Vario-Elmar-R 75-200mm/f4.5 はじめてのMFズーム
マウントアダプタ遊びといえば単焦点がお約束。しかし世の中には、MFズームレンズが数多ある。単焦点の銘玉とくらべ、MFズームは安い。でも食指が動かない。絞りとピント合わせだけでも大変なのに、それにズーム(焦点距離移動)まで加わるなんて、全自動カメラに慣れた身にはあまりに酷。そんなわけで自然と避けていたMFズームだが、知り合いの写真家さん、ていうか師匠から強く進められ、ついに手を出すことにした。ライカRマウントのVario-Elmar-R 75-200mm/f4.5である。
【日本製だから安心という逆転の発想】
実はこのレンズ、ライカRマウントのなかでもひときわ安い。相場は5万円程度らしいのだが、ヤフオクで並品を3万円で落札してしまった。安い理由は明白、MADE IN JAPAN、そうミノルタ製だからだ。ライカの一眼レフカメラは初期のLeicaflexこそ西ドイツ製だが、R3以降はミノルタとの協業となる。コシナ製Carl Zeissに微妙な印象を抱いてしまうように、ミノルタ製のライカRボディとレンズもブランド欲をなみなみとは満たしてくれない。しかし、そんな先入観を払拭してくれたのが、師匠のひと言。「日本製だからダメなんじゃなくて、日本製だから安心なんだ」と。言われてみればその通り。しかも写りだってそれとなくライカっぽい。そんなわけで、まずは作例からどうぞ。
EOS 20D + Vario-Elmar-R 75-200mm/f4.5
掲載したのは開放f4.5からf5.6あたりでの作例だ。ズームという点を差し引いても、十分に開放から使えるレンズといえる。そもそもライカRレンズの開放F値は、明るさを誇示するためのF値ではなく、実用可能な開放F値というのがポリシー。このVario-Elmar-R 75-200mm/f4.5もその例外ではなく、開放から気持ちいいシャープネスを見せてくれた。曇天下の作例はやや眠い印象だが、地味な発色が気持ちいい。これで重厚さを備えると単焦点ライカRレンズと対等なのだが、さすがにそこまでは到達していない。ただし、濃厚さは十分に感じられるだろう。シャドウにもしっかりと粘りがあり、ElmaritやSummicronといったライカRレンズと共通項が見いだせそうだ。ミノルタ製だからこそ、ライカらしさを受け継ぐズームレンズが開発できた。そんなところだろうか。ただそうはいっても、単焦点クオリティのズームレンズというわけではない。やはり安いには安いなりの理由もある。
EOS 20D + Vario-Elmar-R 75-200mm/f4.5
熱っぽい西日とフューエルタンクの硬質な感じがステキ、というサンプルではなくて、KAWASAKIのエンブレムとエンジンのフィンに注目してほしい。しっかり出ております、パープルフリンジ。そうはいっても、当然のごとく非デジタル設計のレンズなわけで、色収差をあまりあげつらうのはアンフェア。このあたりは運用でカバーするのがオトナというものだろう。手頃な価格でライカっぽさが味わえるのだから、コストパフォーマンスは上々だ。
【ピント再調整不要で使いやすい】
もうひとつ、このレンズは大きな利点がある。一般的なMFズームは、焦点距離を移動するたびにピントを再度調整しなくてはならない。ところがこいつは直進ズームだから、レンズ筒の前後動作で焦点距離を調整できる。筒を回さなくていい。つまり、ピント再調整が不要なのだ。最望遠の200mm側でピントを合わせ、あとはツツツゥと筒を前後させて画角を決める。これならMF単焦点レンズの撮影ステップとさほど変わらない。ちなみにフードは組み込み式。この点も扱いやすくていい。細身のボディで中級デジタル一眼レフとの装着バランスもよく、ストリートスナップに持ち出してもそれほど大げさにならない。f4.5というF値は暗めという印象を受けるかもしれないが、開放から十分にシャープだから実用上の支障はない。望遠寄りでも開放F値が変わらず、何かとハンドリングしやすい一本だ。
EOS 20D + Vario-Elmar-R 75-200mm/f4.5
最近、地味だけど濃い、そんな画が好きです。
●追記
バリオエルマーの作例は随時こちらにアップしています。