HDV一騎打ち
やっと、というべきだろう。キヤノンがコンシューマ向けのHDV準拠ハイビジョンビデオカメラ「iVIS HV10」を発表した。これまでキヤノンはプロシューマ向けのハイビジョンビデオカメラしか発売しておらず、コンシューマ向けハイビジョンビデオカメラは初となる。折しもソニーがAVCHD対応ハイビジョンビデオカメラを発表した直後。ソニー とキヤノンという二大巨頭による、ハイビジョンビデオカメラ競争の勃発だ。
「iVIS HV10」の製品ページを見ると、1920×1080 HD CMOSというロゴマークが目立つ。事情通の人ならばちょっと首をかしげる表記だ。HDVは規格上、その映像は1440×1080ドットとなる。しかし「iVIS HV10」は1920という数字をことさら強調しているのだ。これは1920×1080ドットで撮影して、HDV規格に合わせて1440×1080ドットにダウンコンバートするということらしい。ソニーのハイビジョンビデオカメラ群はストレートに1080i(1440×1080ドット)で撮影しているので、それよりも優位だと強調したいのだろう。たしかに高解像度な映像をダウンコンバートした方が精細になる。これは既存のDVカメラで実証済みのアプローチだ。しかしながら、かつてのデジタルカメラやDVカメラのように、ハイビジョンビデオカメラでもスペック偏重主義によるマーケティングが行われるのかと思うと気持ちが萎えてくる。
ここ5年ぐらいのキヤノンを見ていると、デジタルイメージング界のマイクロソフトではないか、と思うことがある。90年代、プリンタといえばエプソンだった。デジタルカメラはソニーとニコンが先行していた。「キヤノンはOA機器で稼いでいるからいいんだよ」と、その当時は知り合いの編集者と冗談をいったものだ。しかし、PIXUSシリーズで写真高画質プリンタというエプソンの牙城を切り崩し、デジタル一眼レフEOS DIGITALでカメラメーカーの本領を発揮し、あれよあれよという間にデジタルイメージング界の席巻してしまった。この動きに共通しているのは、後方からトップメーカーを潰すという手法。ハイビジョンビデオカメラについてもキヤノン参入は当然のこととして予測されていたが、思いのほか時間がかかった。ソニーの独断専行を許していいのかと、他人事ながら心配になるほどに……。
ただ、マイクロソフトが他社の介入・先行を許さないように、キヤノンはデジタルイメージング完全制覇の手をゆるめることはない。ソニーが切り開いたコンシューマ向けハイビジョンビデオカメラという分野、それをキヤノンが食う。そんな未来が見え隠れする。
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