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April 2007

April 30, 2007

Lightroom 1.0 スプリットトーンが楽しい

もともとモノクロ写真やモノトーンライクなカラー写真が好きだ。安直に雰囲気を作り出せるという姑息な考えもなくはないが、放っておくとすぐにグレースケール変換や彩度のスライドバーをマイナス方向に引っ張ってしまう。そのせいかこのところ、Lightroomにゾッコンだ。何が楽しいかって、Lightroomは簡単にスプリットトーンが試せるのだ。

Pho03_6

一般にモノクロ写真といっても、セピアにしたりクールトーンに仕上げたり、何らかの色をかぶせるのはレタッチやRAW現像の常套手段。デジタルカメラで撮った写真を単純にグレースケール変換してしまうと、コントラストが抑えめのせいかどうも味気ない。ぼくらが幼い頃から見てきたモノクロ写真はプリントしたものだ。それは純粋な白黒の世界ではなく、用紙そのものの色や外光の加減で何らかの色を帯びていた。突き詰めるとぼくたちは、本当の白と黒を知っているのか、なんて大げさな境地に突入してしまう……。

【2色で描く光のグラデーション】
Pho02_3ノッケから横道に逸れたが、スプリットトーンとは要はツートーンのこと。単色の階調で光を描くのではなく、ふたつの色で世界を表現する。モノトーンは濃淡の世界だが、スプリットトーンは濃淡にふたつの色が加わる。こう書くとなにやら難しそうだが、Lightroom上の操作は簡単だ。現像モジュールに「明暗別色補正」という項目があり、ハイライトとシャドウで個別に色相と彩度を調節できる。たとえば、色相でハイライトを黄色に、シャドウを青に設定すると、暖色と寒色で階調を描けるわけだ。これはありそうでなかった色彩感。いや、ぼくが知らなかっただけかもしれないけど、とにかくいい雰囲気なのだ。論より証拠、作例を見てもらおう。

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左は普通のグレースケール変換、中央はハイライトが黄色、シャドウが青。右はハイライトが青でシャドウに紫をあてがってみた。セピアやクールトーンとはまたひと味ちがった趣がある。スプリットトーンが効果的な素材は、コントラストがハッキリしている写真だ。作例のように光源を入れ込んだ写真は特に効果がわかりやすい。中間階調の豊かな写真の場合は、ハイライトとシャドウで彩度をわずかにズラし、濃淡の強調として応用すると良さそうだ。

【チョコレートセピアに挑戦!】
そんな具合にスプリットトーンで遊んでいたところ、衝撃的な写真を見つけてしまった。A-Powerで取り扱っているチョコレートフィルムというポラロイド用フィルム。煮詰めたような濃いセピアカラーは脳天直撃だった。サンプルの色合いをみてすっかり気に入ったのだが、いかんせん2本で5000円オーバーではそうそう手を出せない。色合いをよくよく調べてみると、ハイライトはアンバー、シャドウは茶色。モノトーンでは表現が難しそうだがスプリットトーンならナンとかなりそうだ。

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作例はNDフィルタを装着したSX-70で600インスタントフィルムを使っている。ハイライトは黄色、シャドウはオレンジ。ともに彩度は抑えめで、気持ちコントラストを調整した。どうだろう、それとなく近づけたような気がするのだが……。ホンモノのチョコレートフィルムをよく見ると、ハイライト部分がかすかに青みがかる。さすがにそこまでは再現できなかったが、アプローチとしてはグレースケール変換せずに彩度を落とし、色温度で青みを付ける。その上でスプリットトーン化していけばナンとかなりそう。ただ、いろいろと微調整してみたのだが、パッと見の印象は掲載した作例の方がチョコレートフィルムに似ている。

【プリセット、公開しちゃいます】
海外のサイトではLightroomのプリセット公開がぼちぼち始まっているようだ。そんなわけで、このチョコレートフィルム風プリセットをダウンロードできるようにしました。ZIPファイルを解凍すると「チョコレート.lrtemplate」というファイルがあらわれるので、こいつを「C:\Users\〈ユーザー名〉\AppData\Roaming\Adobe\Lightroom\Develop Presets」に放り込んでください。と、ここまで書いて気づいたんですが、上記の手順、Vista環境の例になります。うむ、XPの場合はどこのフォルダなんだろう……。ていうかLightroomってVista未対応でしたっけ(汗)。

「choco.zip」をダウンロード

なお、このプリセットなんですが、デジイチで撮った写真だといまひとつチョコレートっぽくなりません。おそらくポラロイドフィルム特有のコントラストとかボケ味が影響するのかなあ、と。写真というのはホント、理数的に縦割り解釈するのが難しいです。

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ハイライトの彩度、ちょい下げかなあw

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April 18, 2007

MP960 初級カラーマネージメント テクニック

ディスプレイで見ている色をそのままプリントしたい。こんなに単純なことがどうしてもこうも難しいのだろう。カラーマネージメント、キャリブレーション、ICCプロファイルにカラースペース。わかるようなわからんような専門用語が飛び交い、暗中模索を繰り返し、ソフトやドライバの設定をアレコレ変更して、それでもプリントの色は見るも無惨……。そんなぼくとあなたのために、色合わせのセオリーを考察してみよう。

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【色空間の方言を翻訳しなくては!】
カラーマネージメントの手順や基礎知識については、すでに様々なホームページやブログで取り上げられている。しかし、手順は特定ソフトにしか通用しないし、基礎知識といいながらけっこう難解な内容で、プロの現場を知らない人には理解しづらいのが現状だ。でもよくよく考えてほしい。見ている色をそのままプリントしたいという思いは、なにもプロフェッショナルユーザー固有のものではない。ごく普通のパソコンユーザーやデジカメユーザーだって、見たとおりにプリントしたいはず。そこで極力お金をかけず、必要最低限のステップで、なおかついろいろなソフトで応用が利くようなカラーマネージメントテクニックを考えてみたい。なお、これから展開する記事は「ディスプレイで表示している色とプリントした色を、できるだけ近づける」のが目的だ。きれいにプリントすることが目標ではない。その点は留意してほしい。

手順を解説する前に、ちょっくらカラーマネージメントについて勉強しておこう。カラーイメージング機器というものは、おしなべて独自のカラースペースをもっている。ディスプレイ、プリンタ、デジタルカメラ、スキャナ、そして印刷用紙や画像データに至るまで、すべて固有の色空間をもっている。たとえばあるデジタルカメラが「青みがかった赤」と認識している色を、とあるプリンタは「赤みの強い紫」ととらえている。色のとらえ方がカラーイメージング機器によって異なるわけだ。さらにプリンタはCMYKで色を管理し、ディスプレイやデジタルカメラ、画像データやレタッチソフトは、RGBで色を管理している。ひと口に日本語といってもさまざまな方言があるように、カラーイメージング機器も独自の方言(カラースペース)で色を管理しているのだ。

【色空間の標準語、Lab値で会話成立】
方言と方言では会話が成り立たない。両者の方言を翻訳するのが、カラーマッチングとかカラーマネージメントと呼ばれる作業だ。要は色合わせと思ってもらえばいい。前述の例でいうと、「青みがかった赤」と「赤みの強い紫」が同じ色なのだと通訳してやる。方言を翻訳するには、両者の言い分を標準語に変換してやればいい。じゃあ、色空間(カラースペース)の標準語とは何か? それhLab値で管理された共通のカラースペースだ。

Lab値とは、明度、色相、彩度という三要素を数値化したもの。うむ、なんだか難しそうだ。とらえ方としてはこんな風になる。普段ぼくらは住所地名で場所を把握する。これは目の前の色を「青みがかった赤」と呼んでいる状態。しかし場所を管理する方法はもうひとつある。それは緯度経度を用いた座標だ。たとえば成田空港は、われわれ日本人にとって千葉の片田舎だ。でもアメリカ人にとってはTokyoの入口である。こうした言葉による表記は、言語のちがいや認識の相違が介在してしまう。しかし、「 35°45'50.34"N 140°23'4.72"E」と座標で表せば、世界共通で地球上の一点を確実に示すことができる。Lab値とはいわば色の座標。色の絶対値なのだ。各カラーイメージング機器の色空間をこのLab値に変換すれば、「青みがかった赤」と「赤みの強い紫」という把握のちがいに振り回されずにすむ。Lab値は色の方言を吸収する標準語というわけだ。

【ICCプロファイルは色の辞書】
ではカラーイメージング機器は、どうやって独自のカラースペースを色の座標「Lab値」に変換するのだろう。独自のカラースペースと、Lab値で管理された共通のカラースペース。このふたつを結びつけるのがICCプロファイルだ。カラーイメージングに興味のある人なら名称ぐらいは聞いたことがあるだろう。ICCプロファイルには「青みがかった赤はLab値でいうと○○○番ですよ」という情報が詰まっている。要は色をLab値に翻訳するための辞書のようなものだ。

各カラーイメージング機器がそれぞれICCプロファイルを持っていれば、Lab値で管理された共通のカラースペースを通じて、正確に色の受け渡しが行える。先の例でいうとこんな具体になる。デジタルカメラの「青みがかった赤」という情報をデジタルカメラ用ICCプロファイルでLab値に変換。そしてそのLab値をプリンタ用のICCプロファイルと参照することで、デジタルカメラの「青みがかった赤」がプリンタの「赤みの強い紫」と同じ色なのだと判明する。これがカラーマッチングおよびカラーマネージメントという作業だ。

【カラーマッチングはどこでやる!?】
色の方言を翻訳して会話を成立させる――それがカラーマッチング。ここまでは理解できただろうか。「見ている色をそのままプリント」するには、画像データ、画像編集ソフト、ディスプレイ、プリンタの色空間を、それぞれマッチングさせることになる。そのマッチング作業はどうやるのかというと、実はOS標準のカラーマネージメント機能が使えるのだ。ウィンドウズなら「ICM」、MacOSでは「ColorSync」がカラーマネージメントを担っている。また、Adobe PhotoshoやLightroomなどはソフト側で独自のカラーマネージメント機能を備えている。そう、色合わせの場はひとつではなく、複数存在する。大切なのは、どのカラーマネージメント機能で印刷するか、ユーザーが明示的に選ばなくてはならない。OS標準のカラーマネージメント機能を使うか、それともソフト側の機能にするか。色の方言の翻訳は一度でいい。一度でいいが、必ず翻訳しなくてはならない。これが「見ている色をそのままプリント」するための最重要ポイントだ。

カラーマネージメント機能を選ぶ――たったこれだけのことを言うために長々と書いてきたが、どん引きせずについてこれてるだろうか。これ以降は具体的な手順を紹介したい。といってもただステップを解説するのではなく、各設定が色合わせのどの行程に相当するのか、それを考えながらプリントを進めていくとしよう。

■■Photoshop Elements 5.0の場合■■
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カラーマネージメント機能を利用したプリントの流れは、ざっくりいうと以下のようになる。(1)画像データのカラースペースを指定し、(2)使用するカラーマネージメント機能を選び、(3)そのカラーマネージメント機能を画像データのカラースペースと合わせ、(4)印刷用紙の種類を正しく設定。もうなんていうか、選んでばっか。まずは画像データのカラースペース選びからだ。

【画像データにもICCプロファイルがある】
デジタル一眼レフやハイエンドコンパクト機では、画像フォーマットでカラープロファイルが選択できる。sRGBとかAdobe RGBというのがそれ。Adobe RGBの方が広い色空間を扱えるので、より微細な色調まで再現。「見た目通りにプリントしたい」と思っている人は色にこだわりがあるだろうから、カメラが対応しているならAdobe RGBで撮影しておきたい。んで、このカラープロファイルというのは、実のところ画像データのICCプロファイルなのだ。カラーマネージメントを用いたプリントを行うには、まずスタート地点として画像データのICCプロファイルを正しく(というよりも明示的に)設定しておく必要がある。

一般にデジタルカメラ側で指定したカラープロファイル(画像データ用ICCプロファイル)が画像データに埋め込まれるのだが、ぼくが使っているキヤノン製デジタルカメラは埋め込まない仕様になっている。そこで画像をPhotoshop Elements 5.0に読み込むと、こんな画面があらわれる。

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カラープロファイルが見当たらねえんだけど、どれにする? と聞いてくるわけだ。ここではカメラ側で設定したカラープロファイルを選ぶ。sRGBで撮ったならsRGBを、Adobe RGBで撮ったならAdobe RGBを選択。ちなみに、「カラーマネージメントなし」を選ぶと、カラーマネージメント印刷にノッケからつまずいてしまう。さらにAdobe RGBで撮ったのにsRGBを選ぶと色調クオリティが落ちる。撮影時のカラープロファイルを選ぶのがポイントだ。

Pe03
ちなみに、リコー「GR DIGITAL」とソニー「α100」で撮ったJPEG画像はそのまま読み込むことができた。これは画像データにカラープロファイルが埋め込まれているということになる。で、問題は、そのカラープロファイルは何か、ということ。もちろんカメラ側で設定したカラープロファイルなのだが、メニューバーの〈イメージ〉→〈カラープロファイルを変換〉で確認しておくといいだろう。グレーアウトしているのが画像に埋め込まれているカラープロファイルだ。

【ICMを使うならプリンタ側で管理】
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画像にカラープロファイルを埋め込んだら、お待ちどおさま、やっとプリント作業に突入だ。プリント画面を出して「カラーマネジメント」の項目に注目。「ソースカラースペース」が画像に埋め込んだカラープロファイル、つまり画像データのICCプロファイルになっている。ここではsRGBを埋め込んだ写真を使うことにした。んで、まずはウィンドウズ標準のカラーマネージメント機能「ICM」で印刷してみたいと思う。この場合、「プリンタプロファイル」で「プリンタ側でカラーマネージメント」を選ぼう。「いやいや、プリンタのドライバ補正じゃなくてウィンドウズのICMを使いたいんだよ!」というツッコミはごもっとも。ここがカラーマネージメント印刷の不親切なところなんです。

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先の画面で〈プリント〉ボタンをクリックすると、プリンタドライバ画面があらわれる。「用紙の種類」を正しく設定して、「印刷品質」を「ユーザー設定」にしよう。「設定」ボタンをクリックすると以下のような画面があらわれる。

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今回は印刷用紙にプロフェッショナルフォトペーパーを用いているので、最高品位で印刷したい。「品位」のスライドバーを「1」に設定しよう。ちなみに、前画面の「印刷品質」で「きれい」を選んだ場合は「2」になっている。おそらく印刷スピードを優先しての措置だろう。でもまあせっかくのカラーマネージメント印刷なので、ここでは最高品位を選んでみた。まあ、この設定方法はいろいろなサイトで見かけるのだが、ぶっちゃけカラーマネージメントとは無関係だ。単に印刷精度の設定である。つまり、プロフォトペーパーを選んで「きれい」モードでプリントしたってかまわない。あくまでも高品位に仕上げるためのオプション的設定だ。

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ふたつ前の画面写真にて「色/濃度」を「マニュアル調整」を選び、「設定」ボタンをクリックしたのがこの画面だ。ここがICMでプリントするための山場である。「色補正」に「ICM(Windowsの色補正機能)」という項目がある。こいつを選択しよう。これでICMを使ったカラーマネージメント印刷が行える。この画面でわかりづらいのは補正という言葉を用いているところだ。補正という言葉を見ると、「補正って色を変えちゃうんでしょ!? そうじゃなくて見た色をそのままプリントしたいのにぃ」と思ってしまう。補正=カラーマネージメントと解釈すればずいぶんわかりやすくなる。この画面も「ICMで色合わせ」って記しておけばいいのに。

入力プロファイル」という項目では画像データのカラープロファイルを指定する。今回はsRGBを埋め込んだ画像をプリントするので、初期設定のまま「標準」を選んでおこう。ウィンドウズはsRGBが標準カラースペースになっており、この「標準」という名称は理にかなっている。もちろんウィンドウズのカラースペースがsRGBと知っていればだが……。なお、「明るさ」の項目が「明るく」になっているが、これはhueyでモニターキャリブレーションした人向けの設定。モニターキャリブレーションしていない環境では、初期設定の「通常」でOK。これらの設定で、ディスプレイに表示した画像とプリントがほぼイコールの色合いになる。

【Photoshop Elementsのカラマネ機能を使う】
Photoshop Elements 5.0はアプリケーション側でカラーマネージメント機能を搭載している。これを使った場合もICMと同品位のカラーマネージメント印刷が可能だ。アプリケーション側で設定する利点はマッチング方法を選べるところ。このマッチング方法については後述するとして、早速Photoshop Elements 5.0のカラーマネージメント機能の使い方を紹介しよう。

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画像データにカラープロファイルを埋め込んだあと、前述の手順と同じようにプリント画面を出す。そして「プリンタプロファイル」で印刷用紙のICCプロファイルを選ぼう。これでPhotoshop Elementsのカラーマネージメント機能が有効になる……ってなんじゃいそりゃ!? ハイここ激しくツッコんでほしいところです。いやあ、わかりづらいよねえコレ。

このプリンタプロファイルという項目は、カラーマネージメント機能をプリンタ側(ICMかプリンタ独自のドライバ補正)にするかPhotoshop Elements独自のものを使うかを指定するのだが、と同時に、独自カラマネ機能を選んだ際の印刷用紙のICCプロファイル設定項目になっている。つまり、ICMか独自カラマネ機能か→独自機能なら用紙のICCプロファイルを選べ、というわけ。どう考えたってわかってる人向けのメニューじゃん。アレですかねえ、シロートはカラーマネージメント印刷に手ぇ出すなってことでしょうか。どのカラーマネージメント機能を使うかという選択と、用紙のICCプロファイルを選ぶという作業は別モノだと思うんですが。

愚痴はこれくらいにして、用紙のICCプロファイルですね。要はこれ、用紙の種類を指定するだけのこと。プリンタドライバでよくやってる作業と同じことだ。ただし、このメニューをプルダウンさせると記号めいたリストがズラリと並ぶ。どれがどの用紙なのかわかりづらい。キヤノン純正紙のICCプロファイルと実際の用紙名は以下のような関係だ。

PR:プロフェッショナルフォトペーパー
SP:スーパーフォトペーパー
MP:マットフォトペーパー
(※末尾の数字は印刷品質を示し、数字が若いほど高品位)

画面では「PR1」を選んでいるが、これはプロフェッショナルフォトペーパーに最高品質でプリントします、という意味。末尾の数字は印刷品位のスライドバーの数値と合致している。ここで「PR1」を選んだ場合はプリンタドライバで品質を「1」に、「PR2」を選んだ場合は「2」に明示的に設定しておこう。なお、マッチング方法は「相対的な色域を維持」を選んでおくのが一般的。これについては後述します(ってそればっかじゃん)。

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仕上げはプリンタドライバ側の設定だ。「印刷品質」は「ユーザー設定」を選び、スライドバーを「1」に(「PR1」を選んだからね)。「色/濃度」は「マニュアル調整」を選び、このマニュアル色調整画面を呼び出す。で、ここが重要! 「色補正」で「なし」を選ぼう。「なし」を選ぶということは、プリンタドライバ独自の補正機能(ドライバ補正)を使わず、しかもウィンドウズ標準のICMも使いませんよ、という意味だ。なにしろPhotoshop Elementsのカラマネ機能を使うのだから、他のカラーマネージメント機能を使う必要はない。これでICM同様、ディスプレイ上の画像とほぼイコールの状態でプリントされるようになる。

【知覚的か、それとも相対的か】
さて、先延ばしにしてきたマッチング方法についてだ。ここでは通常、「相対的」か「知覚的」を選ぶことになる。相対的というのはわかりやすくいうと、色情報を数値的にみて、近似値同士をマッチングさせる方法。知覚的とは人が見たときの雰囲気を重視した色合わせということになる。一般的には「相対的」の方が理想的に色合わせ(カラーマッチング)してくれるようで、ICMでプリントする際も自動的に「相対的」が選ばれていた。

しかし、こうした言葉による説明はわかりづらい。ぜひ一度、Photoshop Elements側のカラマネ機能を選び、相対的と知覚的で同じ画像をプリントしてほしい。二枚のプリントを見比べて、より画面表示に近い方、もしくは近いと感じられた方が相応しいプリントだ。

今回、いくつかのサンプルでテストしてみたところ、相対的は濃いめに(もしくは暗めに)プリントされ、知覚的は軽い雰囲気でプリントされる傾向があった。これは個人的な印象だが、ぼくの環境では「知覚的」の方が気持ちいい。これはおそらく、デジタル一眼レフで撮影した画像をプリントしていることと関係しているようだ。知覚的でプリントすると、グラデーションがきれいに出るという。デジイチで撮った画像はボケ味を活かした写真が多く、画面の多くの面積がグラデーションで占められる。そのため「知覚的」の方が好ましく思えたのだろう。このマッチング方法は、微細ではあるものの、写真の重さ軽さを左右する印象を受けた。ここイチバンのカットは両方でプリントして、いい方をチョイスしたい。

毎度ながら長い解説になってしまったが、お金をかけずにナンとかカラーマネージメント印刷にたどりつけた気がする。先般、「Adobe RGBでプリントしたい!」という記事を掲載したが、ぼくの勉強不足やテスト不足があり、誤解を与えるような内容になってしまった(※削除しました)。ひとつだけ言い訳させてもらうと、見た目の色にこだわるあまり設定をイジくりすぎたようだ。というのも、今回の手順を踏まえても、MP960ではどうしても黄色くなる。それが気になって仕方ない。ここから先はプリンタを買い直すか、プリントキャリブレーション商品に手を出すことになるのだろう。とりあえず手持ちの環境でできることは、こんな感じではないだろうか。また日を改めて、Lightroomやhueyを用いた環境についても追いかけてみたい。

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April 12, 2007

EOS 20D リモート撮影に挑戦

先日、撮影立ち会いでスタジオに遊びに行ったときのことだ。カメラマンがEOS DIGITALとパソコンをケーブルでつなげ、バシバシとブツ撮りをこなしている。撮ってはモニターをのぞき、「このテカリは抑えた方がいいね」なんていいながらまた撮影に戻っていく。その姿がなんともかっこよかった。真似てみるか、リモート撮影にチャレンジだ。

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意気込んではみたものの、タイミングがわるかった。その時期はメインマシンをVista搭載機に入れ替えた直後。EOS DIGITALのユーティリティ類がまだVistaに対応しておらず、試したいのにためせないという状況がつづく。それが先般、EOS DIGITAL関連のソフトが一斉にアップデートされ、やっとVista環境でリモート撮影できるようになった。リモート撮影の手順とアドバンテージについて、今回はレポートしてみたいと思う。

【つなぐだけでHDDにダイレクト保存】
リモート撮影の仕組みはカンタンだ。EOS DIGITALとパソコンをUSBケーブル(機種によってはIEEE1394ケーブル)でつなぎEOS Utilityを起動。あとはシャッターボタンを押すとDigital Photo Professionalが自動的に起動し、撮影データを表示してくれる。写真をディスプレイで大きく確認できるため、露出や絞りの状態を逐一チェックしながら撮影できるのがいい。先日アップした「EXA 1b 腹ちがいの兄弟」のカットはこのリモート撮影環境で撮ったものだ。普段は撮影後に露出やコントラストをアレコレいじくり、さらにトリミングにもかなりの時間を費やすのだが、このときはホワイトバランスを微調整するだけで済んだ。撮影の段階で構図や各種設定をキメ打ちできるので、撮影データがそのままOKカットになる。これまでも撮るたびにプレビューで画像チェックは行っていたが、大きな画面でチェックできる快適さは格別。そのメリットは計り知れない。

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パソコンへのダイレクト転送はリモート撮影の一側面にすぎない。この機能はその名の通り、カメラを遠隔操作できる。リモート操作できることを列挙してみると、絞り、ISO、露出補正、ホワイトバランス、焦点方式、画像記録形式、そしてシャッターボタンといった項目が、すべてEOS Utility上で操作可能。マニュアルフォーカスでピントを合わせたら、あとはパソコンの前に座ってクリックするだけ。露出も絞りも思いのままというわけだ。さらにメモリカードの初期化やカスタムホワイトバランスの調整まで行える。以前フォトディレクションを行っている友人から聞いた話だが、通販系紙媒体の制作現場ではこうしたリモート撮影環境を構築し、HDDからそのままネットワーク経由で印刷所にデータを送っているらしい。カメラマンはパソコンに張り付いてひたすらクリックしているそうだ。この話を聞いたときはずいぶんと奇異に思えたが、自分でリモート撮影を試してみると理にかなったシステムだとつい納得してしまう。

【環境セッティングで使いやすさを追求】
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そのままでも十分に快適なリモート撮影だが、「環境設定」画面を煮詰めていくとより使いやすくなる。最初に着手したいのが起動時の動作(画面左)だ。ここで「「カメラの設定/リモート撮影」画面を開く」を選んでおくと、パソコンにEOS DIGITALをつなぐだけでEOS Utilityが自動起動するようになる。写真の保存先は「保存先フォルダ」タブで設定できる(画面中央)。この画面のオススメ機能はサブフォルダの自動作成だ。「リモート撮影」にチェックを入れておくと、指定したフォルダの下層に随時サブフォルダを作って写真を保存してくれる。フォルダ名はその下にあるプルダウンメニューで指定可能。「撮影年月日」にしておくと重複がなくわかりやすくいだろう。なお、インターバル撮影機能も搭載しており(画面右)、撮影間隔と撮影枚数を指定できる。撮影開始時間は「遅延設定」で設定可能。撮影開始時刻を指定するのではなく、何時間後に撮影を開始するかという設定スタイルだ。この機能は朝顔の開花、カブトムシのふ化といった撮影にうってつけ。これで夏休みの宿題も安心だ(笑)。

【連係ソフトの変更は事実上不可能!?】
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連係ソフトは初期設定でDigital Photo Professionalになっているが、これを別のソフトに変更できる(画面左)。早速使い慣れているLightroomとSILKYPIXに変更してみたのだが、これがナンとも微妙な動作だった。まずLightroomだが、初期状態では撮影のたびに「写真の読み込み」画面があらわれる(画面中央)。1枚撮るごとに読み込みボタンをクリックするのは現実的ではないだろう。ただし、自動読み込み設定を有効にすると撮影画像をうまく取り込めるらしい。marupei.net photographyに詳しい手順が載っているので、Lightroomユーザーはそちらを参照してほしい。SILKYPIXはというと、撮影ごとにちゃんと画像が全面表示される。これはイケそうだと思ったのだが、サムネイル画面に切り替えると直前の1枚しか画像がない……(画面右)。撮影データ自体はEOS Utilityで指定したフォルダに保存されているのだが、SILKYPIXには直近の画像しか表示されないようだ。Digital Photo ProfessionalはRAW現像ソフトとしては異例の軽快動作だし、ここは純正ソフトを使っておくのが大人の選択ということか。

【DPP3.0のアップデートポイント】
Picture0010_3ちなみにDigital Photo Professionalはバージョン3.0にアップデートされ、いくつかの機能強化が施されている。なかでも実用的な強化ポイントはノイズリダクショントリミングだ。従来バージョンのノイズリダクションは初期設定でオフになっていて、環境設定画面で表示用ノイズリダクションと現像用ノイズリダクションを別々に設定する必要があった。動作の軽快さを確保するためにあえて表示用ノイズリダクションをオフにしていたのだ。とはいえノイズリダクションの効き具合を見るたびに環境設定を呼び出すのは面倒な話。バージョン3.0では編集画面に「NR」タブが加わり、疑似リアルタイムでノイズリダクションが使えるようになった。そう、市販RAW現像ソフトのようにリアルタイムで効き具合は確認できない。スライドバーを動かし、「NR適用」ボタンをクリックしてはじめてノイズリダクションが効く。ノイズリダクションはけっこうヘビーなタスクなので、リアルタイム動作だと動きが重くなる。そのため手動で適用する仕組みを採用し、軽快さを重視したということのようだ。

Picture0011_3トリミングはサムネイルにトリミングした枠が表示できるようになった。こう書くと「それのどこが機能強化なのさ!」とツッコまれそうだが、従来バージョンのDigital Photo Professionalはトリミングしてもサムネイルは元画像のままで、トリミングツールを起動するか現像するまでトリミング後の画像は確認できなかった。他ソフトでは当たり前のことがやっとバージョン3.0で達成されたわけだ。ちなみに、追加ピクチャースタイルは相変わらずその都度読み込む必要があり、開発陣にはソフト側に登録するという考えが希薄らしい。不満を書き出すと止まらなくなるのだが、高速RAWビューワとしては重宝するし、軽めの補正ではLightroomやSILKYPIXよりもハンドリングしやすい。個人的には使用頻度が高く、気に入っているソフトだ。

話が脱線したが、みなさんはリモート撮影にどんな印象を抱いただろう。ディスプレイで即画像チェック、メモリカードの残量を気にすることなく、その気になればパソコンの前に座ったまま撮り続けられる。こうした環境が、一切お金をかけずに構築できるのだ。リモート撮影、一度お試しあれ。

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April 10, 2007

EXA 1b 腹ちがいの兄弟

ふたつの欲望があった。Exakta用のアイレベルファインダーがほしい。M42マウントのFLEKTOGONをフィルムカメラで使ってみたい。まったく矛先のことなる欲求。いつもならアイレベルファインダーを買い、さらに中古のM42マウントカメラを買っていただろう。ただ、このところレンズ代がかさんで金欠だ。いろいろと調べた挙げ句、一石二鳥の買い物をすることにした。Exaktaの弟分、EXA 1bである。

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一連のEXAシリーズは、Exaktaの普及価格帯モデルという位置づけだ。初代Exaktaが登場した1930年代から連綿とつづいている。今回購入したEXA 1bは1977年以降に製造されたモデルで、実は先日購入したExakta VX1000よりもずいぶんと新しい。70年代といえば当時のディフェクトスタンダードはM42マウント。このモデルはExaktaマウントではなく、時流に合わせてM42マウントを採用している。じゃあ機構的に刷新されているのかというと、相も変わらずレリーズボタンは左側。Exaktaの末裔であることに変わりない。つまりEXA 1bという写真機は、Exaktaの血を受け継いだM42マウントカメラであり、Exakta VX1000の異母兄弟みたいなもんだ。

【ExaktaとM42をつなぐミッシングリング】
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当然M42マウントだから、手持ちのFLEKTOGONが装着できる。写真左はFLEKTOGON 20mm/f4を装着した姿。コロンとしたボディに前玉の大きなレンズをつけると、仰々しくも愛らしいルックスだ。隣の写真はExakta VX1000と並べてみたところ。デフォルメを絵に描いたようなダウングレードぶりで、ガンダムとジムの関係がそのまま当てはまる。デザインの簡略化はもちろんだが、フロントパネルは金属から樹脂に換わり、フェイクレザーの質感もあきらかに安っぽい。もっとも顕著なのがシャッタースピードで、Exakta VX1000が最速1/1000であるのに対し、EXA 1bは1/175だ。ISO100のフィルムを使っても、昼夜を問わずパンフォーカス。ボケ味を活かした写真は撮れない。完全なるスナップカメラだ。

なんでそんな表現力のないカメラを買ったのさ? この疑問はごもっとも。答えは右の写真にある。EXA 1bはM42マウントカメラだが、そうはいってもExaktaのDNAを受け継いでいる。交換式ファインダーを採用していて、Exaktaのファインダーがそのまま装着できるのだ。逆に言うと、EXA 1bのファインダーをExakta VX1000に付けることだってできる。もうおわかりだろう。今回購入したボディはアイレベルファインダーを搭載している。こいつをExakta VX1000に取り付けようという腹づもりだ。

【行きつくところは着せ替えごっこ】
そんなわけで、早速ファインダーの移植だ。EXA 1bからアイレベルファインダーを引っこ抜き、そのままExakta VX1000に装着。この作業はただ抜いて挿すだけなので、ドライバーとか専用工具は一切不要だ。さらにかねてから準備しておいた角型メタルフードをつけると……、う~ん、イカすぜアニキ!

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そもそもがイカつい顔つきなのに角型フードで凄みが増し、レザーの速写ケースを付けるともう、ナンていうか非常に軍隊っぽい。ハード路線が好きなぼくとしては、このカスタムはかなりお気に入りだ。GR DIGITALもそうだけど、どうしてカメラのカスタムはこんなに楽しんだろう。金がつづかんよ……。

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肝心のEXA 1bはというと、ウエストレベルファインダーでますます愛嬌が増す。MC FLEKTOGON 35mm/f2.4をつけるとたまらなくキュートだ。ファインダーを跳ね上げた姿にいたっては、カメラ日和に載っていてもおかしくないくらい。Exakta VX1000とEXA 1b、同じメーカーとは思えないほどに見た目の異なるカメラだ。

そういえば、着せ替えに没頭してEXA 1bで撮ってなかった……。写真そっちのけのカメラ好きに世間は往々にして批判的だけど、メカを愛でるのも楽しみのひとつだと思う。理由? そんなの単純だ。

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だって、カッコいいじゃないw

●EXA 1bの作例はこちら

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April 07, 2007

Angenieux 35/2.5 やわらかさの正体

「ジョン・レノンって、Exaktaにアンジェニューつけて撮ってたんだって」そんな話を聞いた。ぼくのギターの腕前は、かろうじてが押さえられる程度。それでも「Imagine」だけは弾ける。ジョン・レノンはかなり好きだ。ならば買うしかないだろ、アンジェニュー! そんなわけで、P. Angenieux Paris 35mm/f2.5を手に入れた。

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Angenieuxは映画用カメラに端を発するフランス製レンズだ。ぼくが手に入れたAngenieux 35mm/f2.5はR1と呼ばれるタイプで、1950年代に作られたらしい。詳細はここを参照するといいだろう。物欲をほどよく刺激してくれます(笑)。レンズの口径は51.5mmとイレギュラーなサイズ。ムリだろうと思いながらためしに52mm径のフィルターを付けてみたら、なぜか付く。でも途中で止まって動かなくなった……。どうやら前のオーナーは無理矢理52mm径フィルターを付けていたらしい。ちなみに、MS OPTICAL R&DからM51.5システムフードというものが発売されていて、これはジャストサイズで付くようだ。ただ、例によってここのフードは高い。まだ購入のフンギリがつきません。

一般にこのレンズはやわらかい描写をするといわれている。やわらかいといえば軟調、軟調といえば低コントラスト。低コントラストといえば、クラシックレンズにありがちなフレアっぽい写り……。う~む、どうなんだろう。現にAngenieuxの描写は好き嫌いがわかれるらしい。やわらかさとは単に低コントラストなのか、それとも別の要因があるのか!? Angenieuxのやわらかさの正体を考察してみたい。

【見ればわかるこの柔らかさ】
まずは論より証拠、Exakta VX1000につけて撮ったサンプルを見てもらおう。フィルムはFUJICOLOR Super400FTを使い、GT-X900でスキャンしている。スキャナは白飛びと黒つぶれを回避するためにダイナミックレンジを狭める傾向があるので、Lightroomに読み込んで「トーンカーブ-Lightroom初期設定」でシャドウを若干落としている。上段がスキャン直後の画像、下段がLightroomで補正した画像だ

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もう見るからにフワフワだ。コントラストはあきらかに低い。しかし、フレアのような浮き足だった描写ではなく、気持ちいい軽さがある。Lightroomでシャドウを引き締めたところで、その軽さは揺らがない。単に低コントラストだからやわらかい、ということではなさそうだ。別の要因としてまっさきに思い浮かぶのは、彩度が低いこと。時代的にシングルコーティングなので、発色がくすむのはやむなし。では、レタッチで高彩度に加工したらどうなるだろう。

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SILKYPIX3.0でトイカメラ風に加工してみた。たしかに被写体は際立つが、柔らかさの対極にあるシャープさや過激さはない。ここまで手を加えてもどこか軽い。ピントが甘い? たしかにその通り。これらの写真はジャスピンではない。Angenieuxはピントの山がつかみづらく、実際にファインダーをのぞいた印象としては、どこにでもピントが合っているような錯覚に陥る。ただ、Angenieuxのピント合わせに関しては、どうもこういうものらしい。知り合いの写真家さんとデジカメライターさんに聞いてみたところ、厳密にピントを合わせてシャープに撮るのではなく、感覚的に撮るのがAngenieuxの気分なのだとか。

しかし、どうなんだろう。低コントラスト+低彩度+ピン甘=やわらかさ。これがAngenieuxの味といわれても、どうもナットクできない。こうなれば奥の手、デジタルドメインで検証してみよう。

【ヒストグラムから柔らかさは見えるか!?】
マウントアダプタを介してAngenieuxをEOS 20Dに装着し、屋内テスト撮影を行ってみた。対抗馬として用意したのはCarl Zeiss Jena MC FLEKTOGON 35mm/f2.4だ。絞りはF3.5近辺、シャッタースピードは1/8秒。Digital Photo Professional 3.0で現像している。

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EOS 20D + P. Angenieux Paris 35mm/f2.5

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EOS 20D + MC FLEKTOGON 35mm/f2.4

Angenieuxの方がやや暗めに写っているが、これは数カット撮っても同じ傾向だった。その理由はヒストグラムを見るとわかる。露出がアンダーなのではなくて、FLEKTOGONがハイコントラストなのだ。ヒストグラムを見ると、FLEKTOGONの方が高輝度方向に伸張しているのがわかる。Angenieuxはグラフの右端にほとんどデータがなく、ダイナミックレンジが狭い。しかし、シャドウ部にしっかりとデータが存在するため、フレアのような浮き足だった写真にならず、低コントラストでありながら気持ちのよい絵を描いている。コントラストが低くても眠くならない。これはAngenieuxの特徴だ。

色調に関しても興味深いことが見えてくる。FLEKTOGONと比較した場合、Angenieuxは緑が強めに出て、青は沈む(明度が落ちる)傾向にある。RGB各色のデータ量を比べると、Angenieuxはけっして彩度が低いわけでも色褪せているわけでもない。アンバーっぽくかぶるものの、色情報は豊かだ。これは先に挙げた補正例からも見て取れる。Lightroomでシャドウを引き締めたとき、コントラスト向上に合わせて色が強くなった。SILKYPIX3.0で彩度を高めることができたのも、写真に十分な色情報があればこそ。シングルコーティングだから色が褪せる!? これは早計だった。

【フラットなボケ味に最大のヒミツが!】
先のテスト画像でカメラのロゴに注目してほしい。「EXA 1b」と書かれているのだが、FLEKTOGONの画像では読み取れない。片やAngenieuxはかろうじて読み取れる。どちらも同じF3.5での撮影。レンズが異なればボケ味は異なって当然だが、このボケ味にこそAngenieuxのテイストが隠されているとぼくはにらんでいる。

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それぞれ加工してしまった画像だが、F3.5~5.6ぐらいで撮影している。注目してほしいのはボケ方だ。一般に手前にあるものはボケが小さく、遠く離れていくに従って大きくボケていく。これが遠近感の演出となるわけだ。上の作例はたっぷりとボケているし立体感もある。しかし、どこかフラットな印象を受けないだろうか。立体的なのに、遠近感が圧縮されたような世界。適切な言葉が見つからずに悩んでいたところ、知り合いの写真家さんにいい表現を教えてもらった。こういう空間をボケが浅いというらしい。なるほど、そういうことか。やっとやわらかさの正体をつかんだような気がする。

【反語としての濃密な写り】
Angenieuxはたしかにやわらかい写りをするレンズだ。でも今回こうやって考察してみて、いまはちょっとちがった印象を抱いている。やわらかい写りは軽さに通じるが、実はAngenieuxというレンズ、やわらかくも濃密なのではないか。低コントラストというよりも、ダイナミックレンジの圧縮。褪せた色合いではなく、アンバーよりの豊かな色彩。そして遠近感を封じ込めたような浅いボケ味。何ひとつ削がれていない。むしろ密度を高めることで独自の世界を描いているのではないか。そんな気がしてならない。

Angenieuxの写真をデジタルドメインに持ち込んだとき、その秘められたポテンシャルを解き放つことができる。たとえば、こんな風に。

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EOS 20D / Exakta VX1000 + P. Angenieux Paris 35mm/f2.5

封じ込めた光を解き放つことで、Angenieuxの絵はハードにもライトにも変貌する。邪道な遊び方かもしれない。でもぼくはこんな風に、このレンズと付き合っていきたいと思う。

●そのほかの作例は随時こちらに掲載しています。

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