M42-EOS 電子マウントアダプタ の微妙な快適さ
●書籍のご案内
このたびマウントアダプタとオールドレンズの総合入門書「オールドレンズ パラダイス」を執筆しました。基本操作をステップバイステップで解説し、FLEKTOGONに代表されるイエナ製レンズ、Y/Cマウント、ライカRマウント、電子マウントアダプタなどを取り上げています。以下の書籍解説記事も合わせてご覧ください。
--------------------------------------------------------------
前々から気になるアイテムがあった。ヤフオクでよく見かけるアレ、電子マウントアダプタ。マウントアダプタ経由のレンズ装着はMFが基本だが、電子マウントアダプタはフォーカスエイドが使えるという。ホントにそうなのか? バッタモンじゃねえの!? いろいろな思いが脳裏をよぎるが、ものは試しで買ってみた。
【半押ししながらピント合わせ】
今回手に入れたのは、ヤフオクに出品されていた8800円のもの。この出品者は複数種類のM42-EOS電子マウントアダプタを出品していたが、対応機種が異なるだけで機能的には大差がないらしい。手持ちのボディがEOS 20Dという枯れたカメラということもあり、一番安いやつをチョイスした。
マウントアダプタの裏面を見ると、なにやらチップが貼り付けてある。詳しいことはわからないが、この電子接点によってボディと連係するようだ。このマウントアダプタを使ってM42レンズを取り付けると、ボディ側の絞り値は「1.8」と表示される。一般的なマウントアダプタだと「0.0」になるので、やはりボディを電子的にだまくらかしているという印象。どうにも胡散臭さが漂うが、肝心のフォーカスエイドはちゃんと動作した。シャッターボタンを半押ししながらヘリコイドをまわしていくと、目視で合焦と感じたところでAFフレームが赤く点灯する。任意のAFフレームを選択固定した状態でもフォーカスエイドが使えた。半押ししながらピント合わせ、という独自のお作法があるものの、ピントの山がつかみづらいレンズでは効果的なアイテムだ。
【嗚呼、ピン押ししないタイプなのね】
今回怪しげなアイテムを購入した理由は、なにも人柱になろうなどと殊勝なことを思ったわけじゃない。年明けに購入したFLEKTOGON 20mm/f4がどうにもピント合わせがやりづらく、電子の目で合焦させようという目論みだ。ところがですね、肝心のFLEKTOGON 20mm/f4で電子マウントアダプタが使えないんですよコレが!
左の写真は近代インターナショナル製のM42マウントアダプタを付けたところ。右は電子マウントアダプタを装着した様子だ。レンズ背面のピンの状態に注目してほしい。近代インターナショナル製はピンを押し込み、電子マウントアダプタはピンがそのまま立っている。もちろん、ピンが立った状態でもEOS 20Dに取り付けられるのだが、絞りが常時フル開放で使いモノにならない。これまで運良く自動/手動絞りの問題を回避してきたけど、ついに直面しちゃいました……。
【クラシックレンズは手動絞りアリがいい】
いまどきのAFレンズには無縁の話だが、MFレンズには自動絞りと手動絞りの2種類がある。たとえばMC FLEKTOGON 35mm/f2.4には「M/A」というスイッチがあり、Aの状態だと自動絞り、Mにすると手動絞りに切り替わる。自動絞りとはシャッター半押し、およびプレビューボタンを押したときに絞りが絞り込まれ、通常時は絞り開放の明るいファインダでピント合わせできるという機能。一眼レフではずいぶんと古くからこの機能が採用されている。一方手動絞りとは、レンズ側の絞り値に応じて絞りが絞り込まれる。いわゆる実絞りの状態だ。マウントアダプタを使ってレンズを装着した場合は、好むと好まざると、この手動絞りで使うことになる。なにしろレンズに純正対応したボディではないから、ピンを押し込む機構がない。ピンを押し込めないと常時フル開放……。これではボケボケふわふわな写真しか撮れない。
この自動/手動絞りの切り替えは、レンズ背面のピンが担っている。自動絞りの状態だとボディ側からこのピンを押し込み、レンズ側で設定した絞りまで絞り込む。手動絞りの場合はピンがレンズ側に引っ込み、絞りを動かすとリニアに絞り込まれる。こう書くとわかりづらいかもしれないが、試しにA(自動絞り)に設定して背面のピンを指で押してみよう。絞りが動くのがわかるはずだ。そしてM(手動絞り)するとピンがレンズ側に引っ込み、レンズ側の絞りを動かすと絞り羽根が動く。目で見て確かめるのがわかりやすい。
【ピン押しタイプならどんなレンズでも安心】
問題を整理すると、「自動絞りのみのレンズは、ピン押しタイプのマウントアダプタが快適」ということになる。裏を返せば、手動絞りのあるレンズはピン押しタイプでもピン押ししないタイプでもOK。ピン押ししないタイプのマウントアダプタを使うときは、切り替えスイッチをM(手動)にしておけばいい。んでもって、FLEKTOGON 2mm/f4は手動絞りがない。よってピンをマウントアダプタの縁で強制的に押し込まないと、実絞りで撮影することができないわけだ。近代インターナショナル製のマウントアダプタはピン押しするタイプだったので問題なかったが、ヤフオクで買った電子マウントアダプタはピン押ししないタイプ。よって実絞りでは撮れない。一応、レンズ側の絞り込みレバーを押しながらシャッターを切ることで、疑似実絞り的な撮影もできなくはない。ただ、半押し+ヘリコイドまわし→絞り込みレバー+シャッターという行程はかなり面倒だ。ああもう、ナンのために電子マウントアダプタを買ったんだか……。
まあ所詮はヤフオク購入の怪しげアイテム、こんなオチが相応しいかと。ちなみに、近代インターナショナル製のM42マウントアダプタはピン押しかつ高精度な製品で、それでも5000円程度で購入可能。こうした相場を思うと、8800円もするヤフオクの電子マウントアダプタは割高だ。ピン押ししないし、しかもアダプタ自体の精度が低いから金属クズがボロボロと出る。さらに半押ししながらヘリコイドをまわすという習慣がないものだから、せっかく電子マウントアダプタを付けていてもフツーにMFでピント合わせしている自分がいた。率直な感想としては、ピントは金で買えない、と痛感。カメラに王道なし、です。
ちなみに、ディスカバーフォトというネットショップでピン押しタイプの電子マウントアダプタが売っています。ヤフオクのものよりさらに値が張りますが、どなたかレポートしてくださいませ。ぼくはおこづかいが尽きました。眼力アップのトレーニングに励むことにします。
Comments
*ist DSは純正のM42マウントアダプタ(購入当時700円)で、フォーカスエイドが利くので、てっきりそれが普通と思ってました…。
もちろん、ピン押し込みはナシです。
ゼブラテッサーの場合、実絞り+絞り込みレバーを引きながらレリーズとなるので、これが使いにくいったら…。
Posted by: ジュンイチ | May 13, 2007 11:40 AM
いいなあペンタックスユーザー、うらやましい。
*ist DSがM42用ボディとして人気があったのは
そういう理由があったんですね。
レビュー用でK10Dを試用する機会があったんですが、
カメラ好きの心を理解した造りにクラクラしました。
EOSは素っ気ないまでにシンプルで、
アドオン的な機能がありません。
もうちょっと今時風の機能があっても
いいような気もするし、このまま
骨太感を貫いてほしい気もするし……。
メーカーによってやはり思想が色濃く出ますね。
Posted by: metalmickey | May 13, 2007 12:23 PM