False color がデジタル赤外線写真の真骨頂
相も変わらずコツコツと、Leica M8で赤外線写真を撮ってます。巷でも、DP1やGR DIGITALといったコンパクト機、ケンコー製赤外線フィルターを付けたデジイチで撮る人が増えている様子。撮影画像をモノクロ化すると、葉っぱは白く、空は黒く、たしかに往年の赤外線写真らしい写真になる。でも単なるモノクロ化だと、試して終わり……という人も案外多いのでは!? デジタル赤外線写真の醍醐味は、やはりFalse colorに尽きます。
False colorというのは、直訳すると偽色。撮影画像本来の色ではなく、偽の色を割り当てるというレタッチ技法だ。昨今のデジタル赤外線写真は、おおむねFalse color的な処理が施してある。上の写真もそのFalse colorの作例だ。葉っぱはベージュがかった白、空は青。まるで樹氷の写真みたいに見える。モノクロ赤外も雰囲気満点だけど、せっかくデジタルで撮ってるなら、False colorを試してほしい。というわけで、その遊び方をサクッとまとめてみることにした。
【ホワイトバランスで遊ぶ】
まずは手軽な遊び方から紹介していこう。今回掲載した画像は、Leica M8にB+W 092を装着して撮ったもの。HOYA R72よりも若干可視光線を多く通すため、画像に色情報が残りやすい。色情報が多いということは、それだけ色をイジくりやすいわけで、False colorで遊ぶときはB+W 092がハンドリングしやすいのだ。
左が撮って出しの画像。真っ赤というか紫というかマゼンタというか、ホント、この画を見るとひるむよね(笑)。そりゃ、モノクロ化まっしぐらというのもよくわかります。でもご安心を。案外カンタンにこの状況から脱出できるのだ。右の画像はホワイトバランスを調整したもの。色温度を2000、色かぶりを緑方面に思いっきり引っ張る。この画像で注目してほしいのは、空が褐色、葉っぱが青になっている点。そう、立派なツートーンになっているわけだ。
上の状態から、色相と彩度とチョロチョロとイジってみた。それほど手間をかけずに、違和感たっぷり(!?)の赤外写真が完成。この程度の作業なら、レタッチビギナーでも試してみようという気になるのでは!? 特にRAW現像ソフトだと作業しやすいと思う。
【秘技!カラースワッピング】
いやいや、こんな色じゃなくて、樹氷みたいにしたいんだよ! わかっちょります。冒頭に挙げた写真は、ホワイトバランス調整だけではできない。色相や彩度をイジってもたどりつけない。あの写真は、カラースワッピングという処理を施している。カラースワッピングとは文字通り、色の差し替え、入れ替えだ。具体的には、Photoshopを使ってカラーチャンネルごとに色を入れ替えていく。どのチャンネルを何色にするかはお好み次第。やり方も人によって千差万別なのだが、一例としてLife Pixelのチュートリアルを見てもらうのが手っ取り早い。ここではカラースワッピングによってどう色合いが変化するかを追いかけてみよう。
左が撮って出しの画像。右が前述のやり方でホワイトバランスを整えたものだ。葉っぱが青みを帯び、空は褐色。このように、きれいにツートーンになっている画像がカラースワッピング向きだ。デジタル赤外線写真業界では、右写真のような状態を「きれいに分離した」と呼んでいる……というのはウソで、ぼくが勝手にそういってるだけ(汗)。逆光下で撮ってしまうと、葉っぱに青みが載らず、全体に褐色になってしまう。ホワイトバランス調整できれいにツートーン化できないと、狙い通りにカラースワッピングできないので要注意だ。
ホワイトバランス調整後の画像を、Life Pixelのチュートリアルに従ってカラースワッピングしたのが上の画像だ。葉っぱと空の色が入れ替わっている。空は青く、葉っぱは褐色(ベージュがかった白)。このまま完成としてもいいし、カラーバランスを整えて好みの落とし所を探してもいい。
カラースワッピング後もいくつか定番処理がある。左の画像は彩度を全体に持ち上げ、空をより青く仕上げたもの。空が青いと「リアル」に見える。でも葉っぱは白っぽいから「アンリアル」の世界。現実と非現実の同居がおもしろい。右は色相を操作して、葉っぱのベージュを赤にシフトしてみた。モチーフはフィルム時代のカラー赤外。真っ向勝負で非現実、という潔さが妙味か。
デジタル赤外線写真はふたつのファクターから成り立っている。ひとつはスノー効果による特異なトーン。葉っぱが白く、空が黒く写る異質なトーンだ。そしてもうひとつは、赤、紫、マゼンタといった近赤外域のカラー情報。デジタル赤外線写真のおもしろさは、このわずかなカラー情報から、出来うるかぎりの色を絞り出す点にある。そのアプローチがホワイトバランス調整であり、カラースワッピングなのだ。特異なトーンはモノクロ化で楽しめる。でもせっかくデジタルで撮っているのだから、近赤外域のカラー情報で遊んでみてはどうだろう。
でも、やりすぎはイカンと思う