SILKYPIX RAW Bridge 死蔵JPEGに息吹を!
まだEOS 20Dを買ったばかりの頃、いつもJPEGで撮っていた。RAW現像は難しそうだし、単純にJPEGで撮影枚数を稼ぎたいという考えもあった。そんなわけで、HDDにはJPEG画像がたんまりとある。レタッチもトリミングもせず、ほぼ死蔵の状態だ。先日の記事で「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」をレビューしたが、そのなかでSILKYPIX RAW Bridgeを紹介した。これはJPEG画像をRAW化して、露出やホワイトバランスといったRAW現像でおなじみの項目で編集できるという機能だ。今回は死蔵したJPEGにこの機能で息吹きを吹き込んでみたい。
【RAWと調整項目は同じだがプリセットが……】
前述の通り、SILKYPIX RAW BridgeはJPEGとRAWと同じように扱う機能だ。JPEGは輝度、コントラスト、トーンカーブといった調整機能で編集するのに対し、RAWは露出、ホワイトバランス、ノイズリダクションといったデジタル一眼レフ寄りの項目で編集。一般的なレタッチとRAW現像では、編集のアプローチが異なる。個人差はあるかもしれないが、RAW現像のアプローチの方がカメラユーザーには直感的に操作できるはずだ。
SILKYPIX RAW BridgeはJPEG画像をRAWデータととほぼ同等に編集できる。しかし、SILKYPIXの特徴――豊富なプリセットは、残念ながら一部省かれていた。左の画像はRAW現像時のプリセット。右の画像はJPEG編集時(SILKYPIX RAW Bridge)のプリセットだ。SILKY Taste、ホワイトバランス、シャープの項目からプリセットが省かれている。調整項目自体はRAWと同じなので、プリセットの特徴をつかんでおけば同等の効果を得ることは難しくない。また、本ソフトは現時点でベータ版なので、正式版ではプリセットを搭載している可能性もある。これは個人的な推測だが、JPEG画像はカメラメーカー独自の味付けがなされているため、プリセットを用意しても意図した効果が得づらい。そのためあえてプリセットを省略したのかもしれない。
【死蔵JPEGがよみがえった!】
SILKYPIX RAW Bridgeの効果のほどを見ていこう。右はEOS 20Dで撮影したJPEG画像、左はSILKYPIX RAW Bridgeで編集したものだ。元画像はアンダーなので、露出を一気に高めてみた。加えてホワイトバランスを調整してクール調に整え、ファインカラーコントローラで赤いシャフトの彩度を持ち上げている。また、シャープを強めにかけて解像感を高めてみた。ちょっとやりすぎ感があるものの、大きな破綻もなく写真の雰囲気を変えることができた。
同じくEOS 20Dで撮影したJPEG画像の例。オリジナルは曇天下の重い印象が漂う。カラーで「記憶色1」を選び、ファインカラーコントローラで緑と褐色の彩度を持ち上げてみた。さらにシャープで解像感を高めると、日射しを感じさせるビビッドな仕上がりに。右端の木をトリミングで取り除いたのはご愛敬(笑)。
【コンパクト機のJPEGだって復活】
デジタル一眼レフのJPEGは、味付けがしてあるといってもあくまでも素材の持ち味を重視している。片やコンパクトデジタルカメラは、レタッチ不要なほどにメリハリの効いた絵づくりだ。ものは試しでコンパクトデジタルカメラのRAW化現像にチャレンジしてみた。オリジナル画像はパナソニック「LUMIX DMC-F1」というずいぶんと古い機種のもの。ライカレンズとヴィーナスエンジンで記憶色重視の味付けがかなり強烈だ。しかしどうだろう。空はシアンに転び、どうにも子供っぽい絵だ。そこでカラー項目から「フィルム調V1」を選び、その上で青の明度を落とす。CPLフィルターを使ったような深い青が気持ちいい。さらに緑は色相と彩度を調整してみずみずしさを演出。これぞ大人の写真(笑)という気がする。
記憶色過剰なコンパクトデジタルカメラといえども、光量不足だと色褪せた写真になってしまう。左の写真がそんな一例だ。紅葉というよりも、ただの枯れた木……だ。こういう画像の補正はSILKYPIXの得意とするところ。ホワイトバランスで色調を整え、ファインカラーコントローラで赤、黄、緑の色相と彩度を調整する。気持ち露出を下げることで、山中の湿っぽくひんやりした空気感をあらわしてみた。
【お仕着せ画質を超えたレタッチのために】
デジタルカメラが生み出すJPEGは、程度の差こそあれ、なんらかの味付けがなされている。記憶色という言葉が一般化し、その風潮はますます強まってきた。こうした記憶色重視の画像は万人向けで見栄えがよく、レタッチ作業も最低限で済む。しかし、一度味付けのなされた画像を自分好みの絵に近づける場合、データ的破綻という難問にぶち当たる。記憶色重視の画像はそもそもがハイコントラストで彩度も高め。飽和寸前の画像に手を加えるのだからナーバスだ。その点SILKYPIX RAW Bridgeを使うと、データ的破綻をさほど気にすることなく、かなり大胆な加工が行えた。もちろん非破壊編集だからオリジナルデータに手を加えることはなく、何度でもトライ&エラーをくり返せる。たとえば、デジタル一眼レフのサブ機としてコンパクトデジタルカメラを使っている人なら、RAWとJEPGを同等に扱えるSILKYPIX RAW Bridgeは手放せない機能になるだろう。なお、ataruさんのブログにフィルムスキャン時のSILKYPIX RAW Bridgeの詳細レポートがある。こちらも参照してみてほしい。
●追記
SILKYPIX RAW Bridgeで現像したサンプルを別ブログに掲載しました。ご興味があればこちらもどうぞ。