HOYA R72 と B+W 092 で赤外線フィルター対決!
赤外線フィルターといえばケンコー、ではなくて、HOYA R72が鉄板だ。日本国内では販売されていないが、カメラファンなら名称くらいは聞いたことがあるだろう。海外ではド定番の赤外線フィルターである。しかし、B+W 092という赤外線フィルターも負けず劣らず鉄板だ。Flickrの掲示板を見ていると、「HOYA R72とB+W 092、いったいどっちがいいの!?」なんて議論が交わされている。そんなわけで、HOYA R72とB+W 092、どっちがいいのか考えてみよう! ってそのまんまだな(汗)。
【透過帯域が異なる定番赤外フィルター】
フィルター対決の前に、サクッと赤外線についておさらいしておこう。一般に、760nm以上の光線を赤外線と呼んでいる。可視光線と電波の中間にある、電磁波全般を指しているそうだ。詳しいことは、理系のお友達に聞いてみてください。ここではとりあえず、760nm以上が赤外線とおぼえておけばOKです。
左写真の上がHOYA R72、その下はノンブランドのHOYA R72相当品だ。ともに720nm以上の光線を通す、らしい。いやもうだって、赤外線は非可視光線でしょ、見えないんだから正直よくわからんですよ(笑)。ただまあ、「72」と刻印してあるくらいだし、720nm以上を通すんでしょう。で、純然たる赤外線は760nm以上だから、HOYA R72は正確にいうと、近赤外線透過フィルターだ。ちょびっと可視光線(赤外のお隣の光線だから赤)が混じってくる。でも、実際に光にかざしてたところでフィルターの向こうは見えない。真っ暗け。可視光線をほぼカットしているのがわかる。
で、右写真がB+W 092。日本ではなじみが薄いが、海外ではポピュラーな赤外線フィルターだ。ネットで透過域を調べてみたところ、650nm以上とか680nm以上とか、どうも諸説ある様子。ただ、HOYA R72よりも可視光線を通しているのはまちがいないようだ。実際に光にかざすと、かすかにフィルターの向こう側が見える。正確にはDark Redフィルターというべきか。ここでおぼえておいてほしいのは、「B+W 092はHOYA R72よりも可視光線を通す」という点。そのため一部では、Enhanced Color IR Filterなんて呼ぶこともある。ともにポピュラーな赤外線フィルターだが、透過光の帯域が異なる。可視光線の透過具合にちがいがある。さてこのちがい、写りにあらわれるのだろうか。
【色情報の量が一目瞭然】
そんなわけで、いよいよ赤外線フィルター対決だ。HOYA R72とB+W 092の画像を、撮って出しからポストプロセスの順を追って掲載していく。具体的には、撮って出し→ホワイトバランス調整→カラースワッピング→フィニッシュの順だ。左側の写真がHOYA R72、右側の写真がB+W 092である。
まずは撮って出し。ともに紫っぽい奇っ怪な画像だが、B+W 092(右側)の方が一見して鮮やかなのがわかる。B+W 092はHOYA R72よりも可視光線を多く透過するため、色情報が豊富なのだろう。
ホワイトバランスを調整すると、木々の緑は青っぽくなり、空や海の青は褐色になる。どちらも同系色だが、やはりB+W 092の方が高彩度だ。
カラースワッピングを行った画像だ。HOYA R72(左側)は木々が白っぽくなり、強烈なスノー効果(樹木の緑が白くなること)を満喫できる。B+W 092は木々にオレンジがのり、いわゆる赤外写真というよりは、カラー赤外もどきといった様相だ。
彩度を整えてフィニッシュ。HOYA R72は白い木々と青い空が特長的だ。典型的なデジタル赤外線写真に仕上がっている。ただし、色情報が乏しいため、これ以上の加工は難しい。一方、B+W 092は一見すると普通のカラー写真のように見えるが、もっと木々の多いサンプルだと、オレンジの樹木が鬱蒼として独特の世界を作り上げてくれる。また、色情報が豊富に残っているので、ここからもう一段、加工を施すことも可能だ。
こうしてHOYA R72とB+W 092を比較してみると、可視光線の透過量のちがいが手に取るようにわかる。ひと口に赤外線フィルターといっても、可視光線の混ざり具体が仕上がりに大きく影響するわけだ。スノー効果はHOYA R72の方が顕著で、より赤外らしい写真が撮れる。ただし、逆光や半逆光だとスノー効果が減退して、メリハリのない写真になってしまうので要注意。その点B+W 092は、光の状態を問わず、適度に色情報が乗ってくる。そのため逆光や半逆光でも画になりやすい。手軽にデジタル赤外を楽しむならB+W 092、光を読んで本気で取り組むならHOYA R72といったところか。
とまあ、2種類の赤外線フィルターを比較してみたが、いったいこの情報、誰のためになるんだろう……。ときどき、暗闇とキャッチボールしている気分になります