Logicool MX620 マウス選びの難しさ
これまでメインPCはずっとケーブルマウスだった。さすがにPS2マウスではないが、黎明期のワイヤレスマウスに辟易し、メインPCはケーブルマウスと決めている。とはいえワイヤレス化は時代の趨勢。いつまでもケーブルマウスというわけにはいくまい。今回ロジクール「MX620」を長期試用する期待に恵まれたので、サクッとレビューしてみたい。
【フリースピンモードが快感!】
ロジクールには「MX Revolution」というダブルホイールのハイエンド製品がある。「MX620」はその廉価版という位置づけだ。同社はマウス専業メーカーだけあって、技術的に他社より頭ひとつ抜きん出ている(トレンドメーカーとしては微妙だけど)。「MX620」のアドバンテージはハイエンド製品で採用されたMicroGearプレシジョンスクロールホイールを搭載しているところだ。
一般的なスクロールホイールは、ギアを噛み合わせて回転した分だけスクロールする。いわゆる慣性でそのまま回転しつづけたりはしない。本製品ではこの状態をクリック・トゥ・クリックモードと呼び、これとは別にフリースピンモードを搭載している。ギアの噛み合わせを解除し、ホイールの回転が止まるまで延々とスクロールしていく。たとえばこのブログページはかなり長大だが、フリースピンモードだとワンアクションで一気に末尾へ到達した。さらにページのスクロールが流れるように滑らかで、ハマるともうヤミツキ。ヒュイーン、ヒュイーンとスピンさせまくりだ。ちなみにクリック・トゥ・クリックモードだと、このページの末尾まで40回も中指を動かした。フリースピンモード恐るべし、である。
モード切替はマウス底面のスイッチで行う。実はこの点がMicroGearプレシジョンスクロールホイールの微妙なところ。フリースピンモードはとても便利だが、小さくページを動かすには不向き。普段はクリック・トゥ・クリックモードで、ここぞというときにフリースピンモードに切り替えるのが一般的な使い方だろう。その「ここぞ」というときに、いちいちマウスをひっくり返すのは面倒くさい。結局どういうことになるかというと、クリック・トゥ・クリックモードのまま使い続けている自分がいた……。宝の持ち腐れだ。スイッチはやはり、上部か親指側の側面あたりが理想的だろう。
【細かな不満が積もり積もって】
基本的な部分でいくつか気になる点がある。ひとつ目は専用ユーティリティのバグ。タスクトレイのアイコンでマウスのバッテリ状態が確認できるのだが、付属の新品電池を入れたにも関わらず!マークがずっと点滅している。手持ちのアルカリ乾電池に交換してもこの状態は相変わらず。しかもユーティリティの画面を開いて度肝を抜かれた。
「電池残量:フル」でもって「電池を取り替えてください」って気は確かですか? このマウスは単3乾電池2本で一年動くというのが売りなのだが、何はともあれタスクトレイアイコンの点滅がかなり目障り。これは早めに対処してほしい。
スクロールホイールの精度も気になる。インターネットエクスプローラではしごく快適だが、なぜかアウトルック2007でメール画面をスクロールさせると具合がわるい。いったん下方向に移動し、ホイールから指が離れると上方向に少しだけ戻る。なにかこう、ギアの揺り戻しがそのまま反映しているような感じ。IEやエクセルではこうしたトラブルはなく、アウトルック2007だけというのがいやはやナンとも……。
チルト機能(水平スクロール)は移動の遅さが惜しまれる。上画面のようにほぼ最速状態にしてもIEではジリジリとした動きでいらついてくる。エクセルはまずまずスピーディといった状態で、ソフトによって挙動が異なるようだ。プログラムごとに設定を保存できるので、いろいろとカスタマイズしてチョーダイということなのか。マウスチューニングはたしかに重要だが、あくまでもそれは自分流に使いやすくするのが目的だ。デフォルトセッティングに改善の余地があるのではないか。
とまあ、辛口レビューになってしまったが、これもマウスがもっとも使用頻度の高いインターフェイスゆえのこと。入力デバイスはユーザー各々要求レベルが高いので、操作フィーリングの調整はかなり難しいアイテムだと思う。その一方でワイヤレスマウスとしての完成度はすばらしく、スリープ状態からのハイレスポンスな復帰といい、高精度レーザーで狙い通りに動かせる操作性といい、不満を書きながらも毎日このマウスを使っている。ルックスは大人びた品があり、ブラックのレザーマウスパッドとよく似合う。コンパクトUSBレシーバも利点のひとつだ。普及価格帯でこの機能、この質感ならわるくない。なお、専用ユーティリティは本体に付属せず、ロジクールのホームページからダウンロードする。涙ぐましいコスト削減、こういう企業努力は好きです。