先日、ホームページ「metalmickey.jp」をリニューアルしたばかりだというのに、またまたリニューアルすることになった。ホームページ制作はデジタルステージの「BiND for WebLiFE*」を使っているのだが、これがバージョン2になったのだ。肯定派と否定派のまっぷたつに分かれるBiND2、その問題点を整理してみたい。
まずぼくのスタンスを明確にしておくと、ぼくはBiND2の擁護派だ。PhotoCinemaとIDもプライベートで使っているので、digitalstageシンパと考えてもらっていい。BiND2はデザインリッチなテンプレートを多数搭載。HTMLやCSS、Ajaxの知識がなくても、最新ウェブ技術を取り入れたホームページが簡単に作成できる。にも関わらず、「BiND2はとてもよいソフトだけど、人には薦めづらい」と感じている。PhotoCinemaとIDは無条件で人に薦められる。でもBiND2はダメだ。これは薦められない。その理由を述べていこう。
【見た目通りに作れない違和感】
薦められない理由その1、方言があまりにキツイ。総じてアプリケーションというものは、お約束のインターフェイスというものがある。マニュアルを読まなくても、画面を見ただけである程度使いこなせ、ちょっとこだわったことをするときだけヘルプファイルや取説で操作方法を確認するものだ。しかし、BiND2は独自のインターフェイスを採用しているため、取っかかりがつかめないのだ。
これがBiND2のメイン画面だ。ウェブページをブロックと呼ばれるエリアで区切り、このブロック単位で編集を行う。ブロックのレイアウトは、「ページレイアウト」からテンプレートを選択。その上でブロックの追加削除を行う。こう書くとどうということはないが、WYSIWYG(懐かしい!)非対応という点に留意してほしい。ドラッグ&ドロップでブロックを追加したり、マウス操作で移動やサイズ調整ができるのではない。あくまでも定められたサイズのブロックを並べることしかできないのだ。
デジタルステージのソフトはテンプレートの質にことのほかこだわりがある。おそらくブロックのサイズや配置を限定しているのも、「この見せ方がベスト!」という思いが強いのだろう。ただ、ワープロで当たり前のようにできることが、BiND2ではできない。ここに違和感をおぼえる。
ブロック内のコンテンツはテンプレートを選んで入力していく。このブロックテンプレートは実に豊富で、しかも実用性の高いレイアウトが多い。この点は「さすがはデジタルステージ」と感心する部分だ。しかしこのあと、我々は大きな壁にぶち当たる。
これはブロックエディタと呼ばれるブロックの内容を編集する画面だ。実際のウェブページとは似ても似つかぬ画面。この編集画面から、仕上がりを想像するのは難しい。
バージョン2になり、見出し関係はマーキングが付くようになった。それでもやはりWYSIWYGとかけ離れた画面であることには変わりない。ホームページ作成ソフトはワープロと異なるから、WYSIWYGの実現は意外とハードルが高いのだろう。しかし、このブロックエディタがメイン画面の右パネルとして組み込まれていたらどうか。パネル上で変更を加え、適用ボタンを押すとプレビューエリアで確認できるという流れ。これならずいぶんとスマートに作業できそうだ。BiND2のみならず、他社ホームページ作成ソフトやブログツールも含め、編集画面とプレビュー画面の関係性、これをいかにシームレスにするかが重要な問題だ。
【マイナートラブル続出の不安定さ】
お薦めできない理由その2、それは動作の安定性という問題だ。マック版は安定しているそうなのだが、なぜかウィンドウズ版は大小さまざまなトラブルが多い。BiND2の初期バージョンでは、「適用」ボタンを押すとデータ反映までに10秒以上待たされるというノンキな仕様だった。これはバージョン2.11のアップデートで劇的に改善されたが、いうまでもなく、改善後のパフォーマンスこそが市販アプリケーション本来の姿である。
BiND2には「SiGN」というロゴ作成ツールが付属する。写真にテキストを載せて画像化するミニソフトだ。手軽にロゴが作れる便利なツールなのだが、どうしたわけかぼくの環境では、SiGNを起動すると下のようなエラーが発生する。
「続行」を数回クリックすると無事SiGNが起動するのだが、精神衛生上よろしくない。また、このエラーも出たり出なかったりで、さてはて何が原因なのか……。そういえば、ウチの環境では当初、BiND2をインストールすることすらできなかった。インストールを進めると、インストーラーが途中で落ちてしまうのだ。この問題はすでにデジタルステージのFAQに対処策が掲載されているが、楽しみにしていたソフトがインストールすらできず、当時はずいぶんがっかりした。
そういえば、ブロックの編集がいっさいできなくなるというトラブルも。このときは結局、ページをイチから作り直した。順次アップデートで改善されてはいるものの、BiND2は市販アプリケーションのクオリティを満たしていない。デザインリッチなテンプレートという着想はすばらしい。そしてテンプレートそのものもたしかにすぐれている。しかし、アプリケーションとして最低限の動作が確保できていない。ぼくは十数年にわたってソフトウェアレビューを書いてきたが、「ベータ版がそのまま売られている」という印象は拭えない。当然ながら、ベータ版クオリティのソフトを人に薦めることはできない。
【パッケージ版の意義とは!?】
ダメ押しでお薦めできない理由その3、それはパッケージ販売の意味が実感できない点だ。前述のとおり、このソフトはデザインリッチなテンプレートを多数搭載している。しかし、搭載こそしているが、収録されていないのだ。
これサイトシアターというサイト管理兼テンプレート選択画面だ。ここでは新規サイトを作るためにテンプレートを選択している。左上の「未インストール」という赤字が読み取れるだろうか。このように表示されたテンプレートは、デジタルステージのホームページからダウンロードして追加インストールすることになる。サイトテンプレートの多くは、こうしてダウンロード&インストールが必要だ。ちなみに、BiND2はパッケージ版のみの販売で、ダウンロード販売は行っていない。収録データ容量が多くなるから……というのがメーカーの言い分だろうが、パッケージ版に必要なデータが含まれていないというのは問題だ。
【それでも使う理由は成果物のパフォーマンス】
我ながら驚くほど不満点を並べてしまった……。これだけ文句を書き連ねておいてナンだが、それでもぼくはこのソフトを使う。理由はひとつ、「投入する労力に対し、成果物の完成度が極めて高い」からだ。ぼくはウェブプログラミングの知識を持ち合わせていない。デザインやレイアウトについても特別な勉強をしたことがない。それでもBiND2を使えば、あたかもウェブデザイナーが作ったようなホームページに仕上げられる。「できないことができる」というのはすばらしい。
BiND2のテンプレートは、現在のウェブトレンドをしっかり踏襲している。最上部にメニューバーを展開し、ワイド画角の大きな写真、ブログライクなサイドバー付きのコンテンツエリアへとつづく。階層が深くなるときは、中段にもう一本メニューバーを加え、閲覧者を迷わせないように配慮。自分がサイト内のどこにいるのか、把握しやすいホームページが作成できる。こうしたウェブデザインは、多くのオフィシャルなサイトで採用されているものだ。専門知識のないパーソナルユーザーが、プロと同じステージで勝負できる。
いまBiND2に必要なのは、強固なプラットフォームに成長することだ。マイナートラブルを一掃し、器として完成度を高めること。その上でトレンドを踏まえたテンプレートを随時発売していけば、多くのユーザーに支持され、息の長いソフトになるのではないか。そうなれば、ぼくも胸を張って人に薦められると思う。
●参考URL
BiND2で作り直したmetalmickey.jp