P904i パソコン連携の不毛
ケータイを買い換えた。ドコモのP904iだ。これまでケータイに対して冷淡だったのだが、最近のモデルはやれワンセグだGPSだBluetoothだと、なにやらとても楽しそう。なかでもGPSとBluetoothはパソコン連携でおもしろことができそうなので、昨年末あたりから気になっていた。ところがいざ実機を手に入れてみると、あくまでもケータイはクローズドな世界。パソコン連携なんてオマケ程度の機能にすぎない。その自己完結ぶりをレポートしたい。
【思ったほど使えないGPS機能】
まずはじめに注目したのがGPS機能だ。ケータイで撮った画像に位置情報を埋め込み、それをPicasa経由でGoogle Earthに展開。前々からこれをやってみたかった。ええと、結論からいうとですね、P904iではできません(キッパリ)。GPSを使って位置情報の取得は可能。でもそれを画像のEXIFに埋め込むことはできない。ウェブを漁ってみると、この点に関してはauの方が進んでいる様子。ドコモは搭載機能を広くユーザーに使ってもらおうという考えはないらしい。というのも、GPSで位置情報を取得し、現在位置を地図で確認。そこから最寄り駅を調べたり、ナビっぽいことはできる。ただ、その現在位置を表示した地図には広告サイトのリンクがベッタリ……。嗚呼、ケータイ業界お得意のビジネスモデルってやつですか。ユーザーベネフィッツ重視の機能強化ではなくて、あくまでも金になるかどうか。ノッケから気持ちが萎えていきます。
そんなわけで、GPSのトラッキングログなんてモンもとれるわけがない。一部のユーザーは位置情報をメール添付して特定のサイトに連続送信し、それを連結させてトラッキングログを作るという工夫をしている。なかなかおもしろい試みだが、やはり実用的とは言い難い。もしケータイひとつでGPS情報付きの写真が撮れ、トラッキングログを記録できるならば、それをGoogle EarthやGoogle Mapsに展開して自分の軌跡を再現できる。デジタルならではの遊び方だと思うのだが、残念ながら現時点では難しいようだ。
ただトラッキングログに関しては、個人情報保護の観点からケータイでの取得は将来的にも実現不可能かもしれない。なにしろ特定個人の行動がケータイ会社のサーバーに蓄積されてしまうので、SFさながらの管理社会が出来上がってしまう。いや、政府による管理ならまだいい。広告代理店の手に情報が渡ろうものなら、村上春樹がいうところの高度情報化社会どころか、高精度情報化社会の出現だ。現在の広告主体の情報にさえウンザリしているのに、これ以上は願い下げだ。
【Bluetoothでケータイをワイヤレスモデム化】
Bluetoothの方は大丈夫だろうか。まずBluetoothで実現したいことといえば、ケータイのワイヤレスモデム化だ。ノートパソコンにケータイをケーブル接続してメールやウェブをチェック。これをワイヤレスでやりたい。幸いなことに、この点は問題なくクリアできる。Bluetoothのペアリングを行った後、ダイヤルアップネットワークを作成。いったん作成してしまえば、次からはパソコン上でダイヤルアップネットワークのアイコンをダブルクリックすればOKだ。ケータイとBluetoothで通信を確立して、プロバイダ経由でダイヤルアップしてくれる。ネットワーク接続の設定は、付属のFOMA PC設定ソフトを使ってもいいが、Bluetoothで接続する場合はBluetooth付属のユーティリティ、もしくはウィンドウズ標準のダイヤルアップネットワーク作成機能を使った方がやりやすいだろう。
通信速度はドコモの場合、ダイヤルアップ接続で64Kbps。ウェブ閲覧はつらいが、メールチェックなら実用的な速度だ。最近は無線LANスポットが増えているものの、環境に依存せず、通信手段を常に身につけている安心感が利点。しかもケーブル接続や通信カードの挿入も不要だ。日頃からモバイルノートを持ち歩いている人なら、Bluetooth搭載ケータイを買う価値があるだろう。
もちろんパケット通信もBluetooth経由で行える。パケット通信という用語はパソコンユーザーにとってややわかりづらいが、要はPPPもしくはIP接続でネットワークに接続する方法だ。ケータイ版ブロードバンドインターネットと考えるとわかりやすいだろう。通信速度は384Kbps。HSDPA方式に対応したケータイなら、最大3.6Mbpsで接続できる。いずれにしてもダイヤルアップより遙かに高速だ。ただし、今回テストした環境では設定時にパソコンとケータイをUSB接続する必要があり、ちょっと面倒な印象を受けた。Bluetooth経由のデータ通信については、後日詳しく解説したい。
【基本スタンスは周辺機器接続用】
ファイル転送についてはどうだろう。実はBluetooth機能に一番期待していたのはこの点だ。ケータイ内の写真データや電話帳を、パソコンに近づけるだけで転送。こんなことができたらかなりステキ。ただこれは、さすがに虫がよすぎたようだ。
ドコモはdatalinkというユーティリティを無償公開している。ケータイをパソコンにUSB接続すると、電話帳、写真、テキストメモなど、ケータイ内のデータを一括してパソコンに転送できる。もちろん、パソコン上で編集してケータイに書き戻すことも可能だ。このソフトがBluetoothに対応しているのではないかと密かに期待していたのだが、望みすぎでした(笑)。P904iで唯一可能なファイル転送は、電話帳のデータだ。これはケータイ上で電話帳を開き、機能メニューの「Bluetooth送信」を選べばよい。一件のみでも電話帳全体でも、パソコンにBluetooth経由で転送してくれる。
今回はBluetoothを搭載したVAIO type R masterでテストしたのだが、ケータイから電話帳を送信するとプレインストールされているBluetooth用ユーティリティが応答。所定のフォルダにVCFファイルがあらわれた。VCFファイルは電子名刺の標準フォーマットで、アウトルックで開くことができる。利用シーンを想定してみると、合コンやキャバクラでおねえちゃんのケータイ番号を聞き出し、自分のケータイに登録。帰宅してパソコンに転送保存する。そんなところだろうか。ちなみにケータイから転送したVCFファイルは、アウトルックのインポート機能でアドレス帳に統合できる。
P904iのBluetoothを使ったファイル転送は、このようにごく限られた機能だ。ではいったい、ナンのためのBluetoothなのか。それはケータイに周辺機器を接続するためだ。ヘッドセットやオーディオ機器などをBluetoothでワイヤレス接続し、ケータイを機能拡張しようというものらしい。P904iはミュージックケータイをひとつの売りにしているので、主にワイヤレスイヤホンをつないでくれということなのだろう。
今回P904iを使ってみて、パソコンとケータイでは機能に対する姿勢がちがうのだと痛感した。パソコンでGPS、Bluetoothといえばフル機能を指す。一方、ケータイは特定機能を実現するために、GPSなりBluetoothの一部機能を用いるという印象を受けた。よってパソコンユーザー気分でケータイに接すると、ぼくのように肩すかしを食らう。おそらくチップ自体はフル機能が使えるのかもしれないが、肝心のソフトがない。誰か画像転送用のiアプリでも作ってくれないかしら、なんて思うのだが、パソコンとちがって早々フリーソフトが出回る世界でもない。当然ながらケータイは専用機だ。汎用性は限りなく少ない。自由がほしいならスマートフォンへどうぞ、ということか。
P904iのGPSとBluetooth、なにかおもしろい遊び方があればおしえてください。
Comments