EF70-200mm F2.8L USM 繊細と空気感の賜物
先日、MC Sonnar 135mm/f3.5のレビューを載せたところ、知り合いの編集者からステキな申し出があった。「EF70-200mm F2.8L USMを処分するんだけど、興味ある?」と。しかもEF100mm F2.8マクロも処分するらしい。こんなにおいしい話はめったにない。即答で購入の意志を伝え、中古買取り価格プラスαで売買成立。ずいぶんと安く憧れのL玉望遠ズームを手に入れることができた。まず今回は、EF70-200mm F2.8L USMの画質ならびに使い勝手を考察してみたい。
【前期型!? L玉ズームをゲット】
今回入手したEF70-200mm F2.8L USMはレザー製の円筒型レザーケースが付いていた。たしか現行モデルは帆布製ケースなので、おそらく製造年はかな り古そう。以前、知り合いのカメラマンからEF70-200mm F2.8L USMには前期型と後期型があると聞いたことがあるので、きっと前期型なのかもしれない。ただ、光学的に大きな変更はないはずなので、さほどナーバスになるポイントではない。レンズコンディションは内部に若干チリが見えるものの、写りに影響のないレベル。外観は美品クオリティで、三脚座を取り外して使っていたらしく、取り付け時の塗装剥がれなどは皆無だ。いいコンディションのレンズをずいぶんと安く手に入れることができた。感謝。
【開放から使える、は本当か!?】
一般にLズームレンズは、単焦点レンズと同等、もしくはそれ以上の描写力をもつといわれている。ちょうどMC Sonnar 135mm/f3.5を購入したばかりなので、それと比較しながらEF70-200mm F2.8L USMの画質を見ていきたい。ボディはEOS 20Dを使用。RAWで撮影し、Digital Photo Professional 2.2で現像した。ピクチャースタイルはスタンダードを選択し、コントラストと色の濃さをそれぞれプラス1、リサイズにともなう解像感減退を考慮してシャープネスを+3~5に設定している。JPEGで撮影したときのデフォルトに近い状態を考えてもらうといいだろう。
よくEF70-200mm F2.8L USMは、開放から使える望遠ズームといわれている。左のサンプルは開放F2.8、右はF3.5まで絞ったものだ。ボケ量のちがいこそあれ、開放F2.8からシャープな写りをする。ちなみに両方とも焦点距離は200mmだ。
似たようなサンプルがつづいてしまうが、今度は焦点距離135mmで撮ってみた。左が開放F2.8、右がF3.5となる。やはり開放でも甘さがない。正直なところ、EXIFデータを見るまでどちらが開放F2.8かわからなかった……。しかし、カリカリにシャープというのではなく、繊細さを持ち合わせたシャープさがいい。このあたりの卓越した描写力がL玉ある由縁だろう。
発色はどうだろう。色ノリはしっかりしているが、けっして派手にならない。やさしいけど芯を感じさせる色合いだ。この点はMC Sonnar 135mm/f3.5のサンプルと比較するとおもしろい。MC Sonnar 135mm/f3.5は油絵、EF70-200mm F2.8L USMは水彩画といったところか。
ボケ味はとても気持ちがいい。前ボケ、後ボケともにスッと溶けるように広がっていく。今回の試写ではボケ味をコントロールするようなことはせず、かなりアバウトに撮影したのだが、それでもこれだけ自然なボケを得ることができた。こういうアバウトに使えてしまうところに高性能レンズの恩恵がある。右の写真は無限遠で撮影したもの。モロ逆光条件だったのでフレアっぽいが、アンテナのシャープネスに注目。無限遠でこのくらいカチッとしていると気持ちがいい。
ちょっと試写しただけで実感できたのは、繊細なシャープネスとやさしい色合いだ。よく空気感をとらえるというけれど、まさにそうしたものを肌で感じることができた。L玉でしか撮れない絵がある――そんな気分にさせられる。たしかにパッと見の鮮やかさではMC Sonnar 135mm/f3.5の方が上をいくが、EF 70-200mm F2.8L USMはていねいな階調表現で香り立つような立体感がある。この表現力は得難いものだ。
【重さよりもフロントヘビーがつらい】
EF 70-200mm F2.8L USMはいいレンズだ。でも重くて……。よく言われる話だ。実際EOS 20Dにつけて手持ちで撮影してみると、小一時間で二の腕あたりがプルプルしてくる。F4L ISが登場したので、そちらに乗り換える人が多いのもうなづける話だ。ただ、重量は慣れが解消する問題のような気もした。それ以上に、EOS 20Dとの組み合わせではフロントヘビーな重量バランスがネックになる。
まず見た目からして、ボディにレンズを装着したというよりも、レンズにボディがかじりついているという感じ……。見るからにバランスがわるい。そのバランスのわるさを痛感するのはヘリコイドを操作するときだ。焦点距離のコントロールはまだいい。USMでピントを合わせるとき、ボディを持っている右手に全重量がのしかかる。左手はレンズから手のひらを浮かせ、親指と人差し指でヘリコイドを操作。右手はシャッターボタンを半押ししたままグリップを握って全重量を支えることになる。コンパクトボディのEOS 20Dだと、グリップ状態で全重量は支えきれない。右手を身体につけてがっちりホールドしてもダメ。ファインダー内はブルブルと震え、この状態でシビアなピントなんて合わせられるはずがない。フルサイズのEOS 5Dならもうちょい安定するのでは……。やっぱEOS 5Dだよなあ、なんてシステムアップグレードのいい口実が見つかってしまった(笑)。――とまあ重量面での不満はあるが、たしかにEF70-200mm F2.8L USMには、このレンズでしか撮れない絵がある。筋トレしてでも使いこなそう。そんな気持ちにさせるレンズだ。
●その他の作例はこちらにあります。
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