Pancolar 50mm/f2 の切れ味
Carl Zeiss JenaのPancolarは何と読めばいいのだろう。パンカラーか、パンコラか。ネイティブだとパンコラに近い発音だけど、「colar」が「color」に似てるから国内ではパンカラーにしようか、なんてやり取りがあったかどうかは知らないが、読み方すらよくわからぬまま、M42マウントのPancolar 50mm/f2を手に入れた。
【今回も革巻きにしました】
実はこのレンズに関して、デリケートな噂を聞いたことがある。一部の世代に日本製OEMがまじっているというのだ。ちょっと調べてみたが、コトの真偽はわからずじまい。「OEMだからダメ」というのもブランド志向丸出しでナンだし、かといってオールドレンズ遊びなんて所詮はそういう些末なところにこだわってこそおもしろいわけだし、さあてどうしたもんか……と悩んだ挙げ句、限りなく初期の玉ならオリジナルだろうという推論にたどりついた。黒鏡胴はパス、ゼブラ柄もパス。先般の記事で取り上げたTessar 50mm/f2.8同様、革巻き鏡胴である。
このレンズはずいぶん造りが凝っている。グッタペルカ巻きはもちろん、被写界深度目盛がゼブラ柄を兼ねているのだ。しかも被写界深度を示す指標はメカニカル式。絞りリングをまわすとカチコチと音を立てて動くのだ。ハッセルブラッドのCレンズなどにも用いられているスタイルだが、このギミックは“男の子”の心をわしづかみにする。写りなんてどうでもいい! これを付けてるだけで幸せ。なんて気持ちになるからいい加減なモンだ。
【侮れない開放のシャープネス】
Pancolar 55mm/f1.4は放射能レンズとして有名だ。でも50mm/f2はこれといった逸話がない。あえていえば、「Flexon 50mm/f2がこっそりと改名してPancolar 50mm/f2になった」という未確認情報がある程度。OEM疑惑といい学歴詐称といい、あまりよい話のないレンズである。よって写りにまったくもって期待はしていないのだが、ファーストインプレッションはひと言、すごく黄色いです。
EOS 20Dは若干アンバーになるカメラだが、そうはいってもEOSだけあってAWBは優秀な部類。それでこの黄色っぷりは恐れ入る。もちろん光の条件によりけりだが、まちがってもクールなレンズではない。ウォームな描写だ。ただこの点については、RAW撮りしてホワイトバランスを調整すればいいだけのこと。とりあえずは作例をドバッと並べてみよう。撮影はすべてEOS 20DのRAW撮り。Lightroomで通常レベルの補正を行い、現像したものだ。
ホワイトバランスは積極的に調整しているが、それ以外はほぼそのままの状態で現像した。ゼブラ柄以前のオールドレンズということは、シングルコーティングだ。その割りに発色とコントラストは健闘している。しかもボケ味がなめらかで、ライカRマウントのSummicron-R 50mm/f2 type Iのような洗練を感じさせる写りだ。なかでも意表を突かれたのが以下のカットである。
開放撮りでこのシャープさ。そして破綻のないボケ味。これまでイエナ製レンズを使って開放がキレイと感じたことはなかったが、これなら積極的に開放で撮りたくなる。漠然とTessarと同格のレンズと思い込んでいたが、明らかに格上の写りだ。まあ、価格もTessarの倍だし、当然といえば当然なわけだけど。
上のカットは、今回の試写で一番気に入っているもの。シャドウが粘りつつも眠くならず、ほどよいコントラストが感じられる。ちょい格上標準レンズの誉れ、といったところか。描写に期待しないで買ったレンズなので、なにやらすごくお得な気分(笑)。この夏のお散歩スナップはこいつにがんばってもらいます。
●追記
Pancolar 50mm/f2の作例はmetalmickey's montageに随時追加していきます。ご興味があればご覧ください。
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