EOS 20D リモート撮影に挑戦
先日、撮影立ち会いでスタジオに遊びに行ったときのことだ。カメラマンがEOS DIGITALとパソコンをケーブルでつなげ、バシバシとブツ撮りをこなしている。撮ってはモニターをのぞき、「このテカリは抑えた方がいいね」なんていいながらまた撮影に戻っていく。その姿がなんともかっこよかった。真似てみるか、リモート撮影にチャレンジだ。
意気込んではみたものの、タイミングがわるかった。その時期はメインマシンをVista搭載機に入れ替えた直後。EOS DIGITALのユーティリティ類がまだVistaに対応しておらず、試したいのにためせないという状況がつづく。それが先般、EOS DIGITAL関連のソフトが一斉にアップデートされ、やっとVista環境でリモート撮影できるようになった。リモート撮影の手順とアドバンテージについて、今回はレポートしてみたいと思う。
【つなぐだけでHDDにダイレクト保存】
リモート撮影の仕組みはカンタンだ。EOS DIGITALとパソコンをUSBケーブル(機種によってはIEEE1394ケーブル)でつなぎEOS Utilityを起動。あとはシャッターボタンを押すとDigital Photo Professionalが自動的に起動し、撮影データを表示してくれる。写真をディスプレイで大きく確認できるため、露出や絞りの状態を逐一チェックしながら撮影できるのがいい。先日アップした「EXA 1b 腹ちがいの兄弟」のカットはこのリモート撮影環境で撮ったものだ。普段は撮影後に露出やコントラストをアレコレいじくり、さらにトリミングにもかなりの時間を費やすのだが、このときはホワイトバランスを微調整するだけで済んだ。撮影の段階で構図や各種設定をキメ打ちできるので、撮影データがそのままOKカットになる。これまでも撮るたびにプレビューで画像チェックは行っていたが、大きな画面でチェックできる快適さは格別。そのメリットは計り知れない。
パソコンへのダイレクト転送はリモート撮影の一側面にすぎない。この機能はその名の通り、カメラを遠隔操作できる。リモート操作できることを列挙してみると、絞り、ISO、露出補正、ホワイトバランス、焦点方式、画像記録形式、そしてシャッターボタンといった項目が、すべてEOS Utility上で操作可能。マニュアルフォーカスでピントを合わせたら、あとはパソコンの前に座ってクリックするだけ。露出も絞りも思いのままというわけだ。さらにメモリカードの初期化やカスタムホワイトバランスの調整まで行える。以前フォトディレクションを行っている友人から聞いた話だが、通販系紙媒体の制作現場ではこうしたリモート撮影環境を構築し、HDDからそのままネットワーク経由で印刷所にデータを送っているらしい。カメラマンはパソコンに張り付いてひたすらクリックしているそうだ。この話を聞いたときはずいぶんと奇異に思えたが、自分でリモート撮影を試してみると理にかなったシステムだとつい納得してしまう。
【環境セッティングで使いやすさを追求】
そのままでも十分に快適なリモート撮影だが、「環境設定」画面を煮詰めていくとより使いやすくなる。最初に着手したいのが起動時の動作(画面左)だ。ここで「「カメラの設定/リモート撮影」画面を開く」を選んでおくと、パソコンにEOS DIGITALをつなぐだけでEOS Utilityが自動起動するようになる。写真の保存先は「保存先フォルダ」タブで設定できる(画面中央)。この画面のオススメ機能はサブフォルダの自動作成だ。「リモート撮影」にチェックを入れておくと、指定したフォルダの下層に随時サブフォルダを作って写真を保存してくれる。フォルダ名はその下にあるプルダウンメニューで指定可能。「撮影年月日」にしておくと重複がなくわかりやすくいだろう。なお、インターバル撮影機能も搭載しており(画面右)、撮影間隔と撮影枚数を指定できる。撮影開始時間は「遅延設定」で設定可能。撮影開始時刻を指定するのではなく、何時間後に撮影を開始するかという設定スタイルだ。この機能は朝顔の開花、カブトムシのふ化といった撮影にうってつけ。これで夏休みの宿題も安心だ(笑)。
【連係ソフトの変更は事実上不可能!?】
連係ソフトは初期設定でDigital Photo Professionalになっているが、これを別のソフトに変更できる(画面左)。早速使い慣れているLightroomとSILKYPIXに変更してみたのだが、これがナンとも微妙な動作だった。まずLightroomだが、初期状態では撮影のたびに「写真の読み込み」画面があらわれる(画面中央)。1枚撮るごとに読み込みボタンをクリックするのは現実的ではないだろう。ただし、自動読み込み設定を有効にすると撮影画像をうまく取り込めるらしい。marupei.net photographyに詳しい手順が載っているので、Lightroomユーザーはそちらを参照してほしい。SILKYPIXはというと、撮影ごとにちゃんと画像が全面表示される。これはイケそうだと思ったのだが、サムネイル画面に切り替えると直前の1枚しか画像がない……(画面右)。撮影データ自体はEOS Utilityで指定したフォルダに保存されているのだが、SILKYPIXには直近の画像しか表示されないようだ。Digital Photo ProfessionalはRAW現像ソフトとしては異例の軽快動作だし、ここは純正ソフトを使っておくのが大人の選択ということか。
【DPP3.0のアップデートポイント】
ちなみにDigital Photo Professionalはバージョン3.0にアップデートされ、いくつかの機能強化が施されている。なかでも実用的な強化ポイントはノイズリダクションとトリミングだ。従来バージョンのノイズリダクションは初期設定でオフになっていて、環境設定画面で表示用ノイズリダクションと現像用ノイズリダクションを別々に設定する必要があった。動作の軽快さを確保するためにあえて表示用ノイズリダクションをオフにしていたのだ。とはいえノイズリダクションの効き具合を見るたびに環境設定を呼び出すのは面倒な話。バージョン3.0では編集画面に「NR」タブが加わり、疑似リアルタイムでノイズリダクションが使えるようになった。そう、市販RAW現像ソフトのようにリアルタイムで効き具合は確認できない。スライドバーを動かし、「NR適用」ボタンをクリックしてはじめてノイズリダクションが効く。ノイズリダクションはけっこうヘビーなタスクなので、リアルタイム動作だと動きが重くなる。そのため手動で適用する仕組みを採用し、軽快さを重視したということのようだ。
トリミングはサムネイルにトリミングした枠が表示できるようになった。こう書くと「それのどこが機能強化なのさ!」とツッコまれそうだが、従来バージョンのDigital Photo Professionalはトリミングしてもサムネイルは元画像のままで、トリミングツールを起動するか現像するまでトリミング後の画像は確認できなかった。他ソフトでは当たり前のことがやっとバージョン3.0で達成されたわけだ。ちなみに、追加ピクチャースタイルは相変わらずその都度読み込む必要があり、開発陣にはソフト側に登録するという考えが希薄らしい。不満を書き出すと止まらなくなるのだが、高速RAWビューワとしては重宝するし、軽めの補正ではLightroomやSILKYPIXよりもハンドリングしやすい。個人的には使用頻度が高く、気に入っているソフトだ。
話が脱線したが、みなさんはリモート撮影にどんな印象を抱いただろう。ディスプレイで即画像チェック、メモリカードの残量を気にすることなく、その気になればパソコンの前に座ったまま撮り続けられる。こうした環境が、一切お金をかけずに構築できるのだ。リモート撮影、一度お試しあれ。
Comments
*ist DSではできません…(涙)
Posted by: ジュンイチ | April 12, 2007 08:59 AM
ありゃ、そうなんですか!?
ってことはリモート撮影って、EOS DIGITALの
アドバンテージだったんですね。
EOS 20D、ちょっと見直しましたw
Posted by: metalmickey | April 12, 2007 10:20 AM