Leica M8 距離計連動アダプタの連動っぷり
Leica M8を買ってから、ずっと気になっているアイテムがある。ハンザがかつて販売していた距離計連動アダプタ。いまや生産中止の幻のアダプタである(ちと大袈裟)。アダプタファンのぼくにとってぜひとも試してみたいアイテムだが、生産中止では致し方ない。と思っていたら、レモン社にフツーに売ってました……。そんなわけで、ライカR用の距離計連動アダプタのレポートです。
【距離計連動とは何を意味するのか】
このブログのお客さんは非ライカユーザーの方が多いので、距離計連動のどのへんが熱いのか、まずはそこからざっくり解説してみよう。レンジファインダーカメラというのは距離計をカメラ内に内蔵している。レンズのヘリコイドを回転させると、その動きに合わせてカメラ内の距離計が動作。ファインダー内で二重像が合致したところで回転を止めれば、ジャスピンの写真が撮れる。要は、レンズのヘリコイドが距離計の操作デバイスになっているわけだ。
で、マウントアダプタの話。カメラを問わずマウントアダプタとは、フランジバック差を埋めるスペーサーにすぎない。電子的にも機械的も、カメラとレンズの連携は一切断たれてしまう。そもそも規格ちがいのボディとレンズなのだから、当然といえば当然の話だ。まあこのあたりは、一眼レフでオールドレンズ三昧の人たちには釈迦に説法だろう。ただし、M型ライカの場合はちと事情が異なるのだ。
M型ライカは距離計を内蔵しているが、その距離計を操作するデバイスはレンズのヘリコイドが兼ねている。しかし、非Mマウントレンズをアダプタ経由で装着した場合、レンズのヘリコイドを動かしても距離計は連動しない。マウントアダプタが単なる中間リングだと、ピント合わせができないわけだ。いよいよ核心に近づいてきた。そう、距離計連動マウントアダプタとは、非Mマウントレンズでも距離計操作が行えるのだ。
【単体距離計で十分かも!?】
とまあ、期待に胸膨らませてハンザ製ライカM-ライカR距離計連動マウントアダプタを購入したわけだが、待ちかまえていたのは理想と現実のギャップというか、無知のみがなせる思い込みというか、切ない現実だった。とりあえずは下の写真を見てほしい。
ボディの上にあるのが距離計連動アダプタ。その上がライカRマウントレンズだ。アダプタにはヘリコイドがあり、ここを回転させるとカメラ内の距離計を操作できる。うむ、操作できるのだが、別にレンズのヘリコイドと連動しているわけではない。アダプタのヘリコイドでピントを合わせ、レンズのヘリコイドをアダプタと同じ数値(距離)にセット。別にレンズとボディが連携するわけではなく、アダプタがボディ内距離計の操作デバイスとして機能するというだけの話だ。つまりそれは、単体距離計の数値をレンズ側に写し取ればOKなのでは!? 距離計連動の連動とは、あくまでもボディ内距離計が使えますよ、という意味だ。
正直不満はあるが、ミニマムスタイルで非Mマウントレンズを使えるのがメリットか。また、M型ライカの高精度な距離計を使えるというのもアドバンテージだろう。ただし、実際のピント合わせ(レンズのヘリコイド調節)はアバウトにならざるを得ないので、開放撮影や近距離は厳しいものがある。
Leica M8 + Elmarit-R 35mm/f2.8 type I
実際に撮影してみると、やはり絞り込んでしまう。接写は距離計が使えず完全目測になるため、寄り切れないストレスも小さくない。画質については、M8ならではというテイストは感じられなかった。どうしてもM8でアダプタ遊びをしたいなら、距離計非連動アダプタと単体距離計の組み合わせで十分かも。個人的な感触としては、わざわざ距離計連動のデッドストックを探すまでもないなあ、と。これまで生産中止になった理由は「高くて売れないから」と思っていたのだが、操作性の絶対的アドバンテージが見いだしづらいというのが実状かもしれない。どうもアダプタ遊びは、デジタル一眼レフに歩があるようだ。