Tessar 50mm/f2.8 は革巻きがいい!?
ウェブカメラがテッサーを搭載するこのご時世、わざわざ金を出してまでマウントアダプタで遊ぶこともない……。そう思っていたのだが、どうしても無視できなかった。なにしろTessarといえば、歴代のカメラで採用されてきた標準レンズの雄。しかも手持ちのフィルムカメラを調べてみたら、Rolleiflex 3.5B、Werra、Exaktaなど、Tessar付きカメラがぞろぞろ出てきた。もしかして、オレってテッサーフリーク!? だったらデジタル一眼レフで遊べるテッサーもほしいよね。というわけで、M42マウントのTessar 50mm/f2.8を手に入れた。
【革巻きオールドテッサーを探して】
テッサーといえばCONTAX用のTessar T* 45mm/f2.8が有名だ。鷹の目テッサーなんて呼ばれるほどの鋭い描写をするらしい。総じてテッサーの評判はハイコントラスト。ただ、Rolleiflex 3.5Bで撮った写真の印象が強いせいか、ぼくはテッサーのことを温かみのあるレンズだと思い込んでいる。Exakta VX1000で撮ったテッサーの写真もややアンバーで、同じく温かみのある表現だった。おそらく、黒鏡胴の新しめのテッサーなら、世間の評判どおり、ハイコントラストな描写をするのだろう。でも、個人的に「テッサー=温かみ」という先入観があるので、今回はその先入観を優先することにした。
オールドテッサーならやさしい感じに写るはず。そんな思い込みで、古いテッサーを物色。一年ほどかけてゼブラ柄よりひと世代前、グッタペルカ仕様のテッサー、いわば革巻きテッサーを手に入れた。写真の右側がM42マウントの革巻きテッサー。左側はExaktaマウントのゼブラ柄テッサーだ。Exaktaマウントのイエナ製レンズは、テッサーにかぎらずマウントアダプタが装着できない。プレビューボタン背面の凸部が、マウントアダプタに干渉してしまうのだ。一年かけて革巻きテッサーを探したのは、ゼブラ柄を二本も持つのはシャク、という変なプライドも影響している。まあ、リベンジみたいなもんか!?
【オールドでもハイコントラストは健在】
さて、肝心の描写力はどうだろう。以下の写真はEOS 20DでRAW撮りして、Lightroomで軽く補正したものだ。JPEG撮って出しよりも穏やかなテイストで現像している。
端的にいうと、フツーによく写る。ほどよくアンバーに傾き、コントラストはオールドレンズらしい穏やかな調子。バッキバキのハイコントラストに写ったりしない。あえてオールドテッサーを選んで正解だったようだ。ただし、コントラストが弱いというわけではない。ハイライトがスッと立ち上がり、ダイナミックレンジの広さを感じさせる。噴水の水しぶきを見ると、そのハイライトの様子がよくわかる。また、逆光下でのコントラスト低下も最小限に抑えられ、ゼブラ柄以前のシングルコーティングレンズとしては大健闘。FLEKTOGON 20mm/f4は逆光下だとパステル画みたいに貧弱な写りなので、このあたりの描写は「テッサー=ハイコントラスト」という世間の評判と一致してくる。発色はイエナ製だけあって芯がある。右上の写真は開放撮影なのだが、さすがに開放では細部がにじみ、よくもわるくも「標準レンズだなあ」という印象。よく写る。しかし、緻密さや繊細さを感じさせる描写ではない。
Tessarは普及価格帯標準レンズだ。マウントアダプタ遊びにかぎっていえば、真っ先に買うべきレンズではない。MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の方が使い勝手にすぐれているし、インパクトという点ではMC Sonnar 135mm/f3.5が圧勝。ライカRマウントやY/Cマウントまで視野にいれると、ますます優先順位は落ちてしまう。わざわざ買うほどのレンズではない。それでもわざわざ買うつもりなら、ゼブラ柄とか革巻きとか、鏡胴デザインで選んでみるとおもしろいだろう。ボディ付けたときのサイズ感はいわゆるパンケーキレンズ。ハンドリングしやすいし、買って損のないレンズではある。積極的にオススメはしないけど、相談を受けたら薦めてしまう。テッサーにかぎらず、普及価格帯標準レンズって、そういうスタンスのものかも!?
●追記
Tessar 50mm/f2.8の作例はmetalmickey's montageにもアップしてあります。ただし、加工物中心ですが……。
Comments