Web2.0の暗黒面
スターウォーズと水戸黄門は、どちらも善と悪が戦う物語だ。しかし、ひとつ決定的なちがいがある。水戸黄門が勧善懲悪をベースとしているのに対し、スターウォーズは善と悪が表裏一体である事実を、宇宙戦争という壮大なスケールで描いている。アナキン・スカイウォーカーは愛する者を救いたいがために暗黒面に堕ち、そしてダースベーダに変貌した。暗黒面の化身ダースベーダは、本来善とされるべき愛が生み出した産物なのだ。善と悪は常に混濁している。それはWeb2.0という、一見すると善悪と無関係な世界にも通ずる不文律だ。
【サービスで食えないWeb2.0】
先般、Web2.0に関するコラムを掲載したが、執筆のきっかけは某パソコン誌からのオファーだ。急遽Web2.0の関連本を読み漁り、膨大な数のWeb2.0的サイトに会員登録して実際にサービスを使用。どのサイトも動的で、コミュニケーションにすぐれ、現代のウェブを象徴するものばかりだった。しかし、そうした満足感と裏腹に、このところ実に不愉快な出来事に悩まされている。Web2.0などと騒いだところで所詮はビジネスのための方便……。そんな萎えた気持ちでいまこれを書いている。
ウェブは広告収入で成り立つビジネスだ。テレビほどではないが、ウェブもメディアとしてご多分にもれず、広告に毒されている。広告手法はバナークリック型からアフィリエイト型に移行し、これがまたWeb2.0的現象としてひんぱんに取り上げられるのだが、ウェブが広告でしか儲けられないという事実が確定してしまった。
本来ならばウェブサービスは、サービスの対価として使用料を徴収できるはずだ。SNSやブログには月額数百円程度の有料コースが設けられているが、これを使っている人はごくわずか。たいていのユーザーは無料コースでWeb2.0的サービスを楽しんでいる。これは日本人のソフトウェアに対するとらえ方と似ていて、無形商品にほとんど敬意を払わない悪しき習慣だ。そのためサービス提供者は広告収入で利益を得るわけだが、この現実にサイト開発者やプログラマは屈辱を感じないのだろうか。サービスでは金を取れない。だから広告収入で賄う。つまりそれは、開発したサービスが金を払うに値しないということになる。ウェブサービスという商品を作り出しておきながら、誰も金を払ってくれない現実。開発者陣はきっと、自尊心などという俗なものを消し去った人たちにちがいない。
【Web2.0は所詮ポストポータル】
青臭い話はこれくらいにしておこう。Web2.0的サービスを開発する人たちは、はっきりと割り切っているはずだ。どんなに優れたサービスも、所詮は集客ツール。のっけから広告収入を目当てにして、できるだけ人を集められるサービス開発を目指しているはずだ。サービスへの対価? そんな青臭いものはハナっから考えているはずもない。大手資本にとって、Web2.0的サービスとはポストポータルにすぎない。ポータルを情報取得の窓口とするならば、Web2.0的サービスはコミュニケーションの窓口。そうしたちがいこそあれ、人を集め、広告を見せ、そして広告収入を得るというビジネスモデルは共通だ。ユーザーのウェブに対するニーズが、情報取得からコミュニケーションに移行した事実を踏まえ、集客形態を変えたにすぎない。
なにもすべてのWeb2.0的サービスはあざといというつもりはない。しかし、明らかな二番煎じや非実用的なサービスが少なからずあり、そうしたサービスを使ってみると、なぜこのサイトを立ち上げたのか疑問を覚える。そうした疑問解消にひと役買ったのが、冒頭にふれた不愉快な出来事だ。
【Web2.0に群がる腹黒い輩たち】
いくつものWeb2.0的サービスに登録した結果、登録時に使用したメールアドレスにスパムメールが届くようになった。同時にウイルスメールも大量にやってくる。これが意味するところはひとつ、Web2.0的サービスを装った個人情報収集サイトが存在するかもしれないという事実だ。大半のWeb2.0的サービスはメールアドレスだけで登録できるが、なかには住所や氏名まで入力させるサイトがあった。むろん、SNSのような個人の特定を前提にしたサイトは多少の個人情報が必要になるだろう。しかし、SaaSを提供するサイトで住所まで入力させるのは行き過ぎというもの。残念なことに数々のWeb2.0的サービスを見てまわったところ、登録に二の足を踏むようなサイトが少なからず存在した。そして現にスパムメールやウイルスメールが届き、案の定、どこかのサイトがメールアドレスを売ったのだなと妙に納得してしまった。
いつの世も、流行りものには負の側面が見え隠れする。それはWeb2.0とて例外ではない。そもそもWeb2.0がブームになった背景には、このトレンドキーワードでひと山当てようという腹黒い目論みがある。Web2.0的サービスを装った個人情報収集も、そうしたダークな一側面なのかもしれない。
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