Windows Vista 導入受難記
先週末、次期メインマシン、VAIO type R masterが届いた。ウィンドウズビスタ搭載はもちろんのこと、地デジ、BDドライブ標準搭載のハイエンド機だ。早速ハイビジョン映像でも観賞……といきたいところだが、そうはいかない。仕事用マシンなのでまずはデータを移行し、常用ソフトをインストールして、とまあ毎度毎度のことなのでさしたる手間ではないが、環境整備に着手する。が、今回はチト勝手がちがった。ビスタ、こいつは想像以上に手強い相手だ。
【管理者特権と互換性の問題】
何が手強いかといえば、ソフトウェアのインストールにひどく手間取るのだ。ビスタは管理者特権という概念がことのほか強化されている。そのためsetup.exeをダブルクリックすると、「マジでexeファイルなんて実行しちゃっていいんですか?」「こっから先は管理者じゃないと進めないんだよねえ」なんて確認画面がイチイチ出てくる。むろん、それだけならクリックして進めるだけなのだが、ソフトウェアの互換性の問題があるのだ。
たとえばWZ Editor 5.02を例にとると、ウチの環境ではダブルクリックしてもセットアップウィザードが起動しなかった。右クリックメニューを出して〈管理者として実行〉を選び、やっとインストールがはじまる。しかも拡張子.txtと関連づけはなされず、コントロールパネルの〈既定のプログラム〉で明示的に設定する必要があった。また、なぜかcfgファイルをコピペしても環境設定が再現できず、結局はイチから設定し直す始末……。WZ Editorは一応Vista対応済みということなのだが、よくよく調べてみると別段アップデートせずに「とりあえず動いてるみたいだからそのまま使ってね」というスタンスのようだ。旬を過ぎたソフトウェアメーカーの製品は対応が遅々としている。やっぱ秀丸ですか……。
WZ Editor固有の問題かというと、そういうことでもないらしい。アドビ「アクロバット8スタンダード」でも似たような現象に直面した。バージョンアップ版をインストールする際、どういうわけかプログラムファイルの解凍でコケる。このパソコンは起動ドライブをストライピング(RAID-0)にしているので、ドライブ認識の問題で起動ドライブにうまく解凍できないのかもしれない。実はマイクロソフト「エンカルタ総合大百科2000」がそうだったのだ。このDVDにはBookshelfという辞書ソフトが付属していて、辞書データをHDDにコピーして使うことができる。ところが何度試しても「HDDに空き容量がありゃしまへん」とダメ出ししてくるのだ。しかも空き容量をみるとマイナス表示……。RAIDとバッティングしているのはほぼ確定。仕方なく別ドライブにインストールして事なきを得た。しかし、アクロバット8は旧バージョンのソフトではない。リリース間もない最新版だ。そのダメもとで右クリックメニューの〈管理者として実行〉からインストール。すると今度はうまくいった。まったく最新ソフトでこのありさま。もちろん、ビスタのアカウントはadminで作成している。しっかりしてほしいものだ。とにかくも、ウィンドウズビスタのソフトウェアインストールでは、この「管理者として実行」というのがひとつのお作法になりそうだ。
【アップデータが……シリアルが……】
ソフトウェアのバージョンにも注意が必要となる。今回は3年ぶりのメイン機入れ替えということもあり、板(インストールCD)を持っているソフトの大半は幾度かバージョンアップしていた。当然、最新バージョンをインターネットから入手してインストールするわけだが、バージョンアップ版ではなく、アップデータという形態で配布されているソフトが思いのほか多いのだ。特に顕著だったのがプリンタやスキャナ、デジタルカメラなど、周辺機器の付属ユーティリティ。いったん、手持ちの板でインストールを試みるのだが、プログラム互換性の問題云々というメッセージがあらわれ、作業にずいぶんと手間取る。その上でアップデータをあてがうのだから面倒なことこの上ない話だ。
シリアルナンバーの問題も避けて通れない。かつてアクロバット6スタンダードのパッケージ版を買い、その後ダウンロード版でバージョン7にアップデートしたのだが、どうしてもバージョン7のシリアルが見つからない。アドビストアのアカウントサービスでシリアルを確認できることを思い出したものの、正しいパスワードを入力しても一向にログインできない始末……。どうやらこのサイト、ファイアウォールがONになっているとログインできないようだ。ようやくアカウントサービスにアクセスできるようになったのだが、購入履歴はまっしろ……。おいおい、なんのためのアカウントサービスだよ! 仕方なくアクロバット6をそのままインストールしたのだが、ここでもやはり「プログラムの互換性がないんだよねえ、ほらオレ、ビスタだから」なんてメッセージが出てくる。しぶしぶアクロバット8のバージョンアップダウンロード版を購入。そして前述のようなプチトラブルに遭遇したというわけだ。
【呆気ないドライバインストール】
デバイスドライバまわりは意外と順調だった。プリンタやスキャナといったメインどころはもちろん、huey、SpaceNavigator PEといったキワモノアイテムも最新ドライバでとりあえずは稼働している。鳴り物入りの新OS登場だけに、どのメーカーも対応は順調な様子だ。唯一問題が発生したのはグラフィックボードだった。このマシンはGeForce 7600 GTを搭載しているのだが、ウィンドウズスイッチャーを起動すると画面が乱れる。最新ForceWareをインストールしてみたところ、今度はフリーズ。まあ、使用頻度の低い機能なのでどうでもいいか(笑)。ていうかこのウィンドウズスイッチャー、どういうニーズに応えた機能なんだろう。見た目がハデというだけで、きわめて実用性は低いと思うのだが。
今回のメイン機入れ替えは丸二日かかった。といっても特別なことをしたわけじゃない。周辺機器のデバイスドライバをインストールし、仕事のデータをコピーして、常用ソフトをインストールしただけ。たったそれだけのことに土日を費やした。ビスタを上書きインストールしてトラブったわけでも、新品マシンの初期不良でもない。ソフトウェアのバージョン、これにひたすら振り回された。ビスタの何らかの機能が一日も早く使いたいということなら話は別だが、そうでないなら春まで待ってもいいと思う。その頃にはきっと、ソフトウェアメーカーの対応ももう少し洗練されたものになっているだろう。
【何もするな!というメッセージ】
ウィンドウズビスタでは、権限を制限したユーザーモードドライバが復権したという。カーネルモードドライバはシステムを直接叩くため、予期せぬトラブルが発生したり、悪意ある制御でシステムを不安定にさせることが可能だ。そのため権限の低いユーザーモードドライバで、ウィンドウズの安定性を確保するのが狙いだ。ウィンドウズXPは抜群の安定性を誇った一方、セキュリティという問題を残してしまった。ウィンドウズビスタがそうした反省のもとに設計されているのはいうまでもなく、ユーザーモードドライバはその象徴ともいえるだろう。
そしてこうしたアプローチはドライバにとどまらない。管理者特権、プログラムの互換性といった厳格性も、強固なセキュリティでウィンドウズを守ろうというあらわれだ。その反面、ユーザビリティを大きく損なっているわけだが……。皮肉めいた言い方をするならば、「ウィンドウズに何もインストールしないでくれ。ウィンドウズ上で何もしないでくれ!」ということになるだろう。泥棒や強盗を怖がるあまり、家中のあらゆる出入り口にカギをかけ、自分自身が外に出られなくなってしまった……。ウィンドウズビスタをセットアップしていると、そんな気持ちになってくる。
ビスタって、小うるさい管理人のいる女子寮みたいだ。
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