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August 2006

August 27, 2006

SILKYPIX RAW Bridge 死蔵JPEGに息吹を!

まだEOS 20Dを買ったばかりの頃、いつもJPEGで撮っていた。RAW現像は難しそうだし、単純にJPEGで撮影枚数を稼ぎたいという考えもあった。そんなわけで、HDDにはJPEG画像がたんまりとある。レタッチもトリミングもせず、ほぼ死蔵の状態だ。先日の記事で「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」をレビューしたが、そのなかでSILKYPIX RAW Bridgeを紹介した。これはJPEG画像をRAW化して、露出やホワイトバランスといったRAW現像でおなじみの項目で編集できるという機能だ。今回は死蔵したJPEGにこの機能で息吹きを吹き込んでみたい。

【RAWと調整項目は同じだがプリセットが……】
前述の通り、SILKYPIX RAW BridgeはJPEGとRAWと同じように扱う機能だ。JPEGは輝度、コントラスト、トーンカーブといった調整機能で編集するのに対し、RAWは露出、ホワイトバランス、ノイズリダクションといったデジタル一眼レフ寄りの項目で編集。一般的なレタッチとRAW現像では、編集のアプローチが異なる。個人差はあるかもしれないが、RAW現像のアプローチの方がカメラユーザーには直感的に操作できるはずだ。

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SILKYPIX RAW BridgeはJPEG画像をRAWデータととほぼ同等に編集できる。しかし、SILKYPIXの特徴――豊富なプリセットは、残念ながら一部省かれていた。左の画像はRAW現像時のプリセット。右の画像はJPEG編集時(SILKYPIX RAW Bridge)のプリセットだ。SILKY Taste、ホワイトバランス、シャープの項目からプリセットが省かれている。調整項目自体はRAWと同じなので、プリセットの特徴をつかんでおけば同等の効果を得ることは難しくない。また、本ソフトは現時点でベータ版なので、正式版ではプリセットを搭載している可能性もある。これは個人的な推測だが、JPEG画像はカメラメーカー独自の味付けがなされているため、プリセットを用意しても意図した効果が得づらい。そのためあえてプリセットを省略したのかもしれない。

【死蔵JPEGがよみがえった!】
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SILKYPIX RAW Bridgeの効果のほどを見ていこう。右はEOS 20Dで撮影したJPEG画像、左はSILKYPIX RAW Bridgeで編集したものだ。元画像はアンダーなので、露出を一気に高めてみた。加えてホワイトバランスを調整してクール調に整え、ファインカラーコントローラで赤いシャフトの彩度を持ち上げている。また、シャープを強めにかけて解像感を高めてみた。ちょっとやりすぎ感があるものの、大きな破綻もなく写真の雰囲気を変えることができた。

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同じくEOS 20Dで撮影したJPEG画像の例。オリジナルは曇天下の重い印象が漂う。カラーで「記憶色1」を選び、ファインカラーコントローラで緑と褐色の彩度を持ち上げてみた。さらにシャープで解像感を高めると、日射しを感じさせるビビッドな仕上がりに。右端の木をトリミングで取り除いたのはご愛敬(笑)。

【コンパクト機のJPEGだって復活】
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デジタル一眼レフのJPEGは、味付けがしてあるといってもあくまでも素材の持ち味を重視している。片やコンパクトデジタルカメラは、レタッチ不要なほどにメリハリの効いた絵づくりだ。ものは試しでコンパクトデジタルカメラのRAW化現像にチャレンジしてみた。オリジナル画像はパナソニック「LUMIX DMC-F1」というずいぶんと古い機種のもの。ライカレンズとヴィーナスエンジンで記憶色重視の味付けがかなり強烈だ。しかしどうだろう。空はシアンに転び、どうにも子供っぽい絵だ。そこでカラー項目から「フィルム調V1」を選び、その上で青の明度を落とす。CPLフィルターを使ったような深い青が気持ちいい。さらに緑は色相と彩度を調整してみずみずしさを演出。これぞ大人の写真(笑)という気がする。

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記憶色過剰なコンパクトデジタルカメラといえども、光量不足だと色褪せた写真になってしまう。左の写真がそんな一例だ。紅葉というよりも、ただの枯れた木……だ。こういう画像の補正はSILKYPIXの得意とするところ。ホワイトバランスで色調を整え、ファインカラーコントローラで赤、黄、緑の色相と彩度を調整する。気持ち露出を下げることで、山中の湿っぽくひんやりした空気感をあらわしてみた。

【お仕着せ画質を超えたレタッチのために】
デジタルカメラが生み出すJPEGは、程度の差こそあれ、なんらかの味付けがなされている。記憶色という言葉が一般化し、その風潮はますます強まってきた。こうした記憶色重視の画像は万人向けで見栄えがよく、レタッチ作業も最低限で済む。しかし、一度味付けのなされた画像を自分好みの絵に近づける場合、データ的破綻という難問にぶち当たる。記憶色重視の画像はそもそもがハイコントラストで彩度も高め。飽和寸前の画像に手を加えるのだからナーバスだ。その点SILKYPIX RAW Bridgeを使うと、データ的破綻をさほど気にすることなく、かなり大胆な加工が行えた。もちろん非破壊編集だからオリジナルデータに手を加えることはなく、何度でもトライ&エラーをくり返せる。たとえば、デジタル一眼レフのサブ機としてコンパクトデジタルカメラを使っている人なら、RAWとJEPGを同等に扱えるSILKYPIX RAW Bridgeは手放せない機能になるだろう。なお、ataruさんのブログフィルムスキャン時のSILKYPIX RAW Bridgeの詳細レポートがある。こちらも参照してみてほしい。

●追記
SILKYPIX RAW Bridgeで現像したサンプルを別ブログに掲載しました。ご興味があればこちらもどうぞ。

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August 25, 2006

ブログエディタ「Windows Live Writer」ってどう?

当ブログは@niftyが提供するココログを使っている。しかもフリー版ではなくて、有償のココログプラスだ。最近でこそ安定して使えているが、数ヶ月前はひどい有り様だった。レスポンスが劣悪で、管理画面の呼び出しにやたら時間がかかる。時間がかかるだけならまだガマンできるが、記事を書いて保存(投稿)ボタンをクリックしたら、さんざん待たされた挙げ句「サーバーにつながりましぇーん、ごめんちゃい」なんて白地の画面があらわれるのだ。金とってこれかよっ、と天を仰いだことは一度や二度ではない。この間の大規模メンテナンスのおかげで現在は良好なレスポンスをキープしているが、そのとき受けた心の傷――オンラインを信用するな!――はいまだ癒えない。ブログはお仕事原稿ではないものの、せっせと書いた原稿が消えてしまうと泣きたい気持ちになる。脆弱なオンラインはもうこりごり。やっぱローカルがいいね。というわけで、ブログエディタ「Windows Live Writer(Beta)」を使ってみた。

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そもそも「Windows Live Writer(Beta)」はWindows Live Spaces向けのブログエディタだが、それ以外のブログサービス(Blogger、LiveJournal、TypePad、WordPress、Metaweblog API、Movable Type APIなど)でも投稿できるようだ。英語版でしかもベータ版。いろいろと不安はあるが、とりあえず日本語は問題なく通る。今回はココログ(TypePad)の投稿機能と比較しつつ、その実力を検証してみたい。

【高性能な画像貼り付け機能】
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ローカルの強みをもっとも痛感したのは画像関連機能だ。上の画像を左から順に説明してこう。まず画像にドロップシャドウや枠線を付けられる。フォトログをやっている人なら魅力を感じる機能だろう。貼り付けサイズとクリック時の拡大サイズは、大中小、そしてオリジナルサイズが選択可能。大中小はプリセットになっているが、大きさを任意の数値に調整できる。真骨頂はエフェクト機能だ。ウォーターマークで署名を入れたり、画像の簡易補正が可能。ローカル作業ならではの強みを感じさせる機能だ。

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左の写真は枠を付けてウォーターマークで署名を入れたもの。中央の画像はエフェクト機能で調子を変えてみた。右の写真はココログの画像投稿機能で貼り付けたもので、見比べるとそのちがいは一目瞭然。筆者は当ブログとは別に光学仕掛けのモノローグというフォトログをやっているが、そちらで積極的に使ってみたくなった。特にドロップシャドウとウォーターマークはグッとくる(笑)。が、ここでひとつ大きな問題が……。それぞれのサムネイルをクリックしてみてほしい。ココログで貼り付けた写真はジャストサイズの別画面を表示してくれるが、Windows Live Writerで貼り付けた写真はメインウィンドウと同じサイズの別ウィンドウがドーンを開いてしまう。これはちょっと興醒めだ。なお、投稿済みの記事をWindows Live Writerで読み込んだ場合、既存の画像にドロップシャドウやエフェクト機能を施すことはできなかった。

【地図連携でマッシュアップ】
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複数のウェブサービスを組み合わせ、新たなウェブサービスを作り出す――これをマッシュアップと呼ぶ。Web2.0の解説に必ず出てくる重要なキーワードだ。Windows Live Writerは地図情報サービス「Windows Live Local」と連携し、ブログに地図情報の挿入が可能。ロードマップだけでなく、航空写真に地名をかぶせて掲載したり、キャプションをつけることもできる。Windows Live Localは海外向けのサービスだが、日本国内についても詳細なロードマップが表示可能。ただいかんせん、航空写真はGoogle Mapほど精緻ではないし、地図に付随する関連情報も申し訳程度だ。。Windows Liveはマイクロソフトがやっとこさ重い腰を上げた統合Web2.0サービス。ベータ版ブログエディタにもとりあえず(そしてさりげなく)Web2.0的アプローチを組み込んでみた、というところか。


【基本機能は抜かりなし!】
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本ソフトは4つのインターフェイスを備えており、ツールボタンで目的に応じて切り替えられる。「Normal」(画像左)はリッチテキストエディタ風の画面で、原稿を一気呵成に書き上げたいときに便利。「Web Layout」(画像左から2番目)はブログデザインを踏襲した画面で執筆が行える。これが本ソフトのデフォルト画面だ。本文エリアとサイドバーの領域も設定済みデザインに準じているので、レイアウトを意識しながら執筆や写真の貼り付けが行える。「HTML Code」(画像右から2番目)はHTMLの直接編集が可能。たとえば前述した写真の拡大表示の制御などは、この画面でHTMLを追加記載すればいい。「Web Preview」(画像右)は投稿時の状態を再現したいわゆるプレビュー画面だ。タイトルやサイドバーもちゃんと表示してくれるので、投稿した状態が正確に把握できる。

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記事執筆にまつわる基本的な機能を見ていこう。まっ先に気になったのは投稿済み記事が再編集できるのか否か。これはファイルオープン画面に登録済みのブログが表示されるので、そこから読み込みたい記事を選べばいい(画像左)。リスト表示する記事数はプルダウンメニューで数を調節できる。カテゴリの選択はメインウィンドウ右上のプルダウンメニューから可能(画像中央)。これも登録済みブログのカテゴリがちゃんと反映されており、オンラインのブログ編集画面と同じような感覚で使える。本ソフトは複数ブログに対応しており、ウィンドウズ右上のプルダウンメニューからブログの切り替えが可能(画像右)。ブログのアカウントを追加したいときは「Add Weblog Account」をクリック。ウィザードが起動するので、指示に従ってブログのURL、アカウントのIDをパスワードを入力する。投稿機能に関しては投稿即公開ではなく、下書き状態のまま投稿できる(画像下段)。詳しくは後述するが、実は現状のWindows Live Writerを使う際、この下書き投稿が役に立つ。

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トラックバックとコメントに関する制御は、ウィンドウズ下部をクリックするとパネルがあらわれ、ここでトラックバックとコメントの公開/非公開が選択できる。もちろん、投稿時にトラックバックを送信することも可能。このあたりはオンラインの編集画面を踏襲しており、普段やっている作業がそのまま行える。

【で、使うの使わないの!?】
この記事はWindows Live Writerで書いている。ベータ版ということもあり、執筆中2度ほどクラッシュしたが、テキスト入力と画像貼り付け程度の作業はしごく安定していた。本ソフトの利点はローカル環境で記事を確実に保存できる点だ。それ以外にも「Web Layout」で投稿時のレイアウトを把握しながら書けるというメリットがある。これはオンラインの編集画面にはない利点といえるだろう。では即本番投入かというと、残念ながらそう簡単に踏み切れない。一番のネックは写真をクリックしたときのポップアップだ。別ウィンドウズがドーンと開くのはやはり見栄えがわるい。結局、テキストを本ソフトで入力し、前述した「Post Draft to Weblog」で下書き状態のまま投稿。その後、オンライン編集画面で写真をひとつずつ貼り付けることにした。要するに、テキストはWindows Live Writerで、画像はオンライン編集で、というわけだ。ただし、オンライン編集画面で画像を貼り付けて再度Windows Live Writerで読み込むと、なぜかオンライン編集で貼り付けた写真が読み込めない。このあたりは正式版リリースまでに改善されている可能性が高いので、しばらく様子見といったところか。

Wlw20_2最後にひとつ、便利な小ワザを。Windows Live Writerはリンク先を別ウィンドウで表示できる。「Insert Hyperlink」ダイアログで「Open link in new window」をチェックオンすればいい。ココログはブログを表示しているウィンドウにリンク先を表示してしまうので、この機能は重宝する。なにしろブログを書く身としては、せっかくアクセスした人が再び自分のブログに戻ってきてくれるか心配で仕方ない。こういう書き手の身になった機能は大歓迎だ。

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August 23, 2006

SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta

市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフト「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」がやっと出た。これまでSAKURA、AJISAI、HIMAWARIと季節の花の名前をつけた2.0ベータ版が毎月リリースされていたが、ようやく3.0を冠したベータ版の登場だ。

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一見してわかるように、2.0ベータからデザインが大きく変わった。従来バージョンは青いタイトルバーにグレーのウィンドウというクラシカルなデザインだったが、3.0ベータはアドビ「Lightroom」を彷彿させるブラックベースだ。加えて各種パレットが吸着するようになり、コンビネーション表示と名付けたプレビューとサムネイルの同時表示も可能。総じて現代的なアプリケーションの顔つきになった。本ソフトは長らくベータテストを行っていたため既知の機能も多いが、そうしたものも含め、おもしろい機能をピックアップして紹介していきたい。

【JPEGなのにRAW現像!?】
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RAW現像ソフトは当然ながら、RAWデータをJPEGやTIFFに変換するためのソフトだ。しかし最新バージョンでは、JPEGをRAW現像ライクに編集する機能「SILKYPIX RAW Bridge」を搭載している。そもそもRAW現像の魅力とは、露出やホワイトバランス、シャープネスといったデジタル一眼レフの撮影項目を、撮影後にパソコンで変更できるところにある。JPEGデータでも輝度や色調をレタッチすることで似たようなことは可能だが、画像自体が劣化するし、高度な編集が要求されけっしてやさしいものではない。そうしたことを踏まえると、JPEGをRAWと同じように編集できる利点は見逃せないだろう。初期状態ではSILKYPIX RAW Bridgeは無効になっているので、「現像設定」を呼び出し「JPEG/TIFF現像モード」をチェックオンする(左画像参照)。これでJPEGデータがRAWと同じように編集可能だ。右の画像は露出をオート設定で補正し、その上でホワイトバランスをいたずらしてみたものだ。一般的なフォトレタッチソフトだと階調が破綻をきたすところだが、滑らかなグラデーションを保ったまま色調を変えることができた。なお、SILKYPIX RAW Bridgeは非破壊編集となっており、元データはオリジナルのままだ。このオリジナル画像をいじらないという姿勢は大いに評価したい。ただし、一点気になったことがある。JEPGの編集がRAWよりも重いのだ。内部的にJPEGデータを16ビット化しているためそのせいと思われるが、JPEGの方が軽いと思いがちなだけにちょっと肩すかしを食らった。

SILKYPIX RAW Bridgeについて追加記事をアップしました。サンプル写真も豊富に掲載しましたので、是非そちらも参照してみてください。

【自分色を登録できる新プリセット機能】
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SILKYPIXは従来からプリセットが充実したソフトだった。ホワイトバランス、カラー、調子(コントラスト)など、ほぼすべての項目にプリセットが登録済みで、これらを使うことで効率的な現像が行えた。こうしたプリセット機能をさらに推し進めたのが「SILKY Taste」である。これはメーカー推奨のカラーバランスをプリセット化したもので、初期状態で7種類が登録してある。上段の画像は「風景」を適用したもの。適用前後で画像をくらべると、緑の鮮やかさが一目瞭然だ。下段は「ノスタルジックトイカメラ」を適用したもので、彩度がグンと落ち、四隅に光量落ちが加わっている。

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左側の画像は「青空」を適用してみた。 青みが増して気持ちいい。右の画像は「レッドエンハンサー」を選んだもの。これは赤フィルターをつけて撮ったような効果がある。朝焼けらしい赤から紫にかけての色調がきれいだ。どのプリセットも効き目が強烈で、見た目の印象をガラリと変えたいときに重宝するはずだ。なお、このTasteはインポート/エクスポートが可能。ユーザー間でTasteファイルを共有してもおもしろいだろう。

【白飛びだって修復できる!】
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デジタル画像にとって白飛びは致命傷だ。白飛びした箇所は修復不能……。通常であれば露出を下げて白飛びを回避するように撮影する。しかし、一見すると白飛びしているように見えても、RAW現像ソフト上で露出を下げると像が残っていることも。そんなときに威力を発揮するのがハイライトコントローラ内にあるダイナミックレンジ拡張機能だ。この機能をわかりやすく説明すると、ハイライト部分だけをアンダーにして、飛んでいた像を見えるようにしてくれるというもの。まず左画像を見てほしい。画面右下が飛び気味だ。そこでダイナミックレンジのスライドバーをググイッと動かすと、見えなかった手すりや電線が復元されていく。さらに注目すべきは、ハイライト部分以外、明るさや色調が一切変化していない点だ。トーンカーブでここまで調整するのは難しい。デジタルフォトの短所を補う貴重な機能である。

【解像感を増すふたつの機能】
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デジタル一眼レフはほぼすべての機種が高画素モデルだ。よって解像力不足に悩まされることはない……と思いがちだが、実はそうではない。高画素化にともない、ごくわずかなブレまでも画像に記録されるようになった。特にピクセル等倍でプレビューするとかすかなブレやピントの甘さが気になるものだ。今回のバージョンアップにより、本ソフトはより強力な新型シャープ「ピュアディテール」を搭載。適用前後の画像をくらべると、いかに強力かがよくわかるだろう。手ブレはもちろんだが、無限大撮影時のピントの甘さを補正するといった用途にも最適だ。

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現像時にリサイズするとどうしても解像力が甘くなる。本バージョンでは現像と印刷時にアンシャープマスクが使えるようになった。しきい値、半径、適応量といった3つのパラメーターで効き具合を調整できる。ためしに2240×1585ドットの写真を800×566ドットにリサイズしながら現像してみた。中央の写真がアンシャープマスクなし、右の写真がアンシャープマスクありである。アフラック人形の毛並みに注目すると解像感のちがいが見て取れるはずだ。

【不満点は……ある!?】
Image22_4 今回試用したパソコンは、Pentium D 920(2.8GHz)、メモリ1GBという構成だ。実はこのパソコン、SILKYPIX2.0を快適に使いたいがためにメモリを512MBから1GBに増設している。2.0はまずまず快適に使えていたのだが、3.0ベータを起動すると増設前に逆戻りしたような重々しい動きになった。アドビ「Lightroom」も重かったが、それと負けず劣らず重い。RAW現像は動画エンコード並みにヘビータスク。そう認識しておいた方がよさそうだ。その他の細かい部分では、ウィンドウを最大化するとタスクバーが隠れてしまい、他の作業に移行する際[Alt]+[Tab]でアプリケーションを切り替えなくてはならない。これは正直面倒だ。また、補正前後の画像比較、いわゆるコンペアができない点も気になるところ。なお、今回テストした環境では、「Lightroom」で現像したJPEG画像が読み込めないというトラブルがあった。原因がわかり次第、追補したい。

●追補
8月30日、Ver0.0.8.0がリリースされ、プレビューからサムネイル表示に切り替える際、メモリを大量に消費する問題が解消されました。これにより通常操作がずいぶんと軽くなり、SILKYPIX 2.0と同程度の体感速度に戻っています。また、ウィンドウを最大表示した際にタスクバーが隠れてしまう問題も改善されています。

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August 18, 2006

Web2.0の暗黒面

スターウォーズと水戸黄門は、どちらも善と悪が戦う物語だ。しかし、ひとつ決定的なちがいがある。水戸黄門が勧善懲悪をベースとしているのに対し、スターウォーズは善と悪が表裏一体である事実を、宇宙戦争という壮大なスケールで描いている。アナキン・スカイウォーカーは愛する者を救いたいがために暗黒面に堕ち、そしてダースベーダに変貌した。暗黒面の化身ダースベーダは、本来善とされるべき愛が生み出した産物なのだ。善と悪は常に混濁している。それはWeb2.0という、一見すると善悪と無関係な世界にも通ずる不文律だ。

【サービスで食えないWeb2.0】
先般、Web2.0に関するコラムを掲載したが、執筆のきっかけは某パソコン誌からのオファーだ。急遽Web2.0の関連本を読み漁り、膨大な数のWeb2.0的サイトに会員登録して実際にサービスを使用。どのサイトも動的で、コミュニケーションにすぐれ、現代のウェブを象徴するものばかりだった。しかし、そうした満足感と裏腹に、このところ実に不愉快な出来事に悩まされている。Web2.0などと騒いだところで所詮はビジネスのための方便……。そんな萎えた気持ちでいまこれを書いている。

ウェブは広告収入で成り立つビジネスだ。テレビほどではないが、ウェブもメディアとしてご多分にもれず、広告に毒されている。広告手法はバナークリック型からアフィリエイト型に移行し、これがまたWeb2.0的現象としてひんぱんに取り上げられるのだが、ウェブが広告でしか儲けられないという事実が確定してしまった。

本来ならばウェブサービスは、サービスの対価として使用料を徴収できるはずだ。SNSやブログには月額数百円程度の有料コースが設けられているが、これを使っている人はごくわずか。たいていのユーザーは無料コースでWeb2.0的サービスを楽しんでいる。これは日本人のソフトウェアに対するとらえ方と似ていて、無形商品にほとんど敬意を払わない悪しき習慣だ。そのためサービス提供者は広告収入で利益を得るわけだが、この現実にサイト開発者やプログラマは屈辱を感じないのだろうか。サービスでは金を取れない。だから広告収入で賄う。つまりそれは、開発したサービスが金を払うに値しないということになる。ウェブサービスという商品を作り出しておきながら、誰も金を払ってくれない現実。開発者陣はきっと、自尊心などという俗なものを消し去った人たちにちがいない。

【Web2.0は所詮ポストポータル】
青臭い話はこれくらいにしておこう。Web2.0的サービスを開発する人たちは、はっきりと割り切っているはずだ。どんなに優れたサービスも、所詮は集客ツール。のっけから広告収入を目当てにして、できるだけ人を集められるサービス開発を目指しているはずだ。サービスへの対価? そんな青臭いものはハナっから考えているはずもない。大手資本にとって、Web2.0的サービスとはポストポータルにすぎない。ポータルを情報取得の窓口とするならば、Web2.0的サービスはコミュニケーションの窓口。そうしたちがいこそあれ、人を集め、広告を見せ、そして広告収入を得るというビジネスモデルは共通だ。ユーザーのウェブに対するニーズが、情報取得からコミュニケーションに移行した事実を踏まえ、集客形態を変えたにすぎない。

なにもすべてのWeb2.0的サービスはあざといというつもりはない。しかし、明らかな二番煎じや非実用的なサービスが少なからずあり、そうしたサービスを使ってみると、なぜこのサイトを立ち上げたのか疑問を覚える。そうした疑問解消にひと役買ったのが、冒頭にふれた不愉快な出来事だ。

【Web2.0に群がる腹黒い輩たち】
いくつものWeb2.0的サービスに登録した結果、登録時に使用したメールアドレスにスパムメールが届くようになった。同時にウイルスメールも大量にやってくる。これが意味するところはひとつ、Web2.0的サービスを装った個人情報収集サイトが存在するかもしれないという事実だ。大半のWeb2.0的サービスはメールアドレスだけで登録できるが、なかには住所や氏名まで入力させるサイトがあった。むろん、SNSのような個人の特定を前提にしたサイトは多少の個人情報が必要になるだろう。しかし、SaaSを提供するサイトで住所まで入力させるのは行き過ぎというもの。残念なことに数々のWeb2.0的サービスを見てまわったところ、登録に二の足を踏むようなサイトが少なからず存在した。そして現にスパムメールやウイルスメールが届き、案の定、どこかのサイトがメールアドレスを売ったのだなと妙に納得してしまった。

いつの世も、流行りものには負の側面が見え隠れする。それはWeb2.0とて例外ではない。そもそもWeb2.0がブームになった背景には、このトレンドキーワードでひと山当てようという腹黒い目論みがある。Web2.0的サービスを装った個人情報収集も、そうしたダークな一側面なのかもしれない。

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August 13, 2006

RAW現像ソフト対決

ウィンドウズなら「SILKYPIX Developer Studio2.0」、マックなら「Aperture」。RAW現像ソフトの定番といえばそんなところだろう。しかし、アドビが「Lightroom」のパブリックベータ3を発表したことにより、そんな図式が揺らぎはじめた。RAW現像ソフトは単にRAWデータをJPEG変換するソフトではない。写真を思い通りに仕上げるツールだ。当然ながら、どのソフトを使うかで仕上がりが異なってくる。そこで今回は、「SILKYPIX Developer Studio2.0」「Lightroom Public Beta3」、そしてキヤノン製デジタルカメラ専用RAW現像ソフト「Digital Photo Professional 2.1」の3本で、RAW現像ソフトの特徴と傾向を考察してみたい。

【読み込むだけで仕上がりがちがう!】
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まず大前提としたいのは、RAW現像ソフトは用途に応じて使い分けるべき、という考え方だ。その根拠となるが上の写真である。左から「DPP2.1」「SILKYPIX2.0」、そして「Lightroom」で現像したものだ。各ソフトにRAWデータを読み込み、無加工のまま、いわゆるデフォルト設定でJPEG出力している。サムネイルの状態でもそのちがいは一目瞭然。「DPP2.1」は素の状態に近く、「SILKYPIX2.0」はかなり鮮やかだ。特に花の青は目を見張るものがある。「Lightroom」は両者の中間といった絵づくりで、露出を適正レベルに補正した印象だ。このように、RAW現像ソフトは読み込んだだけで絵にちがいがあらわれる。つまり、スタート時点で画像コンディションが異なるわけだ。もちろんソフトごとの機能性や操作性も重要だが、スタート時点の画像コンディションを理解しておくと、完成画像の雰囲気に合わせてソフトを使い分けられる。最短ステップで目的を達成できるわけだ。以下、各ソフトごとに特徴と傾向を見ていこう。

【素材重視ならDPP2.1】
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「DPP2.1」はRAW画像調整とRGB画像調整をタブで切り替えられる。RAW画像調整(写真左)はEOS DIGITAL本体で変更可能な項目と同じものが並び、要はカメラ設定を変えるときと同じフィーリングで画像補整が可能。これは利用者をEOS DIGITALユーザーに特定できる強みだ。一方、RGB画像調整(写真中央)はフォトレタッチソフトでおなじみのトーンカーブや明るさ、コントラスト、彩度といった概念で画像補整が行える。他ソフトと比較すると調整の自由度は限られるが、クイックチェックツール(写真右)を搭載している点が特筆に値するだろう。スペースキーを押すと次々に画像を表示。テンキーの1~3でラベルをつけることができる。そして最大のポイントは、動作がきわめて軽いことだ。本ソフトは初期状態でプレビュー時のノイズリダクションがオフになっているため、とにかく動きが軽快だ。これは他ソフトにない利点である。

Image2_1 「DPP2.1」は撮影画像にざっと目を通し、素材の持ち味を重視した現像に適している。明るさとコントラスト、そしてホワイトバランスについては他ソフトと同程度に調整できるのだが、カラーコントロールは大雑把と言わざるを得ない。特定カラーを持ち上げたいというような補正は正直不得意だ。こうした特徴を踏まえて補正してみたのが左の写真である。露出を上げ、ピクチャースタイルで「忠実設定」を選んでいる。素材感を活かしてやわらかいタッチに仕上げたいとき、「DPP2.1」は実に使いやすい。

【SILKYPIXは本気で作り込める!】
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「SILKYPIX2.0」はおおよそ思いつく操作は何でもできる。多機能性という点ではダントツだ。カラーコントロール、ノイズリダクション、ホワイトバランスにコントラスト、あらゆる項目について詳細設定が可能。特にノイズリダクションの項目は多岐にわたり(写真左)、シャープネスとのバランスを取りながら微細な調整が行える。コントラストでは黒付きの量を調整でき、明暗を極端に強めたダイナミックな仕上げも可能だ。では上級者向けの操作が難しいソフトなのかというと、そういうわけではない。写真右のように各項目に豊富なプリセットが用意されていて、上から順にプリセットを選んでいくだけで色彩豊かな写真に仕上げられる。このように多機能かつ操作性にすぐれたソフトだが、処理に関してはかなり重い。このソフトを使いたいためにメインメモリを512MBから1GBに増設し、どうにかまともに動くようになった。こうしたことを加味すると、本気でRAW現像に挑みたい人向けのソフトといえるだろう。

Image10「SILKYPIX2.0」は本来相反する方向性を同時に満たしている。プロユーザーのニーズに応える詳細設定、そして初級中級者が手軽にRAW現像を楽しめる豊富なプリセット。そしてどちらを使った場合も、写真の仕上がりは非常の色濃くビビッドである。左の写真はこうした特徴を活かして補正したものだ。トーンカーブで極端なS字を描き、その上でグリーンとレッドを中心に色の明度を落としてみた。補正の域を抜けた明らかな加工だが、本ソフトを使うとここまで作り込める。「DPP2.1」と好対照なRAW現像ソフトだ。

【色の魔術師Lightroom】
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多くのRAW現像ソフトは、そのカテゴリ名通りRAW現像に特化したものがほとんどだ。そうしたなか、「Lightroom」はワークフローを意識したソリューションになっている。写真の選出と補正(加工)にとどまらず、見せるという領域もフォローしている点が特徴だ。写真左を見てもらうとわかるように、画面右上にLibrary、Develop、Slideshow、Printといった具合に一連の作業項目が並び、これにそって作業を進めていく。プロユーザーにとって完成型とは紙に印刷した時点。そのことを踏まえた作りになっている。機能面では柔軟なカラーコントロール機能が突出している。写真右のように色相、彩度、輝度についてカラー系統ごとにスライドバーが用意されており、色彩の微調整はもちろん、特定色を残してモノクロ化といった荒芸も難なくこなす。色彩を思い通りにコントロールしたいなら、このソフトにかなうものはない。なお、「Lightroom」については別エントリーで詳細レビューしているので、そちらも参照してほしい。

【使い分け、その一例として】
最後に個人的な使い分けのスタイルを紹介しておこう。まず撮影したRAWデータは「DPP2.1」に読み込み、クイックチェックツールでOKカットを選ぶ。この際、カラーバランスや構図は二の次。ジャスピンの写真を選ぶための作業だ。しょせんカメラはシロートなので、こうした作業が必要になってしまう(汗)。その後、RAW画像調整でコンディションを整え、そのまま使えそうな写真はJPEGに現像する。補正レベルで完了できそうなカットは「DPP2.0」で作業を完結するのが通常のスタイルだ。ただし、OKカットでありながら、極端に色彩を強めたり大胆にトリミングしたい場合、つまり加工に着手するときは「SILKYPIX2.0」を使用。それでも思うような結果が得られない場合は「Lightroom」の出番となる。「SILKYPIX2.0」と「Lightroom」の使い分けはやや曖昧だが、ビビッドに仕上げたいときは「SILKYPIX2.0」、アートに仕上げたい場合は「Lightroom」を起動することが多い。

RAW現像ソフトは非破壊編集ソフトである。元のRAWデータに一切の変更を加えない。つまり、ソフトを使い分けても元データは常にオリジナルの状態をキープしている。同じ画像を複数のソフトで編集して、そのちがいを見比べてみるのもおもしろいだろう。

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August 07, 2006

Web2.0は村上春樹だ

Web2.0は村上春樹の小説によく似ている。どこか隙がある。隙という表現が相応しくないなら、自由な解釈を許す幅といおう。そのため村上春樹の作品を読んだ人は、「ボクはわたしはこの小説をこう理解した!」と、ついつい多弁になってしまう。ひと頃一世を風靡したアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」もそうした類の作品だ。これらに共通しているのは、口を挟む余地が残されている点。そしてその世界に精通していない人の発言も許してしまう度量の深さ。Web2.0とは何か、が重要なのではない。Web2.0について語り合うことが楽しいのだ。

【いまを総称する便宜的キーワード】
そもそもWeb2.0とは、ティム・オライリーがウェブ上で発表した「What is Web2.0」という論文に端を発する。しかし、現在Web2.0といったとき、ティム・オライリーが語っていない内容も含まれている点に留意したい。「What is Web2.0」で論じられている内容は、2005年前半程度までのウェブを中心としたものだ。それに対し、一般にWeb2.0といったとき、人々は現在(まさに今!)までのウェブ事情を含めて語る。いまは2006年8月。わずか一年というなかれ。ウェブにとって一年の差はとても大きい。Web2.0的でありながら、「What is Web2.0」で論じられていないサービスも多々あるはずだ。

つまりこういうことだ。人々は現在のウェブ事情を総称して、Web2.0という。明確な定義があるわけではない。特定のテクノロジーやサービスを指すわけでもない。前近代的なウェブに対し、現在のウェブを指し示す言葉として、Web2.0というキーワードはとても便利なのだ。こうしたことを踏まえ、いま改めてWeb2.0という事象を考えてみたい。

【横文字キーワードに惑わされるな】
Web2.0を象徴するキーワードは多岐にわたる。ざっと書き上げてみるとこんな感じだろう。

●ブログ、SNS、SBMなどによるコミュニケーション
ブログはトラックバックによって他の記事にリンクを貼り、コメントによってユーザーコミュニケーションが可能。SNS(ソーシャルネットワークサービス)は招待制を導入したクローズドコミュニティ。SBM(ソーシャルブックマーク)はブックマークを公開共有。流行りのホームページや人気ページを簡単に調べられる。ウェブ上でのコミュニケーション、ユーザー参加型サイトであることが重要だ。

●構造的なデータベース
リンクはウェブのデータベース化に大きく貢献するが、従来型のリンクはリンク切れというデータベースにとって致命的な欠点があった。こうした点を改善したのがブログの固定リンク(パーマネントリンク)だ。記事を更新しても固定リンクのURLは不変なので、リンク切れが発生しない。この固定リンクの導入により、ウェブがより有機的に結合するようになった。また、タギング(キーワードによる分類)によって検索性を高めている点もデータベース化に貢献する。極論すると、ウェブ全体を巨大なデータベースとしてとらえていこうという動き。

ロングテール現象
コンビニの棚は売れ筋商品で占められている。売れ筋商品が売り上げ全体の大きな割合を占めるわけだ。しかしアマゾンiTunes Music Storeでは、売れ筋ランキングで末端順位の商品が売れ筋商品の売り上げを超えるという逆転現象が起きている。オンラインショップが商品をデータベース化することで利用者がニッチな商品も見つけやすくなり、結果として細分化したニーズに応えたというわけだ。

ブラウザ以外からのネットアクセス
Google Desktop Searchの衝撃は、ウェブブラウザを使わずに検索できるという点に尽きる。iTMSもブラウザを使わずに音楽配信を実現。かつてインターネットといえばブラウザの向こう側にある世界だったが、現在では脱ブラウザといった動きが顕著になってきた。日本国内ではウェブブラウズ可能な携帯電話も普及し、ブラウザといった枠組みはますます無意味になる。

●AjaxによるSaaS
SaaS(Software as a Service)とは、ウェブ上でサービスとして展開するソフトウェアのこと。具体的にはブラウザ上で動く表計算ソフト、メーラー、ワープロなどがある。かつてソフトウェアといえばパソコンのHDDにインストールするものだったが、いまやウェブサーバー上にソフトウェアをインストールし、それをブラウザ上で操作できるようになった。こうしたサービスの開発に大きく貢献したのがAjaxと呼ばれる開発手法だ。以前からブラウザ上で動くソフトウェアは存在していたが、Ajaxベースのものは操作中に画面の書き換えがない。オーソドックスなソフトを使っているような感覚で操作できるのだ。

集合知を活かしたサービス
ウェブ上でみんなの知恵を出し合って、問題を解決していこうというサービス。かねてから掲示板では似たようなことが行われていたが、それを検索可能なデータベースとして構築し、サービスに昇華させている。典型的なのがはてなの人力検索。ウェブ情報から検索するのではなく、質問に対して人が調べて回答してくれる。Wikiを利用した百科事典「Wikipedia」は、ユーザーが情報を書き込むことで日々事典として完成度を高めている。なお、Wikiとはブラウザ上で投稿編集が簡単に行えるコンテンツ管理システムのこと。

マッシュアップ
Web2.0的サービスの多くは公開APIになっている。こうした複数のWeb2.0的サービスを組み合わせ、新たなサービスを生み出す手法のことをマッシュアップという。事件記事とGoggle Mapsを組み合わせたハザードマップが好例だ。

とまあ、いろいろあるが、これがWeb2.0のすべてというわけではない。しかしどうだろう、もっともらしい説明がついているものの、インターネットユーザーにとってはごく当たり前のことばかりが並んでいると感じないだろうか。「このサービスはマッシュアップを用いているからWeb2.0的だ」とか、「いまさらポータルなんて笑止千万。これからはユーザーコミュニケーションを重視したWeb2.0的サイトを構築しないと」なんていったところで、つい力の抜けた笑いが込み上げてしまう。なんだよこの人たち、当たり前のことをもったいつけて話してるだけじゃないか。そう感じたあなた、その感性はストレートに正しい!

かつてWeb2.0関連の原稿を依頼されたとき、「Web2.0とはコラボレーションサイトである」と結論づけたことがある。小難しい話はどうでもいいからさ、ウェブでみんなで楽しくなんかやろうよ! そんな空気がWeb2.0という言葉から伝わってきたからだ。たしかにブログやmixiのブレイク、ソーシャルブックマークサービスを念頭においたとき、Web2.0はコラボレーションサイトと定義できそうだ。しかし、コラボレーションという枠組みから逸脱したWeb2.0的サービスが存在するのも事実。コラボレーションやコミュニケーションはWeb2.0にとって重要なファクターではあるが、それが絶対条件というわけでもない。そして前述のようなWeb2.0を解説するキーワードを勉強するにつれ、Web2.0に対するとらえ方が自分のなかで変わっていった。Web2.0を支える技術にとらわれていてはWeb2.0を理解できない。――なんだよこの人たち、当たり前のことをもったいつけて話してるだけじゃないか――この感じ方がWeb2.0を理解する導線になりそうだ。

【意訳すると、いまどきのインターネット】
Web2.0なんて結局、いま目の前にあるインターネットのことにすぎない。いまどきのインターネット、それがWeb2.0だ。そう開き直ってみると、俄然見通しがよくなる。いまWeb2.0と騒いでいるのは、ウェブ(およびインターネット)がここにきてやっと歴史を語るに値するようになったというだけのこと。日本でインターネットブームが巻き起こったのは1996年前後、約10年前だ。その当時のウェブと現在のウェブを比較したとき、明らかなちがいがある。ティム・オライリーの「What is Web2.0」という論文はまさにこの現在と過去のちがいを多角的に分析したものだ。けっしてトレンドキーワードやビジネスタームとしてWeb2.0という言葉を煽ったものではない。Web2.0をビジネスタームとして取り扱っているのは、このキーワードでひと山当てようと目論んでいる、本来ウェブと無関係な人たちだという事実は理解しておくべきだろう。

90年代はインターネットそのものが目的だった。家電量販店で「インターネットください」というと、モデム搭載のバリューPCを見繕ってくれた時代。インターネットとは商品であり、インターネットにつないでホームページを見るということがユーザーの目的だった。だからこそ閲覧者を集めるポータルが重要性を帯びたのだ。方や現在、インターネット接続は当たり前のこととして、ウェブの上で何ができるか、どう楽しめるかに関心が集まっている。つまり、はじめにインターネットありき。ホームページを見ることよりも、ウェブ上で何をするかが最大関心事であり、情報よりもサービスにウェイトが移った。その結果ブレイクしたのがブログでありSNSであり、構造的なデータベース化が功を奏した効率的な検索機能なのだ。平たく言えば、インターネットは普及期から成熟期に移行した。インターネットはインフラとして認知され、人々はインターネットのない生活を想像できなくなりつつある。なるほど、インターネットがなくても人は死なない。しかしメールがなければ、あなたの仕事は完全に頓挫するだろう。仕事とは命の糧を稼ぐこと。インターネット不能な生活は日常生活者としての死を意味する。こうしたインターネットの変化を、様々な技術用語を尽くして語ったのがWeb2.0ブームの正体だ。

【ネットは学術に昇華した!?】
いま書店にいくとWeb2.0周辺本が山積みされている。Web2.0のセミナーも数多く催されている。本を読まなくてもセミナーに参加しなくても、あなたはすでにWeb2.0を知っている。少なくとも日々体感している。しかしだからといって、Web2.0を支える数々のテクノロジー、そしてWeb2.0を分析するテクニカルタームを蔑ろにするつもりはない。なぜならWeb2.0ブームは、インターネットが学問に値することを証明した出来事だからだ。ティム・オライリーの「What is Web2.0」をはじめ、各種周辺本に書かれている内容は、いまのウェブを多角的に分析したものだ。目の前の現象を整理し、そのなかから規則性や法則を見いだすアプローチは、まさに学術である。ことWeb2.0の解説は経済学を彷彿させやしないか。経済は総じて人の営みであり、インターネットも結局は人の生活に根ざしている。一見無秩序な人のふるまいを、過去との比較や規則性を駆使し、整理分類しようという動きは、経済学にもWeb2.0にも共通しているように思えるのだ。

ウェブは学問に値する。Web2.0とはその証明方程式――。村上春樹の小説を咀嚼するように、そんな勝手な解釈をつけてみた。

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August 03, 2006

HDV一騎打ち

やっと、というべきだろう。キヤノンがコンシューマ向けのHDV準拠ハイビジョンビデオカメラ「iVIS HV10」を発表した。これまでキヤノンはプロシューマ向けのハイビジョンビデオカメラしか発売しておらず、コンシューマ向けハイビジョンビデオカメラは初となる。折しもソニーがAVCHD対応ハイビジョンビデオカメラを発表した直後。ソニー とキヤノンという二大巨頭による、ハイビジョンビデオカメラ競争の勃発だ。

「iVIS HV10」の製品ページを見ると、1920×1080 HD CMOSというロゴマークが目立つ。事情通の人ならばちょっと首をかしげる表記だ。HDVは規格上、その映像は1440×1080ドットとなる。しかし「iVIS HV10」は1920という数字をことさら強調しているのだ。これは1920×1080ドットで撮影して、HDV規格に合わせて1440×1080ドットにダウンコンバートするということらしい。ソニーのハイビジョンビデオカメラ群はストレートに1080i(1440×1080ドット)で撮影しているので、それよりも優位だと強調したいのだろう。たしかに高解像度な映像をダウンコンバートした方が精細になる。これは既存のDVカメラで実証済みのアプローチだ。しかしながら、かつてのデジタルカメラやDVカメラのように、ハイビジョンビデオカメラでもスペック偏重主義によるマーケティングが行われるのかと思うと気持ちが萎えてくる。

ここ5年ぐらいのキヤノンを見ていると、デジタルイメージング界のマイクロソフトではないか、と思うことがある。90年代、プリンタといえばエプソンだった。デジタルカメラはソニーとニコンが先行していた。「キヤノンはOA機器で稼いでいるからいいんだよ」と、その当時は知り合いの編集者と冗談をいったものだ。しかし、PIXUSシリーズで写真高画質プリンタというエプソンの牙城を切り崩し、デジタル一眼レフEOS DIGITALでカメラメーカーの本領を発揮し、あれよあれよという間にデジタルイメージング界の席巻してしまった。この動きに共通しているのは、後方からトップメーカーを潰すという手法。ハイビジョンビデオカメラについてもキヤノン参入は当然のこととして予測されていたが、思いのほか時間がかかった。ソニーの独断専行を許していいのかと、他人事ながら心配になるほどに……。

ただ、マイクロソフトが他社の介入・先行を許さないように、キヤノンはデジタルイメージング完全制覇の手をゆるめることはない。ソニーが切り開いたコンシューマ向けハイビジョンビデオカメラという分野、それをキヤノンが食う。そんな未来が見え隠れする。

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August 02, 2006

東独の怪獣FLEKTOGONの実力

_mg_3830_2いま思えば、ひたすらAF畑を歩いてきた。はじめて買ったデジタルカメラはエプソン「CP-100」。30万画素時代の弁当箱みたいに大きなカメラだった。その次はソニーの「FDマビカ」だったと思う。CCDは80万画素。記録媒体はフロッピーディスクで、旅先でたくさん撮れるとふんで購入した。その後はキヤノン「IXY DIGITAL 200」、パナソニック「LUMIX DMC-F1」を経て、ようやくデジタル一眼レフ「EOS 20D」に至る。銀塩時代に至っては、ディスカウントストアで買ったコンパクト機かレンズ付きフィルム。AF云々どころか、基本的にシャッター押すだけのカメラばかりを渡り歩いてきた。こうした軟弱なカメラ歴ゆえに、先日のエントリーでロシアレンズINDUSTAR-61L/Z-MC 50mm/f2.8を購入したとお伝えしたが、これはもうかなりの大冒険。フォーカスをマニュアルで合わせるなんて自分にできるのだろうか、と戦々恐々とした思いでのチャレンジだった。しかし、いざ使ってみると何てコトはない。最近ではフォーカスエリアを選択するよりも、フォーカスリングをまわした方が手っ取り早いと感じるほどだ。手持ちのキヤノン製AFレンズはすべてUSM対応なのだが、このところ積極的にAFモードのままフォーカスリングをまわしてピントの微調整を楽しんでいる。AF/MFの切り替え不要なUSMはエライ!なんていまさら痛感する今日この頃だ。すっかり前置きが長くなった。2本目のMFレンズ、Carl Zeiss Jena DDR MC FLEKTOGON 35mm/f2.4を買ってしまった……。


Dpp_0109_3 MC FLEKTOGON 35mm/f2.4は旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製だ。どうやら東独レンズの定番らしく、2~3万円とちょいと値がはる。今回はカメラのマツバラ光機にて税込み2.5万で購入。レンズにキズや曇りはなく、まずまずのコンディションだ。ただ、付属していた後玉のキャップがホコリまみれでこれには閉口。後玉はレンズの命。ここにホコリまみれのキャップを付けてくるという神経は良心に欠ける。梱包前にホコリをさっと拭き取るぐらいの手間はかけてもいいはずだ。なお、梱包自体はしっかりしていてレンズへの愛情は感じられた。それゆえにホコリ付きキャップは残念だ。

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MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の構造はいたってオーソドックスだ。上からフォーカスリング、被写界深度目盛、絞りリングとなっている。絞りはf2.4~22で、カチカチと音を立てて段階的にまわる。INDUSTAR-61L/Z-MC 50mm/f2.8は無段階絞りだったが、MC FLEKTOGON 35mm/f2.4は所定の絞り値で止る仕組みだ。このレンズは描写力もさることながら、最短20センチまで寄れるのが大きな特徴だ。中央の写真を見てほしい。赤いラインを0.2メートルの目盛が切っているのがわかるだろう。EOS 20Dに装着した場合、レンズの先5~6センチまで寄れる。つまり、マクロもイケる準標準レンズというわけだ。なお、側面にはオート絞りとマニュアル絞りの切り替えスイッチがある(写真右、参照)。マウントアダプタ経由で装着する場合はここをマニュアル絞り(M)に設定して撮影するのだが、どのみちオート絞りは無効化されているのでどちらでも撮れてしまう。カメラ側のセッティングはマニュアルモードと絞り優先AEモードが使える。このあたりの使い勝手はINDUSTAR-61L/Z-MC 50mm/f2.8と同様だ。

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絞りの状態は上の写真のようになる。左から開放f2.8、f3.5、f5.6、f22だ。INDUSTAR-61L/Z-MC 50mm/f2.8のヘキサグラムを見た後なので、この絞りの型はとてもまっとうに思える(笑)。今回手に入れた個体の絞りリングは、f2.8からf11まで固く、f11からf22はスカスカした感触だった。ちなみにフォーカスリングは全域にわたってしっとりと指に吸い付くようなまわり方。キヤノンのAFレンズと比較するとかなり硬めだ。

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EOS 20Dに装着するとこんな具合になる。オレンジ色の目盛がクラシックな雰囲気を醸し、ボディとレンズのサイズバランスも昭和期のカメラを彷彿させる。EOS 20Dは一眼レフとしては小ぶりなので、お散歩仕様にちょうどいい大きさだ。ちなみにEOS 20Dに装着した際は35mm換算で56mmとなる。画角という点でもスナップ向きだ。

最後に画質について。クラシックレンズとはいえ、単焦点レンズなのでシャープネスはきわめて高い。色ノリもしっかりしていて、RAWで撮影しても最小限の補正ですみそうだ。参考までにRAWで撮影したサンプルを掲載しておく。現像はDigital Photo Professional 2を使用。ピクチャースタイルは[スタンダード]を選び、その他は項目は一切いじっていない。本来EOS 20Dで[スタンダード]を選んだ場合はコントラストと[色の濃さ]をプラス1するのだが、今回はあえて撮影時のままにしている。それでもここまで写るというMC FLEKTOGON 35mm/f2.4の実力をご堪能あれ。

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タングステン灯下での撮影のため暖色寄りだが、それを差し引いても申し分ない色ノリだ。絞りはf5.6、シャッター速度は1/10。合焦している部分はキリリと引き締まり、ボケ味はあくまでもナチュラル。

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絞り開放、最短距離にて撮影。アンティーク処理を施したシルバーの質感がよく再現されている。無補正でもこれだけのコントラスト。一段持ち上げるだけで俄然立体感が高まる。

その他の作例はこちらに掲載してあります。

●追記
このたびマウントアダプタとオールドレンズの総合入門書「オールドレンズ パラダイス」を執筆しました。基本操作をステップバイステップで解説し、Flektogonに代表されるイエナ製レンズ、Y/CマウントやライカRマウント、電子マウントアダプタなどを取り上げています。以下の書籍解説記事も合わせてご覧ください。

「オールドレンズ パラダイス 発売日決定!」

追補
MC FLEKTOGON 35mm/f2.4の画質研究記事を掲載しました。あわせてご覧ください。

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August 01, 2006

EOS 20D ファインダー改造計画

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鼻の脂、気になりませんか? ファインダーにグッと目を押しつけ、シャッターを切る。液晶でプレビューを確認しようとすると、脂べっとり……。夏場ともなればオイリー指数は急上昇。とはいえ、脂を気にして目をファインダーから浮かせると、構図はおざなりになるしホールドが甘くなって手ブレも増える。そんなときに便利なのが、写真右側のアイピースエクステンダー「EP-EX15」だ。

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こいつをファインダーに装着すると、接眼部が後方に15ミリ伸びる。おかげで液晶に鼻が当たらなくなり、目を思い切ってファインダーに押しつけられるというプチ便利なアイテムだ。左側の写真が標準のアイカップ、中央がアイピースエクステンダー「EP-EX15」を付けた状態だ。後方にググッとせり出しているのがわかるだろう。なお、アイカップ自体はEOS 20D標準装備のものを流用することになるため、目を押し当てたときの感触は標準状態と変わりない。

とまあ、このアイピースエクステンダーのおかげで快適に撮影を楽しんでいたのだが、最近になって困った問題が発生した。ロシアレンズのINDUSTAR61-L/Z-MC 50mm/f2.8を買ってからというもの、ピンぼけ増産中なのだ。MFレンズは当然のことながらファインダーを覗きながらフォーカスリングをまわし、ピントの山をつかむ。ジャスピンを狙って撮るものの、ピクセル等倍だとかすかにボケているのだ。ボディ自体が前ピン気味という懸念がないわけでもないが、それ以前にやはりファインダーが見づらい。EOS 20DのファインダーはEOS Kiss Digitalよりも見やすいと一般に言われている。とはいえ、そもそもがマニュアルフォーカスを前提にした機種ではないし、EOS 5Dのようなフルサイズイメージセンサー搭載機と比較するとお世辞にも見やすいとはいえない。これではせっかくロシアレンズを買ったのに楽しめないじゃないか。

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というわけで、奥の手を使うことにした。マグニファイアの投入だ。マグニファイアとは拡大鏡のこと。要はファインダーに拡大レンズを装着して、大きく見えるようにしようというわけだ。しかしながら、キヤノンからEOS 20D向けのマグニファイアは発売されていない。いろいろとウェブを徘徊してみると、どうやらオリンパスのマグニファイアアイカップ「ME-1」が無加工で装着できるらしい。実際に購入して取り付けてみると、「こりゃ純正品か!?」と思うぐらいのジャストフィット。スライドインで簡単に取り付けられるし、見た目も違和感がない。ファインダー像は約1.2倍になって視認性が向上。マニュアルフォーカスの操作は俄然やりやすく、合焦するポイントが手にとるようにわかる。後方へのせり出しは標準アイカップと同程度で、佇まいもスマートだ。

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しかし、これはこれで問題がある。それは四隅のケラレだ。左の写真は標準アイカップを装着したファインダー。その隣が「ME-1」を装着したものだ。像が大きくなっているものの、ファインダーの四隅が暗くなっているのがわかるだろう。実際の撮影では、目を左右に動かして覗き込むと四隅を確認できる。腰を据えて撮る場合は覗き込むことで正確な構図を確認できるが、テンポよく撮りたいときにいちいち四隅を覗くのは面倒だ。拡大ファインダーをとるか、ケラレに目をつむるか、なかなか難しい選択である。

さらにここで、衝撃の新事実が判明した!

右端のファインダー画像を見てほしい。これはアイピースエクステンダー「EP-EX15」を装着したものだ。標準アイカップよりもひとまわり、いや、ふたまわりほど像が小さい。いやあ、これじゃあマニュアルフォーカスは無理。ピンぼけ増産も納得だ。EOS 20Dの標準ファインダーは噂通り優秀。問題はアイピースエクステンダーにあった、と。

ってことは、「ME-1」を買わなくてもよかったのでは(汗)。

「ME-1」は手軽にファインダーを拡大できて便利だが、四隅のケラレはシビアに構図を決めたいときの妨げになる。「EP-EX15」は液晶脂まみれを回避できるものの、ファインダー像が小さくてMFレンズだと使いモノにならない。ええと、つまり、EOS 20Dは標準アイカップがイチバン、という結論に相成りました……。むりむり使い分けを考えてみると、開放&マクロのようなシビアなピント合わせが必要なときは「ME-1」を、汗が気になる夏場は「EP-EX15」を付けるといった感じだろうか。とはいえ、EOS 20Dのファインダーはカスタマイズいらず、そんな結論に落ち着きそうだ。

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