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January 2007

January 29, 2007

Horizon Perfekt パッケージングの美学

DVカメラはあこぎな商品だった。製品自体がわるいのではない。売り方がいけない。必須アイテムのバッテリーキットをオプション扱いにして、見せかけの本体価格を下げる。むろんバッテリーキットがないと使いモノにならない(ACアダプタで運動会を撮るんですか!?)。ユーザーはDVカメラ本体とバッテリーキットを同時に買い、釈然としない気持ちを抱えたまま家路に着く。ついこの間まで、そんな売り方がまかり通っていた。ロシア製のパノラマカメラ「Horizon Perfekt」は、その対極にある気持ちいい全部盛りだ。

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【撮影シーンを想定したパッケージング】
必要最低限のものがそろっている――これはカスタムベースにうってつけだ。必要なものがすべてそろっている――一般ユーザーにとってこれは安心感につながるだろう。さらに上をいくパッケージングとして、フル装備という状態がある。しかし、こいつは実に微妙だ。過剰装備だと割高感が増すし、過剰な割に肝心なアイテムが抜けていれば不満もつのる。同梱アイテム数を競うと、こうしたフル装備の罠に陥りがちだ。

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その点Horizon Perfektは、パノラマカメラという自らの特殊性を踏まえ、実際の撮影シーンを想定した機能性およびパッケージングになっている。まず、実用的な太めのストラップ、そしてボトムグリップが付属。このボトムグリップは手持ち撮影で欠かせないアイテムだ。というのも、Horizonは広角28mmレンズが120度旋回して撮影する。両サイドからカメラをホールドすると、指が写りこんでしまうのだ。そのため左手はこのボトムグリップでしっかりと固定し、シャッターボタンは右手で背面からカメラをつかむように押す。さらに旋回レンズという特殊形状のため、市販のフィルターは装着不可。その点を考慮して専用フィルター(UV、ND、モノクロG)が標準で付属する。ボトムグリップのエンドキャップが外れるので、普段はここにしまっておくとなくさずに済むだろう。

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_mg_5840_1本体上部には水準器が埋め込んである。パノラマカメラは水平をしっかり出さないと上下に水平線が湾曲してしまう(作例参照)。そのため水準器を標準搭載しているのだ。しかもこいつがスグレモノで、ファインダー内部からも水準器の像が確認できる。アングルを探りながら同時に水平も出せるわけだ。ただし、しょせん(!?)はロシア製なので水準器の精度はそこそこと考えた方がいい。一応調整できる仕組みなので、手持ちの水準器と併用して、必要に応じて微調整するといったところか。

【考え抜かれたアクセサリー類】
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Horizon Perfektにはしっかりとした作りのレザー風ケースが付属する。最近はデジタルカメラにも申し訳程度のケースが付属するが、それとは一線を画し、こいつでHorizonを持ち出してくれという意志がビンビン伝わってくる造りだ。まずストラップ部分に3つのフィルムホルダーがある。ケースの上蓋にはボトムグリップの収納バンド(!?)があり、必須アイテムをちゃんと携帯できる仕様になっているのだ。取扱説明書は欧米版とは別に、日中韓のアジア言語で書かれたものも付属する。撮影スタイルはむろん、フィルム装着、フィルターの着脱など、Horizonは特殊なことばかり。自国語で取り扱い方法をちゃんと確認できるのはありがたい。また、パノラマ写真集も付属しており、これを見ることで効果的なパノラマ撮影のヒントも湧いてくるだろう。

【カスタムとフルパッケージの共通項】
Horizon Perfektは使う身に立った発想でパッケージングされている。最近のパッケージプロダクツは「アレはできるけどコレはできません」「コレをやりたいならアレを選んでください」的なものばかり。あえて長所短所を組み合わせることで、ラインナップを水増ししている。むろんメーカーの言い分としては、「豊富なラインナップで多彩なニーズに対応」ということなのだろう。ただ問題なのは、その多彩なニーズを利用シーンからちゃんと割り出しているか、ということだ。あなたはそれを持って街に出たことがありますか!?

_mg_5621カスタム、改造とは、不足を補うものではない。あるプロダクツを手にしたとき、「コレをアアしたらおもしろいんじゃないか」「ここまでできるならアンナこともできるんじゃないの!?」と想像力を掻き立てられることがある。その瞬間、はじめてカスタムの世界が拓かれるのだ。GR DIGITALポラロイドSX-70を手にとると、こうした興奮が湧き起こった。それとまったく同じ意味において、Horizon Perfektを買ったときも気持ちが高ぶった。使っている自分の姿が即座に想像でき、いまの自分を想像上の自分と早く近づけたいという想いが湧き起こる。こうした感情を掻き立てるプロダクツこそが、逸品の名に値するのだろう。

最後にHorizonの作例をひとつ。パノラマなんて広角で撮って上下を裁ち落とせばいいじゃない!? そう思っている人にぜひ見てほしい。同じ広角28mmのGR DIGITALと比較してみた。そこにはパノラマ風と別格の世界がある。広角とパノラマは別物だ。改めてそう実感した。

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RICOH GR DIGITAL

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Horizon Perfekt

●そのほかの作例はこちらにあります。

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January 28, 2007

Polaroid SX-70 儀式という楽しみ

若い頃、YAMAHA SR400というオートバイに乗っていた。セルスターターはなく、いちいちキックスターターで始動しなくてはならない。デコンプレバーがあるのでさほど難しくはないが、真冬はなかなか火が入らず、かといって夏場はキックに失敗するとすぐにプラグがかぶる。面倒なことこの上ないオートバイだ。ただそれは、SR乗りにとって走るための儀式。手順を踏むことで走り出す心の準備が整っていく。ポラロイドSX-70をはじめて手にしたとき、そんなことを思い出した。

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【インスタントカメラ-その言葉に騙された!?】
ポラロイドSX-70 FIRSTMODELは、1972年から1977年にかけて製造されたインスタントカメラだ。現在のポラロイド製カメラがそうであるように、撮影するとフィルム(感光紙!?)が吐き出され、じわじわと像が浮かび上がる。現像せずにその場で写真が見られる。当時は画期的な商品であり、デジタルカメラ全盛のいまでさえ、その特殊性は健在だ。

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インスタントカメラという言葉は「誰でも手軽に撮れる」という撮影スタイルを想起させる。しかしそれは大きな誤解だった。特にこの初代SX-70は、きわめて写真機然としたカメラだ。赤いシャッターボタンの上にはフォーカスダイヤルがあり、マニュアルフォーカスでピントを合わせる。その反対側にあるダイヤルは露出補正用。約2絞り分の露出補正が行える。背面にまわるとファインダーがあり、上下二重合致式のスプリットサークルイメージが見える。シャッターを押すだけのカメラではない。ピントをMFで合わせ、露出を調整し……撮るための儀式は数多く、このカメラにはメカを操る楽しみが宿る。そしてシャッターを切った瞬間、目の前から像が消えた。そう、SX-70は一眼レフ。これがまたカメラ好きの心をくすぐる。

【フィルム生産中止でさらなる楽しみが!】
SX-70は専用フィルム「SX-70 Time-Zero」で撮影する。しかし、このSX-70TZは2006年3月で生産中止……。600高感度フィルムが代用品として使えるのだが、SX-70TZがISO150相当であるのに対し、600高感度フィルムはその名の通りISO600相当。そのままではハイキーな写真しか撮れない。そのためポラロイド社はNDフィルターを発売しているが、プラスチック製で透明度がわるいせいか、これを装着するとファインダーが暗くなって撮影しづらい。どうやって600高感度フィルムで快適に撮るか――ここに創意工夫の楽しみがある。ざっと調べてみたところ、以下のようなアプローチがあるようだ。

★透明度の高いNDフィルターを使う
SX70FOREVER(スイートロード)が透明度の高いガラス製NDフィルターを製作。マグネット式でレンズ部分に着脱できる。ただし、装着した状態でカメラ本体を閉じられないのが難点。

★フィルムにNDフィルターを貼り付ける
600高感度フィルムのカートリッジに自作NDフィルターを貼り付ける。ブラウン系のクリアファイルをカットしたり、OHPシートに任意の色を印刷して使用。手間はかかるが、ファインダーが暗くならない。SX-70 BLENDというNDフィルター付きの600高感度フィルムも登場。ただし、高い。

★600高感度フィルム対応に本体を改造
高感度フィルムでハイキーになってしまうのは、SX-70が高速シャッターに対応していないためだ。そこで本体を改造し、高感度フィルムでも適正露出を得られるようにする。ヤフオクではこうした改造済みSX-70がよく出品されている。また、日本ポラロイドで修理のついてで改造してもらったという事例も。

Dpp_0421_2GR DIGITALの例を持ち出すまでもなく、カスタマイズの余地があるということは、趣味のカメラとしてとても楽しい。そもそも即時性が売りのポラロイドカメラだが、オートフォーカス全盛のいまとなってはずいぶんと手間がかかるカメラだ。そこに専用フィルム生産中止というフィルム式カメラの憂き目が……。細かいことを言えば、600高感度フィルム+NDフィルターで撮影しても、SX-70TZのような青みがかった写真は撮れない。スキャンしてホワイトバランスを調整するか、はたまた色補正用フィルターを自作するか。いろいろと想像は膨らんでいく。むろんこうした手間はSX-70本来のそれではない。面倒を楽しむなんてカメラオタクの倒錯といってしまえばそれまでだろう。ただ、撮る前から遊べるなんてステキじゃないか。フィルム、カメラ、撮影。1台で3つも楽しめるSX-70は、現在のデジタルカメラが失った写真機の匂いがする。

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SX-70 first + 600 instant film(retouch)

●SX-70で撮った拙作はこちら

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January 25, 2007

Windows Vista 導入計画

ウィンドウズビスタの発売まであと数日。これを機にパソコンのリプレイスを考える人、夏あたりまで様子見の人、はたまたSP1まで待ち、と腹をくくる人、いろいろだと思う。デジタル系ライターという職業柄、ぼくに選択肢はない。発売即バージョンアップ。ほぼ強制的に、である。ウィンドウズ3.1以降、10年以上にわたって幾度となくOSアップデートを体験してきたが、ビスタ導入の方向性は呆気なく決まった。メインマシン入れ替え。しかも自作ではなくメーカー製パソコンで。その経緯を雑感も交えながらまとめてみたい。

【ウィンドウズはXPで完結した】
いまのメインマシンはNEC Directで購入した水冷マシンだ。CPUはペンティアム4 2.80GHz、メモリ1GB(512MBから増設)、チップセットはインテル865G、HDDは120GB×2、光学ドライブはDVDスーパーマルチという構成。いまとなっては旧式だし、さすがにRAW現像を行うと動作が極端に重くなる。それどころかIE7.0導入でへこたれる始末……。このマシンを買ったのは2004年2月、およそ3年前だ。しかしこの3年間、システムクラッシュしたことはない。ここ半年ほどはさすがに、シャットダウンの際に「○○.exeを終了しています」なんてメッセージがやたらと出るようになったが、それでも就寝時以外フル起動でまる3年使い、大きなトラブルには遭遇しなかった。ウィンドウズ9x系時代では考えられないほどの安定性だ。

その一方で、所有するマシンは年々数が減っていった。いまはメインマシンとテスト機、そしてモバイル用のノートパソコンの3台しかない。この状態は自分のパソコン歴と照らし合わせて異例のこと。ウィンドウズ9x時代、90年代後半から2000年を超えるあたりまでは、最大時で7台以上のパソコンを所有していた。なぜわずか3台で済むようになったのか。けっして単にパソコンに飽きたからではない。複数機で分業化する必要性がなくなったからだ。

大量のマシンを所有していた当時、各マシンにはぞれぞれ役割があった。原稿執筆用のメインマシン、周辺機器やベータ版ソフトを試用するテスト機、DTM専用機、ファイルサーバー、BeOSやLinuxなどのOS遊び専用機、そしてノートパソコンにマッキントッシュ。1台にふたつ以上の役割を持たせると、クラッシュ時に壊滅的な状況になる……そんな経験則から1台1機能を長らく貫いてきた。しかし現在は、原稿執筆用のメインマシンでヘビーなRAW現像も行うし、個人的に使ってみたいソフトのベータ版もインストールしてしまう。それでも執筆に支障なく使えてしまうのは、ウィンドウズXPがきわめて安定したOSであり、なおかつハードウェアリソースという側面でも十分にパソコンが高性能化した証だろう。

【3台のPC、それぞれのアップグレード】
思い出話がすっかり長くなってしまった。結論をいおう。メインマシンはソニースタイルでBTOしたVAIO type R masterを購入予約した。テスト機は去年購入したNEC Direct「ValueOne G(タイプMT)」をXPからVista Ultimateにアップグレードする。ノートパソコンはMacBookにリプレイスする予定だ。なぜこうしたチョイスになったのか。ひとつずつ解説していこう。

Image1_8まずメインマシンのVAIO type R masterから。BTOの仕様は左の画面写真を参照してほしい。見ての通り、BD & 地デジ対応マシンという構成だ。その一方で、基本スペックは中の上ぐらいに抑えてある。液晶モニターは先日購入した三菱「RDT261WH」を使用。HDCP対応なのでハイビジョン映像の著作権保護機能の諸問題はクリアできるはずだ。こう記すとどうということのない選択肢に思えるが、実は消去法に消去法を重ねた結果である。当初はNECのBD & 地デジ対応マシンを検討していた。というのも、同じNEC製品なら旧機種の下取りサービスが利用できるからだ。安く上げようということではなく、捨てるのに金をかけるなら下取りに出した方がマシというだけ。ところがNEC春モデルは水冷マシンが消え、しかもスリムデスクトップはBD未対応。BTOモデルに関しても、BD搭載時は液晶ディスプレイの同時購入が条件となる。液晶は「RDT261WH」を使うので、この時点でNECは候補から消えた。富士通は個人的に趣味が合わないので却下(けっしてわるいマシンではないけれど……)。BTOメーカーは静音性の問題があるので同じく候補外。ショップブランドはサポート面に不安があるのでやはり除外(なにせ最低3年は使いたいので)。こうやって消去法をくり返していくと、最後に残ったのがソニーだった。

単にビスタ導入ということならば、ここまで面倒な話ではない。液晶別売りでハイビジョン対応(いわゆるBD & 地デジ)させようと思うと、現状では極端に選択肢が狭まるのだ。さらに困ったことに、ブルーレイドライブは後からでも追加できるが、地上デジタル放送チューナは後付けできない。なんだかやとハイビジョン環境を整えようと思うと、本体のみで40万オーバーという突き抜けた価格になってしまった。デジタル系ライターなんて仕事をしていなければ、夏まで待ってBDドライブの低価格化とビスタの動向を静観したはずだ。

ペンティアムD 920(2.8GHz)
メモリ1GB
HDD80GB(SATA)
インテル945エクスプレス
DVDスーパーマルチ

上記のスペックはいまテスト機として使っている「ValueOne G(タイプMT)」のものだ。テスト機はこれをそのままVista Ultimateにバージョンアップする。テスト環境はちょっと古いくらいがいい。一般ユーザーの環境に近づけておくことが大切だ。そのためあえて去年の春、テスト機をこのマシンに入れ替えた。あれから約一年たち、ほどよく枯れたシステムといえるだろう。ビスタのRTM版を走らせた感触では、このままで十分実用的なパフォーマンスを発揮する。エアロも特に問題ない。現在上記のようなシステムを使っている人ならば、様子を見ながらメモリを2GBに増設するだけでいいはずだ。

ノートパソコンのリプレイスはいますぐに、ということではない。しかし、次期ノートパソコンはMacBookでいく。いうまでもなく、インテルマックになってアップル製ノートパソコンでもウィンドウズが動くようになった。もうマック風デザインのノートパソコンを買う理由はない。正真正銘のマックでウィンドウズを走らせればいい。また、手持ちのノートパソコンを強化してビスタに対応させるという考えは、毛頭ない。なぜか。答えは簡単。ノートパソコンというものは、そのときどきのOSおよびアプリケーションがかろうじて快適に動作するハードウェアリソースしか搭載していない。どれだけパソコンメーカーが「デスクトップ機に肉薄するパフォーマンス!」などと謳おうが、OSのアップグレードはおろか、ウイルス対策ソフトをバージョンアップしただけで激遅……。ノートパソコンはプレインストールOSで使う――これは鉄則だ。

【なぜメーカー製パソコンなのか】
このようにビスタ導入はすべてメーカー製パソコンで行うことにした。むろんぼくも、かつては自作パソコンや拡張にさんざんハマった口だ。DIY的ビスタ導入も一応は検討してみた。しかし、何ひとつ自作の利点を見出せなかった。ハイビジョン映像を満喫したいのであれば、メーカー製パソコンが有利。しかも各パソコンメーカーは購入時に下取りサービスを行っているので、旧機種を捨てずに済む。自作パソコンは組み立てた瞬間から、いずれ金をかけて捨てなくてはならない。こんな不条理は願い下げだ。

拡張増設によるパワーアップという観点も、現在ではずいぶんと色褪せて見える。メモリとHDDの増設は必要に応じて行うべきだが、グラフィックボードやマザーボードの換装を必要とするほど、現在のパソコンは低性能ではない。もしこうした作業が必要なほどに陳腐化したパソコンなら、潔くリプレイスした方がコスト的にも作業的にも理にかなっているだろう。むろん、自作や拡張を否定するつもりはない。しかしそれは、ホビーのひとつとして、だ。実用としてのパソコン、ツールとしてのパソコンは、メーカー製パソコンの方がハンドリングしやすい。そして新OSの登場に合わせて新調しておけば、少なくとも3~4年の間は快適に使えるはずだ。

現在のパソコンは、安定したOSと潤沢なハードウェアリソースを手に入れた。その一方でハイビジョン映像との相性のわるさが際立つ。恵まれた環境と付け焼き刃。このふたつを踏まえた上でウィンドウズビスタ導入を検討すると、自分なりの結論が見えてくるだろう。

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January 24, 2007

EOS 20D モノクロつながり

そういえば、EOS 20Dのモノクロモードって使ったことないな……。ふとそんなことを思った。GR DIGITALはYAフィルター(オレンジフィルター)まで買ってモノクロで撮るのに、なんでデジイチはモノクロモードを使わないんだろう。こりゃイカン。というわけで、EOS 20Dのモノクロモードを試してみることにした。

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【モノクロフィルター完全装備の贅沢さ】
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EOS 20Dでモノクロ撮影する際は、現像パラメータで「モノクロ」を選ぶことになる。これまで現像パラメータはデフォルト(パラメータ2)で使っていたので気づかなかったのだが、このモノクロモード、フィルター効果を装備した贅沢な仕様だ。黄、橙、赤。さらに緑まで選択できる(写真左)。さらに調色ではセピア、青、紫、緑が選べ(写真右)、こりゃもうレタッチいらず。モノクロ撮るならEOS 20Dでキマリ、か!?

_0011694_1さて、モノクロ撮影のテストにあたって、レンズはCarl Zeiss Jena FLEKTOGON 20mm/f4を使うことにした。型番にMC(マルチコーティングの略)がない。ゼブラ柄のレンズは時代的にシングルコーティング。今回のテストにうってつけだ。本来なら早速レビューを載せたいところだが、いかんせん、手に入れたのが昨日の今日。詳細な画質傾向や使い勝手はまた改めて紹介したい。ただこのレンズに関しては、画質云々のよりもボディに付けたときの迫力に尽きる。そんなレンズ選びがあってもいいじゃない(笑)。

【所詮フィルター効果、代用にはならない!?】
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一枚目はカラー撮影から。F5.0近辺にて撮影している。うむ、モノコーティングなのにコッテリ系。恐るべしFLEKTOGON……。なんて話はさておき、とりあえずは暖色系の部位をおぼえてほしい。これがEOS 20Dのフィルター効果の正体を暴くカギになる。

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フィルターなし、黄、橙、赤の順にサンプルを並べてみた。前回のエントリーで解説したとおり、モノクロフィルターは青から緑にかけての波長、わかりやすくいえば寒色系を濃くすることでメリハリのある写真と撮る。しかしこのサンプルを見てもらえばわかるとおり、フィルター効果を変えても寒色系は同じトーンだ。代わりに暖色系(朱色と黄色)の部位が強めのフィルター効果を選ぶごとに明るくなっていく。

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今度は緑フィルターの例。左がフィルターなし、中央が緑フィルター、右は赤フィルターだ。緑フィルターは暖色系(特に朱色)がグッと濃く(暗く)なっている。赤フィルターと比べるとその明暗差は歴然。しかし、寒色系はほぼ同じトーンだ。つまりEOS 20Dのフィルター効果とは、暖色系の明暗をコントロールする機能、といえるだろう。本物のモノクロフィルターとは逆のアプローチでコントラストを高めているわけだ。

【現像パラメータ、意外な盲点が発覚!】
Image2_4このように実際のモノクロフィルターと効き目は異なるが、デジタル的発想でコントラストを付けられるのがフィルター効果の利点といえそうだ。しかし、もしあなたがRAWオンリーで撮影しているなら、現像パラメーターをモノクロにする必要はない。なぜなら、カメラに付属するRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」でいつでもモノクロ化できるからだ。しかも単にモノクロ化するだけでなく、フィルター効果と調色も自在に変更できる。さらにいうならば、モノクロモードで撮影しておいて、ピクチャースタイルをモノクロ以外に変更すればすぐさまカラー写真になる。今回モノクロモードを試してみて、RAWデータの自由度を再認識する結果となった。ただしここでひとつ、大きな問題が露呈した。この自由度はDPPとの組み合わせのみで実現できることなのだ。

モノクロ撮影したRAWデータを「SILKYPIX Developer Studio 3.0」で読み込んだところ、すべてカラーになってしまった。どうやら現行バージョンのSILKYPIXは現像パラメータをまったく反映しないらしい。パラメーター2からセット1(任意で指定したパラメータ)に変更したものもすべて同一表示となり、コントラストや色合いのちがいは破棄されていた。ためしに「Lightroom beta 4」で読み込んでも結果は同様。現像パラメータは反映されなかった。おそらくキヤノンのRAW形式は、純粋なRAW情報+現像パラメータになっているのだろう。そして市販ソフトは現像パラメータを余計な情報として破棄してしまう。カメラ側で現像パラメータをカスタマイズして、なおかつ市販RAW現像ソフトを使っている人は、気をつけたいポイントだ。

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January 20, 2007

GR DIGITAL モノクロフィルターってどうよ!?

最近、GR DIGITALでモノクロモードをよく使う。パソコンでモノクロ化しても結果は同じ、という人もいるだろう。しかし、撮る時点でモノクロだと、モノクロに適した被写体を自ずと選ぶから不思議なものだ。ただ、ひとつ不満がある。GR DIGITALのモノクロモードはコントラスト調整ができない。そこでモノクロフィルターを試してみることにした。

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【コントラストが上がるって本当ですか?】
モノクロフィルターは、黄色、オレンジ、赤、そして緑のド派手なフィルターだ。緑はキワモノ扱いのようで、基本的には黄色→オレンジ→赤の順にコントラストが高まるらしい。はじめてのモノクロフィルターなので、とりあえず中をとってオレンジ色の「Kenko MC YA3」をチョイスした。単にブラックボディにオレンジが似合いそう、というミーハーな理由もあるが……。まあそんなこんなで、オレンジ色のYA3フィルターでざっくりと撮ってみた。

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う~ん、どうなんだろう。コントラストが高くなったというよりは、単に色が濃くなっただけのような……。コントラストが高まるといえば、暗い部分はより黒く、明るい部分はより白く写るのかと思ったが、どうもそういうことではないらしい。フィルターの解説文を読むと、YA3フィルターは風景写真に適しているそうな。だったら街角スナップだってイケるはず。でも、どう見たって物足りない。個人的にはですね、このくらい↓メリハリってほしいわけです。

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――SILKYPIX Developer Studio 3.0でバリッと補正――

【結果論としてのコントラストアップ】
コントラストとは、白と黒の幅のことだ。コントラストが上がるといえば、白と黒の幅が伸張することを思い浮かべる。ヒストグラムの白と黒の幅をググイッと伸ばして……。そんなことをイメージしてしまう。ただこれは、どうもデジタル的思考のようだ。よくよく調べてみると、YA3フィルター(オレンジフィルター)は、青から緑のかけての波長をカットするものらしい。青といえば、緑といえば森林。光量の落ちたエリアが濃く写るため、結果としてメリハリのある風景写真が撮れるという。ストレートにコントラストを伸張するのではなく、特定色を濃くすることでメリハリをつける。つまり、青と緑が濃く写る。なるほど、たしかにYA3フィルターは風景写真向けだ。

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では青と緑が本当にカットされているか、ベンチマークテスト的な撮影で見比べてみよう(こんな発想自体がどうにもデジタル的だけど……)。左は普通にカラーで撮影したもの。青と緑の部分を確認した上で、隣の写真をみてほしい。これはフィルターなしでモノクロモードで撮影したものだ。右の写真はYA3フィルターを装着している。確かに青と緑の部分が極端に濃くなっている。特定色を濃くすることで、感覚的なコントラストを強めているわけだ。と同時に、写真全体もアンダーになっているのがわかるだろう。レンズの前にあんなに濃厚な色のフィルターを付けているのだ。光量が落ちて当然。露出補正をプラスにかけることで、明暗差が大きくなりメリハリが増す。デジタルでいうところのコントラストを伸張しているわけではないが、結果論としてたしかにコントラストアップしている。

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もう一例。左はカラー撮影。中央はフィルターなしのモノクロモード。右はYA3フィルター装着のモノクロ撮影だ。青と緑が色濃くなっているのは先の例と同じだが、赤が明るくなっている点に注目。そのためコントラストがかなり強調されて見える。どの色が濃くなり、どの色が明るくなるのか。それを把握しておくことが、モノクロフィルター活用の秘訣のようだ。ちなみに、黄色のフィルターは青をカットし、赤いフィルターは赤以外のほとんどの色をカットする。黄→オレンジ→赤の順にカットする色域が広がり、濃く写る領域が増えていく。

【データ的解釈よりも感性で撮る】
Dpp_0326_1デジタルカメラ画像は写真をデータ的に解釈できる。シャープさを解像度で測り、色調を彩度や明度、ホワイトバランスでとらえ、明暗はヒストグラムで一目瞭然だ。眠い写真の眠さをデータ的に追求でき、アンダーな写真の暗さを簡単に補正できる。それはとても便利なことだし、そうしたデータ的解釈は、狙い通りの仕上がりへの近道だ。しかし、今回モノクロフィルターを試してみて、そうしたデジタル的アプローチにちょっと疑問を感じた。自分はコントラストの高い写真が撮りたかったのか? そう問いかけたとき、答えが揺らぐ。先にSILKYPIXで補正した作例を載せたが、あれはコントラストを上げることが狙いだったのか。暗い領域を増やすことで、不安感を煽るような写真に仕上げたかったのではないか。いまここで、安直に答えを出すのはやめておこう。写真は光をとらえるもの――モノクロフィルターはその意味を、改めて考えるいいきっかけになりそうだ。

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January 18, 2007

EF100mm F2.8 Macro 二世代前の実力とは!?

レンズまとめ買いの続報、今回はEF100mm F2.8 マクロで試し撮りしてみた。実のところ、現行モデルのEF100mm F2.8 マクロ USMは、デジタル未対応なのでひと世代前のモデルといわれている。するとEF100mm F2.8 マクロは二世代前のモデルとなるわけだ。ただ、数十年前のクラシック単焦点レンズでさえいい写りをするのだから、二世代前なんて気にするほどのことはない――と強がってみたものの、現代的なのにローテクという微妙な感触だった。さてはて、その実力はいかなるものか。

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【この挙動が二世代前の証!?】
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ボディにつけてまずまっ先に感じたのは、AFのモッタリ感だ。シャッターを半押しすると、ウンイィ~~~ッと大きな音を立ててレンズ筒が前後する。いかにもモーターまわってまっせ!という印象。現行ズームレンズのキュッキュッという動きとは格段の差がある。ただ、実際のマクロ撮影ではたいていMFで操作することになるので、AFが遅くてもそれはそれ、と割り切った方がいい。現行モデルのEF100mm F2.8 マクロ USMはインナーフォーカスでレンズ長は変化しないが、USMなしのこのモデルはレンズ筒が47ミリほど伸びる。そのため等倍撮影時の被写体との距離は約90ミリ。そこまで寄れる、ともいえるし、そこまで寄らなくてはならない、ともいえる。

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EF100mm F2.8 マクロにはフォーカスリミッタースイッチという仕組みがある。スイッチをLIMITにセットすると、0.31m(等倍)~0.57m(0.25倍)、0.57m~∞で撮影距離範囲の切替が可能。要はマクロ撮影通常撮影を切り替えるためのスイッチだ。意地のわるい見方をすると、合焦が遅いのでAFが迷ったときの無駄な動きを減らすための機能、といえなくもない。いずれにしてもこのマクロレンズはヘリコイドをやたらクルクルとまわさないといけないので、撮影用途に合わせてリミッタースイッチで動きを制限した方が使いやすいだろう。

【どこか昭和な発色とシャープネス】
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AF性能はやはり二世代前の古さを感じさせるが、肝心の写りはどうだろう。まずは等倍マクロ撮影のサンプルから見てみよう。左は開放F2.8、右はF11まで絞り込んでの撮影だ。開放F2.8だとやや甘い印象。F11だとさすがにシャープだが、それでもカリカリシャープというわけではない。どこかやわらかさが残っている。金属質なブツ撮りよりも、花や植物、昆虫の撮影に向いているかもしれない。

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発色はどうだろう。第一印象としては素直で嫌味のない色合いだが、やや地味か。けっしてシングルコーディングのように色褪せているわけでも、またカラーバランスがぎこちないわけでもない。ストレートな発色で彩度も申し分ないが、色ノリが淡泊といおうか、どこか芯を感じさせる力強さに欠ける。雰囲気としては、EF50mm F1.4 USMによく似た発色だ。L玉ならもっと繊細な色づかいになるし、デジタル対応の最新レンズならもっと鮮やかだ。そもそも銀塩時代の旧モデルなので、色合いに関してはやむなしか。まあ、パソコンで補正してしまえばどうということはないが(笑)。

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二世代前のレンズということもあって、アラを探し出したらキリがない。でも、個人的にはこのレンズがとても気に入った。というのもボケがとても自然なのだ。上の写真は文字盤の12時にピントを合わせ、開放F2.8で撮影したもの。スーッと溶け込むようなボケが美しい。マクロレンズさまさま。早くバラの花弁を等倍撮影したくなる(笑)。ボケ味ばかりはパソコンで補正修正できないので、こうした素性の良さは大切だ。ちなみに、このレンズは中古相場で4万円ほど。ぼくはお友達プライスで手に入れたが、わざわざ4万出すのは微妙なところだ。なにしろそれだけの予算があれば、定評のあるタムロン「SP AF90mm F/2.8 Di MACRO1:1」が買えてしまう。あえてEF100mm F2.8 マクロを選ぶこともないだろう。

【ML-3の使い道はないものか!?】
Dpp_0323今回、EF100mm F2.8 マクロといっしょにマクロリングライト「ML-3」を手に入れた。といってもこれは買ったのではなく、オマケとしてもらったもの。装着した姿は勇ましいのだが、いかんせん、旧式マクロリングライトなのでEOS 20Dでは発光しない。EOS 5Dのようなフルサイズでは発光するようなのでステップアップしたらいずれ……と思っているのだが、よくよく調べてみると常時フル発光になってしまうという。これではストロボチックな写真しか撮れない。ヤフオクでも漁ったら台湾製変換アダプタとか見つからないだろうか。それとも銀塩EOSを買って遊ぶか!? もし、いい使い道をご存じの方がいたらご一報を。

●その他の作例はこちらにあります。

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January 17, 2007

EF70-200mm F2.8L USM 繊細と空気感の賜物

先日、MC Sonnar 135mm/f3.5のレビューを載せたところ、知り合いの編集者からステキな申し出があった。「EF70-200mm F2.8L USMを処分するんだけど、興味ある?」と。しかもEF100mm F2.8マクロも処分するらしい。こんなにおいしい話はめったにない。即答で購入の意志を伝え、中古買取り価格プラスαで売買成立。ずいぶんと安く憧れのL玉望遠ズームを手に入れることができた。まず今回は、EF70-200mm F2.8L USMの画質ならびに使い勝手を考察してみたい。

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【前期型!? L玉ズームをゲット】
Dpp_0327_1今回入手したEF70-200mm F2.8L USMはレザー製の円筒型レザーケースが付いていた。たしか現行モデルは帆布製ケースなので、おそらく製造年はかな り古そう。以前、知り合いのカメラマンからEF70-200mm F2.8L USMには前期型と後期型があると聞いたことがあるので、きっと前期型なのかもしれない。ただ、光学的に大きな変更はないはずなので、さほどナーバスになるポイントではない。レンズコンディションは内部に若干チリが見えるものの、写りに影響のないレベル。外観は美品クオリティで、三脚座を取り外して使っていたらしく、取り付け時の塗装剥がれなどは皆無だ。いいコンディションのレンズをずいぶんと安く手に入れることができた。感謝。

【開放から使える、は本当か!?】
一般にLズームレンズは、単焦点レンズと同等、もしくはそれ以上の描写力をもつといわれている。ちょうどMC Sonnar 135mm/f3.5を購入したばかりなので、それと比較しながらEF70-200mm F2.8L USMの画質を見ていきたい。ボディはEOS 20Dを使用。RAWで撮影し、Digital Photo Professional 2.2で現像した。ピクチャースタイルはスタンダードを選択し、コントラストと色の濃さをそれぞれプラス1、リサイズにともなう解像感減退を考慮してシャープネスを+3~5に設定している。JPEGで撮影したときのデフォルトに近い状態を考えてもらうといいだろう。

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よくEF70-200mm F2.8L USMは、開放から使える望遠ズームといわれている。左のサンプルは開放F2.8、右はF3.5まで絞ったものだ。ボケ量のちがいこそあれ、開放F2.8からシャープな写りをする。ちなみに両方とも焦点距離は200mmだ。

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似たようなサンプルがつづいてしまうが、今度は焦点距離135mmで撮ってみた。左が開放F2.8、右がF3.5となる。やはり開放でも甘さがない。正直なところ、EXIFデータを見るまでどちらが開放F2.8かわからなかった……。しかし、カリカリにシャープというのではなく、繊細さを持ち合わせたシャープさがいい。このあたりの卓越した描写力がL玉ある由縁だろう。

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発色はどうだろう。色ノリはしっかりしているが、けっして派手にならない。やさしいけど芯を感じさせる色合いだ。この点はMC Sonnar 135mm/f3.5のサンプルと比較するとおもしろい。MC Sonnar 135mm/f3.5は油絵、EF70-200mm F2.8L USMは水彩画といったところか。

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ボケ味はとても気持ちがいい。前ボケ、後ボケともにスッと溶けるように広がっていく。今回の試写ではボケ味をコントロールするようなことはせず、かなりアバウトに撮影したのだが、それでもこれだけ自然なボケを得ることができた。こういうアバウトに使えてしまうところに高性能レンズの恩恵がある。右の写真は無限遠で撮影したもの。モロ逆光条件だったのでフレアっぽいが、アンテナのシャープネスに注目。無限遠でこのくらいカチッとしていると気持ちがいい。

ちょっと試写しただけで実感できたのは、繊細なシャープネスとやさしい色合いだ。よく空気感をとらえるというけれど、まさにそうしたものを肌で感じることができた。L玉でしか撮れない絵がある――そんな気分にさせられる。たしかにパッと見の鮮やかさではMC Sonnar 135mm/f3.5の方が上をいくが、EF 70-200mm F2.8L USMはていねいな階調表現で香り立つような立体感がある。この表現力は得難いものだ。

【重さよりもフロントヘビーがつらい】
EF 70-200mm F2.8L USMはいいレンズだ。でも重くて……。よく言われる話だ。実際EOS 20Dにつけて手持ちで撮影してみると、小一時間で二の腕あたりがプルプルしてくる。F4L ISが登場したので、そちらに乗り換える人が多いのもうなづける話だ。ただ、重量は慣れが解消する問題のような気もした。それ以上に、EOS 20Dとの組み合わせではフロントヘビーな重量バランスがネックになる。

Dpp_0324_1まず見た目からして、ボディにレンズを装着したというよりも、レンズにボディがかじりついているという感じ……。見るからにバランスがわるい。そのバランスのわるさを痛感するのはヘリコイドを操作するときだ。焦点距離のコントロールはまだいい。USMでピントを合わせるとき、ボディを持っている右手に全重量がのしかかる。左手はレンズから手のひらを浮かせ、親指と人差し指でヘリコイドを操作。右手はシャッターボタンを半押ししたままグリップを握って全重量を支えることになる。コンパクトボディのEOS 20Dだと、グリップ状態で全重量は支えきれない。右手を身体につけてがっちりホールドしてもダメ。ファインダー内はブルブルと震え、この状態でシビアなピントなんて合わせられるはずがない。フルサイズのEOS 5Dならもうちょい安定するのでは……。やっぱEOS 5Dだよなあ、なんてシステムアップグレードのいい口実が見つかってしまった(笑)。――とまあ重量面での不満はあるが、たしかにEF70-200mm F2.8L USMには、このレンズでしか撮れない絵がある。筋トレしてでも使いこなそう。そんな気持ちにさせるレンズだ。

●その他の作例はこちらにあります。

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January 16, 2007

GR DIGITAL お散歩ケース製作記

外付けファインダーを付けたGR DIGITALはかっちょいい。フードアダプタはケースバイケースで取り外すが、外付けファインダーだけはいつも付けっぱなしだ。しかし、この状態では専用ケースに入らない。専用ケース以外でも、いわゆるコンパクトデジタルカメラ向けケースでは収納不可……。そんなわけで、ファインダー付きGR DIGITALオリジナルケースを作ってみることにした。

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【DOAのミリタリーショルダーをカスタマイズ】
Dpp_0314とはいっても、ぼくは皮革加工職人でもないし、バッグ職人でもない。イチからケースを作るのは難しいので、手持ちの使っていないバッグをカスタマイズすることにした。俎上に上げたのはDOAのリメイクミリタリーバッグ。ユーズドのミリタリーケースにビンテージスタッズを打ち込んだというチープなシロモノだが、実はこいつ、ちょいとお高い。DOAはスタッズベルトで有名なHTCの元スタッフが立ち上げたブランド。ハンドメイドということもあって、原価を遙かに上回るお値段なのだ。

Dpp_0251そんなにお高いバッグなら大事に使えばいいじゃない!? いやもう、まったくその通りなのだが、しょせんはアイディア一発、雰囲気重視のアイテムなので、バッグとしてはあまり実用的ではない。まず、内部が裏革むき出しだから収納アイテムは革クズまみれ……。もちろんそのままGR DIGITALを入れるなんて論外だ。さらに縦長なわりに間口が狭く、携帯電話やタバコを入れるとどうにも取り出しづらい。そんなわけで、買ったものの1~2回使っただけでクローゼットの肥やしになっていた。しかし、せっかくのこじゃれたバッグ、このまま放置しておくのはもったいない。ちょっと手を加えてGR-D専用ケースに改造だ。

【内装リメイクでGR-D専用ケースに!】
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改造の条件はふたつ。カメラを革クズまみれにならないようにすること。そしてクッションで振動対策を施すこと。要は内装リメイクしようというわけだ。まず、前面と背面は東急ハンズで購入した固めのスポンジシートを貼り付けた(写真左)。側面はフードアダプタの革巻きで余ったビニックスレザーを貼る。本当は側面にもスポンジシートを貼りたかったのだが、右側面が湾曲していて厚みのあるものはうまく貼り付けられない。やむなし、か。ちなみに、スポンジシートとビニックスレザーはどちらも両面テープで貼ってある。底面は厚手のスポンジで上げ底することにした(写真中央)。このケースは間口が狭いので、ケースを開けてすぐカメラを取り出せるように上げ底しておく。切断面がギザギザになってしまったが、まあ外から見えないからいいか(笑)。なお、底部のスポンジは両面テープを使用せず、ただ底に詰めただけ。上からモノを入れるのだから、別段固定する必要はない。写真右が改造後のケースにGR DIGITALを収納した状態。指を伸ばせばすぐにカメラが取り出せる。手軽な改造でいい感じに仕上がった。

Dpp_0312ちなみに、GR DIGITALにつけているハンドストラップは、Daniel & BobとBEYESのダブルネームモバイルストラップだ。非売品のネックストラップを使っていて気づいたのだが、GR DIGITALには白ステッチがよく似合う。白ステッチのハンドストラップを探してみたところ、こいつにたどり着いた。まあ見た目はありがちなケータイストラップだが、そこはやはりDaniel & Bob、ヴァケッタレザー製なのでとても質感がいい。なんていうか、ほどよくしんなりクタッとした感触がステキ(笑)。ただ、しょせんはケータイストラップなのでヒモの部分がどうにも華奢だ。フードアダプタなしならさほど気にならないが、フードアダプタ+レンズフード+フィルターをアドオンすると不安になる。留め具のアタリからプチッ……ガチャン。泣く、泣くだろうなあマジで。

【中年オヤジ、手ぶらの散歩は即通報!?】
Dpp_0315今回、ミリタリーバッグをカメラケースに改造したのは、実は切実な理由がある。フリーライターという職業柄、真っ昼間からそこいらをプラプラと歩くことがある。駅前の本屋に行ったり、近所のパチンコ屋に行ったり……。自他共に認める中年オヤジ、手ぶらで散歩していると、世間的には正体不明の怪しい人になってしまうのだ。幸いこれまで職務質問を受けたことはないが、巡回中のおまわりさんから熱い視線を注がれることはしばしば……。ならばと首からカメラをぶら下げ写真好きのおじさんを演じたところで、このご時世だ、かえってマズイことになる。公園や校庭にレンズを向けようものなら、即通報もあながち冗談ではない。

ただ世間の視線はおもしろいもので、バッグさえ身につけていれば何らかの目的があって歩いているように見えるらしい。また気持ちの上でも、バッグがあるとちゃんとした社会人になったような気がする……。そんな世間的精神的言い訳として、GR DIGITAL用お散歩ケースを作ってみた。カメラケース然としていないから、これなら普段着と合わせても違和感はない。運が良ければ、こじゃれたお父さん今日は有給中――ぐらいには見てもらえるかもしれない(笑)。さらにいま画策しているのは、フードアダプタ付きの状態で収納できるお散歩ケース。中年オヤジの散歩は何かと苦労が多い。

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January 10, 2007

MC Sonnar 135mm/f3.5 試写&画質考察

EF 70-200mm F4L IS USMが発売になってからというもの、F4L ISにするかF2.8Lにするかでずっと悩んでいた。なにしろ価格差は新品同士で1万円程度。F2.8Lの中古はF4L ISの新品よりも安い。機動力ならF4L IS、表現力ならF2.8L。それはわかっている。ただ、どうにも踏ん切りがつかない。自分が望遠レンズをどういうスタイルで使うのか、それが見えてこない。結論を出すまでの場つなぎというわけではないが、Carl Zeiss Jena DDR MC Sonnar 135mm/f3.5を買った。

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ひとつハッキリしているのは、最近の自分はスナップしか撮っていない。スナップ用の望遠レンズということであれば、機動性重視で軽い単焦点がいい。どうせ屋外撮影だからf4程度の明るさで十分。ボディはAPS-CのEOS 20D。ならば135mmでも200mm相当になる。135mm/f3.5、もしくは135mm/f4が候補だ。このクラスは安いクラシックレンズがゴロゴロしている。そうしたなかMC Sonnar 135mm/f3.5に決めたのは、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4とCarl Zeissつながりだからだ。ブランド志向といわれてしまえばそれまでかもしれない。MC FLEKTOGON 20mm/f2.8購入の伏線、そういう指摘もあえて否定はしない。きっとJena三兄弟、コレクションコンプリートするんだろうな……。

【スナップ向けの小型軽量望遠レンズ】
Dpp_0286_2そんなヨタ話はさておき、コイツのコンパクトぶりは本当にスナップ向けだ。右の写真はMC FLEKTOGON 35mm/f2.4と並べてみたところ。レンズ径はどちらも49mm。レンズ全長は1.5倍程度。これなら2本持っても軽装備で撮りに出かけられる。EOS 20Dに装着した際のバランスも良好。標準ズームレンズを着けている程度の重量感だ。そもそも重量感などというほどの重さも感じない。最短1メートルまで寄れるので、マクロ的な使い方もできる。今回の個体はカメラの極楽堂で購入したのだが、ややヘリコイドが重い印象。近距離から無限遠に向かってグリグリ回すと、ちょっと腕が疲れてくる。ランクABで21,000円。まあ、価格相応といったところか。

Dpp_0258MC Sonnar 135mm/f3.5は組み込み式レンズフードが備わっている。筒をスッと伸ばせばフードになり、これは思いのほか重宝する。クラシックレンズである以上、やはりハレ切りは欠かせない。MC FLEKTOGON 35mm/f2.4でははじめにラバーフードを買い、でもデザイン的にいまひとつ満足できずに結局はドーム型フードを買い直した(この顛末はこちら)。MC Sonnar 135mm/f3.5の場合はそうした手間をかける必要はない。ただ、じゃあこれがデザイン的に美しいかというと、それはまた別の話。Sonnarもフード探しの旅ですか……。いや、どうやらその必要はなさそうだ。手持ちのSuper-Takumar 135mm/f3.5の純正メタルフードがそのまま流用可能。しかも付けた姿がなかなか美しい。当面は日独合作で使ってみようと思う。

【さすがはMC、解像力は案外フツー!?】
肝心の画質はどうだろう。価格といい、在庫のあぶれ具合といい、MC Sonnar 135mm/f3.5はそれほど期待できるレンズではない。実際ウェブで情報をかき集めても、このレンズをベタ褒めするような記事はあまり見かけなかった。そんな事情を踏まえつつ、サンプルを見ていこう。撮影はRAWで行い、Digital Photo Professional 2.2で現像している。コントラストと色の濃さをそれぞれ+1に、リサイズにともなう解像感減退を加味してシャープネスを+3~5に調整している。EOS 20DでJEPG保存したデフォルトに近い状態と考えてもらうといいだろう。

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まずは左の写真から。開放近辺で撮影。やはりMC(マルチコーティング)を冠するだけあって発色がいい。前ボケ、後ボケともに嫌味がなく、美しいボケ味といえるだろう。ピクセル等倍で見るとちゃんと花粉まで認識でき、シャープネスも及第点だ。ただし、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4のようなハッする描写力ではない。右の写真はアンダーになってしまったが、それでもバイク本来のカラーリングを再現できている。f5.6あたりまで絞っての撮影で、ジャスピンの部分は輪郭がスッと際立つ。しかし、前述のように驚くほどシャープというレベルには達していない。

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どうもシャープネスがいまひとつな気がするので、ほぼジャスピンのサンプルを三枚並べてみた。リサイズの関係でわかりづらいかもしれないが、どれもほどよくシャープだ。けっして線が太いわけではない。ただ、繊細な描写かといえば、やはり疑問を感じる。今回は手持ちでの撮影だったので、三脚を立ててf7~11あたりまで絞り込めばまたちがった描写力が見られるかもしれない。見方を変えると、単に圧縮効果で立体感がないだけ……かも。

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無限遠の写りはどうだろう。上の二枚は無限遠からわずかに戻した状態で撮影したサンプルだ。絞りは開放から一段絞った程度。ほぼ無限遠でこれだけシャープなら文句はあるまい。

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ボケがうるさくなった例も紹介しておこう。左は開放f3.5での撮影。二線ボケというほどではないが、ややうるさいか。もともと込み入った被写体なので、やむなしという気もするが。1~2段絞った状態が右の写真。ちょっと絞るだけでごちゃごちゃした被写体も見通しがよくなった。

【優等生にケチをつけるのはナンですが……】
Dpp_0256_1買って日が浅いので試写の域を脱していないが、ざっと触った感想としては素性の良さが気に入った。たしかにMC FLEKTOGON 35mm/f2.4のような感嘆する写りではない。しかし、発色は現代的で、解像力もまずまず。欲をいえば開放からもう一段キリッとしてほしい気もするが、それは価格を考えれば望みすぎというものだろう。むしろこの軽さと扱いやすさで、これだけの描写力が得られるというメリットの方が大きい。手頃な価格で素直に写る。おもしろみには欠けるが、実用的かつハンドリングしやすい望遠レンズだ。

●追記
その他の作例はこちらをご覧ください。

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January 07, 2007

Micro Music Monitor(M3)はなぜ評価が冴えないのか

PCサウンドはチープだ。そもそもPC向けサウンド機器は、サウンドボードにせよスピーカにせよ、申し訳程度の性能しか備えていない。音が鳴るだけマシ、といった割り切りも必要だろう。まして昨今は音源が圧縮オーディオになってしまった。真の意味でクオリティを求めること自体滑稽なのかもしれない。これまで数年間、EIZO「M170」の液晶内蔵スピーカで我慢してきた。でも、もう限界だ。意を決してBOSE「Micro Music Monitor(M3)」を試してみた。

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なぜ「意を決して」なのかって!? それはMicro Music Monitorの評価がいまひとつ奮わないからだ。そもそもBOSEのスピーカ製品はオーディオマニアにあまりウケがよくない。ぼくはオーディオマニアではないので彼らの意図は汲みかねるが、おそらく「小さい割によく鳴るけど、本当の意味で豊かな音ではない」といったところか。かれこれ7年ほどBOSEの5.1chサラウンドシステムを使った経験からすると、そんな気がする。にもかかわらずMicro Music Monitorを購入した理由はひとつ。小さくて、最低限音に満足でき、なおかつプロダクツデザインがすぐれたデスクトップスピーカは、この製品以外に選択肢がない。購入動機はとても後ろ向きだ。

【リニアな反応、こいつはマジでモニタースピーカ】
で、肝心の音質はどうなのか。まず断っておくと、Micro Music Monitorはリスニングスピーカではない。モニタリングスピーカだ。リスニングスピーカとはどんな音源ソースもスピーカ側でほどよく補正してくれる。聴いて気持ちいい味付けがなされている。それに対しモニタリングスピーカは、音源ソースを正確に再現するのが目的だ。そのことは電源を入れてすぐに実感できた。ひどい音なのだ……。

いつもどおりiTunesの再生ボタンをクリックする。すると、低音がドーンと響きわたる。しかし、高音部がごっそり削られ、伸びがまったくもってない。なんじゃこりゃ!? と首をかしげつつ、iTunesのイコライザ画面を呼び出してみる。納得した。設定が「Small Speakers」になっていて、バスブーストしつつ高音部は思いっきり抑えてある。要は小さいスピーカで音がシャカシャカしないセッティングだ。こいつはイカン、とイコライザはいろいろといじくってみる。Rock、Pops、Flatなどなど、手当たり次第設定を変えていくと、驚いたことにイコライザの設定にきわめてリニアにサウンドが反応するのだ。しかも、音が膨れるのではなく、ちゃんと伸びる。「膨れる」と「伸びる」のちがい、わかるだろうか。たとえば安いスピーカで低音域を持ち上げると、音量が大きくなるだけでなく、歪んだりつぶれたりしてしまう。。その点Micro Music Monitorは、ノンストレスにスコーンッと突き抜けるのだ。この再現性の高さ、たしかにこいつはモニタリングスピーカだ!

特に度肝を抜かれるのが低音域。ついサブウーハーを探してしまうほど低音が伸びる。ボリュームを上げるとマウスを握る手に低振動が伝わってくるほどだ。わずか12センチのハウジングで、この低音出力は驚異的である。しかも音量を上げてもなかなか歪まない。とりあえず部屋中に音があふれるまで音量を上げてみる。ぜんぜん余裕だ。さらに、妻子が「うるさい!」と怒鳴るあたりまで上げてみる。まだまだイケる。マンションの上下左右から苦情電話がかかるギリギリまで上げてみた。もっとイケそう。でもこれ以上は怖くてムリだ……。という具合に、かなり音を突っ込んでも余裕がある。ノートパソコンでDTMをやっているなら、Micro Music Monitorはコンパクトなモニタリングスピーカとして最有力候補になりそうだ。

【モニタースピーカとしての実力は微妙!?】
では、モニタリングスピーカとして純粋に評価してみた場合、Micro Music Monitorの位置づけはどうなるだろう。たしかに全域にわたって伸びがある。音もかなり突っ込める。しかし、肝心かなめの音の定位がいまひとつなのだ。リスニングスピーカとしてなら十分なステレオ感。ただし、これでミックスダウンやマスタリングをすることを思うと、ちょっと戸惑ってしまう。ためしてに昔DTM&HDRにハマッていた頃の曲を引っぱり出して再生してみたところ、鳴っている場所がどうも曖昧なのだ。なにしろ自作の曲だ。音源をどこに配置したかはちゃんとおぼえている。にもかかわらず、かなり耳を澄まさないと音の在処にたどりつけない。こりゃMP3に圧縮しているせいかも、と思い、WAVファイルも再生してみた。結果は同じ……。やはり音の定位がどことなく曖昧だ。けっして音が濁っているというわけではない。あえていえば、立体感に乏しいような印象だ。

Micro Music Monitorのレビューはウェブのあちらこちらで見受けられるが、みな一様に辛口の評価だ。そして自分も辛口トークになってしまった……。ただ、くれぐれも言っておきたいのだが、Micro Music Monitorはけっしてわるいスピーカではない。そこいらのPCスピーカなどと比べモノにならないくらい高音質だ。でも、評価は辛口になってしまう。理由は簡単。いい鳴り方をするので、マジモンのモニタリングスピーカ(要はスタジオモニター)と比較してしまうのだ。Micro Music Monitorは実売49800円。この価格は標準的なスタジオモニターが買える値段だ。もちろんMicro Music Monitorは、一般的なスタジオモニターにない超コンパクトというアドバンテージがある。いわばPC向けモニタリングスピーカという新ジャンルを開拓した製品だ。そういう切り口から評価すると、唯一至高の製品といえるだろう。ただ、音を聞くとついスタジオモニターと比較してしまうのだが……。

【PC用モニタースピーカの価値とは?】
Dpp_0260Micro Music Monitorが従来型モニタリングスピーカと一線を画していることは、実は付属品からも見て取れる。スピーカを保護するプロテクトカバー、携帯時のキャリングポーチ、さらにはリモコンまで付属する。また、単3乾電池×4本で使用でき、ポータブルスピーカとしての側面も持つ。パソコンやiPodと組み合わせ、ストレートな音を楽しむスピーカ。いわばそんな位置づけだろう。では、ストレートな音をパソコンで楽しむ意味はどこにあるのか。パソコン用にモニタリングスピーカは必要なのか。実はモニタリングスピーカの価値を発揮するシーンがある。それは音を絞ったときだ。安いスピーカだと、音量を下げると音が団子になって音楽が聞き取れない。主旋律はおろか、かろうじてビートが感じ取れる程度だ。その点Micro Music Monitorは、音量をギリギリまでしぼっても高音から低音までしっかりと音の粒がわかる。音が鳴るのではなく、音楽が聞えてくるのだ。音量を上げれば、どんなにショボいスピーカでもよく聞えてしまう。スピーカの本領は音を絞ったとき。そんなセオリーを、Micro Music Monitorは思い出させてくれた。

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January 01, 2007

RDT261WH 今年はHDCP対応ワイドでいこう!

今年買うべきものナンバーワン、それはディスプレイだ。まずWindows Vistaに備えてワイド画面がほしい。画面右側にズラリと並ぶガジェット。あれは4:3画面では使いづらい。どうやらマイクロソフトは時すでにワイドディスプレイがディフェクトスタンダードと踏んだようだ(単にGoogle Desktop潰しというウワサも……)。さらに次世代ディスクの市販タイトルを表示するにはHDCP対応DVI端子HDMI端子が必須。もちろんフルHDであることも重要だ。ワイドでフルHD、しかもHDCP対応。こうした条件をすべて満たした三菱電機「RDT261WH」を手に入れた。

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今回ディスプレイを買うにあたって、対抗馬となったのはEIZO「S2411W」だ。これまでメインで使っていたのがEIZO「M170」だったので、同じメーカーならではの安心感、そしてEIZO初のHDCP対応モニタという点が気になっていた。早い話がEIZOのHDCP対応モニタを待ってこれまで17型で我慢してきたのだ。ただし、このところEIZOはコンシューマ向けのFlexScanシリーズがマルチメディア寄りになっている。CRT時代は正確な色再現を売りにしていたが、液晶にシフトしてからというもの動画性能向上をアピールする製品ばかりだ。色再現性を重視するならカラーマネージメントモニタ「ColorEdge」を買えということか。 自分のパソコン用途と省みると、ここ最近はカメラにどっぷりハマッてRAW現像ソフトの稼働率がいい。動画性能よりもカラーマネージメント。とはいえColorEdgeは到底買えない……。そうこうしているうちに三菱電機から「RDT261WH」が出た。ワイドでHDCP対応。さらにAdobeRGBの色空間をほぼカバーするという色表現力。これだコレだろ! いま買うべきモニターはコイツじゃないのか!? そんなわけで興奮気味にポチッとクリックしてしまった。

やはり気になるのは発色だろう。ホントにAdobeRGBイケるの? 「RDT261WH」の色表現力を実感したのは、意外なことにテキストエディタだった。改行マークに緑の「」を使っているのだが、「RDT261WH」にリプレイスしてからというものこの緑がどうにも目に刺さる。同様にウェブブラウザ上の原色系の赤や青も目に刺さるのだ。見慣れた色よりも明らかに高彩度。当然ながら、ディスプレイのOSDに彩度という調整項目はない。これまで沈んでいた色が鮮やかに浮き上がり、それが眩しいのだ。妙なところで色再現域の広さを実感してしまった……。また、普段RAW現像を行うときはhuey(過去の記事を参照)のプロファイルをロードしているのだが、「M170」を使っていたときはロードしたとたんにガラリと色調が変化した。それに対し「RDT261WH」は、ややマゼンタ寄りになるものの色調が変わるほどではない。初期状態のトーンバランスが良い証拠だ。

25.5型ワイドというサイズについて考えてみよう。解像度は1920×1200ドットフルHDを満たしている。画面サイズとデスクトップ解像度のバランスはいい。アイコンや文字サイズを変更することなく、そのまま使って見やすいバランスだ。今回17型(4:3画面)から25.5型ワイドへステップアップしたが、これは文字どおりステップアップになった。テレビの買い換えでもよく言われることだが、4:3からワイド画面に買い換える場合、数字の上で2サイズ以上アップしないと大画面になったと実感できない。上の写真を見てもらうとわかるように、17型と25.5型ワイドを並べると、ちょうどひとまわり大きい程度なのだ。おそらく4:3の19型を使っている人なら、25.5型ワイドを買っても「横幅が広がっただけかよ……」と感じるかもしれない。

かつて大画面液晶を採用したリビングPCなるものが流行ったことがある。画面はたしかに液晶テレビ並みにデカイ。今回購入した「RDT261WH」は、いま思えばリビングPCクラスのビッグなワイド液晶だ。しかし、リビングPCのデスクトップ解像度はWXGA(1280×768ドット)。一画面の情報量は限られ、なおかつフルHDには遠く及ばないシロモノだ。あのときすでに次世代ディスクの時代がやってくることはわかっていたはず。メーカーが投入する製品は、ときに先見性や将来性とまったく無縁のものが少なくない。特にパソコン関連はそうしたケースが濃厚だ。きっとメーカーは消耗品のつもりで開発販売しているのだろう。購買者は資産のつもりで買っているのに……。

なお、まだ次世代ディスクドライブを導入していないため、ハイビジョン映像の表示性能は検証できなかった。これは追ってレポートしたい。

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