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September 2006

September 24, 2006

ハイビジョンの売り方

松下電器産業が世界初のBDビデオ再生機「DIGA DMR-BW200/BR100」を発表した。むろん、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)にデジタル放送を録画できる渾身のBDレコーダだ。しかし、BD録画機はソニーが2003年に「BDZ-S77」をリリースしてしまっている。よって世界初BDレコーダとは謳えず、世界初BDビデオ再生機と締まりのないキャッチフレーズになってしまった。ソニーに先んじてBDレコーダを投入したというのに、松下電器産業にとっては口惜しい話だ。

世界初といえば、次世代DVDの先陣を切った東芝も冴えない。世界初のHD DVDプレイヤー「HD-XA1」、世界初のHD DVDレコーダにしてマニアしか買えない高額プライスが度肝を抜いた「RD-A1」を矢継ぎ早にリリースしたものの、最近はすっかりナリを潜めている。HD DVD有利とのウワサはあまり耳にせず、このところ「次世代DVDの本命はブルーレイだね」という論調が強まってきた。Blu-rayは2層50GBという大容量、最大40Mbpsという高ビットレートが強み。しかもコンテンツホルダーが多数陣営に加わり、盤石の体制を築く。そうそう、パソコン向け次世代DVDドライブもブルーレイが先行している。

こうなると気になるのがソニーの動向だ。ソニーが近々BDレコーダを投入するのは自明の理。ボーナス商戦か、年明けか、それはまだわからないが、それなりにインパクトのある製品を投入してくるだろう。加えて本年11月11日には次世代ゲーム機「PS3」の発売が控えている。下位モデルを49,800円に値下げし、なおかつHDMI端子を搭載。ハイビジョン仕様の薄型テレビが普及した今、手頃なBDプレイヤーとして普及に期待がかかる。そこで改めて考えてみたいのが各社のハイビジョン戦略だ。たとえば次世代DVDレコーダひとつにしても、単にデジタル放送の受け皿として発売するのか、それともハイビジョン全般の受け皿と位置づけするか……。温度差が微妙に異なるように思えるのだ。

【ソニーのハイビジョンエコシステム】
昨今デジタル家電のトレンドといえば、薄型テレビとレコーダの連携機能だ。リモコンひとつでテレビとレコーダを操作でき、視聴中の番組をワンボタンで録画したり、録画済み番組を見る際もリモコンを持ち替えて操作する手間がない。松下電器産業のビエラリンク、シャープのアクオスファミリンクが代表的だ。最近はこの連携機能を見込んで指名買いする人も増えているとか。そうはいうものの、所詮は薄型テレビとデジタルハイビジョンレコーダのセット売り。操作性が大きく改善するだけに訴求力は申し分ないが、セットで購入した客層にさらなる購買意欲を湧かせるのは難しい。買って終わり。そんなビジネスモデルだ。その点ソニーは、もう少し大きな立脚地からハイビジョンをとらえているようだ。ソニーの製品ラインナップを今一度整理してみよう。

薄型テレビ:BRAVIA
ビエラ、アクオスにすっかり先行を許してしまったが、ようやくソニーらしい高画質な薄型テレビブランドを確立。現在は国内でも認知度が高まってきた。

DVD/HDDレコーダ:スゴ録
こちらも松下「ディーガ」、東芝「RD」シリーズに押され気味だが、デジタルカメラ連携、PSP連携といった多機能性が魅力。BDレコーダの投入に期待がかかる。

家庭用ゲーム機:プレイステーション3
ハイビジョン出力、ブルーレイドライブを搭載した次世代ゲーム機。本年11月11日発売予定で、先日下位モデルが49800円に値下げされた。

デジタルカメラ:αシリーズ
ミノルタよりαシリーズ(一眼レフ)の資産を受け継ぎ、デジタル一眼レフ分野に進出。

ビデオカメラ:HDRシリーズ
HDV準拠の「HDR-HC3」が好調。加えてAVCHD仕様の「HDR-UX1」と「HDR-SR1」を投入し、ハイビジョンビデオカメラの先陣を切る。

こうして見渡してみると、静止画から動画、デジタル放送からエンターテイメントまで、ソニーは全方位で製品をそろえている。ここにBDレコーダが加わると、BDレコーダを軸にハイビジョンワールドが完成するという図式が浮き彫りになる。今後投入されるであろうBDレコーダは、単にデジタル放送(BRAVIA)と映画(市販BDタイトル)の受け皿にとどまらず、ゲーム(PS3)、ビデオ(HDRシリーズ)、さらには静止画(αシリーズ)の受け皿としても機能するわけだ。分野によっては他社に先行を許しているものの、ハイビジョンエコシステムを一社で構成できるのはソニーだけ。これは大きな強みとなる。ハイビジョンならソニー、おそらくはそんなキャッチフレーズで今後は展開してくるだろう。ただし、ハイビジョンには大きな落とし穴がある。

【ハイビジョンは所詮付加価値】
人はハイビジョンで動くのか。これが問題だ。レコードからCD、VHSテープからDVD。これらはアナログからデジタルへの大転換期だったが、人々がこぞってデジタルのハイクオリティに惹かれたわけではない。12センチの銀盤というコンパクトさ、ノイズ対策不要という手軽さ、いわば利便性があったからこそすみやかに移行したと考えられる。もう少し正確にいうと、クオリティと利便性の相乗効果により、すみやかにアナログからデジタルに移行できたわけだ。

しかしハイビジョンは、クオリティだけの進化である。

SD画質からHD画質への転換は、それこそテレビがモノクロからカラーに変わったときと同等以上のインパクトがある。解像力の向上は驚異的な立体感となって我々の目に映り、ひと目見ればもうSD画質に後戻りできない。ただ、そもそもクオリティの追求とは嗜好性が強く、一般層のニーズとは乖離している。はっきりいってしまえばマニアの世界だ。高画質――ただそれだけのために人は動くだろうか。

好むと好まざると、時代はハイビジョンに移行する。ハイビジョンビデオカメラが好調なのは、このやむを得ないハイビジョン化を先取りしてのことだ。きわめて具体的に指摘すると、「誕生する我が子はハイビジョンで残しておこう」これに尽きる。家庭のテレビはSD画質でも、とりあえず記録はハイビジョンで残しておきたい。それだけのこと。ハイビジョンビデオカメラの売れ行きをもってして、ハイビジョンがトレンドなどと読み誤ってはいけない。

薄型テレビにも同様のことがいえる。ハイビジョンで見たいからフルHDの薄型テレビを買うのではない。地上デジタル放送への切替と、テレビの買い換えが重複しただけと控えめに見積もった方が賢明だ。たしかに薄型テレビの普及は予想をはるかに超えているが、これも景気回復にともないマンションの売れ行きが好調というニュースと照らし合わせ、居住環境の変化に合わせてテレビを新調したと解釈すべきかもしれない。

人はコンテンツを欲するのであって、高画質映像を観たいのではない。フレッツスクエアの高解像度ムービーはさして話題にならないが、YouTubeの投稿ムービーにはアクセスが殺到した。画質ではない。コンテンツのおもしろさに人は群がるのだ。メーカーとしては年末商戦の目玉に次世代DVDレコーダを据えたいところだろう。ただ、薄型テレビのようにはいかない。DVDビデオの普及に「マトリックス」が大きく貢献したように、キラーコンテンツなしにブレイクはあり得ない。ハイビジョン化はしょせん付加価値だ――そう謙虚になれるメーカーにのみ、勝機が見えてくるはずだ。

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September 18, 2006

FLEKTOGON 画質の研究

先日のエントリーCarl Zeiss Jena DDR MC FLEKTOGON 35mm/f2.4を購入したとお伝えしたが、今回はその第2弾、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の画質について考察してみたい。というのも、画質に定評のある同レンズだが、撮った写真を見ると「こんなもんかあ!?」という仕上がりだったからだ。

_mg_3834_4いくら銘レンズといえども、中古である以上個体差はあってしかるべきだ。ハズレを引いてしまったのか。それともこれがクラシックレンズの味なのか。これまでいまどきのレンズばかり使っていたので、そのあたりの判断がつかない。そこでMC FLEKTOGON 35mm/f2.4のサンプル写真を掲載しながら、画質についていま一度考えてみようというのが本記事の主旨だ。なお、撮影はすべてEOS 20Dで行い、RAW現像は「Digital Photo Professional2.1」を使用。メーカーの推奨設定に準じて、ピクチャースタイルは[スタンダード]を選び、コントラストと色の濃さをそれぞれプラス1している。撮影時に露出補正した画像はあえてDPP2.1上で逆補正し、デフォルトの状態にもどしている。掲載している画像はかぎりなく素の状態と考えてほしい。

【これをもって高画質とはいえない】
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まずはビミョ~な感触をおぼえた3枚から紹介しよう。一番左側の写真は曇天下での撮影。光量不足は否めないが、それを差し引いても眠い。中央は晴天下での撮影で、やはりもう一段メリハリがあっても良さそうだ。そして一番右の画像を見て脱力した。すごくくすんでる。抜けがわるい。単なる露出オーバーか。それともコントラスト不足か。なんだか普通のレンズでフツーに撮っただけ、といった印象だ。加えて無限遠での撮影のためか、解像感も物足りない。もう少しシャープでもいいような気がするのだが。

Dpp_0167_1 Dpp_0152_2 Dpp_0153
のっけから否定的なコメントがつづいたが、もちろんいい点もある。左の写真は最短距離(約20センチ)で開放撮影したもの。シベにピンがきてないのはご愛敬だが、これぞ繊細といった絵づくりだ。加えてボケ味もすごい。どうやらMC FLEKTOGON 35mm/f2.4は無限遠よりも中近距離に強いレンズといえそうだ。無限遠撮影でも中央の写真のようにいい雰囲気を醸すものもある。両者に共通しているのはナチュラルな発色だ。ただし、夕陽の部分はほぼ白飛び状態で、これはいただけない。なお、F5.6程度に絞りこんで撮影したのが右の写真。ボケ量が少ないのに立体感がある。しかも二線ボケがない。う~ん、さすがは単焦点(笑)。

【ガンマ値の小さいレンズって何さ!?】
Image1_5問題を整理してみよう。一般にコントラストが高ければ立体感が増す。しかし、手持ちのMC FLEKTOGON 35mm/f2.4はコントラストが低いのに立体感がある。ボケ味が優秀なのでそれに救われているということなのだろうか。加えて気になるのは白飛びしていた夕陽だ。ハイコントラストな画像ならいざしらず、ローコントラストなのに白飛び……。これは一体どういうことか。そこで画質の特徴をトーンカーブで描いてみることにした(笑)。明部をグイッと持ち上げつつ、暗部を底上げ。おそらくこんな感じで前出の写真のようになるはず。ということは、コントラストが低いのではない。黒が浮き足立っているのだ。表現を変えてみると、マックっぽい画像といったところか。マックはウィンドウズよりもガンマ値が小さいので、マックで編集した画像をウィンドウズ環境で閲覧すると白っぽく見える。前出のサンプル写真はちょうどそんな印象だ。

しかし、レンズを評価するときに「ガンマ値が小さい」などと表現する人はいない。問題の正体を突き詰めてみると、光が余計に入っているのではないか。フードでちゃんとハレ切りすればもっといい絵に仕上がるはず。そんな憶測のもと、ハクバのラバーフードを付けてみた。クラシックレンズにラバーフード。でもボディはデジタル……。かなり悪趣味な構成だが、贅沢はいっていられない。

【ラバーフードで画質改善!】
Dpp_0189_1 Dpp_0187_1 Dpp_0179_1
ラバーフードを付けて近距離からのスナップ三連発だ。あきらかに暗部が落ち着きを取り戻し、発色も深みを増している。それにしてもこの立体感はすごいのひと言。ピントの合った部分がキリッと立ち上がり、あとは溶けるようにボケていく。素直に「いいレンズだ」といえる。

Dpp_0182_1 Dpp_0181_1 Dpp_0194_1
左写真で石の切断面を見てほしい。ディティール描写も実に良好だ。中央の写真は無限遠での撮影となる。フードなしよりもずいぶんと地に足がついた印象。ただ、シャープネスはやはり物足りず、無限遠はあまり得意ではなさそうだ。右写真はハンドルとシャーシのボケに注目してほしい。ハイライト部分はほぼ白飛びしている。どうやらこのレンズ、そもそもがかなりハイコントラストにふってあるようだ。

Dpp_0193 Dpp_0190_2 Dpp_0191
MC FLEKTOGON 35mm/f2.4といえばやはりマクロ。フード付きの最短距離撮影、三連発だ。中距離だとハイライトが飛び気味だったが、マクロ撮影時はどこかやわらかさがある。固くなりすぎないところがおもしろい。中央および右写真のように中途半端なボカし方でも、さほどうるさくならないところが助かる。

いまどきのレンズを使っていると、フードを付けなくてもそこそこ写ってくれる。そんなノリでMC FLEKTOGON 35mm/f2.4を装着していると真のポテンシャルは堪能できない。また、焦点距離によって解像感や立体感に差が出てくるのもおもしろい。このレンズにホレこむ人が多いそうだが、それもうなずける。うまく撮れるとうれしくなる――MC FLEKTOGON 35mm/f2.4はそんなレンズだ。

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September 16, 2006

iTVはMCEの二の舞か

日本国内において、リビングPCというアプローチは尽くコケてきた。パソコンはパソコンであり、どこまでいってもデジタル家電にはなり得ない。大手メーカーが放つ大画面液晶パソコンしかり、マイクロソフトのウィンドウズXP MCEしかり、である。そうしたなか、アップルはiTV(コードネーム)を発表した。これはiTunesで管理しているサウンドやムービーを、家庭用テレビで観賞するためのセットトップボックスだ。無線/有線LANでパソコンと接続し、テレビに映像やサウンドを送ることになる。10フィートUIは「Front Row」に近い操作性で、付属リモコンは「Apple Remote」を模しているらしい。テレビ接続用にHDMI端子を備えている点が今日的といえるだろう。

とはいえ、要はネットワークメディアプレイヤーだ。

ネットワークメディアプレイヤーは各社からリリースされているが、ブレイクする兆しはいっこうに見られない。メーカー各社はここにビジネスチャンスを見いだそうと躍起になっているが、リビングPCやMCE同様、パソコンとデジタル家電の融合にユーザーは思いのほか冷淡だ。そんな鬼門にアップルは、iTVで切り込もうとしている。殿、ご乱心あそばされたか?

iPodの大ブレイク以降、アップルは出せば当たる快進撃をつづけている。可能性ばかりが囁かれ、実利のともわなかった音楽配信サービスも、iTunes Music Storeの登場で状況は一変した。インテル製CPUに乗り換えると同時にBoot Campをリリースし、最近ではウィンドウズユーザーの取り込みにも余念がない。イケイケどんどん! 何をやっても怖くない。MCEはコケたけど、おれたちのiTVならイケるさ! アップルはそう考えているのか。否、彼は想像以上に慎重だ。

第5世代iPodを思い起こしてほしい。初のビデオ再生に対応したiPodだが、すでに動画対応のポータブルプレイヤーはいくつもあるなか、遅ればせながらのビデオ対応である。にもかかわらず、ビデオ再生はiPodの付加機能にとどめ、vPodとして喧伝することを控えた。iTunes Music Storeで動画配信を開始するものの、ショートムービーやPVといった短い映像ばかり。動画対応プレイヤーと動画配信サービスが尽く失敗していることを踏まえ、石橋を叩いて渡るような慎重さだ。ウィンドウズユーザーの取り込みも慎重きわまりない。Mac miniをウィンドウズユーザーのセカンドマシンとしてチラつかせ、Boot Campでマックとウィンドウズのデュアルブート環境を作り出し、Mac OSへの乗り換えを少しずつ促していく。波にのった企業としては異例ともいえる慎重さだ。

iTVは2007年第1四半期に発売が予定されている。アップルが前倒しで製品発表するのはきわめて例外的なことだ。ここにも過剰な慎重さが見て取れるが、アップルにしてみると過剰ではないのかもしれない。なぜなら、AirMac Expressという前例があるからだ。これは一見するとオーソドックスな無線LANアクセスポイントだが、家庭用オーディオを接続することでiTunesのサウンドをミニコンポなどに出力できる。実はサウンドという切り口でリビングポータルを目指した製品だ。実際に使ってみると非常に便利なアイテムなのだが、無線LANの敷居の高さが災いしてか、アップル製品のわりに認知度が低い。こうした前例があるだけにiTVの投入も慎重にならざるを得ないのだろう。

もうひとつ興味深い動向がある。それはiTunesで本格的な動画配信がはじまる点だ。当初はディズニーやピクサーの作品に限られるが、ショートムービーではなく、ついに映画のダウンロード配信がはじまる。米国以外では2007年以降のサービス開始となるが、iTVの投入に先んじて布石を打ったというところか。ただし、この動画への傾倒はうがった見方もできる。アップルの新製品発表とほぼ同時期に、Amazon.comが動画ダウンロード販売サイト「Amazon unbox」をスタートさせたのだ。ダウンロードした映像は専用プレイヤーソフト「Amazon Unbox Video Player」でのみ再生可能。著作権保護に配慮しての仕様とはいえ、これはある種のユーザー囲い込みだ。アップルはiTunesによって音楽配信の覇者になった。しかし、Amazon unboxの先行を許してしまったら動画配信の覇者にはなれない。iTVを前倒しで発表した理由のひとつに、Amazon unboxへの牽制という意味合いもあったはずだ。

最近のアップルはキヤノンに似ている。キヤノンは言わずもがな、デジタルカメラとデジタルビデオカメラの覇者である。にもかからず、デジタル一眼レフにダストリダクションを搭載したのは先頃発売になった「EOS Kiss Digital X」が初であり、コンシューマ向けHDVビデオカメラにいたってはずいぶんとソニーに先行を許し、ようやく「iVIS HV10」を投入したところだ。デジタル分野は日進月歩で技術が進化する。しかし、先んじて成功した例は思いのほか少ない。他社に先を歩かせ、実を獲る。最近のデジタル業界は、強者ほど遅れてやってくるようだ。

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September 11, 2006

SILKY Tasteを共有しませんか

SILKYPIX Developer Studio 3.0 Betaがリリースされてからというもの、話題はSILKYPIX RAW Bridgeでもちきりだ。しかし、新バージョンの目玉機能で忘れてはならないものがある。それがSILKY Tasteだ。

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これはいわゆる自動補正機能で、プリセットを選ぶだけで画像タイプに適した補正をほどこしてくれる。風景、ポートレート、青空といった7種類を標準搭載しており、それぞれかなり効きのいいプリセットだ。そしてこのSILKY Tasteはユーザープリセットの追加登録が可能。お気に入りの補正設定を登録しておけば、いつでもプルダウンメニューから一発補正できる。さらにプリセットのエクスポート(ファイル出力)にも対応しており、他のユーザーが作成したプリセットを読み込んで使うこともできるのだ。そこでこんなことを思いついた。SILKY Tasteをみんなで自作して共有したらおもしろいんじゃない!?

【自作SILKY Tasteで遊ぼう】
ポートレートや風景などオーソドックスなプリセットは、おおむね搭載済みなのでいまさら自作するまでもない。しかし、SILKY Tasteにはちょっと変わりダネのプリセットがある。ノスタルジックトイカメラがそれだ。このプリセットを選ぶと、色彩は褪せ、レトロレンズのように四隅は光量落ちする(冒頭画面参照)。こんなひと癖あるプリセットを自作して共有してみてはどうだろう。まずは隗より始めよ、だ。僭越ながら自作SILKY Tasteを公開しよう。

Sample01 Sample02
Sample03 Sample04
Sample05 Sample06
左が初期状態の画像。右は自作SILKY Tasteを適用した画像だ。黒い光を浴びせたような雰囲気なので、ベタだけどblack lightと命名してみた。個人的にドロッとした緑が気に入っている。ちょっと悪趣味だけど(笑)。勘のいい人は説明不要だと思うが、このプリセットはコントラストを極端に高め、各色の明度を落としている。マクロ撮影した花のように色調構成がシンプルな画像に使うと効果が得やすい。

Sample07 Sample08
ごく普通のスナップに適用するとこんな具合になる。いうなれば昭和劇画調(笑)。これはこれでアリか。凡庸なスナップもワンクリックでザラッとした印象になる。どうだろう。興味がわいた人は以下のリンクからダウンロードしてみてください。なお、アップロードしたファイルは「ウイルスバスター2006」でウイルスチェックしてあります。

「black_light.zip」をダウンロード

【SILKY Taste インポートの方法】
Dump02_3 Dump03_1    
ダウンロードしたファイルを解凍すると「black light.stf」というファイルがあらわれる。このファイルを適当なフォルダに保存。SILKYPIX 3.0を起動し、最上段のプルダウンメニューわきにある「+」マークをクリックしよう。「テイストの編集」ダイアログがあらわれるので、「インポート」ボタンをクリックする。なお、自作SILKY Tasteをファイル出力したいときは「エクスポート」をクリックすればいい。

Dump04 Dump05_2
ファイルオープンのダイアログが表示されるので、前もって保存しておいた「black light.stf」を選択。「OK」ボタンをクリックすると、プルダウンメニューから「black light」が選べるようになる。あとは手持ちの画像を開き、「black light」を選択すればいつでも昭和劇画タッチが楽しめる。

【black lightのカスタマイズ方法】
Dump06_1Dump07_2前述の通り、このプリセットの特徴はふたつ。極端なハイコントラスト低明度だ。コントラストに関してはトーンカーブできつめのS字を描いている。風景写真に適用すると空が白く飛んでしまうので、その際はS字をゆるめるといいいだろう。明度はファインカラーコントローラで落としている。もし色調に満足できないときは、ファインカラーコントローラで該当色の明度を調整してみてほしい。また、合わせて彩度を調整すると色ノリに変化を付けられる。

アドビ「Photoshop」がアクション機能を搭載したとき、ネット上に様々な自作アクションが公開され、ずいぶんと便利に使わせてもらった記憶がある。たかだかひとつのプリセットで恩返しができたとは思わないが、これがきっかけになって自作SILKY Tasteをみんなで共有できたらいいなあ、なんて。

もし自作SILKY Tasteを公開したら是非ご一報を。

●関連記事
SILKYPIX Developer Studio 3.0 Betaの速攻レビューは
こちら
SILKYPIX RAW Bridgeについての解説は
こちらをどうぞ。

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September 05, 2006

hueyでキャリブレーション

うっ、色がちがう……。そんな経験は一度や二度ではない。さんざん時間をかけて加工したRAWデータが、いざプリントアウトしてみると見るも無惨な色味。ディスプレイと印刷でどうしてこうも色味が異なるのか。さすがに辛抱たまらずキャリブレーションに手を出すことにした。といっても、本格的なカラーマネージメントは難しそう。そんなわけでgretagmacbeth社のお手軽キャリブレーションツール「huey」を導入してみた。

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hueyは数あるキャリブレーションツールのなかでも特に安価な製品だ。実売1万4千円程度で、恒陽社が国内代理店になっている。市川ソフトラボラトリーがSILKYPIXとバンドル販売しているので、知る人ぞ知るといったアイテムだ。プロフェッショナルユースのカラーマネージメントは、難しい上にキャリブレーション対応モニタや高価なキャリブレーションツールが必須。さらにプリンタとのキャリブレーションも必要となり、一般ユーザーが気軽に踏み込める世界ではない。折しもナナオがColorEdge CEと顔料系プリンタを使ったカラーマッチングシステムを発表したばかりだが、これを個人で導入するのは金銭的にほぼ不可能。また、そこまで厳密なカラーマネージメントを求めているわけではない。おおまかでいいからとりあえず、モニターとプリンタの色味を合わせたい。その程度のことだ。そんな軟弱キャリブレーション願望をかなえてくれるのがhueyである。

【ウィザードで簡単セットアップ】
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まずパッケージ内容から見ていこう。本体は百円ライターより若干背が高い程度で、ポケットに収まるコンパクトサイズだ。パソコンとの接続はUSB2.0を採用。延長USBケーブルとスタンドが付属している。本製品は調光機能を搭載しており、キャリブレーション後はディスプレイのわきに立て、室内の明るさに応じてディスプレイの輝度を自動調整してくれる。スタンドと延長ケーブルはその際に使うものだ。その他にはユーティリティのインストールCD、申し訳程度のマニュアル(一応日本語表記もあり)、そしてディスプレイのクリーニングキットが付属する。キャリブレーションを実行する前にこのクリーニングキットでディスプレイ表面をきれいに拭き取っておこう。特にタバコを吸っている人はヤニコーティングをしっかりおとしておくこと。

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付属CD-ROMからユーティリティをインストールする。言語選択で日本語が選択可能。ユーティリティ自体もちゃんと日本語にローカライズされている。インストール自体は一般的なソフトウェアと同様。ウィザードに従っていくだけでよい。インストールが完了したらウィンドウズを再起動する。

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パソコンのUSB端子に本体のケーブルを接続し、デスクトップアイコンからhueyのユーティリティを起動する。「スタート」をクリックしてキャリブレーションを開始しよう。まずはじめにディスプレイタイプを選び、次にルームライト測定のために本体をスタンドに立てる。ユーザーは単に「次へ」をクリックしていくだけで、別段何かを判断したり設定する必要はない。

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本体の取り付け位置が画面にあらわれるので、LEDのある方を上向きにしてディスプレイ上に貼り付ける。本体裏側に8つの吸盤があり、そっと押すだけでディスプレイに貼り付いてくれる。「次へ」をクリックすると全画面表示に切り替わり、実際にキャリブレーションがはじまる。この間ユーザーは何もしなくてよい。

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「キャリブレーション成功」とメッセージが表示されたら、本体をディスプレイから外してスタンドに立てておく。前述の通り、本体は調光機能を備えているので、スタンドに立てた状態でディスプレイにわきに設置しよう。これでディスプレイ周辺の明るさを測定し、環境に合わせてディスプレイの輝度を自動調整してくれる。次にカラーパレットがあらわれ、キャリブレーション実行前後の画面が比較できる。「修正後の表示」「修正前の表示」をクリックして、色合いのちがいを確認しよう。カラー設定の画面があらわれたら、用途に応じて適したカラー設定を選択する。写真加工の場合は「ウェブ閲覧および写真加工」を選択。この他、ゲーム向けやビデオ編集向けなど、合計9つのカラー設定が選べる。次画面では調光機能のON/OFFが設定可能。カラー設定と調光機能は、タスクトレイのアイコンからいつでも設定変更可能だ。

一画面ずつ細かく解説してきたが、実際にはウィザードまかせですんなりと設定できる。ユーティリティを起動して、本体をディスプレイに貼り付け、あとはおまかせ。そんな感じだ。専門知識不要はいうまでもなく、これならパソコンビギナーでもキャリブレーションできるだろう。hueyはキャリブレーションの敷居をグンと下げてくれるアイテムだ。

【真実の色がいま目の前に!】
キャリブレーション後の画面を見ると、彩度が一段落ち、コントラストや輝度も物足りない。はっきり言ってしまえば眠い画面だ。とりあえずSILKYPIXを起動して、これまで編集加工した写真をつぎつぎに表示してみる。すると画面に見覚えのある色があらわれた。そう、色褪せたようなプリント時の発色、あれが画面にドーンとあらわれたのだ。この時点でディスプレイとプリント結果の整合性(カラーマネージメント)がとれた。同時に認めたくない事実が降ってくる。これまでうまく補正できたと思っていた写真は、尽く彩度とコントラストが不足していたことになる。RAW現像全面やり直し。脱力……です。

原因はわかっている。正確には薄々と気づいていた。今回hueyを導入した理由は、前述のとおりディスプレイとプリントであまりに色味が異なるからだ。プリンタ側の自動補正機能をオフにして印刷すると、まるで褪色したような地味な仕上がりに……。かといって自動補正機能をオンにすると今度は彩度過剰で嫌味な印象になる。ディスプレイはEIZO「M170」を使っているのだが、こいつが使い勝手がいいわりにちょいとクセモノなのだ。ピクチャー、テキスト、ムービー、sRGBといった表示ソースに最適化されたプリセットを搭載し、普段写真加工を行う際はピクチャーモードで使っていた。かすかに青みのある色温度といいコントラストといい、写真を実にきれいに表示してくれる。その名の通り、写真表示に最適な表示モードだ。ただ、こいつが色味や明るさを持ち上げているおかげで、プリンタの色味と整合性がとれない。じゃあsRGBモードにすればOKかというとそうでもない。なにしろパソコンを使っている部屋は、ディスプレイの背面から自然光が射し、横から電気スタンドの電球が、頭上では青白い蛍光灯がともる完膚無きまでのミックス光状態。カラーマネージメントには最低最悪な環境で、まったくもってお手上げの状態なのだ。

hueyでキャリブレーションした後のディスプレイと印刷した写真を見比べると、おおむね似たような印象になっている。プロにいわせれば厳密なカラーマッチングとはほど遠いかもしれないが、個人的には色味の指標ができたというだけで大満足だ。キャリブレーション後の表示で写真加工すれば、プリンタの色味とニアイコールになる。この安心感は何ものにも代え難い。アバウトで結構。これで安心してRAW現像に打ちこめる!

【液晶の便利機能と共存できるのか?】
hueyでキャリブレーションしたおかげで、ディスプレイとプリンタの色味がほぼイコールになった。しかし――大半の人がそうだと思うが――カラーマネージメントできればそれでOKといえないところがホームユーザーのつらいところだ。パソコン上の作業は写真加工ばかりではない。ブログの文章も書かないといけないし、DVDビデオだってみたい。ときに3Dゲームをバリバリ楽しみたいこともあるだろう。先に述べたとおり、キャリブレーションされた画面は眠い。こんな画面で文章を書いたりDVDビデオを観るなんて興醒めだ。そこでホームユーザー最大の関心事、カラーマネージメント環境と一般作業環境の共存について検証していこう。

H15 H17_1 H16
求めている環境はこうだ。RAW現像時はキャリブレーションされた画面、通常操作(文書作成やウェブ閲覧)は液晶ディスプレイ「M170」のプリセット機能を使いたい。要はキャリブレーションされた環境を適宜呼び出せるかが問題となる。結論からいうと、これは簡単に切り替えられる。タスクトレイにユーティリティが常駐しているので、このアイコン上で右クリック。右クリックメニューの「hueyプリフェレンス」をクリックする。設定画面があらわれるので、「設定」タブで「修正後」「修正前」を切り替えればよい。さすがにワンクリック切り替えとまではいかないが、この程度の手間なら問題あるまい。なお、この設定画面ではカラー設定のプリセット変更や、ルームライトモニタリング(測定周期)も設定可能。ルームライトモニタリングは初期設定で1分になっているが、屋内の明るさが安定しているならもっと長くとっても大丈夫だ。

【キャリブレーションで得られるもの】
_mg_4215_1カラーマネージメントの問題は、基準が存在しないことだ。ディスプレイの色、プリンタの色、デジタルカメラの色。それぞれに偏りがあり、どこに基準をおけばいいのか判断できない。今回hueyを導入したことで、キャリブレーション後のディスプレイと、自動補正機能をオフにしたプリントアウトがほぼイコールであることがわかり、写真加工はキャリブレーション後の画面(色味)を基準として作業できるようになった。写真加工→プリントアウトの色味が統一されることで、プリントを念頭においた補正をしなくて済む。これは大きな成果だ。

しかし、ウェブにアップする写真はどうだろう。キャリブレーション後の画面は正直いって眠い。この画面で補正を行うと、どうしても高コントラスト、高彩度な調整になりがちだ。こうした写真をウェブに掲載した場合、閲覧者のディスプレイ環境がいまどきの液晶ディスプレイだと、かなり色濃く写るはず……。ビビッドな補正にさらにディスプレイのギラッとした補正が加わるのだ。想像しただけでゾッとする。ウェブ投稿向けの写真はやりすぎないこと、そんな気配りが必要かもしれない。最後にキャリブレーション後の環境で加工した写真を掲載しておく。みなさんのディスプレイではどう見えますか?

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左:未補正画像 右:SILKYPIX 3.0 Betaで補正

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September 02, 2006

SEOの秘訣とは?

SEOって知ってます? Web2.0の解説本を読んだことにある人なら一度は目にした記憶があるはず。Search Engine Optimizationの略で、日本語では検索エンジン最適化と訳すらしい。自分のホームページを検索結果の上位に表示させ、アクセスを誘導する手法のことだ。そもそもはアダルトサイトのようなアンダーグラウンド系サイトの検索スパムに端を発し、あまり上品な手段とはいえない。しかし、ウェブサイトを営業・広告ツールとして使う上で、いまやSEOは避けて通れないというのが現実だ。

実際にどんなことをするのかというと、検索エンジンのアルゴリズムや巡回ロボットの癖を解析し、自身のホームページがピックアップされやすいように工夫をこらす。コンテンツに流行りのキーワードを散りばめたり、相互リンクを張って信頼性を高めたり、はたまた検索エンジンがすくいやすいようにXHTMLタグをつけたりと、あの手この手で検索上位を狙うわけだ。最近ではSEOコンサルティングなる商売まで存在するらしい。「お客さん、ウチにまかせてくれればアクセス数100倍ですよ100倍!」とでも営業トークするのだろうか。他人様の商売を邪魔する気はないが、このSEOというやり口はどうにも胡散臭さが漂う。個人的には要はコンテンツ次第だと思えてならないからだ。手法で検索上位は狙えるのか。コンテンツ充実こそが最大のSEOではないのか。前置きがすっかり長くなった。当ブログのアクセス数から、SEOを有効性を検証してみたい。

【まじめに書いたらアクセスが伸びた!】
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まずは上のグラフを見てほしい。これは当ブログの過去4ヶ月のアクセス履歴だ。緑が訪問者数で、黄色がアクセス数、いわゆるPV(ページビュー)となる。当ブログはそもそもスロ日記と仕事の愚痴を綴った単なる雑記だった。そのためアクセス数と呼べるようなアクセスはない。六月中旬以降、キヤノンの標準ズームレンズポータブルフォトストレージのレビューを皮切りに、本格的にデジタル系記事を掲載していく。それと呼応するようにアクセス数が伸びているのがわかるだろう。現在では当初の約10倍以上のアクセスがあり、雑記と記事でこうもアクセス数がちがうのかと実感している。なお、五月中旬にココログのアクセス解析ツールが更新されたため、それ以前の情報はこのグラフに反映されていない。

【検索上位に食い込めるか?】
このように、当ブログはここ二ヶ月ぐらいで急速にアクセス数が伸びてきた。むろん、いわゆる人気ブログと比較したら申し訳程度のPVだが、少ないなりにアクセス向上しているのは事実。ではアクセス向上の結果として、検索エンジンでどの程度にランクインするのか、それを確かめてみよう。比較的アクセス数の多い記事に的を絞り、該当キーワードをGoogle(www.google.co.jp)で検索してみた。

Adobe Lightroom Beta 3
アドビがパブリップベータ版として公開しているRAW現像ソフトに関するレビュー。
lightroom」:31位/5,820,000件中
lightroom beta」:3位/1,050,000件中
(日本語ページのみだと1位……ヾ(^v^)k)

SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta
市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフト最新ベータ版のレビュー。
silkypix」:103位/288,000件中
silkypix 3.0」:5位/49,500件中

EOS 20Dでロシアレンズ
EOS 20D(デジタル一眼レフ)でロシアレンズを使うためのレポート記事。ロシアレンズ購入から装着、操作方法に至るまでを解説している。
ロシアレンズ」:16位/19,200件中
ロシアレンズ EOS」:1位/665件中
ロシアレンズ デジタル一眼レフ」:3位/709件中

Web2.0は村上春樹だ
Web2.0にまつわるキーワードを解説したコラム。Web2.0というキーワードはビジネス用語としては眉唾だが、インターネットを学術に昇華させた点は評価すべき、というのが主旨。
web2.0」:802位/55,400,000件中
web2.0 キーワード」:351位/6,480,000件中
web2.0 村上春樹」:1位/236,000件中

(2006年9月2日現在調べ)

ニッチ分野の記事ばかりだが、おおむね上位に食い込めている。Googleはデフォルトで1ページに10件の検索結果を表示するので、複数キーワードの組み合わせ検索でははじめのページに当ブログが表示されるわけだ。現在のGoogleはブログ記事を上位に表示しやすい傾向があり、オーソドックスなホームページで記事を掲載していたらまたちがった結果になっただろう。注目すべきは、そのものズバリの単一キーワードで検索した場合に大きくランクダウンしている点だ。単一キーワードだと検索上位はメーカーやショップが占めてしまう。ここに個人ブログが食い込むのはやはり難しいようだ。なお、「Web2.0は村上春樹だ」の順位が奮わないが、これについては後述する。

【SEO的アクセス稼ぎの効果は!?】
まじめに書くだけでアクセスが伸び、検索上位を狙えるのか? これに対する答えは「Yes and No」だ。実は7月の下旬以降、それとなくSEO的手段を試みている。問題はそれがアクセス数や検索上位表示に貢献しているか否か。試した手法ごとにその効果のほどを検証してみよう。

トラックバック-効果アリ
トラックバックとは言い換えれば相互リンクのこと。これはインターネット黎明期からアクセス数向上の常套手段であり、その効果はいうまでもない。しかし、ただトラックバックを送ればいいというものではない。それでは単なるトラバスパムになってしまう。ここがトラックバックの難しいところだ。当初、検索上位にランクインしているブログにトラックバックを送っていたが、自分のアクセス数稼ぎのためだけにトラックバックを送るのは後ろめたい気持ちがあった。そこで最近は、いわゆるトラックバックピープルを活用している。当ブログが使っているのは「BlogPeople」というサービスだ。カテゴリーごとにメジャーからニッチまで様々な話題のエントリーがある。ここにユーザーがトラックバックを送ることで長大なリンクができあがり、関連記事を芋づる式に読めるというシステムだ。ブログ記事連鎖によるコミュニティと思えばわかりやすいか。実際に関連項目にトラックバックを送ってみると、一日数件程度ではあるが確実にアクセスが増えた。筆者自身もトラックバックピープルで興味のある記事を探すことが多々あり、送る者も読む者も互いにメリット大のシステムといえる。

ブログランキング-効果薄
閲覧者のクリックを投票として数え、クリック数に応じてブログの人気ランキングをつけるサービス。当ブログも記事の末尾に「お願いクリックしてね」とおねだりしているので、すでにお気づきの人もいるだろう。ランキング上位ほど人気のあるブログとなり、上位ブログはランキング表の目立つところに掲載されるから、雪だるま式にアクセス数は増えていく。以下は筆者が開設しているブログのランキングだ。

metalmickey,s blog:ネット・PC(全般)69位
光学仕掛けのモノローグ:写真(全般)265位
(2006年9月2日現在)

この順位結果の根拠はいたって簡単だ。一日一回、自分で毎日クリックすると大抵このくらいの順位になる。つまり、当ブログの閲覧者はほとんどクリック(投票)していない。しかしそれは当然のこと。筆者自身もこれまで、他のホームページやブログでランキング用のリンクをクリックしたことはない。ブログランキングの難しいところは、自己顕示欲というドロドロした感情にある。要は「ランキングで上位になりたい、目立ちたい、だからみんなオレに協力してくれ!」というわけだ。閲覧者にしてみれば、「記事はおもしろかったけどさ、だからといってアンタの自己顕示欲に付き合うつもりはないよ」となるだろう。クリック誘導はアクセス誘導以上に難しい。もしあなたが二十歳前後の女の子なら、ブログのプロフィール欄にブラちらした写真を載せておけばクリック誘導も簡単だろうけど。いや、これは失言です……。

ランキング上位を狙うには、検索上位狙いと同等以上の努力と工夫が必要になる。つまり、ブログランキング自体が目的になってしまうわけだ。これではSEOのためにSEOという矛盾した状態に陥ってしまう。SEOとブログランキングは別物として考えた方がいい。

タイトルの付け方-効果大
ココログのパーマリンク(固定リンク)のURLは、記事タイトルを簡略して自動的に生成する仕組みになっている。たとえば「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」はsilkypix_develo.htmlとなり、「EOS 20Dでロシアレンズ」ならeos_20d_96d0.htmlという具合。検索エンジンはURLのHTMLファイル名も検索対象としているので、タイトルにメインのキーワードは必ず盛り込んでおきたい。ただし、「ハイビジョン狂想曲」のようにすべて日本語にしてしまうと、post_b8af.htmlという素っ気ないファイル名になってしまう。アルファベットベースの検索エンジンが理解しやすいタイトルにすることが大切だ。

こうしたシステム的なこと以外にもタイトルは重要な意味を持つ。前述した「Web2.0は村上春樹だ」の検索順位を見てほしい。どうにも冴えない順位だ。802位ということは、Googleの「次へ」を80回クリックしたことになる。こんなにもクリックする人がいるとは思えないので、これは検索に引っかからなかったのと同意だ。記事内容がつまらないという指摘は真摯に受け止めるとして、それ以外の要因としてキーワードが広すぎるという点に留意したい。Web2.0はいま流行りのトレンドキーワード。いまや一般用語といっても過言ではない。これに関する記事はあまりに膨大だ。一般用語やそれに準ずるキーワードでは、よほど引きのある記事を書かないかぎり検索上位を目指すのは難しい。たしかにWeb2.0と村上春樹を組み合わせて複数キーワード検索すれば1位になるものの、これはまったく意味がない。なにしろWeb2.0を調べている人は村上春樹という言葉を組み合わせないだろうし、村上春樹について知りたい人がWeb2.0というキーワードを追加するとも思えない。「Web2.0は村上春樹だ」というタイトルは人の目こそ惹くかもしれないが、巡回ロボットの目は惹かない。検索上位を目指すのであれば、人よりも巡回ロボットの好みそうなタイトルを付けるべきだ。

キーワードを散りばめる-効果アリ
検索エンジンとは、言葉を言葉で調べる機能だ。仮にWeb2.0のコラムを書いたとしても、記事中に一度もWeb2.0という言葉を使わなければ検索に引っかからない。検索エンジンはあくまでも言葉と言葉のデータ的同一性を見るのであって、言葉の意味はけっして解釈しない。つまり、キーワードなくして検索上位はありえないのだ。このことを顕著にあらわしているのが「光学仕掛けのモノローグ」のアクセス数である。このブログは1日1枚ずつ写真を公開するいわゆるフォトログだ。テキストはほとんどない。写真のみのブログである。当然検索エンジンに引っかかりようがないし、事実一日のアクセス数はごくわずか。グラフを公開してもいいのだが、ある意味自虐行為(泣)になるのでやめておく。なお、ココログの記事投稿ページには「キーワード」という欄があり、ここにキーワードを入力しておくとタグとして機能する。本文中にそのものズバリのキーワードが出てこない場合は、ここに関連キーワードを入力しておくとよい。

プロフィールの公開-効果アリ
当ブログはプロフィールを公開していない。フリーライターという肩書きこそ表明しているが、どんな雑誌でどんな記事を書いているかは明かしていない。一般的な人気ブログを見てみると、必ずといっていいほどにプロフィールを公開している。やはり人となりがわかっていると、読む側も安心感があり、また技術系情報系の記事の場合は信憑性にも関わってくるのだろう。インターネットの情報発信がホームページ掲示板型からブログWiki型にシフトするにともない、ユーザーは匿名から特定個人に変貌した。そういう観点からすると、プロフィール未公開(匿名)の当ブログは失格だ。SEO対策するのであれば、情報発信者として身元を明らかにしなくてはいけない。それが時代の流れである。ただ、エクスキューズさせてもらうのであれば、記事内容だけで勝負してみたい、なんて青臭い気持ちもあったりして(笑)。

【コンテンツが最強のSEO】
手軽に試せるSEO的手法について考察してきたが、当ブログのアクセス解析を踏まえ、なおかつ個人的な感触を盛り込んだ上でいうならば、SEOは地道な広報活動といった印象だ。たしかにトラックバック送信やタイトルの工夫でアクセス数は伸びた。しかしそれ以前の大前提として、雑記レベルの投稿をやめ、レビューやレポート、コラムといった記事的投稿に切り替えたという事実がある。その上でSEO的手法をとった結果が現在のアクセス数であり、検索エンジンの上位ランクインである。けっしてSEO的手法だけでアクセス数は稼げないし、検索上位表示されるわけでもない。まして飛躍的にアクセス数が伸びることはなく、じりじりとアクセス数が伸び、結果として検索上位に表示されていた、程度のものだ。SEO対策は広報宣伝にすぎない。コンテンツの実体がないのに宣伝に精を出してどうするのか。SEOを声高に叫ぶ輩がいたら、まずはコンテンツありきと微笑み返してあげよう。

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