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May 2007

May 30, 2007

Virtual Earth 3D ついに摩天楼が!

高層ビル群ときいて真っ先に思い浮かぶ場所、それはニューヨークのマンハッタンだ。地面のほぼすべてを高層ビルが覆う街。3Dで見たらさぞかし圧巻だろう……と思いきや、Google EarthにせよVirtual Earth 3Dにせよ、一向に3D化が進まない。なぜか? あまりにビルの数が多くて3D化がおっつかないのだ。しかし、マイクロソフトはやってくれた。ついに摩天楼のフル3D化だ!

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【大型アップデートで摩天楼を3D化】
5月29日にVirtual Earthの大型アップデートが行われた。アップデートの詳細はVirtual Earth/Live Mapsの記事を参照してほしいのだが、ざっくりいうと、3D都市の追加、欧州主要都市のバードビュー対応といった内容だ。そしてマンハッタンの3D化は、このアップデートの目玉といっていい。論より証拠、その画面写真を見てほしい。

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Vem04
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見渡す限りビルビルビル……。主要高層ビルだけでなく、小さな建物に至るまでことごとく3D化されている。さすがにここまで見せつけられると、担当エンジニアの意地というか執念というか、ビジネスそっちのけで人間性がにじんでくる。ちなみにGoogle Earthのマンハッタンはこんな感じだ。

Vem08

灰色の3Dポリゴンを表示させることもできるが、いわゆる3D建物はこれだけ。こうやって比較すると、Virtual Earth 3Dの突き抜けぶりがよくわかる。ただし、これだけ3Dモデルが増えると、非力なグラフィック環境では表示がつらくなる。GeForce 7600 GT搭載環境で小一時間動き回ったところ、後半は画面が乱れはじめた。3D都市で問題となるのは、建物が増えてくるとパフォーマンスが落ちるという点だ。

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Br03 Br04

これらの画面はGoogle EarthでBerlin 3Dというkmlファイルを表示したものだ。国家プロジェクトとしてベルリン市を3D化し、それをGoogle Earthのkmlファイルで公開している。3Dポリゴン+テクスチャという建物に加え、一部の建物は内部まで3Dモデリングされているのが特長だ。Google Earthのなかで群を抜く3Dモデルなのだが、いかんせんデータが思い。このkmlファイルを表示して何度フリーズしたことか……。Virtual Earthのマンハッタンについても同様のことがいえる。Berlin 3Dほどではないが、グラフィックパワーは必要だ。

なお、今回のアップデートで増えた3D都市は以下の通り。相変わらず北米中心だが、この調子なら全世界3D化もあながちユメではないかも。

Manhattan
Queens, NY
Yonkers, NY
Cheektowaga, NY
Niagara, NY
Levis-St Romuald, Canada
Ottawa, Canada
Northampton
Great Britain
Austin, TX
Cincinnati, OH
Indianapolis, IN
Speedway, IN
Aurora, IL
Joliet, IL
Naperville, IL
Cape Coral, FL
Tampa, FL
Savannah, GA
Hollywood, CA
La Jolla, CA
La Mesa, CA
Miramar, CA
Oceanside, CA

【日本語版登場も間近か!?】Vem10
Virtual Earth 3Dを使っていて、ちょっと妙なことに気づいた。上の画面を見てほしい。メニュー関係が日本語表示されている。こりゃついにVirtual Earth 3D日本語版が出たのか!? と色めいたが、Windows Live日本語版の「地図」をクリックしても3D表示はできない。どうやらメニュー関係だけ日本語対応したということのようだ。でもこれでずいぶんと使い勝手がよくなる。メニューの英語は簡単な単語ばかりだが、やはり日本語表示の方が安心して使えるというもの。もしかすると日本語版の登場が近いのかもしれない。

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May 27, 2007

Virtual Earth 3D都市リスト

二番煎じ、GIS的観点の欠如、そして一向に登場する気配のない日本語版……。すっかり黙殺されっぱなしのVirtual Earth 3Dだが、こいつを侮ってはいけない。Virtual Earthの3D都市がスゴイことになっている。こと都市の3D化に関しては、Google Earthの3D建物なんて足下にもおよばない。今回はその3Dっぷりをドドーンと紹介してみよう。

Ve01

【Virtual Earth 3Dのセットアップ&使い方】
Virtual Earth 3Dは英語版だ。日本国内で提供しているVirtual Earthだと、そのままでは3D表示できない。いったん米国サイトにアクセスして、別途Virtual Earth 3Dをインストールしよう。インストール手順は仮想地球通信にわかりやすくまとめてある。参照するといいだろう。

Ve02
3D化は北米の都市を中心に作業が進められている。3D都市へジャンプするには、「Enter city,address, or landmark」の欄に英語で都市名を入力。該当都市にジャンプすると、都市を自動的に3D表示してくれる。3D都市を徘徊するときは[Ctrl]キー+カーソルキーの操作が便利。いわゆる旋回行動がとれておもしろい。また、さりげなくSpaceNavigator PEに対応していることも付記しておこう。インターネットエクスプローラ上の操作となるため、特別なプラグインは必要ない。とまあ説明はこれくらいにして、早速3D都市のナイスビューを見てもらおうか。

【北米17都市の精細3Dビュー】
Ve05 Ve08
Ve04_1 
Ve12 Ve13
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Ve27_1 Ve31

どうですか!? かなり見応えある画面でしょ。Google Earthの3D建物はアニメチックだけど、Virtual Earth 3Dは実写主義といった面持ち。Google EarthやMitakaが好きな人なら、Virtual Earth 3Dもぜひ遊んでみてほしい。タダでこんなにすごい3D都市を見られるなんて、いやほんと、いい時代になりました。ちなみに、以下の17ポイントが3D都市と呼ぶに相応しいできばえだ。北米に偏っているのがナンですが、Google Earthよりも3D化は進んでいる。

Boston
San Francisco
Seattle
Denver
Detroit
Los Angeles
Philadelphia
Las Vegas
Atlanta
Calgary
Redmond
Buffalo
Beaverton
Portland
Swindon
Brighton
San Jose

地名をコピペしてジャンプしてください。これ以外にも3D都市があれば教えてね。

●追補
5月29日の大型アップデートで3D都市が増えました。こちらの記事も合わせてご参照ください。

【実写主義のヒミツを探る】
Virtual Earth 3Dの3D都市は、Google Earthよりもホンモノっぽい。これは誰の目にも明らかだ。3Dモデルの上にテクスチャを貼り付けているので当然といえば当然だが、実はそれ以外にもかなりきめ細かい工夫をこらしている。下の2枚の画像を見比べてほしい。

Ve23 Ve21
これはアトランタの都市部を俯瞰したものだ。1枚目は北から、2枚目は南からの様子である。同じ都市なのに1枚目は明るい日差しがあたり、2枚目は暗くなっている。これはどういうことか? Virtual Earthは下地に衛星写真および航空写真を用いているのだが、その写真の日の当たり方を考慮して3Dモデルを作っている。2枚目の画像を見ると、衛星写真上の影と建物(3Dモデル)の陰が一致しているのがわかるだろう。

Ve34 Ve38
さらに下地の写真に合わせ、建物の色調も調整している。右の写真はアンバーかつ緑にかぶっているが、建物のカラートーンを合わせてあるので違和感がない。左の画面と比べると、トーンのちがいは一目瞭然だ。実はここにVirtual EarthとGoogle Earthの決定的なちがいが見て取れる。Google EarthはGoogleがプラットフォームを提供し、コンテンツは基本的にユーザーまかせだ。Google Earthの3D建物はユーザー提供のものが少なからず含まれているため、都市全体を見たときに違和感のある建物が点在する。ユーザー参画型のプラットフォームという点は評価すべきだが、仕上がりに優劣が見え隠れするのはやむを得ないところだ。一方Virtual Earth 3Dは、プラットフォームからコンテンツまで一貫してマイクロソフトが管理している。言うまでもなく3D都市の完成度は、Virtual Earthの方が格上だ。

なお、Virtual Earthは閲覧時のパフォーマンスにも配慮が見られる。Google Earthで3D都市を表示すると、チップセット内蔵グラフィックではフリーズに見舞われることがたびたびあった。しかしVirtual Earthの場合は軽快。GeForece 7600 GTを搭載したマシンではSpaceNavigatorでグリグリ動かしても安定している。おそらくデータを効率よく圧縮して、システムに高負荷がかからないように配慮しているのだろう。

Lmpho20_4
Horizon Perfekt

この写真は東京タワーからパノラマカメラで撮影したもの。なんだかVirtual Earthにそっくり……なんて本末転倒な感想を抱いてしまうほど、Virtual Earthの3Dっぷりは見事だ。なるほど、たしかにVirtual Earth 3Dは「見る」だけで完結してしまう。そこから先に何もない。しかし3D都市(=仮想現実)を見せるということに、マイクロソフトは本気で取り組んでいる。この点は積極的に評価したい。Virtual Earthしかり、Mitakaしかり、手軽に体感できるテクノロジーの最先端を、より多くの人に楽しんでもらいたい。

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May 26, 2007

EOS 20D リモート撮影 LIGHTROOM編

困ったことになった。Digital Photo Professional3.0のアップデートがあったのだが、バージョン3.0.1のリリースノートを読むと「Windows Vista環境だとね、トリミングツールとかクイックチェックツールが使えないんだよ」なんてことがシラッと書いてある。インストールしてからそのことに気づいた……。3.0では使えた機能なので、これは明らかにグレードダウン。世界的大企業の良識を疑うアップデートです。せっかくVistaでリモート撮影できるようになった矢先の出来事だけに、とても残念。仕方ないのでLightroomでEOS Digitalのリモート撮影環境を構築してみた。

Rlm01

【ちょっと面倒なLightroomのリモート撮影】
以前のエントリーで紹介したとおり、初期設定のLightroomではうまくリモート撮影できない。EOS Utility側で転送先アプリケーションをLightroomに設定すれば良さそうなものだが、これがどうしてうまいこと動いてくれないのだ。そこでLightroomの自動読み込みという機能を使い、合わせ技的にリモート撮影環境を作り上げる。作業の流れはこんな具合だ。

(1)EOS Utilityで特定フォルダに撮影データを記録。
(2)Lightroomの自動読み込み設定で上記特定フォルダを監視。
(3)特定フォルダのデータを保存用フォルダに移動。
(4)ライブラリに保存用フォルダ内のデータを読み込む。

このセッティングでわかりづらいのは、一度保存したデータを別のフォルダに移して読み込んでいるところだ。単純に保存フォルダを閲覧すりゃいいじゃん、とぼくは思うわけだが、残念ならがそれがうまくいかない。何とも面倒な話だが、とりあえず詳細な設定方法を紹介していこう。

【EOS Utilityのセッティング】
Rlm03
EOS Utilityを起動して、メニューバーの〈ファイル〉→〈環境設定〉をクリック。まずは「連携ソフト」タブを開こう。ここでLightroomのexeファイルを設定……と思いきや、そうじゃない。ここは「連携ソフトウェア」を「なし」に設定するのがポイントだ。連携先にLightroomを指定してしまうと、撮影するたびにLightroom側で読み込み確認画面が表示されてしまう。これはどうにも鬱陶しい。ソフトに転送せず、HDDに直接保存した方が結果として好都合なのだ。

Rlm04
〈保存先フォルダ〉タブを開き、「保存先フォルダ」で任意をフォルダを指定する。EOS DIGITALで撮影した画像はソフトに転送されずに、このフォルダに保存されるわけだ。なお、その下にサブフォルダの作成設定があるが、ここはすべてチェックを外しておこう。この保存先フォルダは、Lightroom連係リモート撮影でテンポラリーフォルダという役割になる。撮影データの一時保存場所にすぎない。そのためサブフォルダ管理というアプローチは不要だ。

【Lightroomのセッティング】
Rlm05
Lightroomの自動読み込みとは、指定したフォルダを常時監視してライブラリに追加するというもの。ただし、監視中のフォルダをそのまま読み込むのではなく、別フォルダにコピーしてライブラリ登録する。なぜこのような仕様になっているのか理解に苦しむが、ぼくの撮影データ管理のスタイルと照らし合わせると、結果論としてはこちらの方が使いやすい。まずはメニューバーの〈ファイル〉→〈自動読み込み〉→〈自動読み込み設定〉をクリックだ。

Rlm06
監視フォルダ」にEOS Utilityで設定した「保存先フォルダ」を指定する。その上で「保存先」に、画像ファイルを最終的に保存しておきたいフォルダを指定しよう。ぼくは画像管理の関係でサブフォルダも指定している。その理由については後ほど。この設定により、Lightroomは監視フォルダに画像が追加されるたびに指定したフォルダへデータを移動(コピーじゃなくて移動!)。その画像はライブラリにリアルタイム表示されることになる。仕上げにメニューバーの〈ファイル〉→〈自動読み込み〉→〈自動読み込みを有効にする〉をチェックON。これでLightroom連係リモート撮影のセッティングは完了だ。

【理想的な運用スタイルを探求】
Rlm07
実際にリモート撮影をはじめると、「保存先」で指定したフォルダ名がライブラリにあらわれる。サブフォルダとして指定した名称が表示され、撮影するごとにサムネイルが増えていく。普段ぼくは西暦フォルダの下に「年月日+カメラ/レンズ名+撮影内容」を組み合わせたフォルダを作成し、撮影画像を管理してきた。そのためLightroomを使ったリモート撮影環境では、新たな撮影セッションをはじめるごとに「サブフォルダ」を再設定。要は画像を記録したいフォルダは、自動読み込み設定の「サブフォルダ」で指定すればいい。それ以外の設定はLightroomもEOS Utilityも変更する必要はない。セッティングは面倒だが、運用ルールが出来上がってしまえばスマートなスタイルだ。

なお、読み込み速度はDPPよりもモタツキを感じる。結局テンポラリーフォルダに保存したファイルを別フォルダに移動しているので、1回の撮影で2度HDDにアクセスしている。今回テンポラリーフォルダをストライピング仕様の起動ドライブ(Cドライブ)、最終的なデータ保存先はDドライブといった具合に書き込み分散させてみたのだが、それでもDPPよりも時間がかかる印象を受けた。

Rlm08
読み込み時の表示はサムネイル表示でもルーペ表示でもOK。個人的にはルーペ表示で撮影画像を大きく見せ、下段にサムネイルを表示しておくスタイルが気に入っている。右パネルはEXIFで絞りとシャッタースピードが見られるようにしてみた。

DPPはHDD上の画像を直接参照する。つまりビューワだ。それに対しLightroomは、ライブラリに登録してはじめて閲覧可能になる。Lightroomのライブラリ機能とは、ビューワではなくデータベースだ。そのため監視フォルダのデータを別フォルダに移動するという工程が必要となるが、一度理解してしまえばそれほど面倒な機能ではない。ソフトウェアを応用的に使うとき、ソフトのカルチャーを知っているかどうか、それがキーポイントになるようだ。

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May 15, 2007

4D2U Mitaka で宇宙空間に飛び出せ!

4D2Uプロジェクト(国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)という事業がある。空間的にあまりに広大で、時間的にも長大な宇宙というものを、デジタルの力で視覚的にとらえてみようという試みだ。その成果物のひとつとして登場したのが、4次元デジタル宇宙ビューワ「Mitaka」である。

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これは国立天文台立体視シアター向けに開発された上映用ソフトウェアなのだが、バージョン1.0正式版がフリーウェアとして公開されている。このソフトのなにがスゴイかって、宇宙空間を自由に、しかも時間的変移も交えながら楽しめるのだ。Google Earthもフリーウェアとして画期的な高性能ぶりだったが、Mitakaのスケールと大盤振る舞いはそれを凌駕するかもしれない。早速そのおもしろさを見ていこう。

【プラネタリムより宇宙遊泳!】
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シアター上映用ソフトということもあり、起動するとまずプラネタリウムがあらわれる(写真左)。Mitakaは4次元空間をシミュレートしているので、時間軸を進めていくと天体が動く。スクロールホイールでズームイン/アウトすることもできる。これはこれでおもしろいが、正直なところこれだけなら別段驚くほどのことではない。似たようなソフトは他にもあるだろうし、3D空間とはいっても見え方は平面チック。Mitakaの本領はあくまでも、宇宙空間に飛び出せるところにある。

そこでホイールボタンをクリック。天体を見上げる視点から、地表を見下ろした視点に切り替わる(写真中央)。前述のモードをプラネタリウムモード、これを宇宙空間モードという。ホイールを前後するとズームイン/アウトでき、3D空間を自由に飛び回れるのだ。夜になっているエリアは街の明かりまで見ることができ(写真右)、宇宙から地球を見下ろしている雰囲気が伝わってくる。普段Google Earthばかり使っているのでついズームインしてしまうが、Mitakaを満喫したいならズームアウトだ。ズームアウトしていくだけで、宇宙の壮大なスケールを実感できる。

M10 M11 M12
ズームアウトしていくと太陽系の全体があらわれ、各惑星の軌道が見えてくる。さらにズームアウトすると太陽系自体が小さくなり、10光年をすぎたあたりから著名な恒星があらわれる。

M13 M14
ついには銀河系の全体像が姿を見せ、我々の棲む太陽系は宇宙のホンの片隅なのだと痛感してしまう。10万光年をすぎると小銀河が次々を視界をかすめ、銀河系すら宇宙の片隅にすぎないのだと呆然とした気分になるはずだ。

M15 M16
10億光年を超えると、宇宙の大規模構造が見える。これは銀河の分布図で、扇状に分布しているのは観測領域のみを表示しているためだ。実際にはまんべんなく銀河が分布しているらしい。最後は137億光年の境界線があらわれ、宇宙の果てに到着する。宇宙の年齢は137億年と考えられているので、これが宇宙の果て(もしくは宇宙の最先端)というわけだ。ちなみに青い部分はクエーサーの分布状況を示している。クエーサーとは巨大なエネルギーを発している天体のこと。書いているぼく自身よくわからなくなっているのだが(笑)、ともかくも宇宙のスケールだけは肌で感じてもらえるはずだ。

【人工衛星で4次元空間を体感】
M17 M18 M19
前述の通り、Mitakaは4次元空間をシミュレートしている。3Dスペース+時間。このことを体感したいなら人工衛星の軌道を追いかけてみるといい。太陽系を画面に表示させ、その上で「探査機の軌道」の表示をONにする。時刻表示を1年単位に設定して、1970年代ぐらいから一気にタイムスケールを動かす。するとボイジャーやカッシーニの軌道がぐいぐいと伸び、太陽系の惑星と大接近する様子が手に取るようにわかるのだ。

M20 M21
惑星大接近の様子をクローズアップしたのが上の画像だ。左がカッシーニの土星大接近、右がパイオニア10号の木星大接近の様子。いやあ、大迫力な3D映像だこと。惑星と人工衛星を、自らの手でランデブーさせちゃうなんてたまりませんな(笑)。Mitakaのいいところは、3D表示が本当にキレイだというところ。地球と火星は地表の隆起も再現され、実に見応えがある。そんな様子をまとめてアップしておこう。

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M27 200705152337224 M26_1

【インターフェイスは改善の余地あり】
このようにMitakaはフリーウェアの域を超えた極上の知的エンターテイメントソフトだが、操作面でいくつか不満がある。まずターゲットという概念があり、指定したターゲットが視界の中心点になる。たとえば地球をターゲットに据えれば地球が視界の中心になり、銀河系を選べば銀河系の中心部分が視界中央になるわけだ。マウスによって画面をドラッグした場合、この中心点を軸に視界が回転する。つまり、上下左右の移動ではなく、常にターゲットを基準した回転移動になるわけだ。これを理解しておかないと、気持ちよく宇宙遊泳できない。Google Earthや地図ソフトの感覚と異なるので気をつけよう。なお、ターゲットはメニューから選択でき、主要な惑星、恒星、銀河などに瞬間移動できる。

M28 M29 M30
基本操作はマウスによるドラッグ、キーボードのショートカットキー、そしてジョイスティックが利用できる。ただし、細かい操作はメニューバーのみで、いちいちメニューをプルダウンさせるのが時としてまどろっこしい。やはり操作パネルがほしいところだ。このあたりはGoogle Earthのナビゲータなどを手本にしてほしい。一応スクリーンメニューというインターフェイスがあり、キーボードの[X]キーで呼び出せる。使用頻度の高い機能にイージーアクセスできるのが利点だが、このスクリーンメニュー自体をショートカットキーで操作する必要があり、カーソルキーとエンターキーで選択決定できないのだ。カーソルキーに画面移動が割り当てられてるためだが、やはり直感的操作とはほど遠い。正式版として公開する以上、ローカルルールに則った操作体系でなく、一般ソフトと共通項のある操作性が望ましい。なお、このスクリーンメニューには3Dチャートと呼ばれる3D模式図が呼び出せる。惑星の大きさを視覚的にとらえることができ、おもしろい機能だ。

M31_1今回、Mitakaを取り上げたのは、本気具合がGoogle Earthを彷彿させたからだ。Google Earthは情報オーサリングツールとして、現存する情報をすべて3D空間に引き写し、デジタルアース実現の可能性を示した(一部にはGoogleスタッフの余技、と一刀両断する人もいますが……)。翻ってこのMitakaは、ドームシアターの上映ソフトをそのまま公開したものだ。機能限定版でも暫定版でもない。マンマ上映ソフトなのだ。それゆえに画面の精細さは圧倒的。しかもアナグリフ方式の立体視データまで収録し、自分で赤と青のセロファンを用意すればモニター上で立体視が楽しめる。バージョン1.0ということもあり未成熟な感は否めないが、今後4次元デジタル宇宙に何を作り上げてくれるのか、実に楽しみなソフトである。

●追記
Mitakaの遊び方を満載したムック「パソコンで3D宇宙ツアー」(毎日コミュニケーションズ)を出しました。ご興味がある方はこちらも記事も参考にしてください。よろしくお願いいたします。

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May 14, 2007

Exakta-EOS マウントアダプタの不人気ぶり

Exaktaマウントのレンズは安い。FLEKTOGONやAngenieuxといった高級クラシックレンズが、M42マウントよりも5000円から10000円ほど安く手に入る。Exaktaというカメラはレリーズが左側にあるため不人気機種だ。安いには安いなりの理由がある。しかし、マウントアダプタ経由でデジタル一眼レフに装着するなら関係ないよね、なんて思いつつ、Exakta-EOSマウントアダプタを買ってみた。

Exak01

Exakta VX1000の購入にともない、Tessar 50mm/f2.8P.Angenieux Paris 35mm/f2.5が手元にある。せっかくだからデジタル環境でもこれらのレンズを楽しみたい。そんな思いから買ってみたわけだが、このマウントアダプタ、実に微妙なスタンスなのだ。購入したのは近代インターナショナル製。15000円程度とかなり高額なアイテムだ。もうちょっとお金を足せばExaktaのボディが買えてしまう。デジタル全盛のいまでもExakta用レンズが安いのは、マウントアダプタが高いという理由もありそうだ。ただまあものは考えようで、Exaktaマウントのレンズを増やしていけば一本あたりのコストが下がっていく。なんて皮算用を自らに言い聞かせないと、やはり手を出しづらいアイテムだ。

【絞りボタンの凸部がジャマです】
Exak02 Exak03

左の写真はAngenieuxにマウントアダプタを取り付けたところだ。M42マウントアダプタと異なり、ずいぶんと凝った造りになっている。レンズから取り外すときは板バネを内側に押して回転。いわゆるバヨネットタイプのマウントなので、レンズとアダプタをしっかりとロックできる仕組みだ。

右の写真はTessar 50mm/f2.8の裏面だ。絞りボタン(レリーズボタン)に凸部がある。実はこいつが干渉するためマウントアダプタが取り付けられない。絞りボタン付きレンズはExaktaの特徴なのだが、この手のレンズをマウントアダプタ経由で使いたいときは要注意。前もって凸部の有無を確認しておこう。ていうか、確認しないで凹んだのはぼくです……。

【無限遠は出るの出ないの!?】
取扱説明書をよく読むと、100メートル以上の撮影はF8以上に絞りなさない、と書いてある。これはつまり、「厳密には無限遠が出ないのだが、絞ればそこそこ見られるようになるよ」ということなのだろうか。早速テストしてみた。

Lm_mg_66572 Lm_mg_66582 Lm_mg_66602

脱力しきったサンプルで恐縮だが、左から開放、中間絞り、f8で撮影している。シャープネスがわかりやすいように、撮影した一部を切り出して掲載した。取説にあるとおり、絞り込まないとフワフワもやもやだ。なんでもミラーとの干渉を防ぐためにフランジバックを厚めにとっているとかで、そのせいで厳密には無限遠が出ない設計になっている。しかし、f8以上に絞り込めばそこそこシャープに写るので許容範囲内、ということのようだ。

そんなこんなでExakta-EOSマウントアダプタは、いろいろと制約の多いアイテムだ。Exaktaマウントのレンズが安いからといって、わざわざ買うほどのものではないだろう。あくまでも手元にExaktaマウントのレンズがあり、それをデジタルで使いたい人向けと考えた方がいい。とはいえ個人的な損得勘定でいうと、Angenieuxをデジタルで使えるというだけで大満足なのだが。

Lm_mg_7366_2 Lm_mg_7378_1 
Lm_mg_7372_1
EOS 20D + P. Angenieux Paris 35mm/f2.5

Angenieuxのやわらかさって、ハードにイジっても破綻しないんだもの(笑)。きっと階調性豊かなレンズなんだろうな。

※Exaktaのレビューはこちらをご覧ください。

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May 13, 2007

M42-EOS 電子マウントアダプタ の微妙な快適さ

●書籍のご案内
このたびマウントアダプタとオールドレンズの総合入門書「オールドレンズ パラダイス」を執筆しました。基本操作をステップバイステップで解説し、FLEKTOGONに代表されるイエナ製レンズ、Y/Cマウント、ライカRマウント、電子マウントアダプタなどを取り上げています。以下の書籍解説記事も合わせてご覧ください。

「オールドレンズ パラダイス 発売日決定!」

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前々から気になるアイテムがあった。ヤフオクでよく見かけるアレ、電子マウントアダプタ。マウントアダプタ経由のレンズ装着はMFが基本だが、電子マウントアダプタはフォーカスエイドが使えるという。ホントにそうなのか? バッタモンじゃねえの!? いろいろな思いが脳裏をよぎるが、ものは試しで買ってみた。

Lmimg_0220

【半押ししながらピント合わせ】
今回手に入れたのは、ヤフオクに出品されていた8800円のもの。この出品者は複数種類のM42-EOS電子マウントアダプタを出品していたが、対応機種が異なるだけで機能的には大差がないらしい。手持ちのボディがEOS 20Dという枯れたカメラということもあり、一番安いやつをチョイスした。

Elec02マウントアダプタの裏面を見ると、なにやらチップが貼り付けてある。詳しいことはわからないが、この電子接点によってボディと連係するようだ。このマウントアダプタを使ってM42レンズを取り付けると、ボディ側の絞り値は「1.8」と表示される。一般的なマウントアダプタだと「0.0」になるので、やはりボディを電子的にだまくらかしているという印象。どうにも胡散臭さが漂うが、肝心のフォーカスエイドはちゃんと動作した。シャッターボタンを半押ししながらヘリコイドをまわしていくと、目視で合焦と感じたところでAFフレームが赤く点灯する。任意のAFフレームを選択固定した状態でもフォーカスエイドが使えた。半押ししながらピント合わせ、という独自のお作法があるものの、ピントの山がつかみづらいレンズでは効果的なアイテムだ。

【嗚呼、ピン押ししないタイプなのね】
今回怪しげなアイテムを購入した理由は、なにも人柱になろうなどと殊勝なことを思ったわけじゃない。年明けに購入したFLEKTOGON 20mm/f4がどうにもピント合わせがやりづらく、電子の目で合焦させようという目論みだ。ところがですね、肝心のFLEKTOGON 20mm/f4で電子マウントアダプタが使えないんですよコレが!

Elec03 Elec04

左の写真は近代インターナショナル製のM42マウントアダプタを付けたところ。右は電子マウントアダプタを装着した様子だ。レンズ背面のピンの状態に注目してほしい。近代インターナショナル製はピンを押し込み、電子マウントアダプタはピンがそのまま立っている。もちろん、ピンが立った状態でもEOS 20Dに取り付けられるのだが、絞りが常時フル開放で使いモノにならない。これまで運良く自動/手動絞りの問題を回避してきたけど、ついに直面しちゃいました……。

【クラシックレンズは手動絞りアリがいい】
Elec05いまどきのAFレンズには無縁の話だが、MFレンズには自動絞りと手動絞りの2種類がある。たとえばMC FLEKTOGON 35mm/f2.4には「M/A」というスイッチがあり、Aの状態だと自動絞り、Mにすると手動絞りに切り替わる。自動絞りとはシャッター半押し、およびプレビューボタンを押したときに絞りが絞り込まれ、通常時は絞り開放の明るいファインダでピント合わせできるという機能。一眼レフではずいぶんと古くからこの機能が採用されている。一方手動絞りとは、レンズ側の絞り値に応じて絞りが絞り込まれる。いわゆる実絞りの状態だ。マウントアダプタを使ってレンズを装着した場合は、好むと好まざると、この手動絞りで使うことになる。なにしろレンズに純正対応したボディではないから、ピンを押し込む機構がない。ピンを押し込めないと常時フル開放……。これではボケボケふわふわな写真しか撮れない。

この自動/手動絞りの切り替えは、レンズ背面のピンが担っている。自動絞りの状態だとボディ側からこのピンを押し込み、レンズ側で設定した絞りまで絞り込む。手動絞りの場合はピンがレンズ側に引っ込み、絞りを動かすとリニアに絞り込まれる。こう書くとわかりづらいかもしれないが、試しにA(自動絞り)に設定して背面のピンを指で押してみよう。絞りが動くのがわかるはずだ。そしてM(手動絞り)するとピンがレンズ側に引っ込み、レンズ側の絞りを動かすと絞り羽根が動く。目で見て確かめるのがわかりやすい。

【ピン押しタイプならどんなレンズでも安心】
問題を整理すると、「自動絞りのみのレンズは、ピン押しタイプのマウントアダプタが快適」ということになる。裏を返せば、手動絞りのあるレンズはピン押しタイプでもピン押ししないタイプでもOK。ピン押ししないタイプのマウントアダプタを使うときは、切り替えスイッチをM(手動)にしておけばいい。んでもって、FLEKTOGON 2mm/f4は手動絞りがない。よってピンをマウントアダプタの縁で強制的に押し込まないと、実絞りで撮影することができないわけだ。近代インターナショナル製のマウントアダプタはピン押しするタイプだったので問題なかったが、ヤフオクで買った電子マウントアダプタはピン押ししないタイプ。よって実絞りでは撮れない。一応、レンズ側の絞り込みレバーを押しながらシャッターを切ることで、疑似実絞り的な撮影もできなくはない。ただ、半押し+ヘリコイドまわし→絞り込みレバー+シャッターという行程はかなり面倒だ。ああもう、ナンのために電子マウントアダプタを買ったんだか……。

まあ所詮はヤフオク購入の怪しげアイテム、こんなオチが相応しいかと。ちなみに、近代インターナショナル製のM42マウントアダプタはピン押しかつ高精度な製品で、それでも5000円程度で購入可能。こうした相場を思うと、8800円もするヤフオクの電子マウントアダプタは割高だ。ピン押ししないし、しかもアダプタ自体の精度が低いから金属クズがボロボロと出る。さらに半押ししながらヘリコイドをまわすという習慣がないものだから、せっかく電子マウントアダプタを付けていてもフツーにMFでピント合わせしている自分がいた。率直な感想としては、ピントは金で買えない、と痛感。カメラに王道なし、です。

ちなみに、ディスカバーフォトというネットショップでピン押しタイプの電子マウントアダプタが売っています。ヤフオクのものよりさらに値が張りますが、どなたかレポートしてくださいませ。ぼくはおこづかいが尽きました。眼力アップのトレーニングに励むことにします。

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