HASSEL-EOSマウントアダプタ 無限遠は出てますか?
プロの愛された中判カメラ、といえばHasselbladだ。高画質中判カメラであると同時に、高級カメラでもある。いまでこそずいぶんと値下がりしたが、500Cもしくは500CMと標準レンズのPlanar 80mm/f2.8 T*の組み合わせで10万円前後。けっして安いカメラではない。そんなハッセルブラッドのレンズを、デジタルで味わう。これはかなりの贅沢だ。身の程知らずを承知の上で、そんな贅沢を試してみた。
【安物買いの銭失い……】
ハッセルブラッドはボディ、レンズともに高いけど、マウントアダプタも負けじと高い。そんなお高いHASSEL-EOSマウントアダプタが、ウチにはふたつある。M42じゃあるまいし、レンズの数だけ揃えるタイプのアダプタではない。ぼくだって好きこのんでふたつも買ったわけじゃない。これにはやむを得ない理由があるのだ。
現在、新品購入可能なHASSEL-EOSアダプタは3種類ある。まずはそのラインナップを列挙してみよう。
普及価格帯モデル
ディスカバーフォトなどでアンダー1万円で購入できる。
三脚座付きモデル
大判ドットコムなどで1.8万円で購入可能。三脚座付きで高精度との評判。
メーカー製モデル
近代インターナショナル製で定価は3万円超だが、実売2.7万円ほど。
当然ながら、まずは一番安いアダプタを入手した。安いといっても約1万円。マウントアダプタとしてはずいぶんとお高い。試写してしばらくは「ほおぉ、さすがはハッセルレンズ」などと悦に入っていたのだが、下の写真を見てのけぞった。無限遠、出てませんがな……。サムネイルだけだととわかりづらいので、等倍の切り出し画像も合わせてどうぞ。
EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4
アダプタ経由で撮影する際、Cタイプのハッセルレンズはプレビューボタンを押さないと絞りが効かない。最初はプレビューボタンの押し忘れでモワモワなのかと思ったが、Exifでシャッタースピードを調べると1/100秒以下。ちゃんと絞り込んでの撮影だ。記憶が正しければ、f8あたりでの無限遠撮影だと思う。
このお安いタイプのハッセルアダプタ、ショップの紹介文によると無限遠対応となっている。レンズの個体差による問題か、ボディとの相性か。ネットで調べると、このアダプタだと無限遠が甘いという記述を見つけた。デジタル一眼レフの場合、F11以上に絞ると回折現象が発生する。このアダプタだと無限遠撮影は厳しいと言わざるを得ない。
【メーカー製なら安心なのか!?】
そんなわけでセカンドチョイス、普通なら三脚座付きのアダプタを買うところだが、あえて一足飛びに近代インターナショナル製にした。噂レベルだが、ハッセルアダプタは近代製じゃないと無限遠が出ない、という話を耳にしたのが一点。手元にハッセルアダプタが3つ揃ってしまうという、最悪の事態を回避したかったのがもう一点。レンズコレクションならいざしらず、ハッセルアダプタコレクションなんて、ヤダ……。
EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4
作例は近代インターナショナル製アダプタを使い、f5.6で撮影したもの。お安いアダプタよりはシャープだが、それでも少々甘いか。f11まで絞り込んでもシャープネスはそれほど変わらない。中判カメラはボケアシが大きいので、パンフォーカスを得るにはかなり絞り込まないといけないはず。デジタル一眼レフだと無限遠はこれくらいが限界か。うむぅ、HASSEL-EOSアダプタ、使いこなしがけっこう難しいかも。ただ、これはあくまでもピクセル等倍での話。サムネイル上は十分シャープだし、A4程度のプリントなら甘さに気づくこともないだろう。
EOS-1D Mark III + Distagon C 50mm/f4
こんな画がフツーに撮れてしまうあたり、「さすがはハッセルレンズ」と深くうなずいてしまう。Distagon C 50mm/f4は広角レンズだけあって、結像部の鋭いシャープネスとコントラストが秀逸。色ノリも芯が感じられる。色温度の関係かもしれないが、透明感のあるブルーの出方が個人的に気に入った。そういえばGR DIGITALのブルーも印象的。写真表現において、改めて青って大切なんだ痛感した。
世の中には安くていいレンズと呼ばれるものが数多ある。ただその“いい写り”とは、あくまでもコストパフォーマンスを念頭においた相対的なもの。それに対しハッセルレンズは、別世界を見せてくれる。軽々と一線を突き抜け、「結局レンズは値段かあ」と少々微妙な気分になってしまった。ナンていうか、クオリティの絶対値って存在するんだなあ、と。いま手元にもう一本、ハッセル用のPlanar C 80mmf2.8 T*もあるのだけれど、こちらはディスタゴンと打って変わってやさしい写りをする。柔らかいのではなく、やさしいというのがポイント。硬派なディスタゴンと繊細なプラナー。性格は両極端だけど、どちらもその画は神秘的だ。こころ洗われる気持ちがします。
●追記
ハッセルレンズの作例はこちらにもアップしてあります。
Distagon C 50mm/f4
Planar C 80mm/f2.8 T*
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