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July 2008

July 16, 2008

Pancolar 50mm/f2 の切れ味

Carl Zeiss JenaのPancolarは何と読めばいいのだろう。パンカラーか、パンコラか。ネイティブだとパンコラに近い発音だけど、「colar」が「color」に似てるから国内ではパンカラーにしようか、なんてやり取りがあったかどうかは知らないが、読み方すらよくわからぬまま、M42マウントのPancolar 50mm/f2を手に入れた。

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【今回も革巻きにしました】
実はこのレンズに関して、デリケートな噂を聞いたことがある。一部の世代に日本製OEMがまじっているというのだ。ちょっと調べてみたが、コトの真偽はわからずじまい。「OEMだからダメ」というのもブランド志向丸出しでナンだし、かといってオールドレンズ遊びなんて所詮はそういう些末なところにこだわってこそおもしろいわけだし、さあてどうしたもんか……と悩んだ挙げ句、限りなく初期の玉ならオリジナルだろうという推論にたどりついた。黒鏡胴はパス、ゼブラ柄もパス。先般の記事で取り上げたTessar 50mm/f2.8同様、革巻き鏡胴である。

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このレンズはずいぶん造りが凝っている。グッタペルカ巻きはもちろん、被写界深度目盛がゼブラ柄を兼ねているのだ。しかも被写界深度を示す指標はメカニカル式。絞りリングをまわすとカチコチと音を立てて動くのだ。ハッセルブラッドのCレンズなどにも用いられているスタイルだが、このギミックは“男の子”の心をわしづかみにする。写りなんてどうでもいい! これを付けてるだけで幸せ。なんて気持ちになるからいい加減なモンだ。

【侮れない開放のシャープネス】
Pancolar 55mm/f1.4は放射能レンズとして有名だ。でも50mm/f2はこれといった逸話がない。あえていえば、「Flexon 50mm/f2がこっそりと改名してPancolar 50mm/f2になった」という未確認情報がある程度。OEM疑惑といい学歴詐称といい、あまりよい話のないレンズである。よって写りにまったくもって期待はしていないのだが、ファーストインプレッションはひと言、すごく黄色いです。

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EOS 20D + Pancolar 50mm/f2

EOS 20Dは若干アンバーになるカメラだが、そうはいってもEOSだけあってAWBは優秀な部類。それでこの黄色っぷりは恐れ入る。もちろん光の条件によりけりだが、まちがってもクールなレンズではない。ウォームな描写だ。ただこの点については、RAW撮りしてホワイトバランスを調整すればいいだけのこと。とりあえずは作例をドバッと並べてみよう。撮影はすべてEOS 20DのRAW撮り。Lightroomで通常レベルの補正を行い、現像したものだ。

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EOS 20D + Pancolar 50mm/f2

ホワイトバランスは積極的に調整しているが、それ以外はほぼそのままの状態で現像した。ゼブラ柄以前のオールドレンズということは、シングルコーティングだ。その割りに発色とコントラストは健闘している。しかもボケ味がなめらかで、ライカRマウントのSummicron-R 50mm/f2 type Iのような洗練を感じさせる写りだ。なかでも意表を突かれたのが以下のカットである。

Lm_mg_3961
EOS 20D + Pancolar 50mm/f2

開放撮りでこのシャープさ。そして破綻のないボケ味。これまでイエナ製レンズを使って開放がキレイと感じたことはなかったが、これなら積極的に開放で撮りたくなる。漠然とTessarと同格のレンズと思い込んでいたが、明らかに格上の写りだ。まあ、価格もTessarの倍だし、当然といえば当然なわけだけど。

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EOS 20D + Pancolar 50mm/f2

上のカットは、今回の試写で一番気に入っているもの。シャドウが粘りつつも眠くならず、ほどよいコントラストが感じられる。ちょい格上標準レンズの誉れ、といったところか。描写に期待しないで買ったレンズなので、なにやらすごくお得な気分(笑)。この夏のお散歩スナップはこいつにがんばってもらいます。

●追記
Pancolar 50mm/f2の作例はmetalmickey's montageに随時追加していきます。ご興味があればご覧ください。

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July 07, 2008

Tessar 50mm/f2.8 は革巻きがいい!?

ウェブカメラがテッサーを搭載するこのご時世、わざわざ金を出してまでマウントアダプタで遊ぶこともない……。そう思っていたのだが、どうしても無視できなかった。なにしろTessarといえば、歴代のカメラで採用されてきた標準レンズの雄。しかも手持ちのフィルムカメラを調べてみたら、Rolleiflex 3.5B、Werra、Exaktaなど、Tessar付きカメラがぞろぞろ出てきた。もしかして、オレってテッサーフリーク!? だったらデジタル一眼レフで遊べるテッサーもほしいよね。というわけで、M42マウントTessar 50mm/f2.8を手に入れた。

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【革巻きオールドテッサーを探して】
テッサーといえばCONTAX用のTessar T* 45mm/f2.8が有名だ。鷹の目テッサーなんて呼ばれるほどの鋭い描写をするらしい。総じてテッサーの評判はハイコントラスト。ただ、Rolleiflex 3.5Bで撮った写真の印象が強いせいか、ぼくはテッサーのことを温かみのあるレンズだと思い込んでいる。Exakta VX1000で撮ったテッサーの写真もややアンバーで、同じく温かみのある表現だった。おそらく、黒鏡胴の新しめのテッサーなら、世間の評判どおり、ハイコントラストな描写をするのだろう。でも、個人的に「テッサー=温かみ」という先入観があるので、今回はその先入観を優先することにした。

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オールドテッサーならやさしい感じに写るはず。そんな思い込みで、古いテッサーを物色。一年ほどかけてゼブラ柄よりひと世代前、グッタペルカ仕様のテッサー、いわば革巻きテッサーを手に入れた。写真の右側がM42マウントの革巻きテッサー。左側はExaktaマウントのゼブラ柄テッサーだ。Exaktaマウントのイエナ製レンズは、テッサーにかぎらずマウントアダプタが装着できない。プレビューボタン背面の凸部が、マウントアダプタに干渉してしまうのだ。一年かけて革巻きテッサーを探したのは、ゼブラ柄を二本も持つのはシャク、という変なプライドも影響している。まあ、リベンジみたいなもんか!?

【オールドでもハイコントラストは健在】
さて、肝心の描写力はどうだろう。以下の写真はEOS 20DでRAW撮りして、Lightroomで軽く補正したものだ。JPEG撮って出しよりも穏やかなテイストで現像している。

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Lm_mg_3876_2 Lm_mg_3848_2
EOS 20D + Tessar 50mm/f2.8

端的にいうと、フツーによく写る。ほどよくアンバーに傾き、コントラストはオールドレンズらしい穏やかな調子。バッキバキのハイコントラストに写ったりしない。あえてオールドテッサーを選んで正解だったようだ。ただし、コントラストが弱いというわけではない。ハイライトがスッと立ち上がり、ダイナミックレンジの広さを感じさせる。噴水の水しぶきを見ると、そのハイライトの様子がよくわかる。また、逆光下でのコントラスト低下も最小限に抑えられ、ゼブラ柄以前のシングルコーティングレンズとしては大健闘。FLEKTOGON 20mm/f4は逆光下だとパステル画みたいに貧弱な写りなので、このあたりの描写は「テッサー=ハイコントラスト」という世間の評判と一致してくる。発色はイエナ製だけあって芯がある。右上の写真は開放撮影なのだが、さすがに開放では細部がにじみ、よくもわるくも「標準レンズだなあ」という印象。よく写る。しかし、緻密さや繊細さを感じさせる描写ではない。

Tessarは普及価格帯標準レンズだ。マウントアダプタ遊びにかぎっていえば、真っ先に買うべきレンズではない。MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の方が使い勝手にすぐれているし、インパクトという点ではMC Sonnar 135mm/f3.5が圧勝。ライカRマウントやY/Cマウントまで視野にいれると、ますます優先順位は落ちてしまう。わざわざ買うほどのレンズではない。それでもわざわざ買うつもりなら、ゼブラ柄とか革巻きとか、鏡胴デザインで選んでみるとおもしろいだろう。ボディ付けたときのサイズ感はいわゆるパンケーキレンズ。ハンドリングしやすいし、買って損のないレンズではある。積極的にオススメはしないけど、相談を受けたら薦めてしまう。テッサーにかぎらず、普及価格帯標準レンズって、そういうスタンスのものかも!?

●追記
Tessar 50mm/f2.8の作例はmetalmickey's montageにもアップしてあります。ただし、加工物中心ですが……。

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