 50mm F1.5

Leica M8で撮った写真とくらべると、どこか現代的な味付けになっているような……。ただまあ、ボディがちがえば画作りは異なって当然。一般にオプトンゾナーはさっぱりした色合いと言われているが、その雰囲気はしっかり残っていると思う。開放でフワフワして、F2まで絞ると途端に研ぎ澄まされる豹変ぶりも健在だ。これで焦点距離が、せめて1.5倍前後ならねえ……。G1はおもしろいカメラだけに、無い物ねだりもしたくなります。

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April 03, 2009

GR DIGITAL に Leitz 12501 は付くのか!?

Leitz 12501にすっかりやられてる今日この頃、しかしながら、GR DIGITALのことを忘れたわけじゃない。12501はGR DIGITALに付くのか、装着したらどんな姿になるのか。おそらく読者諸氏(特にGRDカスタマイズファン)も気になっていたはず。もちろん、試してみた。試した結果、今日まで封印していた。ちとほろ苦い、GR DIGITALとLeitz 12501のカスタムレポートです。

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上の写真を見て、「なんだ付くじゃないか。もったいぶるなよ」と思っただろう。そう、たしかに付く。スタイルもわるくない(むしろカッチョイイ)。ケラレだって発生しない。M46システムスリットフードに次ぐベストカスタムの予感……。いやが上にも期待は高まる。

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バックビューもなかなかのイケメンだ。ここではコシナ角型ファインダーと組み合わせているが、コシナ28mm丸型とも相性がよい。期待はますます高まっていく。GR DIGITALに12501を装着する際は、まず37-49mmステップアップリングと49mm保護フィルターを装着。ステップアップリング外周にビニックスレザーなら1周、パーマセルテープを2~3周巻いておく。これでキュッと装着できる。D-LUX4のときと同様、完全にロックできるわけではないが、実用可能な程度には固定できる。

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スタイルよし、ケラレなし、装着も無加工。こう書くと理想的なのだが、どうだろうこのサイドビュー、微妙に鏡胴(ていうかフードアダプタ)が寸足らず。一見したとき、「短足!?」と思ってしまった。また、12501が光沢ブラックであるのに対し、GR DIGITALのボディカラーは黒というよりもダークグレー。MS明朝体のテキストに、1ラインだけJS平成明朝体を混ぜてしまったような違和感。まあ、カラーについてはまだしも、短足はいかんだろ短足は……。

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しからば、ワイコンGW-1にかぶせたらどうか!? それを試したのが上の写真だ。そのままでは若干ゆるいので、ワイコン外周にパーマセルテープを2周巻いている。これでキュキュッとはまる。鏡胴がグッとせり出し、迫力が出た。しかもワイコンのカットオフがElmarit 28mm F2.8のクビレを彷彿させる。これでカッチョイイ21mmファインダーを見つけてくれば完成か? と思いきや、このスタイル、実はケラレまくりなのだ。3:2はもちろん、1:1でも画像底辺にフードのフチが写り込んでしまう。嗚呼、もったいねえ。セクシークビレちゃんなのに。

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かっこいいのにねえ……。気に入ってるフードだけに、まだ未練タラタラです。

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April 02, 2009

Leitz 12501 に誘われて Elmarit 28mm F2.8

このところ、D-LUX4にLeitz 12501を付けて持ち歩くのが気に入っている。このカスタムは日本カメラやデジタルカメラマガジンといった紙媒体、そしてブログ記事でも紹介したが、たくさんの方から「どうやって付けるのさ?」と問い合わせをいただいた。やっぱみんなも12501、好きなのね(笑)。で、このレンズフード、オリジナルの姿が気になりませんか? そもそもどんなレンズに装着するのか。オリジナルボディとの組み合わせはどんな姿なのか。ハイ、こんな姿になります。

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【どうしてもクビレちゃんがいい!】
Leitz 12501は、ライカM型の広角レンズ用フードだ。Super-Angulon 21mm F3.4とElmarit 28mm F2.8に対応している。スーパーアンギュロンは後玉が飛び出しているため、Leica M8に装着すると露出計が正常動作しないとか。そんなわけで、エルマリート28mm F2.8に的を絞って安い出物を物色。半年ほどかけて手に入れたのがこいつだ。

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Elmarit 28mm F2.8は1965年に初代(第1世代)が登場し、以後、現行モデルの第4世代までつづくロングセラーレンズだ。各世代ごとに熱心なファンがいて、なかでも人気高なのが第1世代。ぼくは使ったことがないので描写についてはコメントを控えるが、そのフォルムが強烈にかっこいい。鏡胴の根元が斜めにカットオフしてあり、フードを付けるとレンズがくびれているように見える。ウエストシェイプしたレンズ。こりゃたまらん、官能的です(笑)。この腰のくびれは第1世代だけのアドバンテージ。第2世代以降は寸胴デザインにシフトしていく。ただし、第1世代はスーパーアンギュロンと同様、後玉が飛び出している。ライカM8に装着すると露出計が正常動作しない。ツワモノはレンズを加工して使っているようだけど、ぼくにはそんな知識も技術もなく、泣く泣く第1世代は購入候補から外すことにした。

でもさ、あんたのエルマリート、腰くびれてるじゃん!? そう、手持ちのエルマリートは第1世代ではないが、ウエストシェイプしている。これがポイント。いろいろと調べてみたところ、第2世代前期型の極初期は第1世代の鏡胴を流用していたらしい。つまり、見た目は第1世代、中身は第2世代というわけだ。もし、ライカ検定3級なんてテストがあったら、ひんぱんに出題されそう(笑)。ちなみに、第1世代は6群9枚、第2世代はコストダウンのためか6群8枚になっている。

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エルマリート28mm第2世代前期型は、レンズ先端にねじ切りがない。フィルターはシリーズ7を用いる。でも、UV/IRカットフィルターは1万円前後と高価。極力出費を抑えたいので、46mm径のUV/IRカットフィルターを流用することにした。フィルターを逆さまにしてフードに装着。そのままレンズにかぶせればOKだ。若干遊びがあるため、携行中はカチャカチャと音がする。でもまあ、実用には問題なしだ。

【浅い被写界深度の謎】
さてこのクビレちゃん、どんな写りをするのだろう。エルマリート28mm第2世代の定評というのは、中近距離は階調がスムーズだけど、無限遠はいただけないというもの。うむ、それほど評価は高くない……。さらに手持ちのレンズ、前玉が傷だらけなのだ。どうやら第2世代のエルマリート28mmは、ガラスがやわらかく傷つきやすいらしい。この前玉傷だらけが写りに影響するかのか否か、この点も気になる。まいどながら、作例はRAW撮りしてLightroomで現像したものを掲載している。UV/IRカットフィルターを装着し、6bitコードはオフ。周縁はバリッとシアンドリフトしております。

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Leica M8 + Elmarit 28mm F2.8 2nd

発色とコントラストは典型的なオールドライカレンズという雰囲気。あっさりとした色合いで、コントラストも穏やかだ。合焦部は繊細なシャープさがあり、シャドウを上手に拾ってくれる。このあたりもオールドライカレンズらしい描写だと思う。無限遠撮影は凡庸な印象。決して甘いわけではなく、十分にシャープ。ただ、ライカレンズとして突出した印象は薄い。もちろん相対的にみると、とてもよく写るレンズなんだけど。

とはいえ、ひとつ目を惹く表現があった。それは開放での無限遠撮影だ。中段右の写真(歩道橋から撮った遠景)に注目してほしい。気持ちミニチュア写真のような雰囲気。手前のバスはフワッとぼけ、その後ろのクルマにはピンがきている。開放撮影とはいえ、広角なのに被写界深度浅くね!? そのわりにF5.6まで絞れば隅々までカチッとよく写る。単に奥行きのある構図だったからという気もするが、このレンズ、開放だといい感じににじみをともなう。そのせいで本来よりも被写界深度が浅く感じられ、ミニチュア写真っぽく見えるのかもしれない。もちろん、前玉の傷が影響しているという可能性も捨てきれないけど……。

これまで広角28mmは、Lマウント改造したG Biogon T* 28mm F2.8を使っていた。このレンズは開放無限遠でもカリカリシャープ。ただ、あまりに切れ味が良すぎて、人物撮影で使いづらかった。ていうか、カミさん撮ったらシワが目立つと怒られた……。今回手に入れたエルマリート28mm第2世代は、ちょうど対照的なレンズといえそうだ。たとえ開放のにじみが前玉の傷のせいであったにせよ、緩急メリハリのきいた絵筆がそろったことになる。ライカレンズといえども40年以上前のもの。オリジナルの描写を云々するよりも、現物主義で自分の撮影スタイルにどう組み込むかを考えるべきか。少なくとも、精神衛生上はその方が楽しそう。

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これはサービスショット。なんかもう、まるでミニチュアですね。ていうか、フードがレンズ購入のトリガーになるなんて、だいぶ末期症状かも……。

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