GR DIGITAL ファインダーの使い道
GR DIGITALの純正外付けファインダーは、28mmと21mmをまかなう便利なアイテムだ。が、しかし、デジタルカメラに外付けファインダーは本当に必要なんだろうか、という疑問は尽きない。見た目はファインダーをつけた方が圧倒的にかっこいい。ただ、実用という点ではさほど必要性を感じない。実際、外付けファインダーを買ってはみたものの、あまりのぞく機会がない。なにしろすぐ下の液晶に視野率100パーセントで構図が表示されているのだ。パララックスの生じるファインダーをどうしてわざわざのぞく必要があるのか。そんな気分になってしまう。飾り、見栄、懐古主義……。そんな言葉が脳裏をよぎる。いまさら要・不要論をぶちまけるつもりはないが、賛成派と反対派の言い分をまとめると以下のようになるだろう。
●反対派
視野率100パーセントの液晶があるじゃない。
ファインダーをつけた状態だとケースに仕舞えない。
F値やシャッタースピードがファインダ上で確認できない。
シンクロモニターモード(液晶OFF)にすると使いづらい。
●賛成派
レンジファインダーカメラみたいでかっこいい。
電源OFFでも構図を確認できる。
逆光時、液晶が見えなくなる。
ファインダーをのぞいて構えるとしっかりホールドできる。
双方言い分はいろいろあるが、冷静に考えると結論はすぐに出る。視野率100パーセントの液晶がある以上、ファインダーは必須ではない。しかし、逆光撮影時は液晶表示が見えなくなってしまうため、ファインダーがないというのも考えもの。通常は外付けファインダーなんていらない。でも、特定条件下で必要となる。だからリコーはオプションとして外付けファインダーを提供しているわけだ。使いたい人だけどうぞ。そんな感じ。
【なぜ外付けファインダーがダメなのか】
外付けファインダーの難点は、シンクロモニターモード(液晶OFF時)の使い勝手のわるさにある。たとえばAモード(絞り優先AE)で撮る場合、シンクロモニターモードでは絞り値が変更できない。露出補正はズームボタンを押すことで即座に変更できる。合焦の確認は幸いなことに、ファインダーをのぞくと目のはしに緑のLEDが見える。最低限の撮影条件は満たしているが、GR DIGITALのアドバンテージともいえるAモードで、絞り値が効かないのだからお話しにならない。ファインダーをのぞくから液晶はOFFにしよう、と思ってもOFFにできない現実がある。
見方を変えると、シンクロモニターモードでの使い勝手を改善すれば、外付けファインダーの実用性が増すはずだ。たとえば、Pモードで撮るというのはどうだろう。これなら露出とシャッタースピードはカメラにおまかせ。シャッターを押すだけでいい。ただし、どこにフォーカスが合っているかはわからない。そもそも被写界深度の深いカメラだからさほどナーバスになる必要はないものの、奥行きのある構図はピンぼけを連発しそう……。ならばいっそ、と思いついたのがスナップモードだ。
【発想の転換モノクロ・スナップモード】
GR DIGITALはスナップモードという2.5メートルの置きピンが使える。なにしろ置きピンだからフォーカスロックもヘッタクレもない。ファインダーでざっくり目測してシャッターを押すだけだ。これならシンクロモニターモードでも気兼ねなく撮れそうな気がする(諦念、という気がしないでもない……)。置きピンゆえに撮影条件によってはピンぼけが発生するだろう。それもAモードでF9ぐらいまで絞り込んでおけば、被写界深度が深くなってパンフォーカス的に撮れるはず。ただ、それなら何もGR DIGITALで撮らなくてもいい。置きピンにともなうボケも含めて、写真が撮れる設定はないものか。とりあえず、以下のような設定が思いついた。
液晶:シンクロモニターモード
AF:スナップモード
カラー:モノクロ
感度:ISO800以上
絞り/シャッター速度:Pモード
ピンぼけをモノクロ粒子感でごまかそうという姑息な戦法だ。とりあえずは論より証拠、作例を紹介しよう。なお、撮影画像はSILKYPIX Developer Studio 3.0で露出とコントラストの調整、およびトリミングを行っている。
まずは遠景写真から。思った以上にシャキッと写っている。Exifを見ると、3枚とも絞りF9、シャッタースピード1/2000s。ほとんどパンフォーカス状態だ。ISO800に設定したのだが、快晴だったせいかノイズはほとんど気にならない。3枚目が日陰だったので、若干ノイズがのっている程度。スナップモードはフォーカスロックのタイムラグがなく、一気にシャッターボタンを押し込める。すごく軽快だ。
次に近景モノを3枚ほど。左写真の絞りはF4.5。そこそこピントが合っているものの、ジャスピンでないことが幸いしていい雰囲気だ。中央の写真は背景にピントが合い、被写体はピンぼけ状態。でも、粒子感のおかげで救われている(ような気がする……)。右写真はPモードの産物だ。フラッシュが自動発光して影の足もとが消えた。普段、液晶で設定を確認しながら撮っていたらこうした失敗はしない。ファインダーだけで撮った失敗カットだが、影が浮遊しているようでこれはこれでアリか、と。
【たまにはリラックスフォトで遊ぶ】
コンデジはスナップカメラだ。そしてGR DIGITALはコンデジだ。しかし、意志を持って撮れるところがただのコンデジと異なる。ただのスナップを、作品風に仕上げられるからおもしろい。今回、外付けファインダーを使うためにシンクロモニターモードとモノクロ・スナップモードを組み合わせてみたが、正直なところ、思い通りには撮れない。トイカメラで遊ぶような、どこか割り切って撮る感覚だ。と同時に、カメラ本来の楽しみ方がよみがえる。ちゃんと撮れているかな。どんな風に写っているだろう。家に帰ってパソコンの画面に画像を読み出すとき、紙焼きの仕上がりを待つようなワクワク感がある。
意志を持って狙い通りに撮る。たしかにそれは写真技術を磨く上で大切なことだ。しかし、ときに偶然にたよって撮るのも楽しい。ファインダーをのぞき、肩の力を抜いてシャッターを切る。リラックスフォトもいいもんだ。
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