Lightroom 2.0 beta のおいしい機能たち
ソフトウェアのバージョンアップは、単なる便利機能の追加ではない。最先端コンピューティングへの対応という使命がある。Lightroom 2.0 betaの場合、64bit OSとマルチディスプレイのサポートがそれに相当するが、ウム、この手の話は難しい……(汗)。というわけで、今回も引きつづき、便利機能の紹介で参りましょう。
【演出としての周辺光量調整】
今回のバージョンアップはメジャーバージョンアップ(一桁数字のアップ)だけあって、かなり大幅な機能強化が行われている。このあたり、リリースノート(PDF)を読んでもらえばいいのだが、まあ面倒ですよね、英語だし(笑)。そんなわけで、ぼくが個人的に気に入った機能、気になった機能を取り上げてみたい。まず最初は周辺光量調整の強化だ。
周辺光量調整とは、ありていにいうと四隅を暗くしたり明るくする機能。本来は周辺光量落ちした写真の四隅を明るくするためのもので、れっきとした補正機能だった。ところが現状はというと、あえて周辺光量落ちを加えて、レトロ感の演出に使われている。補正というよりも加工に近い使われ方だ。その加工で便利なのが新機能のPost-Cropだ。こいつのおかげで、トリミングした後でも適切に周辺光量調整ができるようになった。
左はオリジナル画像。四隅までクッキリ明るく写っている。こいつに(よしゃあいいのに)周辺光量落ちを加えたのが、右の画像だ。これは従来機能の周辺光量調整を使っている。
左は周辺光量落ちさせた写真をトリミングしたもの。周辺光量落ちの名残で右下が暗くなっているものの、ナンノコッチャな写真だ。結局これまでの周辺光量調整は、オリジナルサイズにしか適用できなかった。トリミングすると周辺光量落ちではなく、一部分光量落ちになってしまうのだ。まあ、“写真作業工程”的には正しい姿なんだけど。
で、右の写真はPost-Cropで周辺光量落ちを演出したものだ。トリミング後の画像に対して、ちゃんと四隅の明暗が調整できている。覆い焼き/焼き込みと合わせ、明暗コントロールはずいぶんとやりやすくなるはずだ。少なくとも、これでまたひとつ、Photoshop CS3と連携させる理由が減った(笑)。
むろん、LightroomのせいでPhotoshop CS3の売り上げが落ちては大変だ。Photoshopとの連携もバリッと強化している。ライブラリモジュールの右クリックメニューからスマートオブジェクト、パノラマ合成、HDR処理などに引き渡すことが可能。いろいろと盛りだくさんだ。ただ、根本的なところでの連携というよりは、どうも付け焼き刃的な印象を受ける。最終的にLightroomとPhotoshop CS3がどのような関係になっていくのか、それが見えない。便利になってケチをつけるのはナンですが、「ああ、こうやって小出しにしていくのかなあ……」なんて。昔のパソコン業界は、ソフト、ハードを問わず、新機能を大盤振る舞いしてメーカーとユーザーがともに幸せを共有したものだけど、最近は段階的にアドオンしてバージョンアップ料で稼ぐケースを見かける。こういうのをビジネスモデルというのかもしれない。それならせめて、計画性を感じさせるものであってほしい。
【地味な機能にメーカーの良心が見える】
地味だけど、確実に便利な機能がいくつか加わった。それらをダイジェスト風にお伝えしよう。ひとつ目は現像と印刷時のシャープ処理。SILKYPIXでは以前から実装済みの機能で(おかげで現像処理がちと重いけど)、やっとLightroomも追いついたという感じ。
この画面は現像時のシャープ処理だ。適応量だけでなく、スクリーン、マット紙、光沢紙と最終的な出力メディアに最適化してくれるようだ。このあたりはSILKYPIXのアンシャープマスクよりわかりやすい。
現像時の書き出しフォルダ指定も機能強化している(って、あまりに地味ですが……)。現像したJPEGやTIFFをオリジナル画像のフォルダ下にサブフォルダを作って保存、という人はけっこう多いと思う。ただ、従来バージョンはいちいちオリジナル画像のあるフォルダを指定する必要があり、これが些末ながらも面倒だった。バージョン2.0では「Same folder as source photo」が選べるので、あとはサブフォルダ名を入力するだけでOK。フォルダ選択画面で「+」マークをプチプチとクリックしなくて済む。こういう地味な機能強化ほど、「ユーザーフィードバックが活かされてるんだなあ」なんて心にしみます。
【ライブラリモジュールは大幅機能アップ】
数あるRAW現像ソフトのなかからLightroomを選ぶ理由のひとつに、高性能なデータベース機能――ライブラリモジュールの存在がある。こいつがいい感じに機能アップしてきた。
まずインターフェイスを改良し、フィルターバーなるものが上ペインに加わった。フラグやスターでの絞り込みはもちろん、メタデータを一覧表示して読み込み済みの写真を徹底的に絞り込める。従来左ペインに羅列していたものをよりアクセスしやすくした機能で、データベースらしさが一気に高まった。
検索性アップの決め手がスマートコレクション。条件を指定しておくと、常に該当データを一括検出してくれる機能だ。iTunesのスマートプレイリストと似たような機能と考えればいい。こうした機能があらわれたことを考えると、運用していく上でスターやフラグの付け方、キーワード(タグ)の入力が重要性を帯びてくる。画像整理ではなく、データ管理という意識が大切だ。
【どうやって使う!? ピクチャーパッケージ】
プリントモジュールはピクチャーパッケージという新機能が加わった。プリントレイアウトを自在に作れるというスグレモノなのだが、いざ使ってみると微妙な違和感がある。違和感というか、どう使っていいものか戸惑っているというべきか。
これがピクチャーパッケージで作成したレイアウトだ。従来のレイアウト作成は列と行の数を指定し、セルサイズを決めていくというもの。それに対しピクチャーパッケージは、任意のサイズのセルを自由に配置でき、しかも配置してからマウスのドラッグでサイズ変更が可能。とても自由度の高いレイアウト機能だ。
こんな具合にサイズごとにセルのボタンがあり、各ボタンをクリックすると台紙に枠が追加されていく。フリーレイアウト機能として重宝しそうだが、ひとつ難点がある。実はこの機能、1枚の写真しか読み込めない。つまり、どれだけたくさん枠を作っても、ロードできるのは1枚の写真だけ。もしかしたら業務用途でこうしたニーズがあるのかもしれないが、個人ユースだとどう使うべきか活用の糸口が見つからない。誰かアドバイスをください。
なお、プリントモジュールでJPEG書き出しが可能になった。これまでレイアウトしたものは常にプリンタで印刷するしかなかったが、今後はJPEG画像としてはき出せる。使い方は簡単で、出力先で「JPEG File」を選ぶだけ。右の画面がこのJEPG書き出しで出力したものだ。写真はプリントしてナンボというけれど、ぼく個人に限って言えば、ウェブで公開したりメールでやり取りする機会の方が多い。レイアウトして画像としてはき出せるのはありがたい。
2回に分けてLightroom 2.0 betaのバージョンアップポイントを見てきた。試用した印象としては、レタッチとRAW現像の境界、これが従来バージョンから大きく変化した。大量にさばくならLightroom、完成度を高めるならPhotoshop。この位置づけこそ変わらないが、もはやRAW現像ソフトをJPEG変換ツールと考える人はいないだろう。写真に表情を付け、意志を持たせるツールとして、着実なブラッシュアップを感じることができた。
余談だが、個人的に気になるのは今後のSILKYPIXの動向だ。LightroomとApertureはタメを張るが、SILKYPIXだけ取り残されている。そろそろド派手なメジャーバージョンアップをかまして、ぼくらを驚かせてほしい。
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