Google Earth 古地図タイムトリップ
Google Earthフリー版がバージョン4.0.2416にマイナーバージョンアップした。パスとポリゴンの作成対応が大きなトピックスだが、実はひっそりと興味深い特集コンテンツが追加されている。それがRumsey Historical Mapsだ。
これはDavid Rumsey Historical Map Correctionから17~19世紀の古地図16点をイメージオーバーレイで表示してくれるものだ。だたし、Google Earth日本語版には対応していないため、オプション画面の言語設定を「English」に設定しておく必要がある。具体的に手順を解説しておこう。
まずメニューバーの〈ツール〉→〈オプション〉をクリックして、オプション画面の「全般」タブを開く。この画面で設定言語を「English」に変更。〈OK〉ボタンをクリックした後、Google Earthを再起動する。これでGoogle Earthが英語版で起動し、Featured Content(特集コンテンツ)にRumsey Historical Mapsが登場。あとは表示したい古地図のラジオボタンをONにすればよい。
【古地図でタイムトリップ】
17~19世紀の古地図という希少な資料がタダで閲覧できる。これだけでもありがたい話だが、右写真のようにとても高解像度でストリート名まではっきりと読めた。これなら戦争や植民地化にともなう国境、地名の変遷まで見て取る。
Google Earthらしい活用法としては現在の地勢(衛星写真)との対比だろう。ためしに任意のポイントで現在と過去を比較してみた。左が現在の衛星写真、中央が古地図、右はイメージオーバーレイを透過表示したものだ。河川が道路になっていたり、埋め立てによって陸地が広がった様子がわかる。こうした過去と現在の対比はイメージオーバーレイの得意とするところだ。
似たような活用例としては、Google Earth Wiki@Noblesse - Obligeのオルソ化写真用簡易スクリプトが有名だ。これは国土交通省オルソ化空中写真ダウンロードシステム(試作版)の航空写真を、Google Earthで表示しているエリア(日本国内にかぎる)にイメージオーバーレイするもの。オルソ化空中写真ダウンロードシステムの写真は昭和49年度から平成2年度にかけて撮影されたもので、Google Earthの衛星写真よりも確実に古い。つまり、このスクリプトを使えば手軽にタイムトリップできるわけだ。
【四次元――という概念のとらえ方】
Rumsey Historical Mapsはすでにいろいろなウェブサイトやブログで紹介されている。そのうちのひとつ、MYCOMジャーナルの記事が気になった。この記事では「Google Earthの四次元的な展開」としてRumsey Historical Mapsを取り上げている。この四次元という言葉の使い方がどうにも気になるのだ。
Google Earthで四次元と称したとき、まっ先に思い浮かぶのはタイムスケース機能だ。イメージオーバーレイやプレイスマークを時間軸にそってアニメーション。バージョン4.0でこの機能を備えたことで、Google Earthははじめて四次元空間を表現できるようになった。Google Earthがすぐれている点は、過去と現在を静的に対比するだけでなく、連綿とした時間の流れを動的に表現できるところだ。
たとえば、Rumsey Historical Mapsが特定都市の古地図を複数収録し、タイムスケース機能で時間軸にそって画像を入れ替えられるなら、それは四次元的展開という表現に相応しいものだろう。そしておそらくは、そうしたkml/kmzファイルがいずれ公開されることも想像に難くない。しかし、イメージオーバーレイを使った過去と現在の対比は、詰まるところBefore and Afterだ。Rumsey Historical Mapsは有益な特集コンテンツだが、けっして四次元的ではない。このコンテンツが時代ごとに画像を積み重ね、時間を蓄積してはじめて四次元的展開にいたる。そしてGoogle Earthなら、そうした世界を案外近い将来に見せてくれそうな気がする。
●追補
古地図を複数収録して……なんて書いていたら、本当にそんなイメージオーバーレイ集が登場しました。Historical Maps for Denmarkは1570年から1873年にかけて、デンマークの古地図が収録されています。アニメーションこそしないけれど、国境の境界線を表示させながら閲覧するとおもしろいです。