ハイビジョン狂想曲
ソニーが新しいハイビジョンビデオカメラ「HDR-UX1」と「HDR-SR1」を発表した。「HDR-UX1」は記録媒体に8センチDVDを、「HDR-SR1」は30GB HDDを採用している。そしてどちらもAVCHDに対応したフルHD仕様のビデオカメラだ。ソニーはすでにHDV規格に対応した「HDR-HC3」を発売しており、これでコンシューマ向けのフルHDビデオカメラが3機種になった。DVテープ、DVD、HDDと、すべての記録媒体がそろったわけだ。そこで気になるのは、いったいどれを選べばいいのか、ということ。フルHDビデオカメラの棲み分けを考えつつ、ハイビジョンの動向を考察してみたい。
【AVCHDという新たなハイビジョン】
「HDR-UX1」「HDR-SR1」、そして「HDR-HC3」。これらのちがいはフルHD規格にある。前者のふたつはAVCHDをサポートし、後者はHDV規格に対応する。では、AVCHDとHDVのちがいは何か? ともに1080/60iをサポートしている点は共通だが、映像フォーマットが異なる。AVCHDは最近流行りのH.264/MPEG-4 AVCを採用。HDVはMPEG-2を採用している。H.264/MPEG-4 AVCはMPEG-2の約2倍程度の高圧縮率を誇り、よりコンパクトにハイビジョン映像を記録できるのが特徴だ。
AVCHDか、HDVか。それが問題だ。
選択の切り口はいくつかある。まずは記録媒体の扱いやすさ。DVテープ、8センチDVD、そしてHDD。もっとも取り扱いが便利なのは8センチDVDだ。収納の場所をとらず、メディアにランダムアクセスできるので巻き戻し/早送りという概念がない。では画質という切り口はどうだろう。AVCHD、HDVともに1080/60iに対応しているため、大画面テレビに映し出してしまうと一般ユーザーにはそのちがいはほとんどわからない。この点はほぼ互角と考えて良さそうだ。再生環境という観点はどうか。一見すると8センチDVDを採用した「HDR-UX1」が有利に思えるが、AVCHDで記録したDVDは既存のDVDプレイヤー/レコーダでは再生できない。本年11月11日に発売予定の「PLAYSTATION 3」では再生可能との話だが、PS3をプレイヤーとして購入するのは高額だけに勇気がいる。基本的にどの製品もビデオカメラ自身をプレイヤーとして利用せざるを得ない状況だ。
唯一、決定的なちがいを見出せる切り口がある。それはPC連携だ。
【PC連携で選ぶと不幸になる!?】
miniDVテープを使った「HDR-HC3」は、パソコンに映像を取り込む際キャプチャ作業が欠かせない。テープのロード速度以上のスピードで映像を取り込むことはできないのだ。方や「HDR-UX1」と「HDR-SR1」はDVDならびにHDDからパソコンに対してデータ転送すればよい。キャプチャとデータ転送。このちがいは大きい。
ただし、その後の処理を考えたとたん、PC連携という切り口での製品選びは一気に色褪せて見える。そう、パソコン上のハイビジョン映像をどうするか、という問題だ。SD画質にダウンコンバートして従来型DVDに保存、というのは論外だろう。当然、次世代DVD――現時点ではBlu-ray Disk ドライブ――を使ってHD画質のまま保存したいと考えるはずだ。BDにはBD-AVとBD-MVという映像向けの規格がある。BD-AVは従来型DVDのVR形式に相当し、ビデオテープ感覚で記録できる反面、メニューは作成できない。一方、BD-MVはDVDビデオのようにメニュー作成が可能。市販BD-ROMタイトルなどで採用されている。ただし、現在店頭に並ぶBDドライブのパッケージではBD-MVは作成不可。BD-AVに関しても付属ソフトのアップグレード待ちといったケースが見受けられる。取り込んだハイビジョン映像をファイルとしてBDに保存することは可能だが、映像タイトルとして利用することは難しい状況なのだ。
なお、「HDR-UX1」と「HDR-SR1」は「Picture Motion Browser」というソフトウェアが付属し、このソフトを使うとパソコンでAVCHD映像の編集/再生が可能だ。また従来型12センチDVDにHD画質のまま記録して再生することもできる。ただこれも、将来にわたって記録を残すという観点からすると、どこまで永続的な手段なのか疑問を禁じ得ない。
【誕生の瞬間を成人した我が子に見せられるのか?】
次世代DVDというハイビジョン映像の受け皿待ち。すべてはこれに尽きる。次世代DVDの普及にともなって、たしかにこうした諸問題は解消していくだろう。しかし受け皿が整っていないまま、ソニーはビデオカメラのハイビジョン化をぐいぐいと進めていく。それがわるいとはいわない。ユーザーはハイビジョンビデオカメラを使っていまこの瞬間に、かけがえのない思い出を録りつづけている。それを数十年後に観るために。ソニーだけでなくハイビジョンに関わるすべてのメーカーは、そのことを気にとめてくれているだろうか。市場独占、ラインナップの充実ばかりに気を取られていないだろうか。現状のあまりにチグハグなハイビジョン分野を観ていると、つい不安にかられてしまう。
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Comments
私が購入したSony HC3はHDVなので、パソコンに取りこんで再生させる・・・というパターンです。
が、ちょっとの試し撮りでDVD-R1枚分のファイルサイズになってしまうのが・・・。
かといって1枚数千円する次世代DVDを買うのも・・・。
ただハイビジョン画質を体験してしまうと、画質に関しては妥協できなくなりますね。
たかが試し撮りでも。(笑)
Posted by: ハイビジョンに悪戦苦闘のサトウ | April 26, 2007 10:33 AM
次世代ディスクは普及が遅々としてますね。
わたしもBDドライブを持っていますが、
ディスクが高いので気軽に使えませんw
Posted by: metalmickey | April 26, 2007 11:05 AM