SX-70 カメラ色を遊ぼう
最新デジタルカメラはキレイに撮れる。でも、突出した個性を感じることはない。知り合いの編集者がトイカメラの王様LOMO LC-Aを引き合いに出し、その独特の写りをカメラ色といった。ああ、カメラ色……そのカメラでしか撮れない風合い。それを求めてPolaroid SX-70を買ったのに、どうにも写りが冴えない。やはり生産中止になったTZフィルムあってのSX-70なのか……。諦めきれない、諦めたくない。SX-70のカメラ色を取り戻すことにした。
【失われたTZブルーを求めて】
そもそもSX-70には、SX-70TZ(Time Zero)という専用フィルムがあった。これは2006年3月に生産中止になり、現在のユーザーは600インスタントフィルムという高感度フィルムとNDフィルターを組み合わせ、なんとかしのいでいるというのが現状だ。クールトーンに転びつつも暖かみがあり、そしてノスタルジックに色褪せた写り。あれはTZフィルム特有の写りで、600インスタントフィルムでは再現できない。決定的なちがいは青み。TZフィルムは独特の褪せた青みがあった。しかしよくよく考えてみると、あのTZブルーは色かぶりだ。要は色温度の問題。ならばフィルムカメラのセオリーに則って、色温度変換フィルターを付けたらどうだろう。そんな思いつきでフィルターを自作することにした。
まず用意したのはSX-70 FOREVERのガラス製NDフィルターだ。これはSX-70本体にマグネットリングを貼り付け、NDフィルターを着脱できるというスグレモノ。ポラロイド純正のNDフィルターはプラスチック製で、どうにも使い捨て感覚が気になる。その点はこいつはガラス製で透明度が高く、金属筒だから見た目も高級感がある。なによりもフィルターリングにネジ切りがあり、改造の余地が残されているのがいい。そう、こいつをバラして色温度変換フィルターを組み込み、ND + 色温度変換ダブルフィルターを作ろうという目論みだ。
色温度変換フィルターは富士フイルム「LBB8」というシートフィルターを選んだ。本来LBBフィルターは、暖色かぶりになる屋内照明下で自然な色調に撮るためのもの。暖色に寒色を足し、相殺しようというわけだ。今回はこのフィルターで青みを足してみる。なお、末尾の数字は補正具合の強度を示しており、数字が大きくなるほど青みが強くなる。この点についてはサンプルを交えながら後述しよう。
LBB8フィルターを円切りカッターで直径22~23ミリにカット。NDフィルターのリングをカメラオープナーで外し、カットしたLBB8フィルターをNDフィルターに重ねる。これで特製TZブルーフィルターの完成だ。さて、どんなカメラ色を見せてくれるのか。サンプルを見ていこう。
【かすかに残る青がTZっぽい!?】
サンプル撮影は600インスタントフィルムを使い、光源の種類を変えながら撮ってみた。撮影したフィルムをスキャナで読み込み、トリミングしている。厳密な意味では実物そのもの色合いとはいえないが、雰囲気は伝わるだろう。
電球下撮影 左:NDのみ/右:ND+LBB8
まず電球下の撮影から。NDフィルターのみだと全面オレンジだが、ND+LBB8だとかなり落ち着いた。色温度変換フィルターの正当な使い方といえる。一点注目してほしいのは、奥のカメラの軍幹部。青みがほどよく残り、いい味を出している。
蛍光灯下撮影 左:NDのみ/右:ND+LBB8
今度は蛍光灯下での撮影だ。緑かぶりが収まり、その上で全体にブルーが残る。しかしその奥底にアンバーな色合いが見え隠れして、セピアクールっぽい写りが気持ちいい。
自然光下撮影 左:NDのみ/右:ND+LBB8
自然光下では過剰に青い。NDフィルターのみの方がSX-70らしい写りだ。「LBB4」か「LBB6」ぐらいだとほどよく青がのりそうだ。
「LBB8」をNDフィルターに重ねると、屋内照明下ではほどよくレトロな写りを見せてくれた。しかし自然光下では青みが強烈で、ちょっとあざとい感じがいただけない。もっと淡い色温度変換フィルターを付けてもいいが、実は露出補正という裏ワザも使える。
露出補正なしだとさすがに寒々しいが、ハイキーに撮るだけでグッと雰囲気が増す。シャドウ部の青みがかなりTZフィルムっぽいくはないか!? 600インスタントフィルムはNDフィルター併用でポラっぽさを楽しめるが、惜しむらくは色合いが淡泊という点だ。安価なロシアレンズのように色にコクというものがない。ND+LBB8はTZブルーをそのまま再現するに至らないものの、無難なニュートラルカラーから頭ひとつ抜け出せる。
フィルター改造はちょっと手間だけど、カメラ色を楽しんでみませんか。
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