Google Sky ウェブ版が失ったもの
Google Skyのウェブバージョンがリリースされた。Google Earthの一機能として追加されたSkyモードが、ついに独立コンテンツとして登場だ。ブラウザで閲覧できて便利な反面、心に巣食うこの虚しさ……。Google Skyを使っていると、少々複雑な気持ちでなってしまう。
【Mapsのインターフェイスで使いやすく】
Google Skyウェブ版は、機能的にGoogle EarthのSkyモードを踏襲し、インターフェイスはGoogle Mapsに準じている。日本語ローカライズも徹底し(一部翻訳ソフト調だけど……)、誰もが気軽に使える宇宙ビューワだ。また、KMLファイルの読み込み(当該ファイルへのリンクで実現)にも対応。ベテランユーザーからGoogle EarthのSkyモードを知らない人まで、ユーザースキルを問わず色々と楽しめるはずだ。まずはGoogle Skyウェブ版で何ができるのか、それを見ていこう。
画面下段にサムネイル上のコンテンツメニューがある。ここをクリックすると、天体写真、星座線、太陽系の惑星の現在位置などが閲覧可能。これがGoogle Skyのメインコンテンツだ。
上の画面はハッブルショーケースを表示したところ。下段に天体写真のサムネイルが並び、それぞれをクリックすると瞬間ワープして衛星写真を大きく表示してくれる。Google Earthではレイヤーパネルからこうした操作を行っていたが、それよりもインターフェイスとして洗練された印象を受ける。
画面の右上のボタンをクリックすると、赤外線、マイクロ波、ラムゼイ天体地図をオーバーレイ表示できる。それぞれ透明度を調節するスライドバーがあり、天体写真との相関関係を確認できるのが特長だ。
検索窓を備えているところは、さすがというかやはりというか、Googleサービスの「らしさ」が感じられる。キーワードを入力すると検索結果をプルダウンメニューで表示。クリックしたものがメイン画面に大きくあらわれる。
画面左上にはGoogle Moon/Marsのリンクがあり、Googleの宇宙コンテンツがずいぶんと充実してきたことを実感する。特にGoogle Moonはアポロ計画の資料を多数収録しており、一見の価値がある。
一通り使ってみた感触としては、Google Mapsのインターフェイスを拝借したことにより、ずいぶんとコンテンツにアクセスしやすくなった。その一方で、天体写真ビューワという性格がより明確になった気もする。つまりGoogle Skyウェブ版は、Mitakaのような宇宙シミュレータではなく、天体写真を見るためのビューワサービスというわけだ。ただ、この点はGoogle EarthのSkyモードと同様で、いまさら落胆するほどでもない。実はもっと大きな喪失感が待ちかまえているからだ。
【ウェブ版が失った3Dフィーリング】
Google EarthのSkyモードも天体写真ビューワにちがいなかったが、それでも3Dの天球に写真を敷き詰めることで、宇宙空間を再現していた。むろんそれはMitakaのようなシミュレーションではないものの、移動時のモーションに慣性をつけ、宇宙遊泳気分を巧みに演出していたと思う。しかしGoogle Skyウェブ版は、とめどなく平面的だ。Google Mapsのインターフェイスを用いたのが原因と思われるが、移動時に3D空間を感じることはできない。この喪失感は、致命的だと思う。
Google Earthがブレイクしたのは、世界中の衛星写真が見られるからだろうか。もちろん世界中を俯瞰する感覚はとても斬新だったし、地理データベースとしての有効性も先進的だった。しかしそれ以上に、マウスで地球体を動かし、世界の至るところにダイブするようなフィーリング――3D遊泳がおもしろかったのではないか。慣性力をともなうパンやズーミングは、たしかにマウス操作の演出にすぎない。ただ、そのちょっとした演出が、お堅くなりがちな地勢ソフトを、エンターテイメントに昇華していた。残念なことにGoogle Skyウェブ版は、それがない。
ウェブサービスに3Dを求めることは無茶な話だろうか。いや、Virtual Earth 3Dは着々と3D都市を増やし、北米のみならずヨーロッパにも進出しはじめたという。アプローチは色々と考えられるだろう。けっして無い物ねだりではないはずだ。
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