MC FLEKTOGON 35mm/f2.4 はアッシュカラー
M42はマウントアダプタ遊びの登竜門であり、なかでもMC FLEKTOGON 35mm/f2.4はとても人気のあるレンズだ。ぼくもこのレンズはお気に入りで、使用頻度はきわめて高い。にも関わらず、「これだ!」というカットに恵まれない。なにをとってもよく写る。色ノリはいいし、シャープネスも上々。でも、突き抜けたものがない。ナンていうか、レンズの持ち味を引き出せないような感じ。そこで、この定番レンズの相対的画質を、改めて考えてみたいと思う。
以前、身の程知らずにも「FLEKTOGON 画質の研究」という記事をアップした。タイトルこそ大上段にかまえたものの、「オールドレンズはちゃんとハレ切りしましょうね」という稚拙な記事。でも今回は、ストレートに画質考察に挑んでみたい。古今東西のオールドレンズのなかで、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の位置づけみたいなものを探ってみようかな、と。レンズの善し悪しをウンヌンするのではなくて、傾向をつかみ、どんな被写体に適したレンズなのかを考えてみたい。なんて書くとずいぶんと大仰だけど、いろいろなオールドレンズの写真を見比べて、その味わいを楽しんでみようというのが狙い。まずはイエナつながりでFLEKTOGON 20mm/f4から見ていこう。
【FLEKTOGON 20mm/f4 の作例】
EOS 20D + FLEKTOGON 20mm/f4
FLEKTOGON 20mm/f4はゼブラ柄のゴツいレンズだ。見た目に惹かれて買ってみたものの、シングルコーティングゆえに逆光にめっぽう弱い。半逆光でもフレアっぽくなり、コントラストが低く、発色も淡い。そんな淡泊な写りもオールドレンズっぽくていいかと自分をナットクさせていたのだけれど、順光だと想像以上にしっかりと写る。それでもかすかに色褪せた印象が残るのは、やはり年代モノなのでやむなしといったところか。
【Planar T* 50mm/f1.4 の作例】
EOS-1D Mark III + Planar 50mm/f1.4 T*
CONTAX用のPlanar 50mm/f1.4 T*は、標準レンズの王様と呼ばれる銘玉だ。シャープネス、コントラスト、発色。すべてにおいて非の打ち所がない。むろん、好みの問題はあるだろうけど、ぼくの師匠は「レンズ描写を測る際の指標になるレンズ」と言っていた。サムネイルを見ただけで、FLEKTOGON 20mm/f4の発色と鮮やかさのちがいがわかる。繊細で立体感に富み、どんな被写体を撮っても美しい。個人的には透明感を感じさせるレンズだと思う。
【Summicron-R 50mm/f2 type I の作例】
EOS 20D + Summicron-R 50mm/f2 type I
Summicron-R 50mm/f2 type I はライカRの標準レンズ。地味な発色だけど色濃く写り、正統派の画を見せてくれる。曇天下の写真なので前出の2本とくらべづらいかもしれないが、ツァイスレンズの鮮やかさに対し、ライカRのレンズは重厚さが持ち味。それでいてボケアシに品があり、端正な写りだ。この風合い、最近とても気に入っている。
【MC FLEKTOGON 35mm/f2.4 の作例】
EOS 20D + MC FLEKTOGON 35mm/f2.4
お待たせしました、MCフレクトゴンの作例です。シャープネス、発色、コントラスト。すべて良好。ただ、プラナーのような目に飛び込んでくる鮮やかさはなく、どこか地味な印象だ。かといって、ズミクロンのような重厚さは伝わってこない。いつもここで、ぼくは頭を抱えてしまう。
よく写っている。画質的にすぐれたレンズだ。日を浴びた紅葉の写真なんてかなり気持ちいい。でも……と思ってしまう。前出のレンズたちと見比べてみると、単に色が濃いのではなく、くすみのようなものが感じられる。レタッチ的にいうと、明度が低く、彩度もかすかに低い。絵の具に灰を混ぜたような渋みがある。あえていえば、アッシュカラー。
これまでMC FLEKTOGON 35mm/f2.4でいろいろな場所を撮ってきた。人、花、都会、ネイチャー。どれも惨敗だった。このレンズは使い勝手がいい。EOS 20Dの小さなファインダーでもピントが合わせやすく、レンズの先端数センチというマクロ撮影だってこなす。マウントアダプタ遊びのファーストレンズに勧めやすい一本だ。ただ、このレンズ本来の持ち味を引き出すのは、けっこう難しいのではないか。ぼくはアッシュカラーという言い方をしたけれど、あの色合いは「単純にキレイに撮りたい」というニーズと相容れない。ちゃんと写る。でもキレイに写るわけじゃない。どこか憂いと翳りがある。
EOS 20D + MC FLEKTOGON 35mm/f2.4
この写真は、現時点でのぼくの結論。荒涼とか荒廃とか、殺伐とした光景こそ、このレンズの味が活かせそうな気がする。たとえば産業遺跡とか、廃墟、廃屋とか。ノンレタッチでこの荒涼感。それでいて濃厚な発色だから妙な熱っぽさがある。他のレンズではちょっと出せない味だ。
アッシュがかったブルー、すごく気に入ってます。
Comments
キタ!
キマシタヨ!
なるほどーオールドレンズ。
私も新しくレンズを手に入れると、どういうシチュエーションに向くか?弱点はどこだ?どうすれば一番美味しく使える?と、いつも考えます(そしてずーっと考えてる笑)
答えらしきモノが見つかっても、やっぱり「本当か?本当にそうか?」と。
そういう意味でも、オールドレンズは楽しめそうですね(^^)
デジタルだからといって、古い=ダメというのはあまりに短絡的。
カメラを始めてまだ浅くからない事だらけなので、まだまだ先に広がる可能性を感じてゾクゾクしますね!
Posted by: ディーゴ | January 09, 2008 08:35 PM
ご覧いただきありがとうございます。
オールドレンズは得手不得手のギャップが大きいので、スウィートスポット探しが楽しいです。逆に自分の撮り方とマッチしないレンズだと、いつまでたってもおいしいところが見つからず、「相性がわるい」とかいって投げ出してしまうこともありますが(笑)。
フレクトゴンの35mmは、世間の高評価と自分の感触がマッチしなかった1本です。なんていうか、クラスで一番なんだけど、学年全体だと15番くらいの中学生、といった感じ。でも素性のよいレンズですから、きっとハマればインパクトのある画が撮れるのではないか。そんな風に試行錯誤を繰り返していたところ、どうにか自分なりのスウィートスポットが見つかったようです。
オールドレンズは最新レンズのように万能ではありませんが、非万能ゆえにホビーとして楽しいジャンルだと思います。
Posted by: metalmickey | January 09, 2008 08:50 PM