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January 07, 2007

Micro Music Monitor(M3)はなぜ評価が冴えないのか

PCサウンドはチープだ。そもそもPC向けサウンド機器は、サウンドボードにせよスピーカにせよ、申し訳程度の性能しか備えていない。音が鳴るだけマシ、といった割り切りも必要だろう。まして昨今は音源が圧縮オーディオになってしまった。真の意味でクオリティを求めること自体滑稽なのかもしれない。これまで数年間、EIZO「M170」の液晶内蔵スピーカで我慢してきた。でも、もう限界だ。意を決してBOSE「Micro Music Monitor(M3)」を試してみた。

Dpp_0259

なぜ「意を決して」なのかって!? それはMicro Music Monitorの評価がいまひとつ奮わないからだ。そもそもBOSEのスピーカ製品はオーディオマニアにあまりウケがよくない。ぼくはオーディオマニアではないので彼らの意図は汲みかねるが、おそらく「小さい割によく鳴るけど、本当の意味で豊かな音ではない」といったところか。かれこれ7年ほどBOSEの5.1chサラウンドシステムを使った経験からすると、そんな気がする。にもかかわらずMicro Music Monitorを購入した理由はひとつ。小さくて、最低限音に満足でき、なおかつプロダクツデザインがすぐれたデスクトップスピーカは、この製品以外に選択肢がない。購入動機はとても後ろ向きだ。

【リニアな反応、こいつはマジでモニタースピーカ】
で、肝心の音質はどうなのか。まず断っておくと、Micro Music Monitorはリスニングスピーカではない。モニタリングスピーカだ。リスニングスピーカとはどんな音源ソースもスピーカ側でほどよく補正してくれる。聴いて気持ちいい味付けがなされている。それに対しモニタリングスピーカは、音源ソースを正確に再現するのが目的だ。そのことは電源を入れてすぐに実感できた。ひどい音なのだ……。

いつもどおりiTunesの再生ボタンをクリックする。すると、低音がドーンと響きわたる。しかし、高音部がごっそり削られ、伸びがまったくもってない。なんじゃこりゃ!? と首をかしげつつ、iTunesのイコライザ画面を呼び出してみる。納得した。設定が「Small Speakers」になっていて、バスブーストしつつ高音部は思いっきり抑えてある。要は小さいスピーカで音がシャカシャカしないセッティングだ。こいつはイカン、とイコライザはいろいろといじくってみる。Rock、Pops、Flatなどなど、手当たり次第設定を変えていくと、驚いたことにイコライザの設定にきわめてリニアにサウンドが反応するのだ。しかも、音が膨れるのではなく、ちゃんと伸びる。「膨れる」と「伸びる」のちがい、わかるだろうか。たとえば安いスピーカで低音域を持ち上げると、音量が大きくなるだけでなく、歪んだりつぶれたりしてしまう。。その点Micro Music Monitorは、ノンストレスにスコーンッと突き抜けるのだ。この再現性の高さ、たしかにこいつはモニタリングスピーカだ!

特に度肝を抜かれるのが低音域。ついサブウーハーを探してしまうほど低音が伸びる。ボリュームを上げるとマウスを握る手に低振動が伝わってくるほどだ。わずか12センチのハウジングで、この低音出力は驚異的である。しかも音量を上げてもなかなか歪まない。とりあえず部屋中に音があふれるまで音量を上げてみる。ぜんぜん余裕だ。さらに、妻子が「うるさい!」と怒鳴るあたりまで上げてみる。まだまだイケる。マンションの上下左右から苦情電話がかかるギリギリまで上げてみた。もっとイケそう。でもこれ以上は怖くてムリだ……。という具合に、かなり音を突っ込んでも余裕がある。ノートパソコンでDTMをやっているなら、Micro Music Monitorはコンパクトなモニタリングスピーカとして最有力候補になりそうだ。

【モニタースピーカとしての実力は微妙!?】
では、モニタリングスピーカとして純粋に評価してみた場合、Micro Music Monitorの位置づけはどうなるだろう。たしかに全域にわたって伸びがある。音もかなり突っ込める。しかし、肝心かなめの音の定位がいまひとつなのだ。リスニングスピーカとしてなら十分なステレオ感。ただし、これでミックスダウンやマスタリングをすることを思うと、ちょっと戸惑ってしまう。ためしてに昔DTM&HDRにハマッていた頃の曲を引っぱり出して再生してみたところ、鳴っている場所がどうも曖昧なのだ。なにしろ自作の曲だ。音源をどこに配置したかはちゃんとおぼえている。にもかかわらず、かなり耳を澄まさないと音の在処にたどりつけない。こりゃMP3に圧縮しているせいかも、と思い、WAVファイルも再生してみた。結果は同じ……。やはり音の定位がどことなく曖昧だ。けっして音が濁っているというわけではない。あえていえば、立体感に乏しいような印象だ。

Micro Music Monitorのレビューはウェブのあちらこちらで見受けられるが、みな一様に辛口の評価だ。そして自分も辛口トークになってしまった……。ただ、くれぐれも言っておきたいのだが、Micro Music Monitorはけっしてわるいスピーカではない。そこいらのPCスピーカなどと比べモノにならないくらい高音質だ。でも、評価は辛口になってしまう。理由は簡単。いい鳴り方をするので、マジモンのモニタリングスピーカ(要はスタジオモニター)と比較してしまうのだ。Micro Music Monitorは実売49800円。この価格は標準的なスタジオモニターが買える値段だ。もちろんMicro Music Monitorは、一般的なスタジオモニターにない超コンパクトというアドバンテージがある。いわばPC向けモニタリングスピーカという新ジャンルを開拓した製品だ。そういう切り口から評価すると、唯一至高の製品といえるだろう。ただ、音を聞くとついスタジオモニターと比較してしまうのだが……。

【PC用モニタースピーカの価値とは?】
Dpp_0260Micro Music Monitorが従来型モニタリングスピーカと一線を画していることは、実は付属品からも見て取れる。スピーカを保護するプロテクトカバー、携帯時のキャリングポーチ、さらにはリモコンまで付属する。また、単3乾電池×4本で使用でき、ポータブルスピーカとしての側面も持つ。パソコンやiPodと組み合わせ、ストレートな音を楽しむスピーカ。いわばそんな位置づけだろう。では、ストレートな音をパソコンで楽しむ意味はどこにあるのか。パソコン用にモニタリングスピーカは必要なのか。実はモニタリングスピーカの価値を発揮するシーンがある。それは音を絞ったときだ。安いスピーカだと、音量を下げると音が団子になって音楽が聞き取れない。主旋律はおろか、かろうじてビートが感じ取れる程度だ。その点Micro Music Monitorは、音量をギリギリまでしぼっても高音から低音までしっかりと音の粒がわかる。音が鳴るのではなく、音楽が聞えてくるのだ。音量を上げれば、どんなにショボいスピーカでもよく聞えてしまう。スピーカの本領は音を絞ったとき。そんなセオリーを、Micro Music Monitorは思い出させてくれた。

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