Adobe Lightroom Beta 3
●Photoshop Lightroom 1.0のレビューを掲載しました。
AdobeのRAW現像ソフト「Lightroom Public Beta 3」のウィンドウズ版が公開になった。
以前からマッキントッシュ用のベータ版は公開されていたが、ウィンドウズ版はベータ3がお初。かねてから使ってみたいと思っていたソフトなので、早速レビューしてみよう。なお、本ソフトはあくまでもベータ版だ。正式版と仕様が異なる可能性がある。その点はご了承のほどを。
【Library-ファイル管理画面】
「Lightroom」は作業内容に応じて画面を切り替えていく。Library、Develop、Slideshow、Printといった作業に分かれており、画面右上のメニューをクリックしていくとファイルの読み込みから印刷に至るまで、効率よく作業が行える。まずはLibraryから見ていこう。
左がフォルダ単位で画像を読み込んだところだ。読み込んだデータは「shoots」に登録されていく。フォルダ名をクリックするとメインペインにサムネイルを表示。「Digital Photo Professional 2」のようにエクスプローラ風のツリーでファイルを選ぶのではなく、いちいちフォルダを登録しなくてはならない。その一方で、キーワードによるフィルタリング、特定の画像を登録しておくコレクションといった機能があり、ファイル管理専用画面を設けるだけあって機能的には格上だ。また、特定フォルダをウォッチして画像を自動登録する機能も搭載。ただしこの機能を使うには、使用開始時にそのフォルダが空になっている必要がある。このソフトを使う人ならすでに大量のRAWデータを所有しているはず。改めてフォルダを新規作成し、そこにすべてのRAWデータをコピーするのはちと面倒か。
右の画面はサムネイルをダブルクリックしたところだ。プレビュー画面をクリックするとすばやくズーミングして、ピクセル等倍で画像をチェックできる。この動作はなかなか俊敏だ。加えて「Quick Develop」では、露出、ホワイトバランス、トリミングといった簡易編集が可能。補正用のプリセットも用意され、画像の調子を整える程度ならこの画面で作業を完結できる。
【Develop-編集画面】
「Develop」はいわゆる編集画面だ。左ペインから解説すると、ここではプリセットが選択できる。このプリセットはかなりの個性派で、たとえば「Direct Positive」を選ぶと一気に色ノリとコントラストがよくなる。左の画面と本記事冒頭の画面をくらべてみてほしい。元画像もそこそこの色ノリだが、それがさらに一段色濃くなっているのがわかるだろう。右の画面は「Antique Grayscale」を選んだものだ。いわゆるセピア色とも異なり、哀愁感漂いまくりの色調がおもしろい。なお、「History」をクリックすると作業履歴が表示され、任意に作業までアンドゥーできる。
右ペインは本ソフトの真骨頂、これでもかと詳細にわたってコントロールできる編集機能が並んでいる。編集機能の多才さでは「SILKYPIX2.0」が有名だが、それに肉薄する詳細さだ。なかでも圧巻なのが「HSL Color Tuning」。Hue(色調)、Saturation(彩度)、Luminance(輝度)について、それぞれ6系統のカラー分割で自在にコントロールできるのだ。左画面はこの「HSL Color Tuning」で花の部分だけ色を抜いたもの。本来なら輪郭を選択してモノクロ化する作業だが、「Lightroom」ならスライドバーを調整するだけでこんな荒ワザができてしまう。いわば色彩の魔術師。プロ向けフォトレタッチソフト「Photoshop」を開発するソフトメーカーだけのことはある。
RAW現像ソフトらしさを感じさせるのは「Lens Corrections」だ。一般にレンズ補正と呼ばれる機能で、「Reduce Fringe」では色収差の補正が可能。「Lens Vignetting」では周辺部の光量落ちを補正できる。さてこの「Lens Vignetting」だが、使いようによってはレトロな演出としても利用できる。右画面を見てほしい。光量落ちのない写真の周辺部をあえて暗くしみた。クラシックカメラで撮ったような味わいが簡単に演出できるわけだ。前述の「Antique Grayscale」と組み合わせれば、最新レンズで撮った写真を手軽にレトロテイストに仕上げられるだろう。
【Slideshow & Print-見せるための機能】
RAW現像ソフトとはその名の通り、RAWデータを現像することに特化している。そうしたなか、スライドショーと印刷機能を独立した項目として設けている点は特筆に値するだろう。スライドショー機能は見せ方を事細かに設定でき、さらにPDF形式で出力することも可能。印刷機能では、撮影日、露出、使用機材、タイトルといった情報を合わせてプリントすることができる。L版フチなし印刷、といった項目こそないが、それは「Lightroom」がコンシューマよりもプロシューマ(フォトグラファー)を意識したソフトだからだろう。ともあれ、現像後の活用部分までおさえたRAW現像ソフトはけっして多くない。こうした見せるための機能は貴重だ。
【インターフェイスと重さ】
ここまで画面ダンプを掲載しながら解説してきたが、「なんかこう、プレビュー小さいんだけど」と思った人も少なくないだろう。実はライトアウトという機能があり、上下左右のペインはすべて隠すことができる。左画面は編集機能をすべて隠したところだ。これならデスクトップに大きく写真を表示できる。そしてマウスポインタを上下左右に持っていくと、編集機能のパレットがスッとあらわれる仕組みだ(右画面参照)。
RAW現像ソフトはいまや一二を争うほどのヘビーソフト。処理の重さはどうだろう。今回、ペンティアム4 2.8GHz、メモリ1GBを搭載したマシンで試用してみたのだが、それでもかなり重たい。サムネイルをスクロールするだけで引っかかり、色調のスライドバーをちょっと動かすだけで「Working……」とメッセージが表示される始末。メモリを1GBに増設して「SILKYPIX2.0」はかなり快適に動くようになったのだが、「Lightroom」はさらにマシンリソースを必要とするようだ。その反面、現像処理はバッググランド処理のおかげで快適だ。「SILKYPIX2.0」や「Digital Photo Professional 2」はプログレスバーが出てゆるゆると処理するが、「Lightroom」はエクスポートの実行=即完了。すぐに次の作業に取りかかれる。むろんバッググランドで処理しているだけなので、システムにそれ相応の負荷がかかる。とはいえ現像待ちで作業を中断せずにすむのは利点だ。なお、バックグラウンドで現像中にソフトを終了してしまうと、当然ながら現像処理が頓挫してしまう。この点は注意が必要だ。
【他ソフトとの比較-どう使い分ける!?】
日頃、「SILKYPIX2.0」と「Digital Photo Professional 2」を使っている。撮ってきた写真は一度「DPP2」に読み込み、クイックチェックツールでざっと見渡す。めぼしい写真にチェックをつけ、そのまま編集作業に突入。露出やホワイトバランス、色調などを整えていく。「DPP2」は通常時のプレビューでノイズリダクションが無効化してあるので(有効にすることも可能)動作が軽い。写真の調子をざっくり整えたいときに便利なソフトだ。ただし、かなり派手に編集したつもりでも全体のトーンは控えめ。写真そのものの良さを引き出したいときに使うことにしている。一方、絵を作り込みたいときは「SILKYPIX2.0」を使う。このソフトは現像に関することなら何でもできる高性能ツール。写真を素材と割り切り、まったく別物に仕上げたいときに重宝する。自分のなかでは、「補正ならDPP2、加工はSILKYPIX」と使い分けている。
では、「Lightroom」の位置づけはどこか?
先にあげた画面は、「Direct Positive」を選んだ後に「Tone Curve-Lightroom Default」をクリックしたものだ。わずか2クリックでここまで鮮やかに持ち上げることができる。プリセットの素性の良さを感じさせる好例だ。さすがはデジタルイメージソフトの雄、アドビが放つRAW現像ソフトだけのことはある。その他のプリセットも実用的かつ個性的で、プリセットを選んでから微調整を加えていくとアーティスティックな表情に仕上げられるのがおもしろい。何でもできるという点は「SILKYPIX」に似ているが、「Lightroom」はより少ないステップでアートな写真が作れる。「SILKYPIX」は万能ツール、「Lightroom」はプロフェッショナルツール。そんな棲み分けが可能かもしれない。
最後に「Lightroom」で仕上げた写真をひとつ。タイトルは「戒厳令の夜」なんてね(笑)。
EOS 20D + EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM
●追補
Lightroom Beta 4 日本語版の記事を追加しました。
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