Lightroom 1.1 はSILKYPIXに追いついたか
Lightroom 1.1の日本語版アップデータが公開になった。「EOS 1D Mark III」の発売に合わせてのアップデートというのが正直なところと思われるが、機能強化でバージョン1.0の不満点をていねいに解消している。日本国内ではプロアマ問わずSILKYPIXがディフェクトスタンダードといえるが、いよいよ政権交代の日が近いかもしれない。
【やっとプリセットが増えました】
以前、別記事にて「Lightroomはプリセットが少ない」と嘆いてみたが、その声が届いたようだ。倍増とはまではいかないが、現像モジュールのプリセットが増えている。ただこのプリセットに関しては、海外サイトを中心にユーザー作成のものが多数公開されている。アドビ謹製を待つまでもなかった……。でもってプリセットが増えてくると、リストがデロ~ンと長くなって左パネルを忙しくスクロールしなくてはならない。そんな不便を軽減すべく、プリセットのフォルダ管理が可能になった。アップデート直後は「Lightroomプリセット」と「ユーザープリセット」のふたつが表示され、もちろんユーザーが自由に追加作成できる。ぼくはネットからダウンロードしたプリセットを「ユーザープリセット」に放り込み、自分で作ったものは「オリジナル」というフォルダに保存することにした。
ただひとつ、プリセットに関して困ったことがある。それは読み込み時のデフォルトに戻すプリセットが見当たらないのだ。バージョン1.0では「トーンカーブ-Lightroom初期設定」というプリセットがあり、これをクリックすれば読み込み時の状態に戻せた。しかしバージョン1.1ではこいつが見当たらないのだ。もしかしたら英語版バージョン1.1をインストールしたため、その関係で消えてしまったのかもしれないが、このままじゃあちと不便。初期化ボタンをクリックする手もあるが、初期化するとトリミングやゴミ取りした情報まで元に戻ってしまう。やむなく、画像を読み込んだ直後にプリセットを作成して、そいつを「Lightroomデフォルト」という名前で登録することにした。常用していた機能がこっそりなくなっているのって、地味に不便で困ります。
【シャープが多機能になった】
最近はLightroomをメインに使っているが、それでもSILKYPIXから完全移行するには至っていない。理由はいくつかあるが、そのうちのひとつにシャープとノイズ除去の機能性が挙げられる。SILKYPIXはシャープがとにかく高性能で、線があまり太くならずに気持ちよく解像感を高めることができた。しかもノイズ除去が強烈だから、設定を詰めていけば狙いどおりの解像感が手に入る。それに引き替えLightroom1.0のシャープときたら、スライドバー1本という男らしさ(笑)。さすがにアドビもシャープの貧弱さは認識していたのだろう。半径、ディティール、マスクといったスライドバーが加わり、Photoshop並みの自由な調整ができるようになった。特にマスキングできるのは重要で、エッジ(輪郭部分)以外のシャープを抑え、ノイジーになるのを防いでくれる。プリセットとシャープの貧弱さはベータ版の頃から痛感していたが、ようやく実用レベルにこぎつけたという印象。こうしたことを踏まえると、バージョン1.1がLightroom本来の姿といえそうだ。
【さりげなく便利なスプレーツール】
アドビ社のリリースノートですら触れられていないのだが、ライブラリーモジュールにスプレーツールなるものが追加されている。とりあえずこいつでサムネイルをプシューっとクリックしてみた。何も起きない……。ナンじゃこの機能!? と首をかしげていたのだが、マニュアルを読んで感心した。こいつ、けっこう便利なツールだ。
ライブラリーモジュールは画像管理する場所。なんでスプレーなのか腑に落ちないが、要はこの機能、キーワードやラベル、現像設定などをまとめて適用するためのものだ。どのような設定を適用したいかメニューから選び、対象となる画像にスプレーをプシューっ! つまり、画像に設定を吹きかけるというイメージのようだ。
操作手順をちゃんと説明すると、まず上のスプレーアイコンをクリック。その右横にあるメニューをポップアップして、適用したい設定の種類を選ぶ。キーワード、ラベル、メタデータなど、けっこう種類は豊富だ。
種類を選んだら、今度はスプレーする内容を選ぶ。上の画面は「回転」を選んだ状態だ。こうやって一括変更したい設定を選べるようになっている。
一通り設定を終えたら、サムネイルに向けてプシューとやる(クリックする)。同じように設定を適用したい画像にすべて、プシューっとやればいい。スプレーというメタファがはたして適しているのか微妙なところだが、あえていえば設定スプレーということか。
この機能が一番活躍しそうなのはキーワード設定だ。ライブラリーモジュールでは画像読み込み時にキーワードによるタグ付けが可能。タグ付けした画像は自動分類され、キーワードタグリストからワンクリックで一括表示できる。要は検索キーになるわけだ。しかし、フォルダ単位で読み込み時にキーワード指定すると、フォルダ内の全画像に同じタグが割り当てられてしまう。スプレーツールを使えば、任意に画像に限定して、しかも手際よくタグ付けできるわけだ。
Lightroomの評価記事の多くは現像機能に注目したものが多い。しかし、Lightroomが突出しているのは、実はこのライブラリーモジュールだ。サムネイル形式の画像管理画面などという単純なものではなく、これはれっきとしたデータベース。 フォルダ単位の画像管理は当然のこととして、キーワードタグやEXIFのメタデータからも自動分類してくれる。ぼくは最近、オールドレンズやフィルムカメラでよく撮るのだが、LightroomはこうしたEXIF非対応のアナログ機材で撮った画像管理に便利だ。デジタル機材ならEXIFから自動的にカメラ名やレンズ名を取得して、自動分類してくれる。しかしアナログ機材(フィルム時代の機材)はそうはいかない。このときキーワードタグでレンズ名、カメラ名、フィルム名などを入力しておくと、あとあと写真を探し出すときにとてもスピーディなのだ。Lightroomの本領はライブラリーにあり。最近はそんな気がしている。
【LightroomはSILKYPIXを超えたか!?】
バージョン1.1のアップデートにより、Lightroomは自らのスタンスをより明確にしたようだ。プリセットとシャープの強化によって、現像機能に関してSILKYPIXにどうにか追いついた。とはいえやはり、SILKYPIXの強力なシャープとノイズ除去機能を追い越すレベルではない。また、プリセットについてもSILKYPIXの各種フィルム調は絶妙で、あの色合いがほしいためにSILKYPIXを起動することもたびたびだ。LightroomはSILKYPIXに肉薄するが、追い越してはいない。ただしこれは、現像機能に関しての話だ。
SILKYPIXはRAW現像に特化したソフトだ。画像管理という概念はないし、印刷機能についてもレイアウトという発想はない。一方Lightroomは、画像管理→現像→出力というワークフローを網羅し、写真家のデジタルワークを全面的にフォローしてくれる。特にライブラリーモジュールというデータベースは、写真家にとっての資産管理ツールという側面もある。むろん、数万枚、数十万枚の写真をひとつのデータベースファイルで管理できるのか、分割管理した際にデータベースの切り替えやバックアップはどうなるのか、といった現実的な問題もあるだろう。ただ、ひとつ明言できるのは、SILKYPIXはRAW現像専用ソフトであり、Lightroomは統合型RAW現像ソフトという事実だ。
数枚現像しただけではLightroomの良さはわからない。むしろプリセットの充実したSILKYPIXの方が使いやすく、便利に感じることだろう。しかし、数千枚の写真を読み込んだとき、Lightroomのアドバンテージに気づくはずだ。
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