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November 2006

November 24, 2006

Google Earth 古地図タイムトリップ

Google Earthフリー版がバージョン4.0.2416にマイナーバージョンアップした。パスとポリゴンの作成対応が大きなトピックスだが、実はひっそりと興味深い特集コンテンツが追加されている。それがRumsey Historical Mapsだ。

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これはDavid Rumsey Historical Map Correctionから17~19世紀の古地図16点をイメージオーバーレイで表示してくれるものだ。だたし、Google Earth日本語版には対応していないため、オプション画面の言語設定を「English」に設定しておく必要がある。具体的に手順を解説しておこう。

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まずメニューバーの〈ツール〉→〈オプション〉をクリックして、オプション画面の「全般」タブを開く。この画面で設定言語を「English」に変更。〈OK〉ボタンをクリックした後、Google Earthを再起動する。これでGoogle Earthが英語版で起動し、Featured Content(特集コンテンツ)にRumsey Historical Mapsが登場。あとは表示したい古地図のラジオボタンをONにすればよい。

【古地図でタイムトリップ】
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17~19世紀の古地図という希少な資料がタダで閲覧できる。これだけでもありがたい話だが、右写真のようにとても高解像度でストリート名まではっきりと読めた。これなら戦争や植民地化にともなう国境、地名の変遷まで見て取る。

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Google Earthらしい活用法としては現在の地勢(衛星写真)との対比だろう。ためしに任意のポイントで現在と過去を比較してみた。左が現在の衛星写真、中央が古地図、右はイメージオーバーレイを透過表示したものだ。河川が道路になっていたり、埋め立てによって陸地が広がった様子がわかる。こうした過去と現在の対比はイメージオーバーレイの得意とするところだ。

似たような活用例としては、Google Earth Wiki@Noblesse - Obligeのオルソ化写真用簡易スクリプトが有名だ。これは国土交通省オルソ化空中写真ダウンロードシステム(試作版)の航空写真を、Google Earthで表示しているエリア(日本国内にかぎる)にイメージオーバーレイするもの。オルソ化空中写真ダウンロードシステムの写真は昭和49年度から平成2年度にかけて撮影されたもので、Google Earthの衛星写真よりも確実に古い。つまり、このスクリプトを使えば手軽にタイムトリップできるわけだ。

【四次元――という概念のとらえ方】
Rumsey Historical Mapsはすでにいろいろなウェブサイトやブログで紹介されている。そのうちのひとつ、MYCOMジャーナルの記事が気になった。この記事では「Google Earthの四次元的な展開」としてRumsey Historical Mapsを取り上げている。この四次元という言葉の使い方がどうにも気になるのだ。

Google Earthで四次元と称したとき、まっ先に思い浮かぶのはタイムスケース機能だ。イメージオーバーレイやプレイスマークを時間軸にそってアニメーション。バージョン4.0でこの機能を備えたことで、Google Earthははじめて四次元空間を表現できるようになった。Google Earthがすぐれている点は、過去と現在を静的に対比するだけでなく、連綿とした時間の流れを動的に表現できるところだ。

たとえば、Rumsey Historical Mapsが特定都市の古地図を複数収録し、タイムスケース機能で時間軸にそって画像を入れ替えられるなら、それは四次元的展開という表現に相応しいものだろう。そしておそらくは、そうしたkml/kmzファイルがいずれ公開されることも想像に難くない。しかし、イメージオーバーレイを使った過去と現在の対比は、詰まるところBefore and Afterだ。Rumsey Historical Mapsは有益な特集コンテンツだが、けっして四次元的ではない。このコンテンツが時代ごとに画像を積み重ね、時間を蓄積してはじめて四次元的展開にいたる。そしてGoogle Earthなら、そうした世界を案外近い将来に見せてくれそうな気がする。

●追補
古地図を複数収録して……なんて書いていたら、本当にそんなイメージオーバーレイ集が登場しました。Historical Maps for Denmarkは1570年から1873年にかけて、デンマークの古地図が収録されています。アニメーションこそしないけれど、国境の境界線を表示させながら閲覧するとおもしろいです。

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November 12, 2006

GR DIGITAL ファインダーの使い道

Img_4792GR DIGITALの純正外付けファインダーは、28mmと21mmをまかなう便利なアイテムだ。が、しかし、デジタルカメラに外付けファインダーは本当に必要なんだろうか、という疑問は尽きない。見た目はファインダーをつけた方が圧倒的にかっこいい。ただ、実用という点ではさほど必要性を感じない。実際、外付けファインダーを買ってはみたものの、あまりのぞく機会がない。なにしろすぐ下の液晶に視野率100パーセントで構図が表示されているのだ。パララックスの生じるファインダーをどうしてわざわざのぞく必要があるのか。そんな気分になってしまう。飾り、見栄、懐古主義……。そんな言葉が脳裏をよぎる。いまさら要・不要論をぶちまけるつもりはないが、賛成派と反対派の言い分をまとめると以下のようになるだろう。

●反対派
視野率100パーセントの液晶があるじゃない。
ファインダーをつけた状態だとケースに仕舞えない。
F値やシャッタースピードがファインダ上で確認できない。
シンクロモニターモード(液晶OFF)にすると使いづらい。

●賛成派
レンジファインダーカメラみたいでかっこいい。
電源OFFでも構図を確認できる。
逆光時、液晶が見えなくなる。
ファインダーをのぞいて構えるとしっかりホールドできる。

双方言い分はいろいろあるが、冷静に考えると結論はすぐに出る。視野率100パーセントの液晶がある以上、ファインダーは必須ではない。しかし、逆光撮影時は液晶表示が見えなくなってしまうため、ファインダーがないというのも考えもの。通常は外付けファインダーなんていらない。でも、特定条件下で必要となる。だからリコーはオプションとして外付けファインダーを提供しているわけだ。使いたい人だけどうぞ。そんな感じ。

【なぜ外付けファインダーがダメなのか】
外付けファインダーの難点は、シンクロモニターモード(液晶OFF時)の使い勝手のわるさにある。たとえばAモード(絞り優先AE)で撮る場合、シンクロモニターモードでは絞り値が変更できない。露出補正はズームボタンを押すことで即座に変更できる。合焦の確認は幸いなことに、ファインダーをのぞくと目のはしに緑のLEDが見える。最低限の撮影条件は満たしているが、GR DIGITALのアドバンテージともいえるAモードで、絞り値が効かないのだからお話しにならない。ファインダーをのぞくから液晶はOFFにしよう、と思ってもOFFにできない現実がある。

見方を変えると、シンクロモニターモードでの使い勝手を改善すれば、外付けファインダーの実用性が増すはずだ。たとえば、Pモードで撮るというのはどうだろう。これなら露出とシャッタースピードはカメラにおまかせ。シャッターを押すだけでいい。ただし、どこにフォーカスが合っているかはわからない。そもそも被写界深度の深いカメラだからさほどナーバスになる必要はないものの、奥行きのある構図はピンぼけを連発しそう……。ならばいっそ、と思いついたのがスナップモードだ。

【発想の転換モノクロ・スナップモード】
GR DIGITALはスナップモードという2.5メートルの置きピンが使える。なにしろ置きピンだからフォーカスロックもヘッタクレもない。ファインダーでざっくり目測してシャッターを押すだけだ。これならシンクロモニターモードでも気兼ねなく撮れそうな気がする(諦念、という気がしないでもない……)。置きピンゆえに撮影条件によってはピンぼけが発生するだろう。それもAモードでF9ぐらいまで絞り込んでおけば、被写界深度が深くなってパンフォーカス的に撮れるはず。ただ、それなら何もGR DIGITALで撮らなくてもいい。置きピンにともなうボケも含めて、写真が撮れる設定はないものか。とりあえず、以下のような設定が思いついた。

液晶:シンクロモニターモード
AF:スナップモード
カラー:モノクロ
感度:ISO800以上
絞り/シャッター速度:Pモード

ピンぼけをモノクロ粒子感でごまかそうという姑息な戦法だ。とりあえずは論より証拠、作例を紹介しよう。なお、撮影画像はSILKYPIX Developer Studio 3.0で露出とコントラストの調整、およびトリミングを行っている。

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まずは遠景写真から。思った以上にシャキッと写っている。Exifを見ると、3枚とも絞りF9、シャッタースピード1/2000s。ほとんどパンフォーカス状態だ。ISO800に設定したのだが、快晴だったせいかノイズはほとんど気にならない。3枚目が日陰だったので、若干ノイズがのっている程度。スナップモードはフォーカスロックのタイムラグがなく、一気にシャッターボタンを押し込める。すごく軽快だ。

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次に近景モノを3枚ほど。左写真の絞りはF4.5。そこそこピントが合っているものの、ジャスピンでないことが幸いしていい雰囲気だ。中央の写真は背景にピントが合い、被写体はピンぼけ状態。でも、粒子感のおかげで救われている(ような気がする……)。右写真はPモードの産物だ。フラッシュが自動発光して影の足もとが消えた。普段、液晶で設定を確認しながら撮っていたらこうした失敗はしない。ファインダーだけで撮った失敗カットだが、影が浮遊しているようでこれはこれでアリか、と。

【たまにはリラックスフォトで遊ぶ】
Img_4791コンデジはスナップカメラだ。そしてGR DIGITALはコンデジだ。しかし、意志を持って撮れるところがただのコンデジと異なる。ただのスナップを、作品風に仕上げられるからおもしろい。今回、外付けファインダーを使うためにシンクロモニターモードとモノクロ・スナップモードを組み合わせてみたが、正直なところ、思い通りには撮れない。トイカメラで遊ぶような、どこか割り切って撮る感覚だ。と同時に、カメラ本来の楽しみ方がよみがえる。ちゃんと撮れているかな。どんな風に写っているだろう。家に帰ってパソコンの画面に画像を読み出すとき、紙焼きの仕上がりを待つようなワクワク感がある。

意志を持って狙い通りに撮る。たしかにそれは写真技術を磨く上で大切なことだ。しかし、ときに偶然にたよって撮るのも楽しい。ファインダーをのぞき、肩の力を抜いてシャッターを切る。リラックスフォトもいいもんだ。

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November 03, 2006

GR DIGITAL カスタマイズ

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GR DIGITAL カスタムブック 出版!
2009年6月8日、GRDカスタマイズを一冊にまとめた「GR DIGITAL カスタムブック」を出版します。これまでブログ、雑誌、ウェブ媒体で紹介したカスタムに加え、新作スタイルを多数収録。詳しくは以下の解説記事をご覧ください。よろしくお願いいたします。

●metalmickey's blog「GR DIGITAL カスタムブック を出版します!」

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ヤマハSR400というオートバイがある。単気筒エンジンを積んだシンプルなオートバイだ。速く走れるわけじゃない。乗り心地がいいわけでもない。街乗り性能だってぼちぼちといった程度。しかも1978年の誕生以来、基本設計はもちろん、ティアドロップ型のフューエルタンク、ロングノーズのマフラーといったデザインすら変わっていない。いま買えるビンテージバイクといえば聞こえはいいが、冷静に考えればどうにも古臭いオートバイだ。しかし、カスタムベース車両としてこれほどの逸材はない。手を加えるほどに愛着が増す。イジるほどに走りは激変する。

RICOH GR DIGITALを手にしたとき、カスタム魂に火がついた。

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おそらく多くのGR-Dユーザーがそうだと思うが、ぼくもご多分にもれず最初は本体だけで遊ぶつもりだった。ただ、外付けファインダーぐらいは付けようかな、と、ウェブを徘徊したのがいけなかった。コシナの28mm View Finder Mがえらくかっこいい。さらにこんなページあんなページを見て、素のままで使っているのがイケナイことのような気持ちにさえなる。GR DIGITAL本体を買って10日後、外付けファインダー「GV-1」、ワイドコンバージョンレンズ「GW-1」、そしてフードアダプタ「GH-1」と、いわゆるオプション一式を購入。カスタムの準備は整った。さあ、これからだ。

【やっぱスリットフードでしょ】
純正の角形レンズフードはイケテない。デザインといい質感といい、あまりにオモチャっぽい。外付けファインダーを付けたGR DIGITALは、どことなくレンジファインダーカメラを彷彿させる。ならばスリットフードでしょ、とウェブで探し当てたのがコレだ。

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まずは左の写真から。小さなリングはケンコーの37-46mmステップアップリング。大きい方はMS OPTICAL R&DM46システムスリットフードだ。このスリットフードがスグレモノで、分割式になっていて間に62mm径のフィルターがサンドイッチできる(写真中央)。開発者の狙いとしてはPLフィルターの装着にあるようだが、とりあえず手持ちのプロテクトフィルターを装着してみた(写真右)。ステップアップリング+スリットフード+フィルターでかなり強そうだ。なお、このスリットフードはフード先端にもネジ切りがしてあり、レンズキャップまで装着可能。13000円とかわいくない値段だが、利用シーンを考え抜いた設計に脱帽だ。

【フードアダプタのお約束-革巻き】
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フードアダプタは革を巻いて使うものらしい。ウェブを徘徊していると、革巻きGR-Dをよく見かける。そんなわけで、早速真似してみることにした。用意した革はjapan-hobby-tool.comで扱っているライカタイプ1(4044)。クラシックカメラ風に仕上げたかったのでこいつをチョイスした。本来は付属の両面テープで貼り付けるのだが、GR-Dのフードアダプタは凹凸がある。別途厚手の両面テープを用意して、凹部を平らにしてから革を巻き付けてみた。そのままだと両面テープの断面が白く見えてかっこわるいので、マジックで墨入れしておく。革巻きフードアダプタとスリットフードを装着したのが右の写真だ。カスタムの大原則、大いなる自己満足が込み上げる。

【ストラップはどうしようか!?】
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ストラップはマップカメラ特注ARTISAN&ARTISTレザーネックストラップを買ってみた。といってもこれは、よく考えずに購入した失敗例だ。実はGR-Dの存在感に負けないハンドストラップを物色していたのだが、長らく欠品になっていた上記アイテムが入荷したことを知り、つい勢いで購入ボタンをクリックしてしまった。この買い物が失敗だった理由はいくつかある。まず革質の問題。表側はほどよくマットで手触りもスムーズだが、裏側がいただけない。バックスキンは滑り止めの役目を果たすということなのだろうが、白いボロボロが服についてどうにも気になるのだ。この革を選んだ人は本当に自分で使っているだろうか。すごくギモンだ。

Img_4785_1ふたつめの理由はストラップの長さ。首かけ、肩かけにはちょうどいい長さなのだが、ジャストサイズの設計でたすき掛けができない。そもそもたすき掛けを前提にした商品ではないので仕方ないけど、GR-Dを身体にかけるならたすき掛けが一番かっこいいと思う。こうした用途を考えると、どうせネックストラップを買うならカメラ日和オリジナルストラップがよかったか……。後悔先に立たずとはいえ、ひとつだけ利点もある。それはコネクタ部分からレザーストラップをはずすと、両端のコネクタを連結してハンドストラップに変身するのだ。ただ、ハンドストラップとしてはどうにも中途半端な外観で、到底これでよしとは言い難い。きっと、近々にストラップは買い直すことになりそうだ。無駄な出費、などといってはいけない。カスタムに買い直しはつきもの。そういえば、SR用のバックミラーは7セットも買ったっけ。カスタムはそんなもんだ。

【GR DIGITALが教えてくれたこと】
Img_4763_1今回、GR DIGITALに取り付けられるアクセサリーを探しながら、実に多くのことを学ぶことができた。外付けファインダーというのはれっきとした光学機器で、明るくクリアに見えるということが重要なのだ、と。そして光学機器ゆえに質のいいものは中古市場でも値崩れが小さい。スリットフードのスリットも、単なるデザインではなくファインダーを覗いたときのケラレを解消するための工夫であり、また、外付けファインダーとスリットフードはレンジファインダーカメラのマストアイテムで、現在では主にライカ用に作られているのだ、と。GR DIGITALからライカという言葉にたどり着いたのはちょっとした驚きだった。カメラの世界は奥深い。その奥深いという事実を、少しだけ覗けたような気がする。

Img_4750_1_4そしてもうひとつ。デジタル一眼レフを使っていると、基本的にアクセサリー類はメーカー純正品で固めることになる。でも今回GR DIGITAL用にかき集めたアイテムは、けっして専用品ではない。一応、広角28mm対応のフードであるとか、カメラ用の張り替えレザーを使いはしたが、アイディア次第で自由にカスタマイズしていく過程はこれまでにない興奮だった。付きさえすればなんだっていいじゃない。そんなノリが新鮮だ。きっと古くからカメラをやっている人には当たり前のことなんだろうけど。

カメラは精密機器だから、つい身構えてしまう。でもGR DIGITALなら、Gジャンにバッチやワッペンを貼り付けるような感覚で、もっと自由に遊べそうだ。

GR DIGITALで撮った拙作はこちら

●追補
カスタマイズの続編「GR DIGITAL カスタマイズ 2」をアップしました。合わせてご覧ください。

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