ピクトラン局紙とColorMunki
写真展「Echo of Light」の作品を印刷するにあたり、コスモスインターナショナルのピクトラン局紙を使うことにした。モノクロ印刷では黒の締まり、中間調の表現がすばらしいと評判の高級インクジェット用紙だ。ただ、ウチのプリンタはエプソンのPX-5600。残念ながらICCプロファイルがない(まあPX-5600に限らず、ピクトランはプロファイルが皆無に等しい状態のようだけど)。なかなか歯ごたえのあるインクジェット紙だったので、軽くレポートしてみます。
【ピクトランで写真が絵画風に】
当初、今回の写真展はクリスピアでさらっと出すつもりだった。ウチのパソコン環境はモニターキャリブレーション済みなので、エプソン純正のICCプロファイルでおおむね狙い通りのプリントが得られる。ただ、出展作品は例の赤外線写真。いっしょに写真展をやる和田高広さんから「マットか半光沢の方が雰囲気が合うのでは」とアドバイスをいただき、急遽ピクトラン局紙で挑むことにした。
ピクトラン局紙はキヤノンの染料プリンタを念頭においているようだが、エプソンの顔料プリンタでもちゃんと印刷できる。PX-5600でカラー写真を印刷した場合、フォトブラックを使うと水彩画風の仕上がりだ。黒の締まりが弱く、発色も抑えめになる。大判印刷だと明らかにパンチ不足だが、ポストカードサイズならこれはこれでアリ、という印象だった。片やマットブラックに切り替えると、油彩画風の濃厚なタッチになる。なお、印刷設定についてはコスモスインターナショナルの解説PDFを参照してほしい。
【日和りましたプリンタキャリブレーション】
今回はA3ノビに大きく印刷するため、マットブラックを使った濃厚プリントでいくことにした。マットブラック使用時のプリントコンディションは、まず彩度がどぎつくなる。そしてコントラストも上がる。さらにシャドウがドバッとつぶれる。こうした傾向を踏まえると、データを中間域に集め、彩度はいじらずプリントしてちょうどいい感じだ。
はじめからピクトランでいくつもりならこれで問題ないが、実はクリスピア向けに補正してしまったので、これをピクトランで出力するとあまりにビビッドで子供っぽい表現になってしまう。補正済み画像のテイストを残しつつ、油彩画風の濃厚タッチをいかすのはけっこう難しい。だいぶがんばったんです。試し刷りのピクトランが山積みです。紙代だけで3万使いました。もう限界です……。
というわけで、ColorMunki Photoを買いました。
かつてプリンタキャリブレーションといえば、eye-oneシリーズの20数万円もするセットが必要だった。その点ColorMunkiは7万円ちょい。位置づけとしては簡易プリンタキャリブレーションになるようだが、個人ユーザーならこれで十分ではないかと。電塾さんのレビューを参考にしながら作業を進め、完成したICCプロファイルでピクトランに出力。いやあ、お見事。元画の雰囲気を忠実にトレースしつつ、ピクトランらしい濃厚なプリントに仕上がった。プリンタキャリブレーションの目的は正確な色再現だけど、キャリブレーション後もちゃんとピクトランの風合いが感じられる。
ピクトランとColorMunkiを組み合わせると、紙質のおもしろさがより引き立つ。プリントの存在感とでもいうべきだろうか。ただ、なんだろう、この後ろめたさ。RAW現像で粘らず機械に日和った罪悪感……。ちょっと複雑な気分だったりしますが、濃厚赤外線写真は写真展会場でご覧ください。
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