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January 2008

January 20, 2008

G Biogon T* 2.8/28 改造の果てに

少し前から写真家飯塚達央さんのブログを拝見している。チェックしはじめて当初は「やっぱ北海道の写真はいいなあ」と冷静に見ていられたのだが、ここ最近トンでもないことになってきた。R-D1sとG Biogon 2.8/28で撮った写真が連日のようにアップされ、濃厚さといい周辺光量の落ち具合といい、たまらなくステキなのだ。そんなわけでつい、見境もなくポチってしまった。

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このG Biogon T* 2.8/28は、CONTAX Gシリーズというレンジファインダーカメラ用のレンズだ。先の飯塚達央さんはこれをMマウントに改造してR-D1sで撮っている。実はコシナからBiogon T* 2.8/28 ZMというMマウントのBiogonが現行発売されているのだが、それはそれ、必ずしも同じ写りではないだろう。飯塚達央さんの写真に感化されたのであれば、やはりG用Biogonを手に入れ、それで撮るしかない。もちろん向こうはプロの写真家さん、ぼくが同じ機材を揃えたからといって、同じように撮れるわけじゃあない。そんなことは百も承知ですが、ガマンできないモンは我慢できんのですよ。

Mマウント改造はMSオプティカルR&Dというライカ関係では有名なショップにお願いした。正確にはLマウント改造してL-M変換リングをかますのだが、その改造費たるやG Biogon本体の価格も含めると、コシナBiogonが新品購入できるほど……。正直、悩む。でも、手元にはすでにG Biogon T* 2.8/28があるわけで、後にも引けない。改造依頼してから数日、こんな姿になって戻ってきた。

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く、くびれがたまらん(鼻血)。このフォルムはどう考えたって反則だろぉ。

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かつてGR DIGITALのカスタマイズで購入したM46システムスリットフードを付けてみた。改造レンズという雰囲気はなく、これがこのまま売られていてもぜんぜんおかしくない。いやあ、レンジファインダーの世界ってホント、奥深いんだなあ。

で、ボディ。ボディはええと、まだ買ってません……。

R-D1sをショッピングカートまで入れたものの、どうしてもポチれなかった。R-D1sはステキなカメラだと思う。でも、写真機というよりはデジタル機器だな、と。発売からの経年を考えたとき、これから20万近いお金を払ってそれに見合う満足が得られるのかどうか。無理をしてでもLEICA M8を買った方がいいのではないか、と。

むろん、M8の評判は微妙なところだ。赤外線フィルターの問題で黒がマゼンタかぶりする。それを抑えるためにUV/IRフィルターを付けると、今度は広角レンズでシアンドリフトが発生。6ビットコードで制御できるようだが、純正レンズでさえ6ビットコード化は有償。フェイク6ビットコードという手もあるが、それはそれでけっこう大変……という具合。まあ国内製品ならまちがいなく、回収騒ぎになるプロダクトクオリティだ。こうしたもろもろのトラブルを抱えつつ、60万円前後というプレミアムプライス。正常な判断のできる人なら、買わない。しかしM8が悩ましいのは、ちゃんと写真機の匂いがする。この写真機っぽさが正常な判断を狂わせる。

M8の画質については賛否両論あるだろう。ネット上のフルサイズ画像を見ると、斜め線で悉くジャギーが走り、細部はベタッとつぶれ、お世辞にも良好なコンディションとはいえない。それでも何か独特の存在感を醸すのは、デジタル一眼レフ的な画像解釈で物足りない写真だとしても、レンジファインダー的画像解釈においてきわめてすぐれているからではないか。そんな予感がするのだ。つまり、レンジファインダー派の人々は、一眼レフ派と異なる視点で写真を見ているのではないか、と。ここ最近特に思うのは、彼らが見ているものをぼくも感じてみたいということ。そのためには、自分の手で触れその目で撮って見るのが一番の近道だろう。

R-D1sかM8か、それともフィルムのレンジファインダー機か。どこにどう転ぶかわからないけど、今年はレンジファインダーで遊びますよ。なにしろGR DIGITALカスタム用に買ったファインダーとフードがたっぷりあるから、ドレスアップはやりたい放題(笑)。とりあえず、走れるところまで走ってみます。

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January 06, 2008

MC FLEKTOGON 35mm/f2.4 はアッシュカラー

M42はマウントアダプタ遊びの登竜門であり、なかでもMC FLEKTOGON 35mm/f2.4はとても人気のあるレンズだ。ぼくもこのレンズはお気に入りで、使用頻度はきわめて高い。にも関わらず、「これだ!」というカットに恵まれない。なにをとってもよく写る。色ノリはいいし、シャープネスも上々。でも、突き抜けたものがない。ナンていうか、レンズの持ち味を引き出せないような感じ。そこで、この定番レンズの相対的画質を、改めて考えてみたいと思う。

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以前、身の程知らずにも「FLEKTOGON 画質の研究」という記事をアップした。タイトルこそ大上段にかまえたものの、「オールドレンズはちゃんとハレ切りしましょうね」という稚拙な記事。でも今回は、ストレートに画質考察に挑んでみたい。古今東西のオールドレンズのなかで、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の位置づけみたいなものを探ってみようかな、と。レンズの善し悪しをウンヌンするのではなくて、傾向をつかみ、どんな被写体に適したレンズなのかを考えてみたい。なんて書くとずいぶんと大仰だけど、いろいろなオールドレンズの写真を見比べて、その味わいを楽しんでみようというのが狙い。まずはイエナつながりでFLEKTOGON 20mm/f4から見ていこう。

【FLEKTOGON 20mm/f4 の作例】
Lm_mg_8998 Lm_mg_9140 Lm_mg_9371
Lm_mg_8900_2
EOS 20D + FLEKTOGON 20mm/f4

FLEKTOGON 20mm/f4はゼブラ柄のゴツいレンズだ。見た目に惹かれて買ってみたものの、シングルコーティングゆえに逆光にめっぽう弱い。半逆光でもフレアっぽくなり、コントラストが低く、発色も淡い。そんな淡泊な写りもオールドレンズっぽくていいかと自分をナットクさせていたのだけれど、順光だと想像以上にしっかりと写る。それでもかすかに色褪せた印象が残るのは、やはり年代モノなのでやむなしといったところか。

【Planar T* 50mm/f1.4 の作例】
Lm_n0d1038 Lm_n0d1086 Lm_n0d1104
Lm_n0d0853
EOS-1D Mark III + Planar 50mm/f1.4 T*

CONTAX用のPlanar 50mm/f1.4 T*は、標準レンズの王様と呼ばれる銘玉だ。シャープネス、コントラスト、発色。すべてにおいて非の打ち所がない。むろん、好みの問題はあるだろうけど、ぼくの師匠は「レンズ描写を測る際の指標になるレンズ」と言っていた。サムネイルを見ただけで、FLEKTOGON 20mm/f4の発色と鮮やかさのちがいがわかる。繊細で立体感に富み、どんな被写体を撮っても美しい。個人的には透明感を感じさせるレンズだと思う。

【Summicron-R 50mm/f2 type I の作例】
Lm_mg_5267
Lm_mg_5131_2 Lm_mg_5195
Lm_mg_5200
EOS 20D + Summicron-R 50mm/f2 type I

Summicron-R 50mm/f2 type I はライカRの標準レンズ。地味な発色だけど色濃く写り、正統派の画を見せてくれる。曇天下の写真なので前出の2本とくらべづらいかもしれないが、ツァイスレンズの鮮やかさに対し、ライカRのレンズは重厚さが持ち味。それでいてボケアシに品があり、端正な写りだ。この風合い、最近とても気に入っている。

【MC FLEKTOGON 35mm/f2.4 の作例】
Lm_mg_9912 Lm_mg_9922 Lm_mg_9967
Lm_mg_0119
EOS 20D + MC FLEKTOGON 35mm/f2.4

お待たせしました、MCフレクトゴンの作例です。シャープネス、発色、コントラスト。すべて良好。ただ、プラナーのような目に飛び込んでくる鮮やかさはなく、どこか地味な印象だ。かといって、ズミクロンのような重厚さは伝わってこない。いつもここで、ぼくは頭を抱えてしまう。

よく写っている。画質的にすぐれたレンズだ。日を浴びた紅葉の写真なんてかなり気持ちいい。でも……と思ってしまう。前出のレンズたちと見比べてみると、単に色が濃いのではなく、くすみのようなものが感じられる。レタッチ的にいうと、明度が低く、彩度もかすかに低い。絵の具に灰を混ぜたような渋みがある。あえていえば、アッシュカラー

これまでMC FLEKTOGON 35mm/f2.4でいろいろな場所を撮ってきた。人、花、都会、ネイチャー。どれも惨敗だった。このレンズは使い勝手がいい。EOS 20Dの小さなファインダーでもピントが合わせやすく、レンズの先端数センチというマクロ撮影だってこなす。マウントアダプタ遊びのファーストレンズに勧めやすい一本だ。ただ、このレンズ本来の持ち味を引き出すのは、けっこう難しいのではないか。ぼくはアッシュカラーという言い方をしたけれど、あの色合いは「単純にキレイに撮りたい」というニーズと相容れない。ちゃんと写る。でもキレイに写るわけじゃない。どこか憂いと翳りがある。

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EOS 20D + MC FLEKTOGON 35mm/f2.4

この写真は、現時点でのぼくの結論。荒涼とか荒廃とか、殺伐とした光景こそ、このレンズの味が活かせそうな気がする。たとえば産業遺跡とか、廃墟、廃屋とか。ノンレタッチでこの荒涼感。それでいて濃厚な発色だから妙な熱っぽさがある。他のレンズではちょっと出せない味だ。

アッシュがかったブルー、すごく気に入ってます。

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January 01, 2008

HASSEL-EOSマウントアダプタ 無限遠は出てますか?

プロの愛された中判カメラ、といえばHasselbladだ。高画質中判カメラであると同時に、高級カメラでもある。いまでこそずいぶんと値下がりしたが、500Cもしくは500CMと標準レンズのPlanar 80mm/f2.8 T*の組み合わせで10万円前後。けっして安いカメラではない。そんなハッセルブラッドのレンズを、デジタルで味わう。これはかなりの贅沢だ。身の程知らずを承知の上で、そんな贅沢を試してみた。

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【安物買いの銭失い……】
ハッセルブラッドはボディ、レンズともに高いけど、マウントアダプタも負けじと高い。そんなお高いHASSEL-EOSマウントアダプタが、ウチにはふたつある。M42じゃあるまいし、レンズの数だけ揃えるタイプのアダプタではない。ぼくだって好きこのんでふたつも買ったわけじゃない。これにはやむを得ない理由があるのだ。

現在、新品購入可能なHASSEL-EOSアダプタは3種類ある。まずはそのラインナップを列挙してみよう。

普及価格帯モデル
ディスカバーフォトなどでアンダー1万円で購入できる。

三脚座付きモデル
大判ドットコムなどで1.8万円で購入可能。三脚座付きで高精度との評判。

メーカー製モデル
近代インターナショナル製で定価は3万円超だが、実売2.7万円ほど。

当然ながら、まずは一番安いアダプタを入手した。安いといっても約1万円。マウントアダプタとしてはずいぶんとお高い。試写してしばらくは「ほおぉ、さすがはハッセルレンズ」などと悦に入っていたのだが、下の写真を見てのけぞった。無限遠、出てませんがな……。サムネイルだけだととわかりづらいので、等倍の切り出し画像も合わせてどうぞ。

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Lm_n0d63623 Lm_n0d63624
EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4

アダプタ経由で撮影する際、Cタイプのハッセルレンズはプレビューボタンを押さないと絞りが効かない。最初はプレビューボタンの押し忘れでモワモワなのかと思ったが、Exifでシャッタースピードを調べると1/100秒以下。ちゃんと絞り込んでの撮影だ。記憶が正しければ、f8あたりでの無限遠撮影だと思う。

このお安いタイプのハッセルアダプタ、ショップの紹介文によると無限遠対応となっている。レンズの個体差による問題か、ボディとの相性か。ネットで調べると、このアダプタだと無限遠が甘いという記述を見つけた。デジタル一眼レフの場合、F11以上に絞ると回折現象が発生する。このアダプタだと無限遠撮影は厳しいと言わざるを得ない。

【メーカー製なら安心なのか!?】
そんなわけでセカンドチョイス、普通なら三脚座付きのアダプタを買うところだが、あえて一足飛びに近代インターナショナル製にした。噂レベルだが、ハッセルアダプタは近代製じゃないと無限遠が出ない、という話を耳にしたのが一点。手元にハッセルアダプタが3つ揃ってしまうという、最悪の事態を回避したかったのがもう一点。レンズコレクションならいざしらず、ハッセルアダプタコレクションなんて、ヤダ……。

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EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4

作例は近代インターナショナル製アダプタを使い、f5.6で撮影したもの。お安いアダプタよりはシャープだが、それでも少々甘いか。f11まで絞り込んでもシャープネスはそれほど変わらない。中判カメラはボケアシが大きいので、パンフォーカスを得るにはかなり絞り込まないといけないはず。デジタル一眼レフだと無限遠はこれくらいが限界か。うむぅ、HASSEL-EOSアダプタ、使いこなしがけっこう難しいかも。ただ、これはあくまでもピクセル等倍での話。サムネイル上は十分シャープだし、A4程度のプリントなら甘さに気づくこともないだろう。

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Lm_n0d6229
EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4

こんな画がフツーに撮れてしまうあたり、「さすがはハッセルレンズ」と深くうなずいてしまう。Distagon C 50mm/f4は広角レンズだけあって、結像部の鋭いシャープネスとコントラストが秀逸。色ノリも芯が感じられる。色温度の関係かもしれないが、透明感のあるブルーの出方が個人的に気に入った。そういえばGR DIGITALのブルーも印象的。写真表現において、改めて青って大切なんだ痛感した。

Lm_0010895_2 世の中には安くていいレンズと呼ばれるものが数多ある。ただその“いい写り”とは、あくまでもコストパフォーマンスを念頭においた相対的なもの。それに対しハッセルレンズは、別世界を見せてくれる。軽々と一線を突き抜け、「結局レンズは値段かあ」と少々微妙な気分になってしまった。ナンていうか、クオリティの絶対値って存在するんだなあ、と。いま手元にもう一本、ハッセル用のPlanar C 80mmf2.8 T*もあるのだけれど、こちらはディスタゴンと打って変わってやさしい写りをする。柔らかいのではなく、やさしいというのがポイント。硬派なディスタゴンと繊細なプラナー。性格は両極端だけど、どちらもその画は神秘的だ。こころ洗われる気持ちがします。

●追記
ハッセルレンズの作例はこちらにもアップしてあります。
Distagon C 50mm/f4
Planar C 80mm/f2.8 T*

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