GR DIGITAL モノクロフィルターってどうよ!?
最近、GR DIGITALでモノクロモードをよく使う。パソコンでモノクロ化しても結果は同じ、という人もいるだろう。しかし、撮る時点でモノクロだと、モノクロに適した被写体を自ずと選ぶから不思議なものだ。ただ、ひとつ不満がある。GR DIGITALのモノクロモードはコントラスト調整ができない。そこでモノクロフィルターを試してみることにした。
【コントラストが上がるって本当ですか?】
モノクロフィルターは、黄色、オレンジ、赤、そして緑のド派手なフィルターだ。緑はキワモノ扱いのようで、基本的には黄色→オレンジ→赤の順にコントラストが高まるらしい。はじめてのモノクロフィルターなので、とりあえず中をとってオレンジ色の「Kenko MC YA3」をチョイスした。単にブラックボディにオレンジが似合いそう、というミーハーな理由もあるが……。まあそんなこんなで、オレンジ色のYA3フィルターでざっくりと撮ってみた。
う~ん、どうなんだろう。コントラストが高くなったというよりは、単に色が濃くなっただけのような……。コントラストが高まるといえば、暗い部分はより黒く、明るい部分はより白く写るのかと思ったが、どうもそういうことではないらしい。フィルターの解説文を読むと、YA3フィルターは風景写真に適しているそうな。だったら街角スナップだってイケるはず。でも、どう見たって物足りない。個人的にはですね、このくらい↓メリハリってほしいわけです。
――SILKYPIX Developer Studio 3.0でバリッと補正――
【結果論としてのコントラストアップ】
コントラストとは、白と黒の幅のことだ。コントラストが上がるといえば、白と黒の幅が伸張することを思い浮かべる。ヒストグラムの白と黒の幅をググイッと伸ばして……。そんなことをイメージしてしまう。ただこれは、どうもデジタル的思考のようだ。よくよく調べてみると、YA3フィルター(オレンジフィルター)は、青から緑のかけての波長をカットするものらしい。青といえば空、緑といえば森林。光量の落ちたエリアが濃く写るため、結果としてメリハリのある風景写真が撮れるという。ストレートにコントラストを伸張するのではなく、特定色を濃くすることでメリハリをつける。つまり、青と緑が濃く写る。なるほど、たしかにYA3フィルターは風景写真向けだ。
では青と緑が本当にカットされているか、ベンチマークテスト的な撮影で見比べてみよう(こんな発想自体がどうにもデジタル的だけど……)。左は普通にカラーで撮影したもの。青と緑の部分を確認した上で、隣の写真をみてほしい。これはフィルターなしでモノクロモードで撮影したものだ。右の写真はYA3フィルターを装着している。確かに青と緑の部分が極端に濃くなっている。特定色を濃くすることで、感覚的なコントラストを強めているわけだ。と同時に、写真全体もアンダーになっているのがわかるだろう。レンズの前にあんなに濃厚な色のフィルターを付けているのだ。光量が落ちて当然。露出補正をプラスにかけることで、明暗差が大きくなりメリハリが増す。デジタルでいうところのコントラストを伸張しているわけではないが、結果論としてたしかにコントラストアップしている。
もう一例。左はカラー撮影。中央はフィルターなしのモノクロモード。右はYA3フィルター装着のモノクロ撮影だ。青と緑が色濃くなっているのは先の例と同じだが、赤が明るくなっている点に注目。そのためコントラストがかなり強調されて見える。どの色が濃くなり、どの色が明るくなるのか。それを把握しておくことが、モノクロフィルター活用の秘訣のようだ。ちなみに、黄色のフィルターは青をカットし、赤いフィルターは赤以外のほとんどの色をカットする。黄→オレンジ→赤の順にカットする色域が広がり、濃く写る領域が増えていく。
【データ的解釈よりも感性で撮る】
デジタルカメラ画像は写真をデータ的に解釈できる。シャープさを解像度で測り、色調を彩度や明度、ホワイトバランスでとらえ、明暗はヒストグラムで一目瞭然だ。眠い写真の眠さをデータ的に追求でき、アンダーな写真の暗さを簡単に補正できる。それはとても便利なことだし、そうしたデータ的解釈は、狙い通りの仕上がりへの近道だ。しかし、今回モノクロフィルターを試してみて、そうしたデジタル的アプローチにちょっと疑問を感じた。自分はコントラストの高い写真が撮りたかったのか? そう問いかけたとき、答えが揺らぐ。先にSILKYPIXで補正した作例を載せたが、あれはコントラストを上げることが狙いだったのか。暗い領域を増やすことで、不安感を煽るような写真に仕上げたかったのではないか。いまここで、安直に答えを出すのはやめておこう。写真は光をとらえるもの――モノクロフィルターはその意味を、改めて考えるいいきっかけになりそうだ。
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