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February 2007

February 28, 2007

Horizon パノラマスキャンのお作法

Horizon Perfektスイングレンズ式パノラマカメラだ。フィルムこそオーソドックスな35mmだが、そのひとコマは通常の1.5倍ほどあり、そのままではDPEショップで紙焼き(プリント)してもらえない。こんなときこそパソコンの出番。スキャナで読み取り、プリンタで印刷すればいい。ただ、パノラマサイズのフィルムスキャンはちょっとしたお作法がある。そのお作法をキヤノンの複合機「MP960」と、エプソンのフラットベッドスキャナ「GT-X900」でまとめてみた。

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【MP960のパノラマスキャン】
現在のスキャナは、35mmフィルムを読み込むと自動的に1コマずつにサムネイル表示してくれる。このおかげでいちいちエリア指定する手間が省けるわけだが、パノラマスキャンの場合は話が別。横長のコマが途中で分断され、そのままではスキャンできない。そこでパノラマスキャンのお作法が必要になるわけだ。

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MP960でスキャンする際は、スキャナドライバのモードを拡張モードにする。原稿の種類でネガかポジを指定して、プレビューボタンをクリック。この状態だと画面左のようにコマごとにサムネイル表示されてしまう。これではせっかくのパノラマ写真が台無しだ。そこで画面左上のツールボタンをクリックする。これは縮小版表示と全体表示を切り替えるボタンだ。縮小版では1コマずつのサムネイル表示だが、全体表示ではスリーブ全体を表示してくれる(画面右)。この画面にしてスキャンエリアを手動で指定すればパノラマ写真をすみずみまで取り込める。

【GT-X900のパノラマスキャン】
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GT-X900の場合は、まずモードをプロフェッショナルモードに切り替える。その上で原稿種をフィルム(フィルムエリアガイド使用)に設定(画面左)。ここでフィルムフォルダ使用を選ぶと1コマずつのサムネイルになってしまうので要注意だ。プレビューをクリックした状態が画面右。この画面でスキャンエリアをしてしていく。

今回はMP960とGT-X900を例に解説したが、要はキヤノンならScanGear、エプソンならEPSON Scanの使いこなしということになる。機種がちがっても操作法はおおむね似たようなものだろう。両社のスキャナドライバを使って感じたのは、EPSON Scanの方がやりたいことにダイレクトにアクセスできる印象を受けた。その反面、ScanGearはプレビューの向きを自由に変更でき、エリア指定がやりやすい。一長一短はあるものの、どちらも完成度の高いユーティリティだ。いまさらながらスキャナの成熟ぶりに感心する。

昔のスキャナで懲りてしまったあなた、またスキャナに戻ってきませんか? ずいぶん使いやすくなってますよ。

●Horizon Perektの作例はこちら

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February 19, 2007

Windows Vista 導入受難記

先週末、次期メインマシン、VAIO type R masterが届いた。ウィンドウズビスタ搭載はもちろんのこと、地デジ、BDドライブ標準搭載のハイエンド機だ。早速ハイビジョン映像でも観賞……といきたいところだが、そうはいかない。仕事用マシンなのでまずはデータを移行し、常用ソフトをインストールして、とまあ毎度毎度のことなのでさしたる手間ではないが、環境整備に着手する。が、今回はチト勝手がちがった。ビスタ、こいつは想像以上に手強い相手だ。

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【管理者特権と互換性の問題】
何が手強いかといえば、ソフトウェアのインストールにひどく手間取るのだ。ビスタは管理者特権という概念がことのほか強化されている。そのためsetup.exeをダブルクリックすると、「マジでexeファイルなんて実行しちゃっていいんですか?」「こっから先は管理者じゃないと進めないんだよねえ」なんて確認画面がイチイチ出てくる。むろん、それだけならクリックして進めるだけなのだが、ソフトウェアの互換性の問題があるのだ。

Picture0002たとえばWZ Editor 5.02を例にとると、ウチの環境ではダブルクリックしてもセットアップウィザードが起動しなかった。右クリックメニューを出して〈管理者として実行〉を選び、やっとインストールがはじまる。しかも拡張子.txtと関連づけはなされず、コントロールパネルの〈既定のプログラム〉で明示的に設定する必要があった。また、なぜかcfgファイルをコピペしても環境設定が再現できず、結局はイチから設定し直す始末……。WZ Editorは一応Vista対応済みということなのだが、よくよく調べてみると別段アップデートせずに「とりあえず動いてるみたいだからそのまま使ってね」というスタンスのようだ。旬を過ぎたソフトウェアメーカーの製品は対応が遅々としている。やっぱ秀丸ですか……。

Picture0003WZ Editor固有の問題かというと、そういうことでもないらしい。アドビ「アクロバット8スタンダード」でも似たような現象に直面した。バージョンアップ版をインストールする際、どういうわけかプログラムファイルの解凍でコケる。このパソコンは起動ドライブをストライピング(RAID-0)にしているので、ドライブ認識の問題で起動ドライブにうまく解凍できないのかもしれない。実はマイクロソフト「エンカルタ総合大百科2000」がそうだったのだ。このDVDにはBookshelfという辞書ソフトが付属していて、辞書データをHDDにコピーして使うことができる。ところが何度試しても「HDDに空き容量がありゃしまへん」とダメ出ししてくるのだ。しかも空き容量をみるとマイナス表示……。RAIDとバッティングしているのはほぼ確定。仕方なく別ドライブにインストールして事なきを得た。しかし、アクロバット8は旧バージョンのソフトではない。リリース間もない最新版だ。そのダメもとで右クリックメニューの〈管理者として実行〉からインストール。すると今度はうまくいった。まったく最新ソフトでこのありさま。もちろん、ビスタのアカウントはadminで作成している。しっかりしてほしいものだ。とにかくも、ウィンドウズビスタのソフトウェアインストールでは、この「管理者として実行」というのがひとつのお作法になりそうだ。

【アップデータが……シリアルが……】
ソフトウェアのバージョンにも注意が必要となる。今回は3年ぶりのメイン機入れ替えということもあり、板(インストールCD)を持っているソフトの大半は幾度かバージョンアップしていた。当然、最新バージョンをインターネットから入手してインストールするわけだが、バージョンアップ版ではなく、アップデータという形態で配布されているソフトが思いのほか多いのだ。特に顕著だったのがプリンタやスキャナ、デジタルカメラなど、周辺機器の付属ユーティリティ。いったん、手持ちの板でインストールを試みるのだが、プログラム互換性の問題云々というメッセージがあらわれ、作業にずいぶんと手間取る。その上でアップデータをあてがうのだから面倒なことこの上ない話だ。

シリアルナンバーの問題も避けて通れない。かつてアクロバット6スタンダードのパッケージ版を買い、その後ダウンロード版でバージョン7にアップデートしたのだが、どうしてもバージョン7のシリアルが見つからない。アドビストアのアカウントサービスでシリアルを確認できることを思い出したものの、正しいパスワードを入力しても一向にログインできない始末……。どうやらこのサイト、ファイアウォールがONになっているとログインできないようだ。ようやくアカウントサービスにアクセスできるようになったのだが、購入履歴はまっしろ……。おいおい、なんのためのアカウントサービスだよ! 仕方なくアクロバット6をそのままインストールしたのだが、ここでもやはり「プログラムの互換性がないんだよねえ、ほらオレ、ビスタだから」なんてメッセージが出てくる。しぶしぶアクロバット8のバージョンアップダウンロード版を購入。そして前述のようなプチトラブルに遭遇したというわけだ。

【呆気ないドライバインストール】
デバイスドライバまわりは意外と順調だった。プリンタやスキャナといったメインどころはもちろん、hueySpaceNavigator PEといったキワモノアイテムも最新ドライバでとりあえずは稼働している。鳴り物入りの新OS登場だけに、どのメーカーも対応は順調な様子だ。唯一問題が発生したのはグラフィックボードだった。このマシンはGeForce 7600 GTを搭載しているのだが、ウィンドウズスイッチャーを起動すると画面が乱れる。最新ForceWareをインストールしてみたところ、今度はフリーズ。まあ、使用頻度の低い機能なのでどうでもいいか(笑)。ていうかこのウィンドウズスイッチャー、どういうニーズに応えた機能なんだろう。見た目がハデというだけで、きわめて実用性は低いと思うのだが。

今回のメイン機入れ替えは丸二日かかった。といっても特別なことをしたわけじゃない。周辺機器のデバイスドライバをインストールし、仕事のデータをコピーして、常用ソフトをインストールしただけ。たったそれだけのことに土日を費やした。ビスタを上書きインストールしてトラブったわけでも、新品マシンの初期不良でもない。ソフトウェアのバージョン、これにひたすら振り回された。ビスタの何らかの機能が一日も早く使いたいということなら話は別だが、そうでないなら春まで待ってもいいと思う。その頃にはきっと、ソフトウェアメーカーの対応ももう少し洗練されたものになっているだろう。

【何もするな!というメッセージ】
ウィンドウズビスタでは、権限を制限したユーザーモードドライバが復権したという。カーネルモードドライバはシステムを直接叩くため、予期せぬトラブルが発生したり、悪意ある制御でシステムを不安定にさせることが可能だ。そのため権限の低いユーザーモードドライバで、ウィンドウズの安定性を確保するのが狙いだ。ウィンドウズXPは抜群の安定性を誇った一方、セキュリティという問題を残してしまった。ウィンドウズビスタがそうした反省のもとに設計されているのはいうまでもなく、ユーザーモードドライバはその象徴ともいえるだろう。

そしてこうしたアプローチはドライバにとどまらない。管理者特権、プログラムの互換性といった厳格性も、強固なセキュリティでウィンドウズを守ろうというあらわれだ。その反面、ユーザビリティを大きく損なっているわけだが……。皮肉めいた言い方をするならば、「ウィンドウズに何もインストールしないでくれ。ウィンドウズ上で何もしないでくれ!」ということになるだろう。泥棒や強盗を怖がるあまり、家中のあらゆる出入り口にカギをかけ、自分自身が外に出られなくなってしまった……。ウィンドウズビスタをセットアップしていると、そんな気持ちになってくる。

ビスタって、小うるさい管理人のいる女子寮みたいだ。

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February 13, 2007

GT-X900 & MP960 スキャナ復権の日

スキャナはかつて花形周辺機器だった。ずいぶんと昔、まだデジタルカメラがメガピクセル化する以前のこと。ウチにはCanoScan「LiDE 500F」という薄型CISスキャナがある。買ったのは2005年。雑誌から自分が書いたページをPDF化する際に使っているが、これを最後にスキャナを買うことはあるまいとタカをくくっていた。しかし、ポラロイドSX-70を買い、パノラマカメラHorizonを手に入れて、どうしてもちゃんとしたCCDフラットベッドスキャナがほしくなった。ちょうどプリンタの買い換えを考えていたので、キヤノンのハイエンド複合機「PIXUS MP960」を購入。さらにエプソンのハイエンドフラットベッドスキャナ「GT-X900」を貸してもらえることになり、一夜にしてスキャナ富豪に……。両機種を使ってみて、こんなことを思った。もっとスキャナは評価されていいはずだ。スキャナ今昔物語をかたってみたい。

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【スキャナは本当に過去の遺物か?】
いうまでもなく、スキャナをイメージキャプチャデバイスの主役から引きずり下ろしたのは、高解像度化したデジタルカメラだ。単にデジタル画像を得るということであれば、デジタルカメラほど手軽なデバイスはない。スキャナはチリやホコリまでいっしょに読み込んでしまうし、色かぶりやシャープネスの甘さも気になる。こうした面倒臭さに嫌気がさし、スキャナに見切りを付けた人も少なくないだろう。かくいう自分もそのひとりだ。

そんなスキャナを再評価する気になったのは、パノラマカメラとの出会いだった。パノラマカメラHorizonは35ミリフィルムを使用するが、通常の35ミリフィルムカメラのひとコマよりも1.5倍ほど横長になる。こいつを紙焼きプリントする場合、通常のDPEショップでは受け付けてくれないし、かといってプロラボなどに出すと1枚あたりの単価がけっこうなお値段になってしまう。こういう変型フィルムを取り扱うとき、いまどきスキャナが威力を発揮する。透過原稿ユニット搭載、強力なゴミ取り機能、色補正は向上し、シャープネスもいい。こいつでササッと読み込んで、プリンタで出力。パノラマだけでなく中判フィルムについても同様のことがいえる。カメラ好き、写真好きにとって、最近のスキャナはものすごく値頃感のあるアイテムだ。

【ホワイトバランスがフィルムスキャンを救う】
前置きがずいぶんと長くなった。早速MP960GT-X900でスキャン性能をくらべてみよう。用意したフィルムはHorizonで撮影したもの。コマが横長になるため、プロフェッショナルモードで読み込んでいる。スキャン解像度は2400dpi。ゴミ取り機能はオフにして、色補正や露出はデフォルトのままスキャニングしている。なお、保存形式はJPEGを選択し、SILKYPIX3.0でリサイズした。

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PIXUS MP960(Time:2分56秒)

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GT-X900(Time:52秒)

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GT-X900 + SILKYPIX Developer Studio 3.0

MP960は一見しただけで青に転んでいるのがわかる。しかし、シャープネスはまずまずだ。GT-X900の発色はフィルムに忠実。シャープネスも高く、なによりスキャン時間の速さが圧倒的だ。発色についてはやや緑かぶりが気になるところだが、これはスキャナの問題というよりも、フィルムカメラゆえに屋内照明のせいで色が転んだと考えるべきだろう。

三枚目の写真はSILKYPIX3.0でホワイトバランスを調整し、シャープネスをかけてみた。たったこれだけの補正でグッと写真が引き締まる。ホワイトバランスの調整といっても、グレーバランスのスポイトで白いカーテンをワンクリックしただけだ。かつて色かぶりの補正といえばフォトレタッチソフトでカラーバランスを複雑に操作したものだが、ホワイトバランスというアプローチなら作業はいたって簡単。SILKYPIX3.0はJPEGをRAW化して現像できるので、画像劣化もさほど気にならない。フィルムスキャンの相棒として積極的に使っていきたいソフトだ。

【トイカメラならもっと気持ちがラクになる】
数年前からトイカメラがブームだ。スタンダードクラスのデジタルカメラが2~3万円で買えるこのご時世に、同じくらいの値段で銀塩トイカメラを買う人が増えている。昨今のブログブーム、フォトログブームを考えると、銀塩カメラを使っていても最終的な落とし込みはデジタルにちがいない。ポラロイドSX-70はけっしてトイカメラではないが、写り的に共通項があるので、スキャン例を載せてみよう。解像度は600dpi、その他の設定はパノラマのスキャンと同様だ。

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左から、MP960、GT-X900、GT-X900をSILKYPIX3.0で補正したものの順に並べてみた。やはりMP960は青が強めに出る。一方GT-X900はややアンバーか。またスキャナドライバで「写真向け」を選んだところ、露出が若干落ちた。これは白飛び回避の方策だろう。ただここで注目してほしいのは、どちらのスキャン例も「これはこれでアリ」という事実だ。いわゆるトイカメラは、精緻な解像感、正確な発色を求めるものではなく、そもそもが雰囲気重視の写真。要は空気感イッパツだ。チリとホコリさえ気をつければ、少々の色かぶりは気にならない。シャープネスの甘さもかえって味を後押しするほどだ。三枚目の写真で着目すべきは、傾き補正と色合いだ。RAW現像ソフトはそもそもがトリミングや傾き補正、湾曲補正に長けている。スキャン時のズレを直すくらいならお手のもの。トイカメラ風の写真は色合いでフィルム調を選ぶと俄然雰囲気が増す。

なお、ゴミ取りに関してだが、これはスキャナドライバの機能に頼るよりも、スキャン前の手作業に時間をかけた方がいい。ブロアでしっかりホコリを飛ばし、原稿台はクリーニングクロスで拭いておく。ゴミ取り機能を使うとどうしてもシャープネスが甘くなるし、スキャン時間も長くなる。今回のスキャン例はすべてゴミ取り機能オフでスキャニングし、レタッチソフトでのコピースタンプ処理もしていない。スキャン前にひと手間かけるだけでホコリはずいぶんと減るものだ。

【いまあえてスキャナで銀塩を遊ぼう】
_mg_5841_2スキャナってこんなに楽しかったのか!? あらためてそんなことを思う。RAW現像ソフトとスキャナ、トイカメラとスキャナ。こうした関係性のなかで、現在のフラットベッドスキャナはとても魅力に満ちている。透過原稿ユニットを標準搭載し、発色やシャープネスは申し分ない性能を備え、そしてその値段は高くても5万円以下。ミッドレンジなら2万円台だ。スキャンが面倒で銀塩に踏み切れない人は、一日も早く思い切った方がいい。デジタルカメラとはひと味ちがう、写真機の楽しみが待っている。複合機を持っている人なら、手始めにトイカメラのフィルムをスキャンしてみよう。眠っていたスキャン機能の高性能ぶりに驚くはずだ。

_mg_5785_2こんなに楽しくて高性能な周辺機器が、このまま埋もれてしまうなんて耐えられない。ポラロイド社がHOLGAとコラボレートしたように、スキャナメーカーもトイカメラや銀塩カメラに歩み寄ってみてはどうだろう。うかうかしていると、トイカメラ風デジタルカメラが登場して最後の牙城まで失ってしまう。トイカメラブームを突き詰めれば、平成スローライフムーブメントに還元できる。デジタルなのにスローライフ――。そんなキャッチフレーズでスキャナ復権の日を夢見ています。

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